2020.10.12
アマゾンで最高の会議は「ひと言も話さない」会議!?
会社や組織にとって「会議」は不可欠なもの。しかし一方で、自社の会議が非効率・非生産的であると感じている方も多いだろう。アマゾンジャパンの立ち上げメンバーでもある経営コンサルタントの佐藤将之̪氏が、アマゾンで学んだ「速く、確実に決断する会議」のヒントを紹介する。
- CREDIT :
文/佐藤将之(エバーグローイングパートナーズ代表取締役/事業成長支援アドバイザー)

15分資料を黙読する
「意思決定会議」では、まずファシリテーター(オーナー)は、会議を開く趣旨を一通り確認したうえで、最終的に会議室を出るときにどういう状態にもっていきたいかというゴールを共有し、どのような順番でそれらを検討するのかを説明します。また、参加者の手元に会議資料がそろっているかどうかも確認します。
ここまでは、どの会議でもたいして変わらないと思います。しかしその後の流れが、アマゾンは独特です。
一般的な組織であれば、会議資料の作成者が、ほかの出席者から議案の概要の説明を求められることと思います。
しかしアマゾンではそうはしません。まず、目の前にある会議資料を各自で黙読するのです。事前に資料をメールで送付した場合でも、15分間くらい必ず読むための時間をとります。
そしてこのときに重要なのが、沈黙を保つこと。一通り目を通してもらう間、質問は一切受け付けません。
「意思決定会議」において、アマゾンがこうした進め方を採用するのには、それなりの理由があります。
資料の作成者が会議の冒頭で概要を口頭で説明していくやり方には問題があると、アマゾンでは考えられています。例えば2ページ目の話をしているときに、誰かが何かの言葉に引っかかって、「ちょっと待って」と止めて質問するということが起こりがちです。
実は、その答えに当たる部分が4ページ目に書かれていたりするのですが、質問している人は資料の全体を把握していないので、そんなことはわかりません。プレゼンテーションなどでも、途中で質問されて、「それは後から出てきますから」というやりとりがよく見られますが、それと同じことです。
実は、こうした無駄なやりとりを非常に嫌うのが、創業者ジェフ・ベゾス氏です。すでに書いてあること、説明が予定されていることを質問するのは無駄です。読みながら、わからないところにクエスチョンマークをつけ、後のページで説明されていたらマークを消し、残ったものだけについて質問したほうが、時間的にはるかに効率がよい、と考えて、このような沈黙をルール化したのです。
「ひと言もしゃべらない会議」が最高の会議
ファシリテーターによっては、議論に入る前に資料の内容について簡単なサマリー(概要)を述べることもありますが、これは必須ではありません。15分経過したら、全員が資料の内容を一通り理解したという前提ですぐに議論を始めて構わないのです。
だから、アマゾンで考えられる最高の会議は、沈黙のままに終わる会議なのです。黙って資料を読み終えたところで、「何か疑問点がありますか」と参加者に尋ね、疑問や懸念がなければ、沈黙のまま会議は「これでいきましょう」ということで終わりです。
もちろん、現実的にはそうしたケースはアマゾンでも稀です。また、みんなでアイデアを出し合って検討するような会議では、もちろん沈黙のまま終わるはずがありません。
しかし、意思決定を目的とした会議では、何も疑問が出ない資料が提出されれば、究極、参加者は議論をせずに、すべて承認してその会議を終えることができます。
それが、アマゾンでは最高の会議とされています。

『amazonのすごい会議』
すぐに決まる! アイデアが湧き出る! プロジェクトが進む! なぜamazonは次々に新しい事業を同時展開できるのか? 世界最強企業の成長を支える原動力である「会議の技法」をアマゾンジャパンの立ち上げメンバーが解説する。
著者/佐藤将之 東洋経済新報社刊 本体1600円+税
HP/https://str.toyokeizai.net/books/9784492503133/