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2022.04.18

多くの人が誤解していた!? 「ミス日本」の本当の目的とは?

“日本らしい美しさをめざす”というコンセプトを掲げ、長きにわたって日本を代表する美人を輩出してきた「ミス日本」コンテスト。男性目線ではなく、女性自らが成長し活躍していくために必要な「美しさ」の本質とは?

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文/木村千鶴 写真/椙本裕子

▲ 2022ミス日本受賞者の皆さん。左から、ミス日本「海の日」/属 安紀奈さん、ミス日本「水の天使」/横山莉奈さん、ミス日本グランプリ/河野瑞夏さん、ミス日本みどりの女神/成田愛純さん、ミス日本ミス着物/佐藤梨紗子さん。
そもそも「いい女」ってなんでしょう? 男性にはそれぞれ個人的に惹かれる「いい女」像があることと思います。ではジェンダーレスと言われる今の時代には、パブリックに求められる「いい女」像というものはあるのでしょうか? それを知るために、日本を代表するミス・コンテストである「ミス日本」を主催するミス日本協会を訪ねました。お話を伺ったのは大会委員長の和田あいさんと、2022ミス日本グランプリの河野瑞夏さんです。

キレイな人を選ぶのが「ミス日本」の目的ではなかった!?

──  「ミス日本」は、日本で最も古い歴史を持つミス・コンテストと言われていますが、どのようにして始まったのでしょう。

和田  「ミス日本」の始まりは1950年に遡ります。戦後の混乱の中でアメリカから日本の子供たちへ、救援物資などをいただいたことに感謝を伝える、親善大使を決めるために始まったのがミス日本コンテストなのです。主旨は日本を代表する使節団を選ぶことで、綺麗な人を選出することは主な目的ではありませんでした。

── 選ぶ基準は美人かどうかではなかったのですね。

和田 そうです。第1回のミス日本は“昭和の大女優”と言われる山本富士子さんですが、親善大使としての活動内容は楽しいことばかりではなかったと聞いています。敗戦国の女性が、アメリカに2カ月の慰問に訪れるわけですから、色々と言われる場面もあったのでしょう。それを使命感を背負ってやり遂げた、その日本女性の心意気を学ぼうという思いが私たちにはあります。
▲ ミス日本大会委員長の和田あいさん(左)と、2022ミス日本グランプリの河野瑞夏さん(右)。
── そこから“日本らしい美しさをめざす”というコンセプトが生まれたのですね。では女性に求められた資質はどんなものだったのでしょうか。

和田 実は当初のミス日本は第2回までで役割を終えました。再開されたのは1968年です。1970年の大阪万博の開催が決まった時に、各国への外交儀礼のためにミス日本を復活させようという声が高まり、再開されたのです。ただ、その頃のミス日本はどちらかというと、お見合いの釣書に載せるような、“良き妻、良き母になるような女性像”という意味合いが強いものでした。これは皆さんが思い描く「ミス日本」なのかもしれません。

── 昔ながらの良妻賢母ですね。

和田 はい。その時の運営者が私の祖父なのですが、祖父は美人づくりの名士と言われていて、和田式ダイエットを提唱しており、コンテストはその発表の場という要素が強かったのです。
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「内面の美」「外見の美」「行動の美」を一生涯かけて磨いていく

── なるほど。いわゆる外見的な美しさに重きがおかれていたわけですね。

和田 でも当然ながら美しさは外見だけで終わる問題ではありません。私たちは女性が日本らしい美しさを体得することで、成長し夢を叶えていくための機会を作っていきたいと考えました。そのためには時代の移り変わりや世相を反映した美しさの在り方についても色々考えてきました。

例えば、阪神淡路大震災後に行われたミス日本コンテストでは「心美人」を提唱していますし、東日本大震災後には「行動美人」というコンセプトがサブタイトルに加わっています。困っている人に心を寄せる、また思うだけではなく、行動できる人かどうかを問う、それが日本を代表するミス日本なのではないかと考えています。
── 時代が変わることによって美しさにも変遷があるわけですね。

和田 そして今、私たちが掲げているのは3つ、「内面の美」「外見の美」「行動の美」というものです。これを単にコンテストのためだけでなく、一生涯かけて磨いていくということを提唱しています。美しさというものは、他者に感動を与え、行動を変化させる力を持っています。将来の夢を見据えて自ら考え、心身を鍛錬し、行動すること。それが美しさの源泉だと考えています。

── それはどのようにして磨いていくのでしょうか。カリキュラムとかがあるのですか。

和田 大会の審査期間中、ファイナリスト(毎回12~14名)に選出されると、その方々は4カ月かけてみっちり勉強会に参加することになっています。そのテーマが先に挙げた3つなのです。まず「内面の美」では、自分のルーツをしっかりと知り、足元を固めるということをやってもらいます。例えば育った環境や、両親や祖父母から受け継いだものなど、自分や家族の歴史を探り理解することで、自分の自信につなげていく。それに合わせ、国家のルーツも学び、日本の文化を知って、自分が何者かを知っていく作業をします。

「外見の美」では外見や姿勢、所作などといった結果に注目するのではなく、その過程をしっかり見ていきます。今の自分は、日々の選択で成り立っているわけです。休日の過ごし方ひとつにしても、自分で選択していることです。その選択を通じて自分を良い方向に持っていく、それを私たちは選択と鍛錬と言っています。

そして「行動の美」。何かの目標に向かってチャレンジしている姿は、それだけで美しいじゃないですか。目標や夢を持ったら実際に行動を起こしていくことに価値があるという考え方です。

