2023.02.04
四角いガムテープ!? 誰でも良いアイデアを思いつく方法とは?
仕事の場面で言われがちな「なにか良いアイデアだしてよ」。必死で考えたにもかかわらず「それ、ありがちだよね」と返されてしまったこと、ありませんか? そこで、誰でも良いアイデアを思いつく「ちょっと変える発想法」です!
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文/いしかわかずや(アイデアクリエイター)
新商品の企画が社内で募集され、何日もかけて必死で考えたにもかかわらず、「このアイデア、ありがちだよね」「たしかに便利だけど、驚きが少ないなあ」などと言われてしまった経験はないでしょうか。いまは「便利なだけ」のアイデアでは生き残ることが難しくなり、便利なうえに、大きな「驚き」や「発見」を与えるアイデアが求められています。求められるアイデアのハードルは高くなり、評価されるアイデアを生み出すことが難しい時代になりました。
しかし、いしかわさんはこう言います。「いいアイデアを生み出すのに、センスも努力も必要ない」、と。本稿は『「ありそうでなかったアイデア」のつくりかた』の著者、いしかわ氏が実践する、評価されるアイデアを生むシンプルな発想法について紹介します。
転がる問題も解決「四角いガムテープ」
「ガムテープの形を変えるだけで、なにかよくなることがあるのではないか?」。こう思ったことがきっかけで生まれたのが、「四角いガムテープ」のアイデアです。ガムテープはみんなが使うアイテムなので、使いづらい課題を解決すれば、みんなに「共感」と「驚き」を与えられるのではないかと考えました。
まさにこの「四角いガムテープ」は、それを達成できたアイデアだと思います。形を「丸」から「四角」に変えただけで、「転がってしまう問題」を解消し、「均等な長さで切れる」「陳列しやすい」といった付加価値も生まれました。
こういった考え方を、私は「ちょっと変える」発想法と呼んでいます。日常を便利にしたり、課題を解決したりするアイデアは、発明といったものではなく、意外にも「ちょっとの工夫」で生まれていることが多かったりします。
人間が五感で感じる「形」「色」「香り」「素材」などを少し変えることで、「課題を解決する」、あるいは「特徴をさらに伸ばす」。これが、ちょっと変える発想法です。
「ちょっと変える」発想法で生まれるアイデアの最大の特徴は、「わかりやすさ」です。
たとえば「四角いガムテープ」なら、「ふつうは丸いガムテープが、四角い」という違いに、誰もが一瞬で気がつきます。また、そこから「そうか、四角いから転がらないのか!」と、アイデアの意図やメリットもスムーズに理解してもらえます。
このようにワンビジュアルでメリットが伝わるため、見た人の興味を瞬時に惹ける強みがあります。「変化と、それによって生まれた価値」に気がつくまでのスピードが速いので、競合商品が多い市場などではとても強いアイデアになります。
見た目のインパクトがあり、説明がなくても伝播しやすいため、SNSで話題になりやすいのも特徴です。ほかにも、「ちょっと変える発想法」には以下のようなメリットもあります。
・「実現性の高いアイデア」が生まれやすい
・「短時間」でアイデアが生まれやすい
・「小さな工夫で大きな価値を生むアイデア」が生まれやすい
・「期待」を超えて「やられた!」と思ってもらえる
「ちょっと変える」発想では、「どの部分を変えたのか」によって生まれるアイデアもまったく異なってきます。たとえば「えんぴつ」のアイデアを考える際に、「形を変えたアイデアなのか?」「色を変えたアイデアなのか?」「素材を変えたアイデアなのか?」によって、同じ「えんぴつ」という対象でもまったく違うアイデアが生まれます。
つまり、変える部分のバリエーションの幅をもっていると、ひとつの製品に対して複数のアイデアを生み出せるようになるのです。この手法によって生み出したアイデアをいくつかご紹介しましょう。
書いた感じがわかる「筆跡えんぴつ」
そこで、「課題を解決する」アプローチを用いて考えてみました。えんぴつの課題を考えたところ見つかったのが、「2H・HB・2Bという表記では濃さがわからない」というものです。硬度を表す「表示」について疑問を抱いたのです。アルファベットの表記だけで、実際の「書いた感じ」が想像できる人は少ないでしょう。
次に、この課題が解決された状態を考えると、「見た目で硬度(濃さ)がわかる」ことになります。そこで、ちょっと変える発想法です。
えんぴつのなにを変えれば濃さが一目でわかるようになるか。「形?」「使い方?」「機能?」「名前?」。えんぴつの素材を分解していろいろと考えた結果、見つけたのが、柄を「筆跡」に変えるというアイデアです。
くわえて、アイデアの価値がさらに高まるように、そのほかの付加価値も考えてみます。
「試し書きができなくても、商品を見るだけで硬度を確認できる」「2B・HBの意味がわからない子供たちにとってわかりやすい」というような価値が考えられました。
「柄」をちょっと変えただけのアイデアなので、えんぴつの製造方法や機械などは変えずに、印刷加工のみで実現できます。まさに「少しの工夫」で「大きな効果」を実現できるアイデアになりました。
糊が真ん中「向きのない付箋」
次に紹介する「向きのない付箋」も、「付箋の糊は、なぜ端についているのか?」と、当たり前を疑ったことがきっかけでした。これは付箋の「位置」をちょっと変えたアイデアです。
糊の位置が端にあることで起こる問題を考えたところ、「向きを間違えて書いてしまう」という問題が浮き彫りになりました。付箋を手に取り、急いで書いたとき、気づけば向きが反対だったなんてこと、たまにありますよね?
