2023.07.20
主催するゴルフコンペに150人の友人を集める神戸の「愛されオヤジ」の正体とは?
目まぐるしく時代が変化しているなか、モテるオヤジはどうあるべきか? 過去の価値観にとらわれず、しなやかにしたたかに現代を生き、男女を問わず皆に好かれる「愛されオヤジ」たちをご紹介する本特集。今回は神戸の愛されオヤジ、高山正史さんの登場です。
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文/井上真規子 写真/岸本咲子 編集/森本 泉(LEON.JP)
【愛されオヤジ01】高山正史さん(会社経営)
愛されオヤジの財産はゴツい指輪より“友達の輪っ!”
そんなリアル「愛されオヤジ」たちを紹介していく本特集。今回ご紹介するのは、神戸で会社経営を行う高山正史さん。自ら設立したメーカー商社の代表取締役を務めると同時に、神戸で大人気の和食店「天ぷら料理 花歩」の経営も手掛けるやり手実業家。今年は飲食業の2店舗目となる「麻布十番 真田」を東京に出店したばかりです。
時計やクルマ、食べ歩き、ワインなどの趣味を通じた仲間が、自ら主催したゴルフコンペに150人も駆けつけ、神戸・三宮を歩けばすれ違う人から次々に声をかけられるという、まさに“愛されオヤジ”の名に相応しい存在。実は、ジローラモとも飲み友達なのだそう。そんな高山さんの底知れぬ“愛され”力の秘密に迫ります。
相手を喜ばせることの大切さに気づいた
「若い頃は少々短絡的で、会社を興したのも自分が好きなように仕事をするためでしたし、しばらくは、収入を増やして裕福になりたいという気持ちばかりが先行していました。でも実家は特別金持ちという訳でもなく、最初は特に大変で、数年間は月給10万円入ればいいほう。生活も苦しく、結婚式の費用も父親に借りてなんとか挙げた感じでした」
なかなか思ったようには業績が伸びず、苦労続きだった会社設立4年目の頃に、高山さんの価値観を一変させる取引先に出会ったのだとか。
それからは取引先の気持ちに寄りそってものづくりをしよう、相手の企業さんに何か貢献できることはないか、という着眼点から仕事を進めるようになっていきました。相手が喜んでくれて、結果的に収入が増えるということの大切さに気づくことができたんです」
すると業績は徐々に上がっていき、経営者としても世に貢献できる会社づくりを志すようになったそうです。失敗を恐れないチャレンジ精神で中国にも進出し、高品質な釣具製品を生産して販売するフィッシング事業もスタート。この頃から高山さんの生き方の原点は“相手を喜ばせる”ことになりました。
神戸の通りですれ違う人みんなに声をかけられるように
気づいたら神戸・三宮は道を歩けば知合いばかりになっていたとか。優しそうな高山さんの笑顔を見ていると、人が集まってくるのも確かに頷ける気がします。
「ご飯を食べてお店を応援する気持ちもありました。仕事のお客さんを連れていく時のお店選びも楽しくなって、そのうち飲食プロデュースのようなこともやり始めたんです。それならいっそ、自分の店があった方がいいなと思いました」
「僕は和食が好きで、特に天ぷらが大好物。結婚後も家族でよくホテルオークラに天ぷらを食べに行っていました。そこで仲良くなったのが、真田。食事に誘ったら、きちんとスーツできて、真面目なやつだなと思いました。その時ちょうど、真田が親父と呼んで慕っていたオークラの料理長が辞めるという話を聞いて、それなら資金は俺が工面するから自分の店を出したらどうかと真田を誘ったんです。ところが真田がそれを断り、僕と一緒に飲食業を大きく事業としましょう! と言われ、会社として飲食業に携わる事になりました」
最初の1年は、割烹着を着て真田さんと一緒に厨房に立っていたという高山さん。
「僕の本業は、例えば駅のホームと電車の間にできる隙間を埋めるゴム製品を作って、それでベビーカーの落下を防ぐというような、いわば裏方の仕事です。製品の利用者さんと接する機会はないし、あって当たり前のものを作っているのでそれ自体に喜ぶ人は少ないですよね。でもお店にいると、不特定多数の人から美味しかった! また来るよって言ってもらえる。それにすごく感動したんです」
散々食べ歩いてきたからこそわかる客の気持ち
「麻布十番 真田」では、天ぷらを中心に1頭買いした神戸ビーフや本格出汁を使った割烹料理をコースで提供。ワインやウイスキーなどをはじめとしたドリンク各種がすべてインクルードで、5万円(税・サ別)で楽しめます。これも利益より相手の側に立つという高山さんの発想から生まれたサービスでした。
「お客さまには、値段を気にせずに好きなお酒を好きなだけ飲んで欲しいんです。これは、自分が客として前から思っていたこと。ワインならKENZO ESTATEのあさつゆ、シャブリのグランクリュ、ブルゴーニュのプレステージ、日本酒は入手困難な而今、新政No.6、という感じで高級酒を色々揃えているので、きっと楽しんでもらえるはずです。正直言って呑兵衛の方だと酒代だけで足が出ちゃいます(笑)」
「どこにもないような空間を目指しました。お店が狭い分、貸切で空間ごと楽しんでいただくのが理想です。はじめは、自分の好きな人たちに楽しんでほしいという思いで紹介制にしていたんですが、LEON読者のような方とか、もっとたくさんの人にも来てほしいと思うようになって通常予約に変えました」
