肉を一切断つのではなく、菜食を中心に、状況によっては肉食をフレキシブルに取り入れる“フレキシタリアン”もアメリカでは広まっており、ダイエットを目的にこの方法を取り入れる人も増えているようです。
実際筆者も肉や魚はやめられないタイプで美味しいお寿司やステーキが食べたいことだってあります。しかし最近では前述した動物倫理や環境問題が気になることもあり、意識して肉食を抜いた食事も摂るようになりました。
アメリカのスーパーではプラントベースミート(植物由来の代替肉)も充実しているので、興味本位で色々楽しみながら試しています。こうした動きはファッションで言うエコファーブームともリンクしているなと感じます。
先日マンハッタンの中心部、ユニオンスクエアの駅でも仮面を被ったグループが牛の映像を流しながら畜産業に抗議している姿を目撃しました。徐々に普段の生活で動物倫理、環境破壊への意識の高まりを感じるようになっています。
今回ご紹介する「培養肉」も代替肉の一種とされるのですが、大豆などの植物由来から作られたプラントベースミートとはまったくの別物。動物の細胞組織の一部を組織培養することによって育てられるお肉のことで、最先端の科学を駆使して作られており、成分的にも本物のお肉と変わりありません。
2020年はプラントベース市場が急成長を遂げた一年でしたが、今年に入って初めて代替卵などを販売しているアメリカEat Just社が開発した培養肉GOODMeatの鶏肉がシンガポールの会員制レストラン「1880」での取り扱いが始まるなど、培養肉の注目度が上がっています。
注目の培養肉企業、オランダのMosa Meat社にインタビュー
── Mosa Meatを創業したきっかけを教えてください。
COOのPeter Verstrateは、オランダ政府が助成金を出して培養肉の可能性を探っていた際に、オランダの培養肉研究の第一人者、Willem van Eelen氏から声をかけられました。
PeterはMosa Meatのもう一人の創業者であるMark Postに2006年にこのプロジェクトで出会い、フードシステムを変えたいという共通の情熱をもった2人は、プログラム終了後も培養肉の研究を続けました。
やがて彼らの活動は、Googleの共同創業者であるSergey Mikhailovich Brin氏の目に留まり、研究開発を加速させるために多額の資金提供を受けることに成功。
その支援を受け、2人は2013年に世界初の培養ハンバーグを発表し、2016年にはそのコンセプトを本格的に展開するためにMosa Meatを設立しました。
── 最近では、日本を含め、世界中で植物性の肉の選択肢が増えてきています。培養肉の可能性についてどう思いますか?
世界各地で、多くの人が自分の健康と地球のために食習慣を変え始めています。私たちは、Mosa Meatがこのトレンドを補完し、加速させるものであると考えています。
気候危機への対応を成功させるには、従来の食肉生産による悪影響を軽減するために迅速に行動しなければなりません。
私たちは、肉を愛する人たちに、本物の肉の魅力を諦めることなく、地球への影響を減らす方法を提供します。私たちはこれまでの牛肉に代わって動物に親切でクリーンな方法で作られた牛肉を提供しているのです。
今回、レオナルド・ディカプリ氏がアドバイザーとしてMosa Meatに参加してくれることに、私たちは資金面での投資と同じくらい興奮しています。レオは、環境保護活動家として高い評価を受けており、栽培牛が消費者に受け入れられるようにするという私たちの目標にとって、非常に重要なプラットフォームを持っています。
私たちの使命は一致しており、フードシステムの持続可能な未来を築くために共に働けることをうれしく思います。
私たちは培養肉の技術の先駆者として、現在、世界中の80以上の企業がさまざまな形で細胞農業に取り組んでいることをうれしく思っています。私たちがこのムーブメントの火付け役となったことは私たちの遺産の一部となるでしょう。
いまは企業として、ファンを増やすということと、培養肉のハンバーガーへの熱狂を広めて行くという非常に具体的な目標に集中しています。消費者は変化を求めているので、美味しくて地球にも優しい選択肢を提供していきます。
我々は世界に培養肉を紹介し、誇りをもって肉食製品を市場に送り出すことに専念しています。私たちは品質にこだわり、現代人が慣れ親しんでいる味、食感、匂い、シズル感、口当たりの良い牛肉を作っています。鶏肉や魚から始めるのは簡単だったかもしれませんが、牛肉は環境への悪影響が最も大きいので、私たちは使命感をもってそこから始めることにしたのです。
ハンバーグ、ミートボール、ハンバーガー、そぼろ丼など、お肉が好きな方には、ぜひMosa Meatを楽しんでください。私たちのチームは現在、世界23カ国を代表者するチームで構成されていますので、私たちの牛肉を何十種類もの家庭料理に使って、一緒に料理をするのが楽しみです。
現在、複数の地域で私たちの牛肉の規制当局による承認を得るプロセス中。承認が得られれば、品質と持続可能性への情熱を共有するシェフのいるレストランでまず販売を開始し、その後、食料品店に移行する予定です。
私たちは日本市場に期待し、日本細胞農業協会のメンバーであることが光栄です。日本細胞農業協会は、企業、学者、規制当局、公務員からなるコンソーシアムで、培養肉をすぐに日本に持ち込むための最善策を検討しています。
家族経営の農家や牧場主はとても勤勉な人たちですが、多国籍企業による大規模な農場の統合により、その経営状況は衰退の一途をたどっています。ヨーロッパだけでも、近年400万軒近くの家族経営の農場が失われてるのが現状。そのうえ、EUはアマゾンの森林破壊に関連するブラジル産牛肉を何十億ユーロも輸入しています。
2050年には100億人もの人々を養う必要があると言われているので、産業規模の集中的な畜産による環境破壊に対処しなければなりません。Mosa Meatはそのギャップを埋める手助けをしたいと考えています。
私たちの技術は、何十年にもわたって変革をもたらすものになるでしょう。培養肉の進化と従来の農業の改革を組み合わせることで、気候変動に対処し、培養肉は増加する世界人口を養うことができるのです。
Mosa Meatは社会的企業の典型的な例あり、私たちが大きくなればなるほど、より多くの肉を作れば作るほど、地球へのポジティブな影響が強くなります。自分たちの貢献についてグローバルに考えていますが、同時にローカルにも行動しています。
現在、ソーラーパネルを備えたパイロット生産施設の建設が完了し、すでに風力発電を導入。私たちの車両は電気自動車で、水もできるだけリサイクルする方法を模索しています。急成長中のこのビジネスのあらゆる面で、基礎的な社会貢献を実践することが重要だと考えてます。
早く手軽に美味しい培養肉が食べられる日が来て欲しいものです。では!
■ お問い合わせ
Mosa Meat日本PRパートナー
流郷綾乃 ayano.ryugo@gmail.com
● 菅 礼子
LEON編集部で編集者として勤務し、2018年に渡米。現在はニューヨーク在住、LEON特派員。ニューヨークのライフスタイルの情報から世界中の旅の情報までを執筆している。