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2021.07.03

山田孝之主演『全裸監督2』を絶対に見逃せないワケ

Netflix日本オリジナル最大のヒット作とも言えるのが、2019年8月に配信された山田孝之主演の『全裸監督』。完結編のシーズン2が、この6月に全世界独占配信されました。アダルトビデオ業界の頂点に立った村西とおるが地に落ちていく全8話を、最後まで見届けてみませんか?

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文/長谷川朋子(コラムニスト)

記事提供/東洋経済ONLINE
Netflix日本オリジナルを代表する最大のヒット作と言えば山田孝之主演の『全裸監督』です。遂に完結編となるシーズン2が2021年6月24日に全世界独占配信されました。アダルトビデオ業界の頂点に立ち、帝王と呼ばれた村西とおるが地に落ちていく全8話。ラストシーンまで必ず見届けるべき理由があります。
▲ 山田孝之主演『全裸監督』シーズン2が6月24日に全世界独占配信された。AV女優たちに囲まれた帝王・村西とおるの運命はいかに。(写真:Netflix)

バブルが崩壊する1990年代に突入

「お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません」。この“ファンタースティック”な村西の名言が届けられるまで約2年。2019年8月に配信されたシーズン1からだいぶ時間が経ってしまったので、簡単におさらいから始めます。ノンフィクション作家・本橋信宏の『全裸監督 村西とおる伝』を原作に映像化。パンツ一丁でカメラを担ぐAV監督・村西とおるが前科7犯、借金50億円、アメリカ司法当局から懲役370年を求刑されるも、底辺からいかにして成り上がったのか。そんな怒涛の半生を日本の1980年代のアダルトビデオ業界を舞台にセンセーショナルな表現で描き切ったのがシーズン1でした。

シーズン2はというと、バブルが崩壊する1990年代に突入していきます。描かれるのは91年から94年の3年間。時代性を色濃く反映したシーズン1と比べて短期間な分、人間ドラマに軸足が置かれています。そのため、登場人物1人ひとりの関係性も復習したほうがより楽しめます。村西役を演じる主演の山田孝之はもちろん続投し、脇を固める布陣も同じ顔触れが多く、世界観そのものはシーズン1から途切れません。

人間ドラマの見どころとしては、シーズン1のラストでヤクザの世界に身を落とした村西の相棒トシ(満島真之介)と、村西が求めるエロスに最も理解を示すサファイヤ映像社長の川田(玉山鉄二)の切っても切れない村西との三角関係は外せません。3人が不器用にぶつかり合えば合うほど、村西の人間性があぶり出てくるのです。
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▲ 村西とおる(山田孝之・写真左)と共に伝説のアダルトビデオ「SMぽいの好き」を生み出した黒木香(森田望智)は再び作品制作を切望する。(写真:Netflix)
村西と同じ釜の飯を食う三田村(柄本時生)、順子(伊藤沙莉)、ラグビー(後藤剛範)の3人が友情、恋愛といった見せ場を作るサイドストーリーも加わります。そして、伝説のアダルトビデオ「SMぽいの好き」を生み出した黒木香(森田望智)は再び村西との作品制作を切望するも、それが果たされない心の変化を映し出します。

さらに、シーズン2から登場する乃木真梨子(恒松祐里)という名の新たなヒロインは村西の意外な一面を見せるカギに。ほか、吉田栄作、伊原剛志、宮沢りえ、石橋蓮司、室井滋といったベテランから、渡辺大知、MEGUMI、西内まりやら日本のエンタメ界で活躍する役者たちが演じる役柄はどれも個性的。多様な人々との関わり合いの中で村西の人生は作られていることを表現しているかのようです。
▲ 乃木真梨子(恒松祐里・写真左)という名の新たなヒロインが登場する。(写真:Netflix)
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「空からエロを降らせる」という夢

