2019.04.19

【検証】なぜ、ハイヒールはセクシーなのか?

女性の脚をセクシーに、美しく見せるハイヒール。なぜ女性は脚の負担を押してまで高いヒールを履くのか? そして男性はなぜハイヒールに特別な感情をもつのか? その謎に迫ります。

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文/紺野美紀

あなたはハイヒールと聞いて何を思い浮かべるでしょう。高いヒールを履いた女性が背筋をピンと伸ばしてコツコツと音をさせて歩く姿は、男性なら誰でも目で追ってしまうでしょう。

ハイヒールは、確実に“いい女”度をアップさせます。脚を長く見せるスタイルアップはもちろんのこと、ふくらはぎの緊張感、左右にゆれるヒップライン、そしてリズミカルなヒールの音。どれもがセクシーで魅惑的。かくもオトコたちの心をかき乱すハイヒールの魅力をひもといてみましょう。
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“ルイヒール”から、“モンローウォーク”まで

ハイヒールの始まりは諸説ありますが、古くは紀元前400年代にギリシャの首都アテネで背を高く見せるハイヒールが男女を問わず流行したと言われています。

しかしファッションとしてのハイヒールのルーツは17世紀のパリに求められるようです。当時のパリの街は人口増加によって下水道の整備が追いつかず、道路にはたくさんの汚物が溢れていたそう。それらを避けるために人々は高い靴を履くようになったとか。

これを身長が低いことを気にしていたルイ14世が気に入って自身が開催する舞踏会などで履き始めます。それは“ルイヒール”と呼ばれ、脚線美を競うために欠かせない靴となります。まさに今に続くファッション性の高いハイヒールの原型とも言うべきものだったのです。

現在のようにハイヒールが女性のものになったのは20世紀に入ってからのこと。1920年代になり、スカート丈が短くなって女性の足元が晒されるようになると、脚をより長く美しく見せるために多くの女性たちがハイヒールを履くようになりました。
映画の中では女優たちがこぞってハイヒールを履き、見る人はその美しさセクシーさに魅了されます。マレーネ・ディートリッヒは“世界でもっとも美しい脚の持ち主”と言われ、マリリン・モンローは左右のヒールの高さを変えることで、あの独特な歩き方であるモンローウォークを生み出しました。ハイヒールは、動きのなかで見ることでより魅力的なアイテムとなるのです。

その最たるものがダンス。アルゼンチンタンゴにハイヒールは欠かせません。女性の腰の位置が高くなり、体が前傾するためパートナーの男性は抱擁がしやすくなるのだといいます。そして、“飾り足”と呼ばれる軸足ではない脚も、かかとが高くなることで独特の表情が生まれ、その動きがダンスをより魅惑的なものへと昇華するのです。
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ハイヒール=オーガズムシューズ!?

ハイヒールと性的嗜好の関係もよく語られます。滑らかな曲線で構成されるハイヒールのフォルムは、女性のボディラインの暗喩として多くのデザイナーの想像力を掻き立ててきました。フロイトはヒールを男根象徴といい、ハイヒールをフェティシズムの対象とする愛好家も世間には少なくないようです。また一部のマゾヒステックな趣向をもつ人々にとっては、高いヒールで踏みにじられることが大きな快感であるのもよく知られたところでしょう。
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1800年代のヨーロッパでは、女性が履いていたハイヒールを脱がせてそこにシャンパンを注いで飲む遊びが流行ったとか。男性たちは女性の蒸れた足の匂いとシャンパンを一緒に味わうことに喜びを見出したそうです。今もブーツ型のジョッキと並んでハイヒール型のグラスがあるというのは、ハイヒールが性的な記号として暗黙に認知され続けてきたことの証左かもしれませんね。


