2019.07.27
【第10回:人付き合い】
「俺は酒乱です。酔うと何するかわかりません」
怒涛の昭和~平成~令和を生き抜いてきた梅沢富美男さんが考える「男の生き方、身の処し方」とは? 常に一本芯の通った、炎上を恐れぬ本音コメントは世の迷えるオヤジ&コヤジのバイブルですぞ!
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構成/紺野美紀 写真/内田裕介 イラスト/ゴトウイサク

よく芸能人同士で仲良しだとか、親友だとか言ってるヤツがいるけど、俺はみんなウソだと思ってるから(笑)。だって、芸能界なんて席取り競争だよ? 嫉妬が渦巻いてる世界なんだよ(笑)。
ここ何年かで俺はテレビの仕事が増えたけど、俺が出ることによって出られなくなった人がたくさんいるんだから。俺だって知らないうちに、このヤローって思われてるわけだよ。
俺も若い時は長いこと下積みを経験してるし、悔しい思いもいっぱいして、「何くそ、こいつには負けない」って気持ちをもってましたよ。でもその思いを力に変えて芸を磨いてきましたから。それで一生懸命修業して、お芝居も踊りも続けてきて、まあまあ一人前になったかなという自負はあります。
今になればそういうライバルたちに感謝もしてるし、ある意味彼らのおかげで今があるとも言える。そう思えるから今は誰にも嫉妬なんてしないし、他人を蹴落とそうとか、うらやむこともないんです。
これは芸能界に限ったことではないでしょう。会社員だって、ライバルがいっぱいいるなかで出世していくんだから。単なる仲良しこよしではいられないよな。でもみんなそうやって芸を磨いたり仕事ができるようになるんだから。孤独だとか寂しいとか言ってる場合じゃないんです(笑)。

スターになれば色んな人が寄ってくる
でも、俺は冷めてましたね。ちやほやされたって、舞い上がることはなかった。そういう連中は耳障りのいいことしか言わない。そこで現実を見失って天狗になっちゃうと大変なことになるっていうのはわかってたからね。常に自分自身が置かれている立場を客観的に見るっていうのは大事なんです。
今でも、ゴルフとかいっぱい誘われますよ。でも、全部断ってます。だって、俺はゴルフが大好きだから、純粋に楽しみたいの。でも彼らは“今、売れてる梅沢富美男”とゴルフがしたいだけ。芸能人じゃなくたって、肩書きが目当てで寄ってくる人っていっぱいいるでしょ。そんな相手といて楽しいかって話です。
ゴルフって性格が出るからね。知らない人となんてプレーしたくないの。気を使うことなんて絶対にしたくない。それにゴルフ代を誰が払うとか、割り勘とかも面倒。全部まとめて俺が払いたいんだよ(笑)。だからゴルフはもっぱらうちの劇団員の旦那とふたりで行ってます。
お酒の誘いも多い。それも全部断ります(笑)。ただ断るだけじゃ失礼だから、酒乱ってことにしてるんだけどね(笑)。「酒癖悪いんで、酔うと何するか分かりません」って言えば、それ以上は誘われません。
相手にイヤな思いをさせないウマい断り方っていうのは、自分を下げることなんです。長くやってるとそういうこともうまくなる。それが大人ってもんです。

● 梅沢富美男(うめざわ・とみお)
1950年11月9日、福島県福島市生まれ。血液型B型。俳優・歌手・タレント。剣劇一座「梅沢劇団」の創設者で大衆演劇のスターだった梅沢清と娘歌舞伎出身の竹沢龍千代の5男として生まれ、1歳5か月で初舞台。15歳で本格的に役者の道へ。1976年、女形に転向し「下町の玉三郎」として大ブレイク。1982年には『夢芝居』で歌手デビューし50万枚を超えるヒットに。現在は「梅沢劇団」三代目座長として年間180日舞台に立つ傍ら、テレビにも数多く出演。バラエティや情報番組での歯に衣着せぬ直言コメントで人気を得ている。