2023.04.17
マッチングアプリで大人の恋はどう変わるのか?
この10年で急速に利用者が増えたマッチングアプリ。最近は若い人だけでなく、より幅広い層にも波及しているよう。大人の恋愛もマッチングアプリなしには成り立たない、なんて時代がすぐ近くに来ているみたいです。
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文/長谷川あや 編集/森本 泉(LEON.JP) 写真/Shutterstock
いまや結婚したカップルの22.6%がマッチングアプリによる出会いで(※1)、アプリを1度でも利用したことがある人は46.9%という調査もあります(※2)。
こうなってくるとLEON世代も「俺達には関係ないもんね」とは言っていられません。しかも実際、近年は利用者の年齢層がより幅広くなって40代以上の層も確実に増えているのだとか。大人の恋愛もマッチングアプリなしでは成り立たない時代はすぐそこまで来ているようなのです。
というわけで、マッチングアプリ専門メディア「マッチアップ」の編集長・伊藤早紀さんに、最新アプリ事情から実際に利用する際の注意点まで、大人の皆さまにも“役に立つ情報”を聞いてみましたよ。
マッチングアプリの世界で人気の4大アプリとは
伊藤 ここ数年でより幅広い層に広がっています。成長の背景にはさまざまな要素がありますが、ITの発達はもちろん、若い世代が効率を重視するようになったことが大きいですね。どんな子が来るか実際に参加してみないとわからない合コンより、アプリである程度、厳選してから効率良くアプローチしたい。やみくもにバットを振るより確実にホームランが打ちたいのです。
市場規模で見ても、2017年に300億円だった売上が2023年には約3倍の1000億円にまで拡大すると言われています。4大アプリを中心に会員数も確実に増えています。
── 4大アプリ、ですか?
伊藤 「タップル」、「Omiai(オミアイ)」、「with(ウィズ)」、「ペアーズ」の4つが会員数で抜きんでています。私が新たな出会い方をサポートすることを目的にメディア「マッチアップ」を立ち上げたのが2017年でした。以来、さまざまなアプリが登場しては消えていきましたが、その構図は変わっていません。これは、ある程度の会員数がいないとビジネスの質が上がっていかないというマッチングアプリの特性がおおいに影響していると思います。
伊藤 4つ以外では、ニッチな層を対象としたアプリが根強く残っています。「東カレデート」は、若くてかわいい女性とマッチングしたいという男性と、お金持ちの人とマッチングしたい女性のニーズをとらえています。「バチェラーデート」のように検索やメッセージを送る手間を省き、AIが自動でマッチングとデートを設定してくれるアプリもあります。「Bumble(バンブル)」は女性主導のアプリで、最初のメッセージは女性のみ送ることができるというもの。
各国のマッチングアプリ事情はそれぞれの国の恋愛事情を表していると言われていて、例えば、今も親が結婚相手を選ぶことが多いインドでは、親もマッチングアプリに参加することができます。
── マッチングアプリの世界、奥深いですねえ。そこまで進化していたとは!
伊藤 マッチングアプリというツールの受け止められ方も変わってきています。私がマッチングアプリの専門家だと言うと、以前は「出会い系ですよね」「ちょっと怖いです」といった反応がほとんどでした。それが2020年頃から「私も使っています」とか「どこが一番いいですか?」という反応に変わってきました。少し前まで「特別」だったものが、「当たり前」のものになったことを肌で感じています。
1つのアプリにかかる月額の費用は平均4000円前後
伊藤 そうですね、ただ、純粋に恋愛を楽しみたいという人も少なくないですよ。再婚相手を探すために登録している方もいます。
── ちなみに、LEON世代、例えば40代以上の利用者の割合ってどのくらいなのでしょうか。
伊藤 マッチングアプリの運営している会社はユーザーの年齢層を積極的に公開していないのですが、私が調査した時はアラサーが6割程度と主体を占め、4、50代は2割前後でしたが利用者は確実に増えているようです。
伊藤 たいていの方は1つ、もしくは2つのアプリを使っています。3つ以上、登録している人はなかなかの玄人です(笑)。用途に応じてアプリを選ぶといいと思います。私どもの「マッチアップ」で推奨しているのは、複数のアプリに無料登録しておき、お相手とマッチングしたら課金するという方法です。会員は流動的ですし、アプリによって出会える相手も違うので種は多めにまいておくといいと思います。
── なるほど! ちなみに料金はどのタイミングで発生するのでしょうか。
伊藤 男性は有料、女性が無料というところがほとんどです。女性も有料のアプリはありますが、ごくわずかです。料金が発生するのは、マッチングして2度目のメッセージから、ということが多いですね。お相手からのメッセージにモザイクがかかっていて、課金しないと読めない仕組みになっています。
伊藤 料金は1通につきいくらというかたちではなく、月額でいくらといったサブスクリプションが主体です。1つのアプリにかかる月額の費用は平均すると4000円前後でしょうか。
── アプリを利用する上での注意点があれば教えてください。
伊藤 男性側に関して言えば、そう多くはないのですが、美人局の存在は耳にしたことがあります。待ち合わせ場所に行ってみたら強面の男性が複数人いたりとか、お相手の女性が指定した店に行ったら、ぼったくりバーで2人で10万円チャージされたといった話もあります。「私が誘ってしまったので申し訳ないから半分持つよ。5万円出してもらっていい?」とお相手の女性に言われ、5万円を支払うのですが、実は女性もグルだったというパターンです。
── むむむ。それは自衛するのが難しいですね。男性も下心があると、つい前のめりになってしまいそう(笑)。
伊藤 雑居ビルの中の看板のない店だったり、著名なグルメサイトに掲載のない店は警戒したほうがいいかもしれません。もしくは、最初のデートはランチにするという自衛策もあります。
加点方式で相手を見ることができることが大切
伊藤 モテるのはぶっちゃけイケメンですが、カップルになれる傾向が強いのは、加点方式で相手を見ることができ、相手に歩み寄れる人ですね。自分のことを客観的に俯瞰でき、自分にどんな相手が合うかを判断できることも大切です。この世に存在しない人を捜し続けても、出会えるはずはありません。この世にちゃんと存在するペルソナ設定をして、その相手を探しに行ける人はいつかきっとお相手に巡り合えると思います。また、男性の場合は決断力も重要になってきます。
── 決断力ですか?
