2022.04.22
いま、40代、50代の「大人の女性」たちが、なぜこんなに魅力的で輝いているのか?
今、芸能界では“奇跡の50代”と呼ばれる美しい女優さんたちが幅広い人気を得てドラマや映画でも大活躍しています。そして街中に目を移しても魅力的な大人の「いい女」と呼べる女性たちがぐんと増えたように思えます。その背景にはどんな理由があるのでしょう?
- CREDIT :
文/長谷川あや 写真協力/週刊女性
若い女性たちがジェンダーレス志向で昔ながらの女性らしさへの関心を失いつつある一方で、40、50代の大人の女性たちはより美しさに磨きをかけ、女性であることを楽しもうとする傾向が強くなっているように感じます。その背景にはどんな要因があるのか──。まずはマーケティングアナリストの原田曜平さん、次にGoziUのリーダーである、ぴろりんさんにお話を伺いました。
“奇跡の50代”は新たな女性像を作り出した新人類世代
「団塊の世代が後期高齢者になり、団塊ジュニア(1971~74年頃生まれた人たち)が50代を迎えようとしています。当時は、年間の出生数が200万人を超えていた、第2次ベビーブーム。私が研究対象としているZ世代(一般には1990年代半ばから2010年くらいまでに生まれた層)は110万人と、その半分程度です。そもそも絶対数が多く、そして、団塊ジュニアよりも、年代の高い世代からみたら、アラフィフでもじゅうぶんに若いわけです(笑)」(原田さん。以下同)
あ~、ありましたね、「新人類」という言葉。栗本慎一郎さんが1980年頃作り出した、当時の常識とは距離を置く若者を指す言葉で、肯定的にも否定的にも使われました。
「10、20年前は、40、50代の女性は、たいていは”お母さん"にカテゴライズされていました。それが今や女子会もしますし、美魔女とも言われています。新たな女性像を作り出した彼女たちが高齢者になると、また、新しい高齢者像が生まれると思います。端的に言うと自分のためにお金を使うようになる高齢者が増えるということです。これまでの高齢者は、自分のために消費をせず、子どもたちに残したいと思う人が多かったのですが、これからの高齢者は自分のためにお金を使うようになると予想されます」
中高年齢からお金を取りたい企業の思惑
「年齢を経ても、美しくあり続けたいという人は確実に増えていますし、そういった考え方は、現在のアラフィフの女性たちの特徴かもしれません。世代が下になるに従って、一生働き続けなければならない人は増えていきます。となると、女性の場合、必然的にメイクも必要になってきます。また、美容の進化といいますか、企業との共犯関係も大きく影響していると思います」
「高齢化社会に突入し、日本の、特に大きな企業は、若い世代よりも、中高齢者のほうから、お金を取ったほうが効率的だと気づいたわけです。お金を持っているし、そもそも人口が違います。その結果、中高齢者向けの商品に、より多くの研究開発費を投じられることになり、中高年齢者向けの商品が充実し、若者層向けの商品が手薄になってしまった。化粧品だけではありません。ビール業界も自動車業界もテレビ業界もすべて高齢化しています。日本の大企業は、単年度の成果を収めるために、未来を捨てたわけです」
ガツガツしていない大人の余裕が若者世代にも好印象
「女性ほどではないかもしれませんが、男性も確実に若く、美しくなっています。Zoomなどで自分の顔をまじまじと見る機会が増えたというのも大きいかもしれません。TikTokでは男性向けのメイクのハウトゥが配信されていたりもします。そして、その男性を変えているのはまさしく女性です。
お父さん世代は、同年代の女性が美しくなっているのを見て、なら自分もと刺激を受けるでしょうし、新人類、バブル世代のママは、美意識が高いので、息子に『化粧水くらいつけなさいよ』と、勧めたりしているかもしれません。実際、女子高生がお父さんのことをイヤだという比率はものすごく下がっているんですよ」
「そもそも今の中年男性は小ぎれいですからね。内面も変わって来ています。娘に、『お前、彼氏いるのか?』とか言って煙たがられるオヤジは、すでにほぼ存在しません。反抗期のない子どもも増えています。80年代、90年代の世界観はなくなりつつあります」
「いいイメージを持っていると思いますよ。経験値に対するリスペクトもあるはずです。平成の時代までは、男性がひとりで家族を食べさせていくという風潮はぎりぎり残っていました。でも、Z世代で、『俺がひとりで食わせていくぞ!』と思っている男性はほとんどいません。彼らは、自分がハッピーでいられる環境を維持できる相手を選択します。男性がマウントを取る時代は終わり、より対等な関係になっていくことでしょう。
なにより彼らの理想は頑張りすぎないこと。高年収を目指すより、ほどよいワークライフバランスで、そこそこ稼ぐといった生活を求めています。のんびりマイペースがリスペクトされる世代なんです。そういえば、今回、美しい50代の例に挙がっている女性たちも、ガツガツしていなくて、少しゆとりを感じる方たちが中心ですね」
「情報環境的には、自分で生きたいように生きられ時代になってきています。もしかしたら、私たちは人間の幸せには近づいてきているのかもしれませんね」
● 原田曜平(はらだ・ようへい)
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー等を経て、現在は、マーケティングアナリストとして活動。2022年4月より芝浦工業大学・教授に就任。その他信州大学・特任教授、玉川大学・非常勤講師なども務める。2003年度JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。2021年には「Z世代」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされるなど、さまざまな流行語を作り出している。『寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生』(角川新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか? 』(光文社新書)、『アフターコロナのニュービジネス大全 新しい生活様式×世界15カ国の先進事例』(ディズカバー21)など著作多数。
私たちは新しい文化になる! アラフィフアイドル「GoziU」の挑戦とは?
