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2020.01.21

【vol.01】お座敷遊び/前編

芸者遊びって何をどうすりゃいいの? モテる「大人の料亭」入門

いい大人になってお付き合いの幅も広がると、意外と和の素養が試される機会が多くなるものです。モテる男には和のたしなみも大切だと、最近ひしひし感じることが多いという小誌・石井編集長(46歳)が、最高峰の和文化体験を提供する「和塾」田中代表のもと、モテる旦那を目指す連載が始まりました。

CREDIT :

写真/トヨダリョウ 文/井上真規子 協力/東京神楽坂組合、幸本

さて、いよいよ始まりました。小誌編集長・石井洋(46歳)が体を張って、基礎から和のたしなみを学ぶ連載「モテる旦那養成講座」。

なぜ、いま、和のたしなみなのでしょう? 社会において相応の立場を手に入れたオヤジさんならば、すでにおわかりかと思います。ワインの知識やゴルフの腕前も大事ですが、グローバルな見識が問われる今だからこそ、自国の文化への知識と経験は立派な大人の必須アイテム。インターナショナルな時代だからこそ、足元にある日本の芸術文化への思いが問われているのです。

気づけば「料亭で集まろう」とか、「お茶席で一服しよう」とか、そういうお誘いを受けるようになります。戸惑っていると「作法とか気にしなくていいから気軽においでよ」と言われますよね。もちろんそれでよいのですが、いざ行ってみると、勉強しておくべきだった〜、と後悔するものですし、知っておいた方がいいことがたくさんあります。
その場所には、仲間だけでなく、他のお客さんやお店の人はもちろん、外国の人が同席する機会だってあるかもしれません。そんな大事なファーストインプレッションで、作法の基本だけでも知っていたら、そこはかといない知性や教養を醸し出せますし、一流のオヤジという印象をもってもらうことができます。そしてなにより自分自身が何倍もその場を楽しめるようになるのです。
▲神楽坂の老舗料亭「幸本」さんは神楽坂通りを入った、美しい石畳の小径に面した風情のある店構え。
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神楽坂を代表する名料亭「幸本」さんにお邪魔した

ということで、かねてから和のたしなみを学びたい!と熱望していた石井編集長が、本物の日本文化体験を提供する「和塾」の田中代表に様々な知識を伝授していただく連載をスタート。

初回は誘われる機会が多く、様々な和の作法が必要になる料亭へお邪魔します。伺ったのは東京・神楽坂の老舗料亭「幸本(ゆきもと)」さん。女将の寺田さんにもご指導いただきながら、あるあるミステイクやおさえるべきポイントをたっぷりご紹介していきます。

そうこうしているうちに、さっそく石井編集長と田中さんが幸本さんに到着しました。編集長! もう、ここからチェックは始まっていますよ。

最もルールが多い来店シーンに要注意!

石井「田中さん、今日はよろしくお願いします。着物、カッコいいっすね!」

田中「どうも。編集長、今からお邪魔するのは幸本さんという神楽坂でも1、2を争う老舗料亭だよ」

石井「いや~楽しみですね。芸者さんも呼んでいただいて(ムフフ)。店の前の小路も半端なく趣がありますね。さっそくお店へ入りましょう。ちょっと遅れちゃってますしね」
田中「いや、時間は少し過ぎるぐらいが実はちょうど良かったりするんだよ。ほら、ここ打ち水がしてあるでしょ? これはお店側がおもてなしに、指定時間の5~10分前くらいに準備してくれることなんだよ。早く着きすぎると打ち水が間に合わないし、お部屋のしつらえなど諸々の準備や対応が間に合わなくなっちゃう。だから僕は約束の時間の3分前~2分後くらいに行くようにしてるよ」

石井「ええ~マジですか! それは知らなかった。早く行けばいいってもんじゃないんですね」

田中「それから、この入り口のスペースは、お客さん同士がバッティングしないためにあるもの。もし、入る時に他のお客さんが中にいたら、2枚目の扉は開けないでこのスペースで待つのがルールだからね。じゃ、さっそく入りましょう」
女将「ようこそ、田中さん、ご無沙汰しております」

田中「女将さん、お久しぶり。今日はLEONの石井編集長と一緒だよ」
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石井「今日はよろしくお願いします。(え、田中さん靴脱ぎっぱなし? やっぱ揃えた方がいいよな、揃えとこっ。靴、磨いてきてよかった~)」

女将「編集長、お気遣いなく。靴はそのままで大丈夫ですよ」

石井「え! そうなんですか? 確か、茶席とかでは入る時に揃えますよね?」

女将「料亭では、何も考えずに靴を脱いでそのまま入っていただければ。脱いだ靴の形から船が港に入ってくる“入り船”が連想されて、縁起がいいと言われているんですよ」

石井「なるほど。そういう意味を聞くと面白いですね」

【ポイント】

■来店は、集合時間の3分前~2分後がベスト!
■先客がいたら本扉に入らず手前のスペースで待つこと
■靴は脱ぎっぱなしで!

