2024.05.14
手袋をなくした彼女。それをチャンスに変えた某外資系企業で働く後輩
人気放送作家にして戦略的PRコンサルタントでもある野呂エイシロウさんが、世の恋するオヤジさんたちの愛すべき艶話をこっそり披露する連載。今回のテーマは……。
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文/野呂エイシロウ イラスト/早乙女道春
■ 「右手袋の思い出」
数時間後、レストランから寒空に出ると、「あれ?」と彼女が口を開いたという。ポケットに入っていたのは右手の手袋。しかもボッテガ・ヴェネタのものである。「あれれれ……、片方だけ、どうして?」と慌てていると、「はい、左手も」と差し出した。
実は後輩が彼女との食事中に同じビルのショップで手に入れたものだ。その後、こっそりクロークに預けた彼女のコートのポケットに右手の手袋だけ入れ込んだそう。で、サプライズで左手を差し出したというわけだ。
先程まで悲しんでいた彼女が笑顔に変わったことは言うまでもない。さすがモテモテの後輩である。彼女は冬が来るたびに右手の手袋のエピソードを思い出すだろう。今年もボッテガ・ヴェネタの手袋は、東京の寒空を駆け抜けているはずだ。今度、僕も後輩の前でモノをなくしてみよう。果たして。
● 野呂エイシロウ
『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で放送作家デビュー。気さくな人柄と豊富な知識、そして巧みな話術にファンも多い。現在は戦略的PRコンサルタント業務など、多忙を極める。