2022.11.19
くりぃむしちゅー有田の「話術」もチュートリアル福田の「聞く力」もスゴかった!
「うまく話せない人は、絶対に黙らないこと。相槌を打って、話を聞いているうちに、自分の喋りの型を見つけられる」と有田さんが言えば、「まずは相手の話を聞く。映画について喋りたいときは、おすすめの映画ある?と質問して、答えを聞いてから、自分がしたい映画の話をする」と福田さん。ふたりの話にはコミュニケーションの極意がいっぱい!
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文/肥沼和之(フリーライター・ジャーナリスト) 撮影/尾形文繁
有田さんが選手や団体の魅力を語れば、自然と興味を持ち、会場へ足を運びたくなっている。そんな有田さんのトークを、聞き手として引き立てる福田さん。ふたりは話をするとき、聞くときにそれぞれどんなことを意識しているのか。

聞き手の知識や興味を見ながら話す
有田 ジャンボ鶴田さんは、相手選手の受けの技量によって、バックドロップの角度を変えていました。三沢光晴さんも同じようにおっしゃっていました。おこがましいですが僕もそのように、聞き手のプロレスへの知識や興味を見ながら話しています。(YouTubeを)一緒にやっている福田は、だいぶプロレスに興味を持っているので、初心者からしたらよくわからないようなことも話せるんです。
ただ、観る方の全員がプロレス好きな人ばかりではないですよね。僕は中学生のころから、プロレスに興味がない友達に、「一緒にプロレスを観に行ってほしい」と思いながら、その魅力を話していました。でも、「興味がないから」と惨敗することが多かった。なので、相手がアイドル好きであれば、プロレスをアイドルに例えて伝えるというふうに、手を変え品を変え、どうすれば刺さるか意識しながら話していたので、いつの間にか身に付いていたのかもしれないですね。
── 確かに、どれだけ熱く魅力を語っても、そもそもプロレスに興味のない相手だったら、流されてしまいそうです。
有田 YouTubeチャンネルの前身の番組で、初回のゲストがピースの綾部(祐二)だったんです。綾部は絶対にプロレスが好きじゃないのに、先輩・後輩を大事にするから、きっと興味がなくても僕の話を聞くんですよね。そういう気を遣わせたくないし、面白くないのに面白いとは言ってほしくない。
どういう話をすればいいのかと考えて、「プロレスの歴史をイチから話そう」となったんです。ひとつの事件や試合だけを解説しても、絶対プロレスを好きにならないので、授業みたいに、これだけ聞いておけばプロレスの歴史がわかるから、と。そういう経験にも基づいていると思います。
お笑いもそうですけど、面白い話をしようと思っても、相手が聞いてくれないときもあるんです。これからオチなのに、携帯いじり始めたりして(笑)。引きつけるためにはどういうテンションでしゃべらないといけないかな、とか考えますね。
喋りが上手い人はみんな型を持っている