さて。画家カバネル作の『ヴィーナスの誕生』をご存知でしょうか。ほんのりとピンクがかった透明感のある肌色と柔らかな曲線を描く肉感的な裸体、気だるげな表情はとても官能的です。足もとをみると足指が反り返っているのが分かります。力が入り反り返った足指は性行為中の女性のシンボルだと言われています。
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アレクサンドル・カバネル作『ヴィーナスの誕生』。カバネルはフランスの画家。ナポレオン3世お気に入りの画家だった。
ハイヒールに足を入れた時の足指の形がまさにこれ。つまり、ハイヒールを履いている時の足指の形は、オーガズムの時のそれと同じだというのです。ハイヒールが「オーガズムシューズ」とも呼ばれるゆえんです。
少々こじつけ……という気がしないでもありませんが、とにもかくにもハイヒールは人々のセクシャルな想像力をかき立てるようです。
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フェミニズムの解放? それとも……

官能小説家の北原童夢氏は著書『フェティシズムの修辞学』の中でハイヒールについて以下のように語っています。
「ハイヒールをはくことは、母なる大地から離れることにより“母性”からの離脱を図る。母という子どもを育てる存在から、女という性を満喫する自由奔放な存在への飛翔」であると。
確かにハイヒールで歩く女性は、自信に満ちあふれているように見えますし、キャリアウーマンの足もとは必ずといっていいほどハイヒールです。
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一方で、ハイヒールは纏足(てんそく)と同じ意味合いだとする意見も。纏足とは中国の古い風習で、幼い女性の足に布を巻き大きくならないようにするもの。女性の歩行を困難にすることによって、家庭に閉じ込める効果があったと言われています。

ハイヒールもまた、不安定さを演出し女性のか弱さをアピールするために一役買う道具ともいえます。ハイヒールを履いている女性には、男性が自然と手を貸してエスコートする姿がよく似合います。

ハイヒールを女性の強さの象徴とするか、か弱さを演出するための小道具にするか。その答えのひとつとなるのが、世界的なシューズデザイナーであるマノロ・ブラニクの言葉です。
「女性が自然に歩けるヒールの高さは5cm以下。5cmよりも高いヒールの魅力は、女性をエスコートする存在があって初めて完成する」。
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女性を虜にするハイヒール

フランスのヴォーグ誌によると、読者の8割は靴中毒で、年間小型車1台分を靴につぎ込んでいる強者もいるとか。
そんな女性たちを虜にする靴の魅力に迫ったのが2013年に公開された『私が靴を愛するワケ』とうドキュメンタリー映画。

そのなかで歌手のケリー・ローランドは「靴はアートよ。芸術品を買うのと同じ」と言い、歌手のファーギーは「靴は私というものを表現するのに欠かせないものよ」と語ります。
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世界のセレブが夢中になる靴デザイナーのクリスチャン・ルブタンは「男も女も靴にフェティシズムを感じるんだ」と言います。
有名なハイヒールの蒐集家として思い出すのが、フィリピンのイメルダ・マルコスとルーマニアのエレナ・チャウシェスク。テレビに映し出された膨大なハイヒールコレクションには、世界中が度肝を抜かれたものです。

結局のところ、なぜ、女性たちはハイヒールに夢中になるのでしょう。ハイヒールは一日中履けばふくらはぎはパンパンになるし、指は痛いし、放っておけば外反母趾にもなります。それでも、ハイヒールを履くことを止められない女性たち。

ある女性はこう言います。
「ハイヒールに足入れをするたびに味わう高揚感をオーガズムだと思うのなら、それでも結構。背筋をピンとのばし、コツコツとリズミカルにヒールを鳴らせばアドレナリンが湧いてきます」。
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女性たちは、セックスアピールするために我慢してハイヒールを履いているのではありません。彼女たちはハイヒールのもつ美しさに魅了されているのであり、美しいハイヒールを纏うことで自らがより魅力的な女性へと駆け上がれる、そう感じさせてくれるからこそハイヒールを履くのです。つまり、ハイヒールは女性にとっての魔法のスイッチ。

オトコたちに出来るのは、そんな足元の不安定なシンデレラたちをさりげなくエスコートすることだけ。ハイヒールを履いてセクシーに美しく輝く女性たちをそっと眺めてひと言賛辞を贈る、それがオトコにとっての正しいハイヒールとの付き合い方かもしれません。

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