それによって、円を売ってドルを買う動きが大きくなり、急激に円安が進みました。一時は、1990年8月以来32年ぶりに1ドル150円台に乗せました。
こうした円安の動きは当然で、たとえば1万ドル持っていたとして、アメリカの金利が5%であれば、銀行に預けておくだけで1年で500ドル(1ドル130円として6万5000円)増えます。対して、日本円を130万円預金していても、金利0.1%なら1年で1300円しか増えません。より大きなお金を動かす投資家たちが、円をドルに換えていくのは当たり前のことなのです。
しかし、日銀もようやく金利政策変更の兆しを見せ始め、2022年末に10年国債利回りの誘導レンジを現行の±0.25%から±0.5%に拡大することを発表しました。つまり、日銀が長期金利(10年国債利回り)の変動幅を±0.5%になるようコントロールしていくということです。これは直接的な利上げではないものの、日銀の発表後、円高が進み、一時1ドル127円台になりました。
今後はドルが買われ円が売られ、ますます円安が進み……という負のスパイラルから抜け出せそうだと思うかもしれませんが、そうとも限りません。日本はそうそう金利を上げられない事情があるのです。
当然すぎる円安の到来
そのため、少しでも支払額を抑えたい人は変動金利を選ぶ傾向にあり、民間の住宅ローン利用者の6割以上が変動金利を選んでいます。もし、金利が上がると、変動金利で住宅ローンを組んでいる人は、ローンの支払額が増え、一気に苦しくなります。家計破綻する家庭も出てくるでしょう。
また、企業も打撃を受けます。金利が上がると、利子が増えるので、新たな借金もしにくくなり設備投資ができなくなります。その結果、企業の稼ぐ力が落ちてきてしまうわけです。
このように、金利を上げると、個人も企業も大きな影響を受け、景気が冷え込むリスクがあるため、経済が停滞している日本では金利を上げることが難しいのです。
では、アメリカはどうでしょうか。金利を上げることで不景気になったら今度は金利を下げるでしょうが、今のところ景気に問題はなさそうです。物価は8%程度上昇しても、給料も5%平均で上がっていますし、コロナ政策でばらまいたお金があるから、人々は財布のひもを締める必要がないのです。
となると、多少金利政策に変化があったとしても、円安はしばらく続くと考えざるを得ません。実際、2023年2月以降は1ドル130円台と、依然として円安傾向が続いています。
実は、景気に対しては、日銀にできることはありません。日銀の役割は物価の安定であって、日本経済を活性化させるために存在しているわけではないからです。
景気をよくしていくのはもっぱら政府の役割ですが、肝心の岸田政権は「新しい資本主義」などという中身のないことを言い続けているので、投資家はどんどん日本から逃げてしまいます。
加えて、今の日本には個別にいい企業はあっても、業界として強いものがありません。一時期のソーシャルゲーム業界や、昭和の時代の不動産業界のように、「この産業に投資すれば儲かる」というものがないのです。
結果的に、国内で買われるのも海外の株で、日本株ではありません。
それによって、円が流出しさらに円安が進み、海外投資も加速します。
輸入品が高騰し、物価高が進行します。
人々が消費を控え、不景気になります。
こうして、景気が低迷しているなかで物価が高騰していくという最悪のシナリオ「スタグフレーション」が起きるのです。
好景気を望まない社会的要因
ところが、日本では景気が悪いまま円安による物価高が進行しています。
長く日本は、外貨を稼げるような魅力的な商品・サービスを提供する産業を育てずにきました。政治家たちが「円安にすれば輸出が増えて国内産業が成長する」という古い政策をとり続け、商品・サービスの魅力を向上させるよりも、円安によりとにかく安く提供することで競争力を高めようとしてきたために、今の結果を招いているのです。
ここから抜け出すには、大きな変革が必要です。
もはや、政府の方針など関係なく個人レベルで動くしかないでしょう。個人や一民間企業ができる対策として、まずは海外向けの仕事を増やすことです。