芸能人に限らず、スタッフでも一般人でも、「この人の話は面白い」「その技術を欲しい」と思う人はいっぱいいます。でも、自分が好きだからと言って、その人の喋りを真似しようとするのではなく、自分に合った型を見つけることです。
これは企業秘密ですが、喋りが上手い人はみんな型を持っていて、お笑いの面白さもそこにあります。型を持っている芸能人たちが、ネタをつくらずに、手ぶらで集まってトークをしても、絶対に面白くなる。各自がスタイルを持っていて、プロレスでいうとバトルロイヤルになって盛り上がるんですね。
── うまい人の喋りを参考にするというより、自分の型を見つけるほうが大事だと。その型を見つけるコツがあれば教えてください。
有田 飲み会でも、やっぱりポジションがあるんです。僕みたいにペラペラ喋る人間がいれば、ツッコむ人もいます。うまく話せない、ノリについていけないという人は、絶対に黙らないこと。会話に参加しながら、「なるほど!」「へえ!」と相槌を打って、話を聞いていればいいんです。そうすれば話すことがなくてもいいし、(面白い話をしろと)無茶振りされることもない。喋りの型はたくさんあるので、そのうち自分に当てはまるものが見つけられると思います。
そもそもうまい司会者は、自分では喋らないですからね。人に話を振って引き出して、なるほどと相槌を打つ。ペラペラ喋れるから話がうまい、ということでは決してないんですね。
それこそ福田とは、『しゃべくり007』で共演して15年くらいになります。(同番組の出演者でネプチューンの)堀内健と原田泰造と、収録が終わった後によく飲みに行っていたのですが、あるとき「お前も来いよ」と福田を誘ったら、とにかく会話がスムーズになったんです。疲れてだらっとしていても、福田がどこかから話題を持ってきて、結局4~5時間も盛り上がるみたいな(笑)。
── プロレスの世界ではマイクアピールがありますが、有田さんから見てマイクの上手なレスラーと、そうでないレスラーの違いはなんでしょう?
有田 一時期、新日本プロレスのバックステージのインタビューは、長州(力)さんの影響で、みんな長州さんみたいな話し方になっていたんですよ。あれは長州さんだから響くわけで、無理にマネしても芝居っぽくなったり、言わされている雰囲気が出てしまったりするんです。
マイクアピールで盛り上げないといけない、という義務感もレスラーたちにあるのかもしれませんが、例えば「挑戦を受けてほしい」と言いたいとき、「おい、俺の挑戦を受けろ、コラ!」でなくても、「挑戦を受けてください」でもいいわけですよ。
長州さんなんて、気持ちだけで喋るから、何て言っているのかわからなくても、すごく心に残るんです。三沢(光晴)さんは、「お前らの好きなようにさせないからな」と一言言うだけで、名言になる。マイクアピールが刺さるレスラーは、その人の言葉や話し方で喋っているんですね。先ほどの喋りの型と同じだと思います。
「いかに有田さんが気持ちよく喋れるか」を意識
福田 基本的には、いかに有田さんが気持ちよく喋れるようにするか、を意識しています。僕があまり好きでないのは、質問があって答える、質問があって答える……と、ぶつぶつ切れるやり取りが続くもので、できるだけそうならないように、相槌などを挟んでいますね。
もちろん時間の制限などもあるので、仕方ない場合もあるとは思いますが、トークが派生して広がっていったほうが、有田さんにとっても心地よいリズムかなと。
あと、補足できる情報がありそうなときは、有田さんの邪魔にならないように会話に挟みますが、「自分も知っています」というアピールではなく、あくまで視聴者がわかりやすいようにです。繰り返しになりますが、このチャンネルは有田さんが喋る番組なのですから。
── 飲み会の席でも福田さんがいるだけで会話がスムーズになると伺いましたが、日ごろから聞くことに関して何か心がけているのでしょうか?

僕も芸人ですが、そういうのは苦手で。もう何も話すことがない、となってしまうじゃないですか。だから、メイクさんの何気ない話でも普通に聞きます。話す側からしたら、この人は聞いてくれるんやと、ハードルが低いのかもしれないですね。
聞く人がいないと現場がうまく回らない
福田 バラエティーなどで芸人ばかりが出演すると、みんながボケたりツッコんだりしてしまうんです。ゲストが芸人でも何でもなくて、普通の話をし始めたときに、聞く人がいないと現場がうまく回らないと感じたことがあって。ゲストもその場にいづらいし、オチのある話をしないといけない、となってしまうんです。
大きなエピソードでなくても、僕のような聞き手が入って、驚いたり感心したり、疑問を持ったりとリアクションすることで、ゲストはのびのびと番組収録ができる。なので、こういうポジションの人は必要だな、と思ったことはありました。
── 人の話を聞くのがあまり得意でない、と言われがちな人に、何かアドバイスがあれば教えてください。
福田 誰でも自分の話をしたいですよね。でも、まずは相手の話を聞く。例えば、最近見た映画について喋りたいときは、「最近のおすすめの映画ある?」と質問して、答えを聞いてから、「僕はこの前トップガンを観て、めちゃくちゃ面白かったんやけど」と入るのがいいと思います。
あとは相手が話しているとき、「聞いています」「興味があります」という姿勢をアピールするのは大事かなと。それがないと、喋る気が失せてしまいますから。
── 自分にとってどうでもいい話をされる、という状況はありがちかと思いますが、福田さんはどのように興味がある姿勢を保っていますか?
福田 基本的には相手の方の話をすべて肯定します。ロケに行って、一般の方と話すときも、「よかったですね!」「すごいですね!」と、良いほうの反応を示すように心がけています。そうしていれば、相手の方も嫌な気持ちがしないですし、笑顔でいれば自然と楽しい気持ちになるように、コミュニケーションも自然と円滑になると思いますね。
この記事の前編:くりぃむ有田哲平がYouTubeで見つけた「新境地」