2023.02.11
【vol.14】歌舞伎通の旦那になる(1)
モテる旦那にふさわしい洒脱な歌舞伎の愉しみ方とは?
いい大人になってお付き合いの幅も広がると、意外と和の素養が試される機会が多くなるものです。モテる男には和のたしなみも大切だと、最近ひしひし感じることが多いという小誌・石井編集長(48歳)が、最高峰の和文化体験を提供する「和塾」田中康嗣代表のもと、モテる旦那を目指す連載です。
- CREDIT :
文/田中康嗣 写真/荒川幸祐 取材協力/ダイナースクラブ(運営会社:三井住友トラストクラブ)
第14回のテーマは「歌舞伎」。昨年は十三代目市川團十郎白猿の襲名披露など歌舞伎界には大きな話題がありましたが、多くのオヤジさんにとっては、いささかか手の出しにくいテーマでもあるかと。とはいえ、世に歌舞伎好きの女史は数多く、ミュージカルに誘うよりは歌舞伎見物にご一緒する方が彼女らの引きが良いことも事実。そこで、今回はその「歌舞伎」の観方、愉しみ方を学びます。と言っても「旦那」のそれはひと味違うのです。心得てご一読を。
歌舞伎発祥の地、京都で12月に歌舞伎見物すべき理由とは?
と、いうことで、石井編集長と指南役、和塾の田中代表、師走の朝の劇場前で落ち合いました。
田中 出雲阿国(いずものおくに)による四条河原での「かぶき踊り」が今につづく歌舞伎の始まり、と言われているからね。劇場の川端通り側には「阿国歌舞伎(おくにかぶき)発祥の地」の石碑が建っています。
石井 阿国は出雲の巫女でもあり、遊女的な存在でもあったと。
田中 そう。いわゆる阿国歌舞伎は、だからとてもエロティックな芸能でもあった。今の歌舞伎にも、どこか妖艶で淫靡な魅力が見え隠れしているものでね。
石井 今日の舞台にも、そのエロティシズムはありますかね?
田中 それは観てのお楽しみ。
石井 ところで、この劇場正面の看板、壮観ですね。初めて見ましたが。
石井 なるほど、舞台を勤める歌舞伎役者が顔を見せる、だから顔見世ということですね。
田中 なので、師走の南座での顔見世興行では、役者名の書かれた看板が劇場正面に掲げられる。勘亭流と言われる独特の書体で書かれた役者の名は、太く大きな字でマス目一杯に右肩上がり。客席が埋まり木戸銭売り上げも右肩上がり、景気よくいきましょう、ということだね。
石井 江戸時代の歌舞伎興行、ビッグビジネスですものね。
田中 一日千両の銭が動くと言われていた。同時代のエンタテインメント・ビジネスとしては世界最大じゃないかな。ともあれ、この「まねき」が上がると京の街はいよいよ年の瀬となります。
田中 その12月の顔見世興行には、知る人ぞ知るさらに特別なことが。
石井 エクスクルーシブ! LEONの好きなヤツです(笑)。なんですか?
田中 「花街総見」というのがありましてね。南座の顔見世興行の中で5日間だけ。京都の花柳界の綺麗どころが打ち揃って歌舞伎見物にやってくる日があるんです。京都には、祇園・先斗町・宮川町・上七軒・祇園東の五花街がありますから、花街毎に舞台を見物に来る。京の綺麗どころが桟敷席に居並ぶわけ。絢爛豪華。なので、この日の切符を入手するのはちょっと骨が折れます。
田中 はい。旦那養成講座ですから。祇園町の総見などでは、劇場内の桟敷席が芸舞妓で埋まります。舞台の華と客席の華、綺麗が重なって、一年で一番華やかな芝居見物になる。元々梨園つまり歌舞伎の世界と花柳界はとても絆が深くて、互いに芸を生業として高め合う存在。イマドキの舞妓ちゃんたちもかなり頻繁に舞台を観て舞や踊りの感覚を磨いています。
石井 同じく芸に向き合っている者同士ですものね。
石井 なるほど、かなり歌舞伎が好きな女性がお相手でも、花街総見の日の顔見世興行ならサプライズを演出できそう。よく見ると舞妓ちゃんの簪(かんざし)、役者の名前が書いてあるような……。
田中 流石の観察眼。あれは「まねきの簪(かんざし)」といって、これまた京都の花柳界の師走の風物詩だね。12月にだけ、あの簪を見ることが出来ます。舞妓たちは最初無地の札の簪をつけて、贔屓の役者の楽屋を訪ねる。すると役者は自分の名前をそこに書いてあげるわけ。黒文字は男役、赤文字は女方の役者です。赤黒ふたつがお決まりです。歌舞伎鑑賞後にお茶屋に上がった時には、舞妓ちゃんたちの簪に書かれた役者名を少しいじってあげることも忘れずにね。旦那ですから。
石井 ほぉ、勉強になります。さてでは、いよいよ芝居小屋の中へと参りましょう。
400年を越える歴史を積み重ねた歌舞伎の殿堂は独特の雰囲気
石井 400年超えの歴史ですか!
