2017.06.30
海外のHANABIが今オモシロイその理由
- CREDIT :
監修・写真/冴木一馬(ハナビスト) 取材・文/岩佐史絵
ヨーロッパに花火大会はなかった?
そう聞くと、花火の本場はどこかが気になるところですが、中国で火薬が発明されて以降それぞれの国で発展していった花火は、日本のそれとはちょっと違った進化をとげています。
そもそも日本の花火が夏の風物詩なのは、江戸時代の川開きのお知らせに花火が使われたから。合図が目的だったものを、大川(現在の隅田川)沿いの料理茶屋などが客寄せのためにお金を出し合って花火を打ち上げ、納涼船からも花火をあげてほしいと注文が入り……
という風に、庶民文化として発展していったものでした。
ところが、その傾向が近年少し変わってきました。そう、海外でも花火が主役のイベントが注目されるようになってきたのです。それが「花火競技会」です。
実は国連加盟国193か国のうち、花火文化があるのはたったの30か国ほど。つまり、もともと花火文化がない国がほとんどなのです。そんななか、競技会に多くの人が集まることが分かってきたため、近年ではこうした競技会を開催する国が増えてきた、ということなのです。
日本は一発入魂、海外は演出でみせる
ここでは数週間という期間、週末に競技会が行われます。
世界中から集まった参加国が、週末になると花火を打ち上げるのですが、日本と違うのは、日本の花火がその一発を作品としてみせるのに対して、海外の花火は音楽と連動させて、全体的な構成で見せる、いわばショーに近いのです。
じつは近年、日本の花火大会でもこうしたショーの手法が取り入れられることが増えてきました。
ただ、海外の花火は長くても30分くらいで終わるものがほとんど。競技会でも、だいたい1日にひとつの国がショーをする、というのが定例なのだそう。
だから、セッティングの最中には絶対に線を踏まないよう、細心の注意を払い、膨大な手間と時間をかけて準備するそうです。1日にひとつの国のショーしか披露されないのは、そんな理由もあるのでしょう。
そんな海外の花火は、前述の通りほんの20分程度のショーが多いのですが、国際競技会が行われるベトナムのダナンは、このところ隠れ家的なゴージャスリゾートが建設ラッシュとなっていますし、マカオではミシュランの星付きレストランが目白押し。
そんな花火以外のお楽しみが多いのも海外花火のポイントです。というわけで、「こんど花火を見にベトナムにいかない?」なんて、ちょっとトリッキーなお誘いも、かなり有効かと思う次第!
● 冴木一馬
写真家。世界を股にかけ花火を撮り続けて30年。撮影だけでなく、花火の歴史や民俗文化をも調査・研究し、花火のことならなんでもござれ、花火師の資格まで有する日本唯一の“ハナビスト”。山形県出身。http://www.saekikazuma.com/
写真集『花火』光村推古書院刊
写真集『花火』光村推古書院刊
A4判 オールカラー96頁
ソフトカバー 本体2400円
ワンシャッター、多重露出をおこなわず、花火本来の姿をとらえることにこだわりぬいたハナビスト冴木一馬による花火写真集。