最初はおじいちゃんのアイドルを目指していた
ぴろりんさんは、挨拶のあと、開口一番、こうおっしゃいましたが、もちろんです。大人の女性の美しさを分析するにあたり、これほど適任な人はいらっしゃいませんよ。
「音声アプリ、clubHouseで出会い、その雑談から生まれたユニットです。同世代で話しているうちに、若いアイドルは高齢者施設に行かないけれど、私たちならお年寄りに喜んでもらえるかも、なんて話が膨らんでいったんです。メンバーは現在、5人。私が言うのもなんですが、まあまあきれいどころが集まっていると思います。これはアイドルを名乗ってもいいんじゃないかなって(笑)」
デビュー曲を作ってくれたのも、clubHouseで知り合ったミュージシャンなんだそうです。
「初期の頃のclubHouseは、才能に溢れている人が多くて、作ってもらった曲もすごく良くて。ヤバい、これは売れちゃう! と、準備を進めていきました。そもそも私たちは素人集団。せっかくなら完全自主製作で行こうと、宣材写真、ヘアメイクもclubHouseで出会った人たちに、担当してもらっています」
美しくあるための調査、研究、分析が大好き
CDデビューのためのクラウドファンディングも成功し、現在はPV撮影も終え、絶賛編集中。「夢はメンバーを紅白歌合戦に連れていくこと」と語る、ぴろりんさんは、アラフィフの女性の魅力をどんな風に考えているのでしょうか。
「環境の変化はやはり大きいと思います。今から15年くらい前は、アンチエイジングという言葉、ありませんでしたよね? 美白化粧品はあったけれど、年齢に逆らうという意味の化粧品はなかったような気がします(笑)」
……たしかにそうかもしれません。では、ぴろりんさんの若々しさも、アンチエイジング化粧品の賜物⁉
男性も常にアンテナを張って、自分から情報に食いついていってほしい
「でもいつまでも若くあり続ける秘訣は、やりたいことをやって、自分の細胞を動かし続けることだとも思っているんですよね。科学的根拠はないですけど(笑)。
私は20歳の時にはすでに2人子どもがいました。その時は、子育てが自分のやるべきことだったので、自分のやりたいことは、一度、封印しているんです。子どもの将来を考えながら、子育てが終わったあと、自分が何をやりたいかと考えていました。今はGoziUの活動で細胞がみなぎっていることを、日々、実感しています。
さまざまな人生経験を経て、その上に築かれた自分に、ゆるぎない自信を抱いている大人の女性のカッコよさを垣間見た、そんな気がします。
そうきっぱりと言い切るぴろりんさんの目はキラキラと輝いていました。これこそ、アラフィフアイドルのオーラなのかもしれません。
● ぴろりん
GoziUリーダー。担当ブルー。2022年4月末には、「誰も見たことのないミュージックビデオが解禁になります!」。170㎝、53㎏。毎月第2、第4金曜日17〜18時には、渋谷クロスFMのパーソナリティを担当している。「舞台やドラマのちょい役など、無名女優もやっています」。一男二女の母親でもある。「家族のグループLINEで、子どもたちに曲の感想を聞いたらスルーされました(笑)」。なお、2期生の募集も視野にあるとのことで、「私やメンバーのSNSに注目してくださいね!」とのこと。あなたの彼女もメンバー入りのチャンス⁉