趣味がつながっていくのが面白い
「時計は昔から好きで、パテック・フィリップやロレックス、リシャール・ミルを中心に集めてきました。特にリシャール・ミルは古くからのお付き合いで、ジャパンの川﨑社長とも親しくさせていただいてます。各社のエキシビションやチャリティにも参加していて、今年は『リシャール・ミル ヨネックスレディースゴルフトーナメント』で寄付をさせていただきました。時計を通じて社会貢献できるのも大きな楽しみですね」
「ローマン・ゴティエさんと直接会って話した時に、ムーブメントやデザインの話を聞いて、同じものづくりの人間としてすごくシンパシーを感じたんです。実際に、時計をつけてみて口ばっかりだなと思うブランドもあるけれど、ローマン・ゴティエは共感して感動したブランドのひとつです。
オーデマ・ピゲも大好きで、ミッドタウンにあるAUDEMARS PIGUET AP HOUSE TOKYOと『花歩』のコラボレーションでお客様に天ぷらを振る舞わせてもらったこともあります。趣味がつながっていくのは面白いですね」
ただ集めるだけでなく、時計を通じて自分の世界も広げてしまうのはさすがです。
しかもクルマは集めるだけでなく、ワンメイクレースなどにドライバーとしても参加して楽しんでいるそうです。
一番大事なことは集めるまでのプロセス
時計やクルマを資産として考える人も多いけれど、高山さんにとってその意味合いはほとんどないといいます。
「実際にいいものって、価値として換算すると低くなることが多いですよね。シグネチャーで普遍的なモデルは長期的に高い人気があって価値も高くなるけれど、例えば時計で複雑機構だけのモデルは資産に換算すると低くなりがち。今つけているこのパルミジャーニ・フルリエも大好きな時計で、○千万円ぐらいで買いましたが、セカンドマーケットではおそらく購入価格よりずっと下だと思います。だから命を懸けて買ってます! 人生一度きりですから楽しまないと」
「ワインも残っていれば資産になるけれど、僕はDRC(Domaine de la Romanee-Conti)も毎週のように開けて飲んじゃいます。でも友達と一緒に飲んでプライスレスな時間を持つことが、結局僕の人間関係につながっていく。
先日も六甲国際ゴルフ倶楽部でゴルフコンペを主催して、150名ぐらい来てくれました。仕事関係の人は10人くらいで、あとは全部時計やクルマで出会った友人ばかりです。そういうことが全部結びついて自分の財産になっていると思います。社会に入ると友人関係ってなかなか築きにくいですけど、共通の趣味を持つことで財布の大きさが同じ方と巡り合いやすかったんだと思います(笑)」
「ウチは稼いだお金を全部買い物につぎ込んでますから(笑)。普通は止められるんでしょうけど、家内も時計とクルマが好きなので、一緒に楽しんでいます。一番好きな時間は、寝る前にベッドでiPadを見ながら2人で新作をチェックしている時かな(笑)」
神戸の自宅は、現代アートやワインセラー、モトグッツィ×Palece×GUCCIの日本に3、4台しかないバイクも飾っていて、ほとんどサロンみたいな状態になっているのだとか。
価値観が変わっても、謙虚さは失わない
経営者として成功し、一流の仲間とたくさん出会うなかで、価値観も自然と変わっていったそう。
「価値観はめちゃくちゃ変わりました。価値観がアップデイトされるのはすごくいいことだと思うし、これからもアップデイトしていきたいです。でも、実れば実るほど頭を垂れる稲穂じゃないですけど、初心は忘れるべからず。やっぱり謙虚さを失ってはダメですよね。僕もそれを心に留めて「俺の腰はスポンジでできているぞ」ってくらい、腰を低くしてます(笑)。たまに社員に、ペコペコしすぎやって言って怒られますが」
そんな高山さんが、最後に取り出して見せてくれたのが、この人形。
どんな時も人を喜ばせたいという気持ちを忘れず、謙虚さを大切にしながら、自分を犠牲にすることもなく、人生を120%謳歌する高山さんの生き様に触れ、愛されオヤジの真髄を見た気がします。これで、モテないわけがない!
● 高山正史(たかやま・まさし)
1973年、兵庫県生まれ。立命館大学卒。1999年、タカヤマ株式会社を創業。電力などインフラにゴム、樹脂等の工業部品や装置を供給するメーカー商社として急成長。現在、代表取締役兼CEO、「天ぷら料理 花歩」「麻布十番 真田」オーナー。趣味は時計、絵画、クルマ、ワインの蒐集。
麻布十番 真田
住所/東京都港区麻布十番2-6-2 THE CITY 麻布十番 AVANTI 2F
TEL/03-6231-1756(予約受付 10:00-23:00)
定休日/不定休
営業時間/予約に応じて
料金/コースのみ(ドリンク含む)5万5000円(税込・サ10%別)
● 【反省】そこのオヤジさん、人に「それ何の意味があるの?」って言ってませんか?
● 【覚醒】そこのオヤジさん、「自分のものの見方には限界がある」って言えますか?
● 女性が「またこの人と話がしたい、会いたいと」思うのはどんな男性?