伊藤 特に若い頃、モテていた過去を持つ男性に見られる傾向なのですが、もっといい人に出会えるのではないかと期待してしまい、いい出会いがあってもそこで決断できないんです。
伊藤 アプリを続けている限り、 “出会い”の場は半永久的に設定されているわけですから、ある意味、仕方ないのかもしれませんが……。恋人や配偶者に出会ってアプリをやめる人もいれば、アプリの沼にハマっていつまでも新たな出会いを求め続ける人もいます。
── それはアプリ中毒ですね……。伊藤さんのお話を聞いていると、マッチングアプリがいかに恋愛事情に多大な影響を与えたかを改めて実感します。出会いの選択肢は確実に増えています。ただ、この変化はそのままリアルな恋愛の充実にもつながっているのかと考えると少し疑問が残ります。
伊藤 そこが問題なんです! 出会いは決して平等ではないし、マッチングアプリが恋愛問題すべてを解決してくれるわけではありません。例えば、マッチングアプリには強者がすべてを持っていってしまう傾向があり、モテる男性とモテる女性はいい感じで出会えているのですが、スペックが低いユーザーは会ってもらうことすら難しいのです。恋愛強者と弱者は完全に2極化しています。
── 恋愛格差も広がる一方なのですね……。
プロフィール写真は女友達に撮ってもらうべし
特に男性は見た目、年齢、学歴、年収、コミュ力など、総合力で判断されます。一方で、女性はルックスと年齢で判断されがちです。共通するのは年齢を重ねるにつれ、婚活は大変になるということです。
伊藤 30代の男性にお相手の女性の希望年齢を尋ねると、大半の人が32歳までの年齢を挙げます。4、50代の男性も若い女性を求められる方がほとんどです。女性にとっても、なかなかシビアな状況ですが、「まだ自分の子どもを持つことをあきらめていない」と言われてしまうと、私も何も言い返せません。こうなってくると、女性も年齢以外の部分──、例えば年収などでアピールするしかなくなってきます。
伊藤 20代の利用者が大半を占める「タップル」はスルーしてもいいかもしれません。ほかの3つは年齢層の高い利用者の登録もあります。
── 登録にあたって気を付けることはありますか? プロフィール写真ひとつとっても、盛りすぎても実際に会ったらバレちゃいますよね(笑)。とはいえ、バカ正直に盛っていない写真で登録して、誰にも会ってもらえないのも悲しいです。
── ありがとうございました。あとは実践あるのみですね!
マッチングアプリの世界は、わかりやすいスペックで選別されるシビアな面もあって、大人であることのメリットが生かしづらいのが現状かもしれません。とはいえ本来出会うチャンスのなかった人と知り合えることの魅力は大きいかと。今後、大人の利用が増えるにつれて若者とは違う大きなマーケットも期待できそうです。まずはフロンティアスピリットをもって若い子狙いではなく大人同士の出会いを求めて参加してみるのもよろしいかと。
伊藤早紀(いとう・さき)
1990年生まれ。恋愛メディア「マッチアップ」編集長。株式会社Parasol代表取締役社長。結婚相談所の所長や未婚男女のマーケティング機関「恋愛婚活ラボ」の所長も兼任。自身で20個以上のマッチングアプリをやりこみ、出会った男性は100人以上。300人以上にインタビュー。恋愛・婚活・マッチングアプリのスペシャリストとして情報を配信し続けている。MBS「初耳学」やテレビ朝日「出川のWHY」など10本以上のテレビ番組に出演。著書に『出会い2.0 スマホ時代の「新」恋愛戦術』(ゴマブックス)。
マッチアップHP/https://match-app.jp/