田中 どうです、一歩足を踏み入れると、普段接することのない異世界が広がっているでしょう。このワクワク&ドキドキな感じは、コンサートホールなどにはない空気感。良き女性と出かける意味がそこにもある。
石井 確かに。独特ですね、この雰囲気。
石井 歌舞伎発祥の地にある日本最古とも言い得る劇場を借り切ってイベントですか。それは面白い。考えます!
田中 話、つなぎますよ(笑)。
田中 まずは客席の選び方かな。歌舞伎好きの方々は「とちりの真ん中」で観たい、などとおっしゃいます。
石井 と・ち・り?
田中 7列目から9列目の中央寄りが良い、と。最前列から「いろは……」で勘定すると7列目が「と」にあたり、8列目が「ち」、9列目が「り」になる。なので「とちり」の席を所望されることが多いのです。
石井 その辺りの席が一番見やすい、ということですね。
田中 あまり前方の席だと、役者は良く見えるけど、舞台を見上げるようなことになり首が痛くなる。舞台の全景を観たくても席が前過ぎると厳しい。10列以降になると、全景は見えるけど、役者の表情や息づかいがつかみにくい。ということで、とちりの席が最良だということになります。
田中 そういうこと。しかし、それは、見巧者と言われるような歌舞伎ファンの客席なわけで、一枚上手のモテ旦那となるとちょっと違う。
石井 そっちが聴きたいです(笑)!
桟敷席で悠然とスポットライトを浴びるオヤジになれるか!?
石井 それ一択の桟敷席って……。
石井 至れり尽くせりですね(笑)。
田中 ほかの客席より一段高いところにあるから見晴らしも抜群。ただし、席が高いということは、視線を集めます。特に花道側の桟敷席は、役者と同じ高さで真後ろに座っていることになるので、しばしばスポットライトを浴びることになる。
田中 そう。優越感はことのほか、ですぞ。これを恥ずかしいなんて思うようでは旦那修行が足りません。桟敷席に陣取って、うとうと居眠りするような御大尽を目指したい。
石井 桟敷席で寝落ちするオヤジか。いいですねぇ(笑)。ただ、誰と行くか、よく考えないとアブナイ気がします。
田中 ほかの席から丸見えだからね。微妙な相方の場合は、花道から遠いサイドの桟敷で、少し後ろの席を推奨しておきます。何かあっても自己責任で。
石井 とはいえ、ひとクラス上の男なら歌舞伎は桟敷席で、というのは分かりますね。ヨーロッパのオペラ座でいえばボックス席が近いのかな。かつては上流の限られた人だけが座れた特別席。
石井 桟敷席は容易にゲットできるものですか?
田中 特別な公演でない限りそれほど入手困難ではないかな。場合によっては、一等席は売り切れでも桟敷は空いていることだってあります。劇場の窓口やインターネットでも購入できますから。でもね、この観劇切符の手配にも旦那なりの仕方があってね。
石井 ワンランク上のチケット手配ですね。知りたいです。
田中 役者の番頭(後援会)から切符を買う、というのがそれ。歌舞伎俳優にはマネージャー役の番頭がついているもので、そのルートから切符を手に入れる方法を知っているなら一人前だ。ちょっと上級篇ですが、デキる男でありたいものです。劇場のロビーなどには役者ごとに受付卓のようなものが用意されていて、番頭さんはそこにいます。紹介制のお茶屋や料亭に出入りするのと似ているルート確保のアクションですが、モテる旦那を目指すなら努力して欲しいね。
田中 承知。
石井 で、上級オヤジの歌舞伎マナー、他には何が?
田中 あとは、幕間の食事のことかな。歌舞伎は上演時間が長めなので、みなさん休憩時間に食事を取る。場内でも弁当が買えたり、料理屋レストランが併設されていたりしますが、モテる旦那としては、ここも少しこだわりたい。京都の良い料理屋なら折り詰めをつくってくれるので、名店の特製弁当などを事前に手配しておきたいね。
石井 それは女子受けしそう。
田中 それと、これは今回の後半で詳しく説明しますが、贔屓の役者さんの楽屋に顔を出す、なんてことがサラッとこなせるようになれば、本当の上級オヤジだね。もっとも今はコロナで出演者以外は楽屋に入れないけど。
石井 頑張り甲斐がありそう。ひとクラス上の歌舞伎遊び、いつぞやは!
田中 やってみるべし。
● 田中康嗣(たなか・こうじ)
「和塾」代表理事。大手広告代理店のコピーライターとして、数々の広告やブランディングに携わった後、和の魅力に目覚め、2004年にNPO法人「和塾」を設立。日本の伝統文化や芸術の発展的継承に寄与する様々な事業を行う。
和塾
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