来店したら、お店のおもてなしを堪能しよう

女将「では、お部屋へご案内いたします。田中さんの和装は相変わらず立派ですが、編集長の装いもさすが素敵でいらっしゃいますね」

石井「ありがとうございます。今日はしっかりキメてきました! ちなみにNGな服装とかってあるんですか?」

田中「靴や靴下は、清潔感が大事だよね。実は結構見られてる」

女将「そうですね、お部屋はどこも畳なので、裸足やストッキングはあまり見た目にも美しくないかと。夏場、サンダルでいらした女性のお客様は短い靴下を持参される方もいますよ。和装なら足袋、洋装なら靴下がベストです。また男性でハーフパンツの方もたまにいらっしゃいますが、肌が見えないロング丈がいいですね」
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石井「そうですよね。僕もロングソックスでしっかりスネを隠してきました」

女将「はい、間違いがございません。では、お部屋に入る前に上着をお預かりしますね」
石井「おお、床の間に素敵な飾り物がありますね!」

田中「そう。料亭では毎回女将さんがお客さんのシチュエーションに合った掛物や季節のお花を用意してくれているんだよ。だから、入室したらまず床の間の前に座って眺めて楽しむといいね。女将さんにどういう掛け軸なのか由来を聞いてもいい」
女将「はい、今日は雀のお軸と寒椿を飾っています。たくさんの雀は繁栄を意味します。雀は何匹いると思います?」

石井「1、2、3、4、5、6、7……ん?(笑)」

女将「ホホホ。数えられないように描かれているんですよ」

石井「へ~、無限の繁栄を意味しているんですね。会の目的は、いつ伝えたらいいですか?」

女将「いつもはご予約を頂く時に、どういうお集まりなのか伺うようにしています。婚礼の顔合わせ、故人を偲ぶ会、事業の決起会など、目的によって飾りはすべて変えています。季節感も大切にしていますね」

石井「なるほど……一体、掛け軸や花瓶はどれだけお持ちなんですか?」

女将「もう数え切れないほど(笑)」

田中「飾りだけじゃなく、料理の器も合わせて出てくるから、裏の倉庫にはたくさんストックがあるはずだよ。料亭は、こういう目に見えない部分にものすごくお金がかかっているから、そこも見どころのひとつなんだよね」

石井「ほ~。そういうことを知ると、女将さんやお店のおもてなしの気持ちが感じられて、よりありがたく拝見しちゃいますね」

【ポイント】

■ 招く人は、予約時に詳しく会の内容を伝えること
■ 裸足は原則NG。清潔なロングソックスとロングパンツが鉄則
■ お部屋に入ったら、床の間のしつらえ(掛け軸、生け花など)を堪能する

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まずはリラックスして着席!

田中「とりあえず座りましょうか。石井くんは招かれた側だから上座へどうぞ」

石井「ありがとうございます。正座の方がいいですか?」

女将「いえいえ、あぐらでも大丈夫でございますよ」

石井「じゃあ、楽にさせてもらって。芸者さんたちとはいつ会えるんですか?(ワクワク)」
▲田中康嗣さん。
田中「よきところで(笑)。予約時に芸者の入るタイミングや人数を聞かれることが多いよ。お任せにしたら、まずはお酒を持って来てくれるかな。仕事相手と来ていて、先に大事な話をしたければ予約や入店の時に伝えればOK」

石井「それはすごい(笑)」

田中「芸者衆の踊りなど、余興のありなしも予約時に注文できるよ。わからなければお任せでいいと思いますけどね」

と、ここで障子が開いて、続々と芸者さん、半玉さんが入室。
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女将「右から、芸者の千佳さんと地方の櫻子さん、芸者の㐂よ乃さん、半玉のいち菜さんです」

一同「こんばんは~」

石井「おお、これは……! 綺麗どころが勢ぞろい! なんて贅沢っ!……今日は来てよかった~(笑)」
田中「石井くん、いい顔になってきたね~!」

千佳「みんな売れっ子さんだから、このメンバー揃えるのは大変なんですよ~」

田中「大好きな芸者さんがいたら、次から名指ししていいんだよ」

㐂よ乃「ご指名いただけたら、うれしいです」

【ポイント】

■芸者を呼ぶ場合は、予約時に希望を伝えること。入るタイミングや人数、芸者の雰囲気までリクエスト可能
■初めての場合は、料亭にお任せが良い
■お気に入りの芸者、半玉を指名することもできる

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まずは乾杯しながら、芸者さんたちと馴染む

石井「いや~なんだか気分良くなってきちゃったな~! 半玉さんっていうのは、関東の言葉ですか?」

田中「そうそう。20歳未満で半人前の年少芸者の呼び方だよ。よく聞く舞妓さんって呼びかたは、上方特有。ちなみに芸者は関東で、上方は芸妓と呼ぶんだよ」
千佳「いち菜さんは、今年の3月デビューで、今18歳なんですよ」

