「君の次の夢は?」という言葉から生まれた、人間国宝による究極のコラボ作品
作品を制作したのは、人間国宝のおふたりで、織の巨匠である北村武資さんと染の巨匠である森口邦彦さん。両者ともに、昭和から平成、令和の現在も第一線で活躍し、日本の染織界をリードしてきた、まさにニッポンの宝!
北村さんは、「羅(ら)」「経錦(たてにしき)」の重要無形文化財保持者で、15歳頃から織を学び、その道を極めながらも古代の織技法を独学で復元するなど、あくなき挑戦を続けてきた人物。織の名人として、世界でもその名を知られています。
パリ時代には画家バルテュスと交流を持ち、近年ではマクロン大統領が森口さんの邸宅まで作品を見にきたという逸話も! 2014年には三越のショッピングバッグに森口さんによる友禅訪問着のデザインが採用され、話題になりました。
今回のコラボレーションでは北村さんが織り上げた生地の上に、森口さんが染を施し、一枚のきものを作り上げたというわけ。
これは、まさに前代未聞! 日本の染織界、美術界、アート界、そして伝統工芸のあり方そのものを揺るがすような事件となったのです。
北村先生が、以前から親交のあった森口先生の初個展にかけつけた際、4人で会食をしたところ、北村先生に「君の次の夢は?」と聞かれた泉二さんが「おふたりの二人展を開催すること」と答えたら、北村先生が「自分が織って森口さんが染めるのはどうか?」と申し出てくださったのだとか。
自分が織った生地の上に、染を施してもらうという提案は、深い信頼関係がなければ考えつかないこと。若い頃から互いに存在を認め合うふたりだからこそ生まれた奇跡であり、さらにふたりが厚い信頼を寄せる泉二さんが立会人になったからこそ実現したコラボでもあるわけです。
ひとつの道を極限にまで極めた偉人たちが、技術の粋を集めて生み出した数々の作品は、圧倒的な美しさで我々を魅了することでしょう。そしてオヤジの美の価値観を更新し、オトコとしての深みを与えてくれるに違いありませんぞ!
『二大巨匠展 共演する織と染―北村武資と森口邦彦―』
開催/銀座もとじ 和織・和染
住所/東京都中央区銀座4-8-12
期間/2022年2月19(土)〜27日(日)11:00〜19:00
● 北村武資 (きたむら・たけし)
1935年京都市生まれ。15歳から西陣で織物を学んだ後、独立。1965年日本伝統工芸染織展に初出品以降、日本工芸会会長賞やNHK会長賞など受賞歴多数。古代に発展し途絶えた織り技法を独学により復元し、1995年に「羅」、2000年に「経錦」で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。1996年紫綬褒章受章、1999年文化功労者に選定、2005年旭日中授章受章。
● 森口邦彦(もりぐち・くにひこ)
1941年京都市生まれ。1963年に京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)日本画科を卒業後、渡仏。パリ国立高等装飾美術学校でグラフィックデザインを学び、1966年卒業。帰国後、「友禅」の重要無形文化財保持者(人間国宝)であった父・森口華弘氏の下で友禅技法を学ぶ。2007年に「友禅」で重要無形文化財保持者に認定。2013年旭日中授章受章、2020年文化功労者に選定。2021年フランス共和国レジオン・ドヌール・コマンドゥール章受章。