シーズン2において、ストーリー展開の核となるのは村西が衛星放送事業に乗り出す話です。「空からエロを降らせる」という夢に向けて、新会社・ダイヤモンド映像を立ち上げ、さらなる高みを目指します。口八丁手八丁で攻めていく姿はシーズン1同様に健在ですが、「何かが違う」と視聴者に思わせるような雲行き怪しいエピソードも織り込まれていき、それが最終的に、村西が詰んだ瞬間の絶望感を生々しくさせています。
▲ 人間ドラマが軸足となるシーズン2。トップAV女優黒木香(森田望智・写真中央)と新ヒロインの乃木真梨子(恒松祐里・同右)、メイク担当順子(伊藤沙莉)。(写真:Netflix)
この意図について総監督を続投した武正晴監督に直接尋ねると、このような答えが返ってきました。

「日本全体がダメになったことを村西とおる1人に背負わせて、時に物笑いのネタのようにも扱われますが、実は誰もが笑えない話。程度は違えど、誰もがどこかで経験しているはずです」

つまり、自分ごととして村西を感じることができるからこそ、絶望の生々しさが伝わってくるというのです。これは没頭できる作品に共通する点でもあります。

「“全裸監督”は決して特別な人間ではないんです。野心を持つ人ほど、頑張っても堕ちていく場合があります。あなたにも身に覚えない? あなたの両親はそうじゃなかった? 家族や隣に住んでいる人もそうじゃない? そう問いかけることができる人間ドラマを作っています」

運にも周りからも見放される村西がとことん追い込まれていく姿は最大の見せ場でしょう。「村西が最も恐怖におびえる瞬間」を作り出すことは武監督がシーズン2でこだわった点だと言います。演じた山田自身が「孤立を感じた」と話していたそうで、それがなお一層リアリティを生み出していたのだと思わずにはいられません。
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「もう一度シーズン1を観たくなる」

シーズン1の配信直後の2019年9月にNetflix日本の有料会員数が「ざっくり300万に上る」と発表され、このタイミングがNetflix日本から初めて明かされた会員数の公表となったのは『全裸監督』という成功例を作り出したことが大きかったはずです。日本のみならず、韓国やインド、タイなどアジア各国で人気トップ10入りを果たし、好循環を生み現在の500万会員数に繋がっていったとも捉えることができます。
▲ 万全のコロナ感染拡大予防対策が講じられたシーズン2の撮影現場。「これほど緊張感が途切れず長く続いたことはなかった」と話す武正晴監督(写真左)と山田孝之。(写真:Netflix)
ヒット作であるだけに、シーズン2で完結してしまうのは勿体ない気もします。そんな視聴者心理をそのまま武監督に伝えると、「最後まで見てもらうと、もうこれ以上はいいやって思いますから(笑)」と、まずは肩透かしを食わされました。そして、続いたのがこの説明でした。

「ラストカットを観たら、もう一度シーズン1を観たくなるように、そう作っているんですよ。シーズン1はあくまでもイントロダクションであって、村西やトシ、川田、黒木らをドラマとして見せていったのがシーズン2なんです」

村西に限らず、働くこと、生きることに自己投影できた登場人物がいればいるほど、まんまと制作の狙いにハマってしまうかもしれません。シーズン2では玉山鉄二が演じた川田や伊藤沙莉が演じた順子が視聴者との距離を縮めさせる役柄だと思います。

気になるラストのシーンは「無事に撮影を完了させる」という想いが集約された場面でもあることがわかりました。というのも、撮影途中の3月の時期に世界中が新型コロナウイルス流行に伴ってロックダウンに見舞われたことが影響し、万全な予防対策体制を構築するまで一度、撮影中止に追い込まれたことがあったからです。その後、Netflixが世界に向けて打ち出した対策ガイドラインを指標にしつつ、日本独自のガイドラインを決めたことで、撮影が再開された経緯があります。30年のキャリアの中でも「これほど緊張感が途切れず長く続いた現場はなかった」と武監督が話す言葉を聞くと、接触するシーンが多いだけに実現できたことに驚きすら覚えます。

「コロナの時代にこんなことをしているのは地球上で俺たちぐらいだよ」と、キャスト、スタッフに武監督が呼びかけ、撮影が始まったというラストのシーン。そこで山田が渾身の演技で放つ劇中の台詞はなんとも憎い。見届けないわけにはいきません。

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当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です
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