この問題は、「方向という概念をなくす」ことができれば解決できます。そこで思いついたのが、糊の「位置」を「真ん中」に変えた付箋です。糊を真ん中にすることで「向き」の概念がなくなり、どの向きでも書ける自由度の高い付箋になります。
ほかにも、付箋がクルンと反り返らない、どの向きからでも剥がせるといったメリットもありそうです。このように、付箋の糊の位置をちょっと変えるだけで、剥がすときやそのほかのシーンにおいても価値が生まれると感じました。
世の中には、「不便なことが当たり前になっている」ことが多々あります。その状態は、まるでアイデアがいくらでも湧いてくる油田みたいなものです。アイデアが見つかる鉱脈探しのコツとして、「不便なことが当たり前になっている事例」を探してみるのはおすすめです。
申し訳ない心が軽く「ラブレター不在票」
郵便物を受け取れなくて、ポストに不在票が入っていたということ、ありますよね? 不在票を見る度に、申し訳なさと受け取れなかった悔しさが相まってネガティブな感情になってしまいます。おそらく多くの人が共感するシーンなのではないでしょうか?
そんなネガティブな現象を「うれしい体験」に変換し、不在票に対する感情をちょっと変えることができれば、日常がもっとハッピーになるのでは。そう思ったことで、新しい不在票のアイデアを考えはじめました。
そのためには、「不在票が入っていることでうれしい気持ちになる」必要があります。そこで役立つのが、「見立てる」発想です。ポストに入っているとうれしい気持ちになれるモチーフを探しました。
そうして見つけたのが、「ラブレター」です。こうして、「ラブレターに見立てた不在票」というアイデアが生まれました。
私が実践している「ちょっと変える」「見立てる」の、2つの発想法を組み合わせることで、ネガティブなものをポジティブに見せることに成功しました。また、ネガポジ変換されただけでなく、「配達員からのラブレター」という、ストーリーを感じさせる仕様にもなりました。
そもそも、「ちゃんと荷物を受け取ればいい」とは言えます。でもそれが難しかったときに、ユーモアがあって可愛い不在票があれば、受け取り手や配達員の心も、少し軽くなると思うんです。
『「ありそうでなかったアイデア」のつくりかた』
「なにか良いアイデアだしてよ」
会社でこう言われること、ないでしょうか?
いまは「アイデア」がとても重要な時代です。
ビジネスで求められるアイデアのハードルも高くなり、新商品の企画が社内で募集され、何日もかけて必死で考えたにもかかわらず「それ、ありがちだよね」「なんか驚きが少ないなぁ」と言われるのがこのご時世です。しかしじつは、方法さえ知ってしまえば、誰でも良いアイデアは考えられます。
「課題炎上付箋」→「コクヨ」主催デザインコンペファイナリスト
「筆跡がわかるえんぴつ」→「シャチハタ」主催デザインコンペ受賞
「四角いガムテープ」→20.5万いいね、2.9万RT
「繁華街になる付箋」→11万いいね、1.8万RT
著者が生み出し、大きな話題をよんだこれらのアイデアも、「たった2つの発想法」によって生み出されています。本書では、このほかに「30のアイデア」を紹介しながら、その発想法をお伝えします。
いしかわかずや・著 クロスメディア・パブリッシング 1848円(税込)
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