── ファイナリストの自己紹介文を読むと、皆さんがしっかりとした考えや目標をもって活動されているのがわかりました。この教えから来ているのですね。

和田 応募される方の8割は、この勉強会が受けたいという方なのです。
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努力と才能を競う点では、オリンピックと変わらない

── 昨今ルッキズムが問題視されることも多く、ミス・コンテストに対しても風当たりが強くなっているように思いますが、それによってコンテスト自体が変化していくこともあるのでしょうか。

和田 いえ、それはないですね。昔からミスコン批判はありますので、今に始まったことではないのです。ただ私たちは、ミス・コンテストだけがなぜ矢面に立たされるのか、ちょっと疑問に思っているところもあります。オリンピックだって、運動能力の高い人が集まってそれを競い合っている。それと同じことだと思っているのです。やりたいという目標があって、それを叶えるために努力をする、その姿が美しいのです。比べようはないのですが、カテゴリーが違うだけだと。

── 確かに、努力と才能の結果を競うという部分では、スポーツと一緒かも知れません。

和田 そうですよね。ミスコンという形を取ってはいますが、どちらかというと教育機関に近い感じでしょうか。夢を持った若い女性たちに、成長できる機会を作っていきたいというのが私たちの根本的な考えです。
── ジャッジする場ではなく、育てる場所なのですね。そして移りゆく美の価値を常にキャッチしながら、内容も変えていく。

和田 はい。“ミス日本像”みたいなものを思い描いてみると、品が良くて、男性から一歩下がってついていく、そういった凝り固まった理想像があるかと思うのですが、私たちはそれを追い求めてはいません。ひとりひとりの能力を伸ばして、それぞれに幸せになってもらう。夢を叶えて社会を良くしてもらう、それがメインの考えなのです。
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美しいって一体なんだろうとすごく考えて、ミス日本に応募した

次に、2022ミス日本グランプリの河野瑞夏さん(国際基督教大学教養学部4年・21歳)にも話を伺いました。

── グランプリ受賞、おめでとうございます。河野さんはなぜご自身がグランプリに選ばれたと思いますか?

河野 審査員の方に直接聞いたわけではないのですが、思うにはファイナリストの中で、私が一番「女性らしさというものは、こう変わってきているのだ」ということを訴えたいという思いが強くあって、それが伝わったのかなと。

── 女性らしさの変化とは?

河野 私自身、女性らしい身体やステレオタイプの女性像にもの凄く悩み、摂食障害になった経験があるのです。それをSNSで発信すると、予想を超えた共感の声があったので、「これは私だけの問題ではなくて、社会の問題なのかもしれない」と気づきました。

ボディポジティブという言葉もあるにはあるけれど、社会ではまだ浸透していない。それこそ「いい女」的な女性らしい体つきが求められているのかなと。そこで私は美しいって一体なんだろうとすごく考えて、ミス日本に応募することで美しさとは何かを学びたいと考えたのです。

私自身が公に立って“新しい女性らしさ”を表現することで、何か皆さんに気づいてもらいたい。その気持ちを一貫して持っていたので、その思いが審査員の方に届いたのかなと思います。
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本当はミス日本コンテストに乗り込んでやろうと思って応募しました(笑)

── 学びの中で、何か答えは見つかりましたか。

河野 私の中では、世の中を動かす強さがあることが、美しさだと思いました。3つの美しさの学びの中で、自分のルーツの深掘りをし、そこに自分の得意なものを掛け合わせて、誰かに共感してもらうためにはどんな生活の選択をしていくべきかしっかり考えました。そうすることで共感を生み、社会を動かす力となる。それこそが美しさかなと思っています。究極の話、そのことには女性も男性も関係ないのかなと。

── 学ぶまで、そのようには思っていなかった?

河野 本当のことを言うと、応募した時には「ミスコンは女性を品定めする機関だ」って思い込んでいて、乗り込んでやろう、みたいな気持ちで応募したんです(笑)。

── ワハハ!

河野 でもそうじゃなく、私の思いを応援してもらえる場でした。それが知れた今、居場所ができたような感じがしています。
── この先、どんな活動をしてどのような女性になっていきたいですか、目標があれば教えてください。

河野 ミス日本の活動では“発信する”ということにも携わらせていただいているので、自分の身体について悩んだあの経験を活かして、同じように悩んでいる人に向け、発信したいと思っています。

あと自分の軸として、私は、ときめいたものを形にすることが好きなので、例えばダンス公演のプロデュースをしたり、それでみんなを幸せにできたらいいなと思います。

── ちなみに、今回「いい女」というテーマで取材に伺いましたが、女性を品定めしようとしていると思われてしまったでしょうか?(笑)

河野 確かに「いい女」というキャッチコピーには引っ掛かりを感じました。私は人を見る時に、性別で括ることはないのですが、たぶん私たちの世代では、それが当たり前になってきていると思うのです。女性を「自分の欲望を満たしてくれる相手」として見ない男性って、本当の意味で強い男性だと思います。相手の夢を応援して、一緒に成長していける人っていいですよね。

和田 私たちが掲げている「内面の美」「外見の美」「行動の美」は人の一生涯をかけて磨いていく概念ですので、年齢も性別も関係ありません。私たちはたまたまミス日本コンテストをやっているので、ここで開催していますが、例えば男性にも、提案する機会が持てるといいなと思っています。

もしかするとパブリックな意味での「いい女」と「いい男」に大きな違いはないのかもしれません。あなたは「いい男」になるべく、自分磨きをしていますか?

● 河野瑞夏(こうの・みずか)

2022ミス日本グランプリ。東京都生まれ。21歳。国際基督教大学教養学部4年在学中。身長171cm。趣味は映像制作、ダンス、コーヒーを淹れること。特技はダンスと英会話。

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