㐂よ乃「令和に入って、東京で一番初めに半玉さんとしてお披露目したんですよね。5月の初めの大安に」

石井「すごいね~。LEONと同じ歳だ! これから、お願いできるよう頑張ります!」

千佳「あらま~、それはご縁がありますね。彼女の育っていく段階を見てあげてください」

いち菜「よろしくお願いします」

千佳「で、こちらは三味線を頑張っている地方の櫻子さんと芸者の㐂よ乃さんです」

櫻子・㐂よ乃「よろしくお願いします」

田中「あとコレ、芸者さんたちからもらう名刺代わりの千社札。最近はシールが多いんだね」
千佳「はい、白扇に貼って集めていらっしゃるお客様や手帳の余白に貼って、今年はこの娘に会ったと覚えるお客様もいますよ」

櫻子「京都の舞妓さんの千社札は、お金が舞い込むにかけて縁起がいいから持ち歩く人もいます」

㐂よ乃「芸妓は元舞妓だから、もっと舞い込むっていう(笑)」

石井「ダジャレですね〜」

一同 笑。
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櫻子「じゃあ編集長、お酒おつぎしますね」

石井「は、すみません。いただきます!」

田中「基本、お酌は芸者さんにやってもらうもので、手酌はNGなんだよ。じゃ、乾杯!」
石井「お酒は皆さんやっぱり日本酒を飲まれるものなんですかね?」

櫻子「最初の乾杯とかはビールの方が多いですよね」

千佳「そうですね、ワインや焼酎、ウイスキーもお出しできますよ。幸本は冷酒の銘柄もたくさん置いています」

㐂よ乃「最近はハイボールとか焼酎を飲まれる方もいますけど、お酌できる方が芸者としてはコミュニケーションができて、うれしいですね」

第2回に続く。

【ポイント】

■乾杯のお酒は、芸者衆にお酌してもらえるものが良い
■芸者衆は千社札という名刺を渡してくれる

田中康嗣

「和塾」代表理事。大手広告代理店のコピーライターとして、数々の広告やブランディングに携わった後、和の魅力に目覚め、2004年にNPO法人「和塾」を設立。日本の伝統文化や芸術の発展的継承に寄与する様々な事業を行う。

豊穣で洗練された日本文化の中から、選りすぐりの最高峰の和文化体験を提供するのが和塾です。人間国宝など最高峰の講師陣を迎えた多様なお稽古を開催、また京都での国宝見学や四国での歌舞伎観劇などの塾生ツアー等、様々な催事を会員限定で実施しています。和塾でのブランド体験は、いかなるジャンルであれ、その位置づけは、常に「正統・本流・本格・本物」であり、そのレベルは、「高級で特別で一流」の存在。常に貴重で他に類のない得難い体験を提供します。

和塾HP
URL/http://www.wajuku.jp/
最高峰の和文化体験のご案内・お申込みはこちら
URL/http://www.wajuku.jp/index.php/archives/11089
和塾が取り組む支援事業はこちら
URL/http://www.wajuku.jp/index.php/archives/11116

幸本(ゆきもと)

創業七十年の歴史ある料亭。神楽坂通りから一歩路地を入ると、薄明かりに照らされた石畳が広がり、由緒ある古き良き瞬間に出会える。最大で40名まで利用できる席や10名前後の個室など特徴ある大小8部屋の数寄屋造りの部屋を用意。はしり、旬、なごりの料理を最高のタイミングで堪能できる安らぎのひと時を提供してくれる。

住所/東京都新宿区神楽坂4-7
営業時間/18:00~23:00
定休日/日・祝日 
URL/https://www.kagurazakayukimoto.jp/
予約・お問い合わせ/☎03-3260-1576

お相手頂いた芸者さん

右から
千佳さん
東京神楽坂組合所属。四ツ谷出身。芸者歴20年以上のベテラン。神楽坂に「バーchika」など数店のお店を経営するやり手。「芸者を遊ばせれてくれるお客様が最近はいないから寂しいです。皆さまのご来店お待ちしてます」
櫻子さん
東京神楽坂組合所属。芸者歴9年、地方歴7年。三味線の長唄と小唄、上方唄を得意とする。「神楽坂は黒塀、石畳の趣ある街で、人のアットホームさも魅力です。芸者衆は仲がいいねってお客さんにもよく言われますよ。肩肘張らずにいらしてくださいね」
㐂よ乃さん
東京神楽坂組合所属。東京出身。芸者歴6年目。京都で舞妓をしたのち、神楽坂で芸者に。好きなお酒は、日本酒「弥右衛門酒」。「神楽坂は本当にいい街です。若い世代の方にもぜひ、いらしていただきたいですね。お待ちしていますよ」
いち菜さん 
東京神楽坂組合所属。千葉出身。令和1年5月に半玉としてお披露目。好きな動物は猫。「置屋のお姐さんである㐂よ乃姐さんには、とても感謝しています。お稽古が辛くて泣いていた時も相談に乗ってくださいってありがたかったです。みなさま、応援よろしくお願いします」

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