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2023.04.19

奥渋谷の夜に繰り広げられる「大人の恋」のリアルとは?

はたして今どきの大人たちはどんな恋愛をしているのか? 渋谷で27年続く人気バーのマスターにして作家の林 伸次さんに最近の大人たちのリアルな恋愛模様について教えてもらいました。

CREDIT :

文/木村千鶴 編集/森本 泉(LEON.JP) 写真/Shutterstock

大人のいい恋 LEON.JP 林伸次
若者たちの“リアル恋愛離れ”が進むなか、恋愛至上主義で青春を過ごした大人たちはいま、どんな恋をしているのでしょう? 奥渋谷で27年続く人気バーのマスターにして作家の林 伸次さんに、最近の大人たちの恋愛模様を聞いてみました。

── 林さんのお店はいわゆる業界人も多い、大人向けの店という印象ですが、お店に来ているお客さんたちの恋愛事情をどう捉えていますか。

林 伸次さん(以下、林) そうですね。確かにウチのお客さんは、恋バナを含め恋愛が好きな人は多いかもしれません。もちろんバーだからというのもあると思いますが。

── 隣に座ったお客さん同士が仲良くなるというようなことは?

 仲良くなることはよくありますが、恋愛には発展していないんじゃないでしょうか。恋愛的な出会いを目的とした人には、もうちょっと違う場があるんだと思います。ウチの場合、昔はよく「隠れ家系」と言われたんですが、恋人や恋人未満のカップルが、暗くて雰囲気のあるところを求めてやってくることの方が多かった気がします。

── なるほど。やはりデートにバーは欠かせないですよね。

 そうなんです(笑)。バーを経営している身からすると、みんながどんどん恋愛してくれるほど助かります。だからコロナの時はそういうお客さんが凄く減って大変でした。リアルな出会いがないと恋愛には発展しないので。
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大人のいい恋 LEON.JP 林伸次
── そんな中で見聞きしているここ最近の大人たちの恋愛傾向を教えていただけますか。

 今は#Me Tooのようなセクハラ告発や、ネットの人たちの過剰な不倫たたきもありますから、ワルい男性だけでなく、ごく一般的の人たちにとってもなかなか厳しい時代ではあると思います。職場恋愛もNG、年下と付き合うとパパ活と呼ばれ白い目で見られる。そういう状況下で、特に40代を超えた頃から男性は腰が重くなっているなぁと感じますね。

── 腰が重い?

 はい。ちなみに、うちの店にそういうタイプのお客さんが多いのですが、いい感じになって、この後誘って移動して、セックスもしたいにはしたい。でもその後の関係性のことなんかを考えるとなんか誘えない。もうこのままの関係でいいや……という話はよく聞きます。

── それは若い時のように性欲に支配されなくなったということでしょうか?

 それも少しはあると思いますが、とにかく腰が重い感じ。いろいろ考えているうちに億劫になってきて、飲んだ帰り道にちょっとキスができたらもういいいや! 最後までできたようなものだと思い込むって(笑)。ゴールがキスになってしまったわけです。
── 中学生の恋愛に戻った感がありますね(笑)。既婚者だと日常を壊したくないというのもあると思いますが。

 未婚の40代、50代の人たちも本当に腰が重いですよ。もう服は脱ぎたくない! みたいな(笑)。今、ちょっと太ってるから自信がない、お腹が出ちゃってるのを見られたくないとか。

── 男性で?(笑)

 はい。だから逆に今、某○ザップに通っている人はみんなワルい人、という有名な(?)話もあります。
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大人のいい恋 LEON.JP 林伸次
── それ狙いで体型維持してると(笑)。

 羨望からくる偏見だとは思いますけど。でも、普通の男性たちも恋愛がしたくないわけじゃない。相手を好きだなぁという思いを持ちながらデートを楽しむだけ。そういうことはみんなそれなりにやっていると思います。既婚者でも異性と食事に行くくらいのことはしますよね。
── 肉食系じゃないんですね。