それは、海外の企業と仕事をすること。たとえば、日本のエンジニアはいい仕事をするにもかかわらず、日本では安い給料しか受け取れません。彼らが外国企業で仕事をしたら、ずっと高い給料を手にできます。
そのときに、海外に住んでもいいけれど、家賃も物価も高いから、理想は日本にいてリモートで海外企業の仕事をすることです。モノを売る商売もいいでしょう。日本で日本人相手に売るのではなく、海外に顧客を持ち外貨を稼ぎましょう。
たとえば、アメリカの大都市、ニューヨークやロサンゼルスでは、ラーメン1杯が3000円近くするのが当たり前です。日本なら1000円ぐらいの値づけしかできないでしょう。つまり、しっかり物価が上がっている国に対してモノを売れば、日本国内で売るよりより多く稼ぐことができるのです。
日本人はていねいにモノをつくるのがうまいけれど、過去において海外で商売できるのはどうしても企業や組織に限られました。
でも、今はインターネットで誰でもどこにいても世界中の人にモノを売れる時代です。思い切って行動に移しましょう。とくに、円安であればこそ、新たにモノを売るチャンスもあるはずです。「なんだろうこれ、面白そうだな」と手に取ってもらう機会も増えるでしょう。
ただし、儲けを生み出すほど販売するには、魅力的な商品であることが必要です。
H&MやZARAという安価な衣料メーカーが軒並み不調ななか、ユニクロが売上を伸ばしているのは「素材の質がいい」という評価を得ているからです。むしろ値段に関係なく、質のいいものが求められる時代です。個人レベルの商売であっても、そこのところは同様。多くの人が「買いたい」と思えるものを売っていきましょう。
iPhoneは10万円以上しますが、世界中で1500万台売れています。先進国の人々は「欲しい」ものを買うのであって「安いから」という理由だけでは買いません。
「使える英語」を身につける
というと、「自分には無理だ」と決めつけてしまう人がいるかもしれませんが、英語は学ぶ目的さえはっきりさせてしまえば、案外、簡単に身につきます。
当然のことながら、あなたの目的は仕事のため。「外国人の顧客と話せるようになりたい」「ネットにアップする商品記事を英語で書きたい」などというものではないでしょうか。
もし、TOEICで高得点を取りたいというなら、まずはきちんと英文法を学んだほうが早いでしょう。TOEICのテストには、長文読解や文法の間違いを指摘するような問題が出るからです。
一方で、話せるようになりたいなら、その環境に浸るのが一番です。僕は英語とフランス語を話すことができますが、その理由は単純で、アメリカとフランスに長く滞在した経験があるからです。
また、もう1つの大事なポイントは「習うより慣れろ」です。僕がアメリカの大学に留学したときは、大学の授業よりも友達との会話のほうがよっぽど役に立ちました。寮で酒を飲みながら英語で話しているなかで、いろいろな表現を試していたのです。通じなくても単なる雑談なので、気にしなくていい。聞き返されたら別の言い方を使ってみる。そうやって自然と「使える英会話」を身につけていきました。
英語環境に浸るのにおすすめなのが、フィリピンで暮らしてみることです。マニラなら1カ月20万円くらいの予算で、英語学校に通いながら生活できます。フィリピンの母国語はタガログ語ですが、多くの人が英語を話せるので、あなたも日常的に英語を使うことになります。
あるいは、映画の2カ国語字幕を活用してもいいでしょう。アメリカ映画などを再生するときに、日本語と英語の2つの字幕を併記し、同時に内容を把握します。
日本語の字幕だけでは英語の勉強にはならないけれど、英語の字幕だけだと映画そのものが楽しめなくて嫌になってしまいます。併記することで、内容も楽しみながら英語も目で追っていけます。
いずれにしても、頭の中で日本語を英語にしようとしないで、最初から英語で話してみる意識が必要です。「この文法合っているかな」とか「正しい発音はどうだったっけ」などと考えていてはダメ。自意識過剰にならないで、どんどん英語を口にしてみましょう。