2022.02.06
【第57回】
世界で活躍する美人バレリーナの心を射止めた凄い男の正体。そしてなぜ離婚?
美人とは「美」という高スペックを備えたスーパーカーのような存在。その“スーパーぶり”に男は憧れるわけですが、果たしてそのスペックは彼女に何をもたらすのか? 「ワイングラスのむこう側」(cakes)で人気の林伸次さんが、世の美人たちの隠された恋愛事情に迫ってみる連載です。
- CREDIT :
取材/林 伸次 写真・構成/木村千鶴
テーマは今どきの美女たちの”悩める恋愛事情”。美人が出会った最低男を裏テーマに、彼女たちの恋愛体験(主に失敗)談と本音の恋愛観に迫ります。
第57回のゲストは前回に引き続き、元バレリーナの愛さん(30代)です。前編では、バレエに打ち込んだ高校生活からの留学生活、そして20歳を過ぎての初めての恋愛について聞かせていただきました。後編では、その後の恋愛について伺います。
初体験の医学生は、やっぱり遊び慣れていて
「そうですね、悲惨な思い出とはならなかったですけど、その後、彼が浮気をしている場面に遭遇しちゃったんです。その頃の私は、首都の劇場で仕事をすることが決まって、引っ越すことになってたんですね。彼とは遠距離になるって話をしている時だったので、それが原因だったのかもしれませんが、見たことも言えないまま、お別れしました」
── そうか、言えなかったんですね。その後は恋愛しましたか?
「はい。実は私、バツ2なんです(笑)」
── えっ! なんかちょっとびっくりした。恋愛スロースターターだったのに……。最初の旦那さんはどんな人だったんですか。
「移った先の劇場で一緒に働いていた現地人のオペラ歌手です。同じ舞台に出たりしているうちにだんだん仲良くなって、お付き合いして、1年ちょっとくらいかな? プロポーズされて、結婚しました」
── おお〜、そうだったんですね。結婚してもバレリーナはもちろん続けられるんですよね。
「そうですね、続けていました。子どもが生まれてからもキャリアを積んで。彼は結婚当初、オペラの中でも合唱みたいなところにいた、所謂ペーペーの歌手だったんです。元々凄く才能がある人だとは思っていましたが、結婚後にもの凄いスピードで出世して、大統領が出席する国のイベントとかで国歌斉唱するような地位まで、登り詰めてしまったんですよ」
── おお〜凄い!
結婚後猛スピードで出世した彼が、家庭を顧みなくなり
── あ〜、そうなっちゃったんですね。
「田舎の出身で、複雑な家庭で育った人でした。その分、自分の力でのし上がっていくような野心は強い。仕事の面では本当に凄いんです。でもその分、家庭も顧みなかった。付き合っている時はその野心が魅力的でも、やっぱり結婚となると、ね」
── なるほど。でも、奥さんが日本人女性だと、パブリックイメージ的にも良いような感じがするんですけど。いろんなパーティーに同席していれば、話題もできるでしょうし。
「そうそう、イメージだけは大事にしていましたね。見かけだけで(笑)」
── 別れた原因は何ですか。
── ああ、そうなっちゃうんですね。
「でも私はバレエをするためにここに来ているし、彼が頑張っている場面を見れば、自分も頑張りたい、もっと仕事をしたいって思う。それで噛み合わなくなってしまったんですね」
── それはそうでしょう。バレエをするために異国にまで移住しているんですもんね。
「それで家庭内別居状態になっていたんですが、ある時、怪我をしてしまい、治ってからも後遺症が残り、引退を考えるようになりました。ちょうど子どもの進学時期と重なっていたので、引退したらここに残っても暮らしていけないし、日本に帰ろうって」
弱ってる時に出会った人について行っちゃダメです(笑)
「はい。離婚して戻ってきて、自分が習っていたバレエ教室の先生を始めたんですけど、やっぱり後遺症が凄くつらくて……。バレエの先生をやると、夜も10時ぐらいまで仕事して、土日もコンクールの準備で時間がない。自分の体力もつらいし、これまで自分の好きなことばかりしてきたので、これからは子どもや両親のために時間を使おうと思って日本に帰ってきたのに、これは違うなと」
── それはつらいですね。
「そうして悩んでいた時に、出会ってしまったんです(笑)。共通の友達繋がりで知り合った、小さなアパレルの会社を経営している男性だったんですが、彼と半年ぐらい付き合ってから、一緒に東京に来ないかってプロポーズされて……。私、その時、人生の中で一番精神的に落ちてる時だったんですよね。身体は痛くてどうにもならないし、このまま車椅子になるんじゃないかと悩む、極限状態」
── そんな時に救世主のように彼が現れた。
「もう藁にもすがる気持ちでした。でも言うじゃないですか、弱ってる時に出会った人はダメだって(笑)」
── やっぱりそうなっちゃいますか(笑)!
「そう、これだけはみんなに言いたい! 弱ってる時に出会った人についていっちゃダメだよ! って(笑)」
── わかりました! ここは大きく書きましょう(笑)! それが2度目の結婚ですね。どんなダメな人だったんですか。
「最初は良い人だったんですけど、3カ月ぐらいしてから仕事のストレスなのか私にあたってくるようになり、友達とのランチすらドタキャンさせるほど束縛するようになってきて。だんだんとその矛先が子どもにも向くようになりました」
夫の出張中に逃げ出す準備をして……
「子どもも、学校には行きますけど、家では部屋から出て来なくなってしまって。そんな中で、お前のせいだとか、誰が面倒見てやってると思ってんだ、って言われて、やっと目が覚めたんですよね。壁を殴ったり物を投げたりが始まってたので、これは逃げなきゃダメだと。それで、出張に行っている間に就職先を見つけて、不動産屋さんを回って部屋を借りて、逃げ出す準備をしました。彼が東京に帰ってきた時、離婚届を渡して、出て行きます、と」
── ちょっと怖い。ゴネたり怒り出したりはしませんでしたか。
「プライドが高い人なので、その点は大丈夫でした。どうせお前なんか生活できないよ、とか、うまくいかなくて後で泣きついてきても知らないからな、とかは言われましたけど、わりとすんなりでした」
── あ、そうなんですね。プライドが高いと深追いはしないんですね。
「結局はプライドが高くてよかったです。翌月には新しい彼女ができたみたいです」
── ひとまず逃げられてよかったですね。今は恋愛してますか。
「はい、お付き合いしている人がいます(笑)。でも、もう結婚はしないです」
── しないって決めたんですね。
「もうお腹いっぱいです(笑)」
── でもこれだけ綺麗で明るい人だったら、何歳になってもモテるでしょう! どうぞ、幸せに暮らしてください!
「はい、ありがとうございます!」
【林さんから〆のひと言】
■ bar bossa(バール ボッサ)
ワインを中心に手料理のおいしいおつまみや季節のチーズなどを取り揃えたバー。 BGMは静かなボサノヴァ。
住所/東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
営業時間/月〜土 19:00〜24:00
定休日/日・祝
問い合わせ/TEL 03-5458-4185
● 林 伸次(はやし・しんじ)
1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSを開業。選曲CD、CD ライナー執筆等多数。cakesで連載中のエッセー「ワイングラスのむこう側」が大人気となりバーのマスターと作家の二足のわらじ生活に。近著に小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる』(幻冬舎)、『なぜ、あの飲食店にお客が集まるのか』(旭屋出版)など。最新刊はcakesの連載から大人論を抜粋してまとめた『大人の条件』(産業編集センター)。