そんな中でも特に、「大人だからこそ魅力がわかるマンガ」を、各分野に造形の深い著名人にリコメンドいただきました。方向性は違えど、読んだら思わず「う〜ん…‥」と唸ってしまう作品が揃っています!
選者は、メディアアーティスト・落合陽一さん、音楽プロデューサー/選曲家・田中知之さん、著作家・中野香織さんの3名です。
メディアアーティスト・落合陽一さんが選ぶのは……
その1
働くことへの葛藤を描いた『女子攻兵』
「単なるグロさやエロスだけでなく、作品に含まれる大人の疲労とギャルを目指すオジサマたちの悲哀が大人向けだといえるでしょう。途中から主人公たちが中年男性であったことを忘れてしまう。
そこで女子高生としての主人公たち、彼女たちが抱える心の傷や葛藤も丁寧に描かれています。また、作品全体を通じて描かれる虚無感と、その上で仕事を続ける主人公の葛藤は、自分自身の問題として興味深く読むことができました。ネタバレなので書きませんが、ラストシーンでは、仕事に向かう・人生に向かう気持ちを作ってくれます」(落合陽一さん、以下同)
その2
『ポム・プリゾニエール』
「とにかく猫と美少女が可愛いです。作者の美術的な表現力は、とても重要な魅力の一つ。印象的なのが、宝箱を取ろうとして黒猫にまみれる主人公。作品中に登場する絵画的風景描写や、夢の中のように描かれる景色など、美しいイラストが数多く描かれています」
● 落合陽一(おちあい・よういち)
メディアアーティスト。1987年生まれ、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了(学際情報学府初の早期修了)、博士(学際情報学)。筑波大学デジタルネイチャー開発研究センターセンター長、准教授・JSTCRESTxDiversityプロジェクト研究代表。IPA認定スーパークリエータ/天才プログラマー。ピクシーダスト テクノロジーズ代表取締役。
PHOTO/©中川容邦/KADOKAWA
音楽プロデューサー/選曲家・田中知之さんが選ぶのは……
『容赦ない和田ラヂヲ』
「和田ラジヲさんの四コママンガすべてに言えることだが、時に徳のある高僧の法話を聴いたような、時にキツネに摘ままれたような、時に大きな耳垢がごそっと取れたような……つまりは、大人ならではの日々の面倒臭いことや、くよくよと悩んでいたことが、もうどうでも良くなるという効能があります。
和田ラジヲさんの四コママンガは、人生の師かな。ご本人もとても素敵な方で、ずっと故郷の愛媛県の松山に住まわれています」(田中知之さん)
● 田中知之(たなか・ともゆき)
音楽プロデューサー/選曲家として国内外で活躍。FPM名義で8枚のオリジナルアルバムをリリース。多数のアーティストの楽曲プロデュースやRemixも手掛け、TVCM音楽、全米映画や海外ドラマ、演劇作品への楽曲提供も多数。商業施設や飲食店の音楽ディレクションも手掛ける。東京2020オリンピック開閉会式、パラリンピック開会式では音楽監督を務めた。昨年度より洗足学園音楽大学”音楽・音響デザインコース”の客員教授に就任。
著作家・中野香織さんが選ぶのは……
その1
『キングダム』
私はとりわけ王騎にはまっていて、ルックスやしゃべり方の妖しいギャップもさることながら、度はずれた強さ、視野の広さ、志の高さ、体躯とハートの大きさ、人情の厚さ、神出鬼没の行動力、人望、カリスマ性に魅了され、あんな人になりたいと心のお手本になっています」(中野香織さん、以下同)
その2
『王様の仕立て屋 サルト・フィニート』
イギリスや日本との仕立ての違い、生地の見方、色やパーツの組み合わせ方、巧みに作られたスーツが現実に及ぼす効果にいたるまで、男性が服を作り、着て、生きることに関する基本的考え方からニッチな薀蓄に至るまで、視界が広がる情報が楽しく詰まっていて、学びどころ尽きません」
● 中野香織(なかの・かおり)
ファッション史を軸に芸術誌からビジネス誌までカバーする著作家。
著書『「イノベーター」で読むアパレル全史』(日本実業出版社)、『新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済10の講義』(安西洋之氏との共著、クロスメディア)、『英国王室とエリザベス女王の100年』(君塚直隆氏との共著、宝島社)ほか多数。
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