 恋心だけでいいんですよ。気になる人との食事の約束が入っているとか、もしかして何かあるかもしれないからちょっと痩せておこうとか。そんなことがあれば日々が楽しいですよね。そういう気持ちって、人生にとってとても大切なことだと思うんです。

── それはそう思います。女性でもそういうことがあれば、ちょっと痩せておこうかなとか、可愛い下着をつけようかなと思いますから。

 そういう気持ちがないと、身なりを気にしなくなり、生活が荒んでくることもあるといいます。これは男女共にですけど、日常生活も次第にどうでもよくなって、それこそお風呂も入りたくなくなる。頭洗うのが面倒くさいとか。色々無精になっていって部屋の掃除もしなくなって、服も黴臭くなっていく。

── 手入れが悪くなって生活が荒れていく感じですね。

 そうなったらもう、人生を楽しむこともできなくなってしまう。やはり恋愛をしている人はみんな清潔にしようという意思もあるし、身なりがちゃんとしていますよね。それって特に大人には大切なことだと思います。
── そうならないためにも、大人は恋愛心を持っていた方がよいと。とはいえ一方で、先ほども話に出ましたが、#Me Tooとか不倫たたきとかもあるなかで、どうやって大人は恋愛の相手と出会えばよいのでしょう?

 最近のトレンドで言えば、マッチングアプリだってありだと思います。少なくとも事前に合意が取れている相手と会うわけですから、リスクは低くなりますよね。

── 確かに。

 知らない同士で会うのはどうもという人にはサードプレイスを作るという方法もあると思います。家庭と職場以外の第3の居場所、趣味のサークルやサロンなどを作ることで出会う人の幅はいくらでも広がります。
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── 趣味を持つと共通の話題ができる人との出会いもありそうですね。

 ひとつ趣味があると自然な交流につながります。例えばお客さんで山登りが好きな人がいるんですけど、山登りをしていると何度も同じ人とすれ違うらしくて。それで「また会いましたね」なんて挨拶を交わしているうちに仲良くなって、食事をしたり、一緒に山登りの計画を立てたりするようになったと。そういうこともあるらしいです。
── ちゃんと付き合いましょうとか、そういうことではなく。

 もっと緩い感じの女友達ですね。でも、それでいいんじゃないかと。セックスをしなくてもデートを楽しめるならばアリなんじゃないでしょうか。

── それだと不倫だとたたかれることもないかも。

 あれこれと恋愛の形や常識に縛られる必要はないと思います。大人になったら、男か女かというより人間同士と考えればいいのかなと。僕が思うに、女性の方から男性を食事やデートに誘ってもいいんじゃないのかなと思います。それが普通になっていい。

── 男性側から声をかけづらい状況でもありますからね(笑)。

 やっぱり誰かを好きになるという感情ってポジティブでいいと思うんです。それも推し活みたいなことじゃなく、もっと身近な誰かを好きになる。昔、「友達以上恋人未満」っていう言葉がすごく流行りましたよね。そういう関係を今、もう一回楽しんでみるのもいいんじゃないかと。「年甲斐もなく恋愛だなんてみっともない」なんて思うのではなく、また愛人とか不倫とかそんなことでもなくて、緩い関係で人生を楽しむ。今どきの大人の恋愛はそんな感じでいいのかもしれません。
大人のいい恋 LEON.JP 林伸次

● 林 伸次(はやし・しんじ)

1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSを開業。選曲CD、CD ライナー執筆等多数。cakesで連載中のエッセー「ワイングラスのむこう側」が大人気となりバーのマスターと作家の二足のわらじ生活に。小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる』(幻冬舎)、『なぜ、あの飲食店にお客が集まるのか』(旭屋出版)、『大人の条件』(産業編集センター)。最新刊は『結局、人の悩みは人間関係』(産業編集センター)が好評発売中。

■ bar bossa(バール ボッサ)

ワインを中心に手料理のおいしいおつまみや季節のチーズなどを取り揃えたバー。 BGMは静かなボサノヴァ。
住所/東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
営業時間/月〜土 19:00〜24:00
定休日/日・祝
問い合わせ/TEL 03-5458-4185

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