2018.07.13
プロ伝授! ちょっとモテそな花火のウンチク【後編】
夏といえば花火!ですが、種類とか名前とかなんにも知らない!? なんて人が多いのでは? 実は花火にはそれぞれにちゃ〜んと名前が付いていたり、一見同じように見える花火にもさまざまなバリエーションがあったりするんです。そんなウンチクを知れば、この夏の花火鑑賞がちょっと知的になるかも? 後編では日本の代表的な花火を動画をまじえて紹介いたします!
- CREDIT :
監修・写真/冴木 一馬(ハナビスト) 取材・文/岩佐 史絵
花火の種類と名前を知れば、もっと楽しくなる!
さて、今回は花火自体の基本的な種類とその呼び名をご紹介しましょう。まず、おおまかに言えば、花火は「割物」「ポカ物」「半割物」「型物」と区分されるそう。
まだまだ他にもあるのですが、まずはこの4種を覚えておくだけでも、かなり通に見えるんです。
日本の花火といえば、コレ!「割物」
職人ワザが結集された日本の代表的な花火「菊」
錦と呼ばれる光の尾を引きながらさく裂するのが特徴で、それが菊の花弁のように見えることから、そう呼ばれています。内側に複数の芯がある「多重芯(たじゅうしん)」や、花弁が地上近くまで垂れさがる「冠菊(かむろぎく)」など、が代表選手。
そのバリエーションは実に豊富で、糸菊(いとぎく)、錆菊(さびぎく)、真砂菊(まさごぎく)、銀波菊(ぎんぱぎく)、漣菊(さざなみぎく)などなど、日本らしい素敵な名前のものが数多くあります。
ふわりと光の玉がはじけていく「牡丹」
軌跡が残らないため、一度に複数の玉を打ち上げる「スターマイン」(速射連発)と呼ばれる花火演出にも多用されているそう。
本来は「芯」が入るものを「牡丹」と呼ぶそうですが、地域によっては芯のないものを「満星(まんぼし)」と呼んで差別化していましたが、最近ではそのあたりは曖昧になってきているそうです。
進化しつづける花火のなかでも最も可能性を秘めた「ポカ物」
広がりが小さく破裂音も小さいけれど、中に詰め込む部品によってさまざまな工夫ができるので、豊富なバリエーションがあるのが特徴。特に動き(現象)が複雑なものが沢山あり、花火大会の中ではアクセントとして使われることが多いそう。
最も古い歴史をもった花火でありながら、最も新しい可能性を秘めた構造と言われている、進化する花火の代表格です。
四方に飛び散るさまが荘厳な「蜂」
夜空に打ち上がると、中から小さな花火がシュルシュルと回転しながら飛び出してきて、四方を縦横無尽に飛び回ります。その様子はまさに蜂の乱舞。通常は金色で表現されますが、銀色(白)のものもあります。
まるで縦横無尽に飛んでいく流れ星のような「飛遊星」
火薬を詰めた円筒形の紙パイプを仕込むことで、玉が割れた瞬間に、それらが一気に飛び回る仕掛け。夜空をキャンバスに光の尾を引いて、四方八方に幾重もの筋を描くさまは、まるで流星群のよう。
わくわくする仕掛けがいっぱいの「半割物」
こちらもさまざまな演出が可能で、音だけのものは運動会などのイベントの告知にも。夜間ならばそこに発光・発色させたりといった演出も自由自在。
夜空に咲き乱れる花々が美しい「千輪(せんりん)」
上空で開発(破裂)してから、ワンクッションのタイムラグがあるため一瞬暗くなり、ぱぁっと明るくなるのが特徴です。
パチパチとはじける「花雷(はならい)」
「らっきょう」と呼ばれる音の大きな花火。主に信号音に使われますが、夜間の打ち上げならばそこに光も加えることが可能で、あたりが一瞬真昼のような、目もくらむ明るさになります。
さまざまな絵が浮かび上がる職人技「型物」
理屈上はどんな形を描くことも可能なのだそうですが、複雑な構図になればその分、花火自体の大きさも変えなくてはならないうえに、上空で展開したときにちゃんと見えるかどうかも計算しないといけない。
コミカルでかわいらしい花火ではありますが、実はかなり高度な職人技が要求される難易度の高い花火なのです。
日本の花火にはこんなに種類があるのです
使う火薬の種類の違いによって見え方も異なり、見え方が違えば名称も違う。その細かな違いや変化が花火自体の演出であるわけで、それをデザインしているのが花火師なのです。つまり、花火の良し悪し、好みは花火師の腕前やその人のデザイン傾向による、というわけ。
そう考えると、やっぱり花火は芸術作品。花火大会はギャラリーと同じで、じっくり作品を眺めつつその良さを語り合うのがオツな楽しみ方なのかもしれません。
● 冴木一馬
写真家。世界を股にかけ花火を撮り続けて30年。撮影だけでなく、花火の歴史や民俗文化をも調査・研究し、花火のことならなんでもござれ、花火師の資格まで有する日本唯一の“ハナビスト”。山形県出身。http://www.saekikazuma.com/
写真集『花火』光村推古書院刊
写真集『花火』光村推古書院刊
A4判 オールカラー96頁
ソフトカバー 本体2400円
ワンシャッター、多重露出をおこなわず、花火本来の姿をとらえることにこだわりぬいたハナビスト冴木一馬による花火写真集。