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2018.12.04

SNSがきっかけで“映画”を製作することに!?【vol.06】

シンガポールを拠点にアジアを巡るエンジェル投資家、加藤順彦ポールさん。この10年、東南アジアを中心に周る中で得た、投資の知識や処世術、そして関わるひととの熱いドラマを展開します。

CREDIT :

文/加藤順彦

SNS(twitterとFacebook)とブログを始めてもう10年。以来、息をするようにソーシャルと向き合いつつ、日々この素晴らしさ、凄さを感じています。物理的にネットのなかだけで“知っている”知人もたくさん。シンガポールにいるので、余計にそうなります。

でも、だからこそ本当に会いたい人がいる時は地球のどこであっても、直ぐにアポを取ることにしていて。その日取りは明日のときもあれば、物理的な距離の問題やその時でないと意味が薄い(催事や興行に立ち合うなど)とかで、半年後のこともありますが。お相手が会ってくれさえすれば、自分が動いて出ていくので会えないはずもないのですが。どちらかというと問題は先方が相手(私)に会ってもいい、と思ってもらえるかどうか、なのです。

ASEAN生まれの監督が手掛けた、大阪を舞台にした映画に衝撃

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2011年10月。twitterでシェアされ、年末に大阪で上映されるというマレーシア人が撮った映画のトレーラーを観て雷が落ちた感がありました。トレーラーには僕がよく知っているはずの大阪が、観たこともない感覚と視点で描かれているような気が……。調べると、監督は大阪で暮らしていると。ASEAN生まれの人が大阪をこんなふうに撮るのか、と衝撃を受けたのです。

12月末、大阪は九条にある名画座シネヌーボォにその映画『新世界の夜明け』を盟友・田中泰延さんと鑑賞。上映後は予めtwitter経由で連絡をとっていたリム・カーワイ監督を近くの居酒屋に招きました。そして映画について、大阪について語り合ったのでした。

監督との出会いをきっかけに、大阪を舞台とした作品に出会う

翌年8月。リムさんから連絡を貰い、東京で会いました。彼は映画の企画書を持参していました。

しかし読むには読んだのですが、今度はピンとはきませんでした。逆に、僕は尖閣列島・竹島問題の影響で深刻な訪日観光客離れを起こしていた大阪ミナミを盛り上げるような映画の企画がないか、と訊いてみたのです。

そしたら……ありました。なんと心斎橋筋商店街の偉い人と進めていたけどボツになっていた『恋する心斎橋』という企画案がある、というのです。

直ぐに送ってもらい目を通しました。確かにありました。何故あったのか、理由はよくわからないのですが。
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偶然が偶然を呼び、初めて映画を作ることに

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3週間考えて、2011年に参画していたシンガポールの制作会社「Duckbill Entertainment」をビークルとして、その映画を創ることにしました。こんなことが現実だとしたら何かがおかしいからです。

勢いで映画の製作資金を集めることにした、とFacebookに書いてみました。すると学生企業「リョーマ」をやっていた時分に映画の製作資金を集めようと走り回り、結局一円も集められなかった時の同僚、木下勝寿さんが会社(北の達人コーポレーション)にて出資する、と連絡してきてくれたのです。そしてカラオケ仲間の弁護士、浦勝則先生からも出資するというメッセージが届きました。

また、実際にミナミで映画を撮るには超法規的な大御所がいないと撮影の許諾が得られないと思った僕は、30年来の大先輩 井原正博さんに協力を仰ぎ、出資のみならず、キャスト・クルーの基地まで用意していただいたのです。

撮影は2012年12月中旬から翌年1月中ごろまで、実際の大阪ミナミの年末年始を舞台に、ソウル、香港と3カ所ロケで進行。2月の末までかかった編集で仕上がった映画『Fly me to Minami~恋するミナミ』はそのまま3月の大阪アジアン映画祭で初上映を迎えました。

日本一の広告会社の会社員 田中泰延さんには、会社としてトレーラーの制作を請けてもらい、空前絶後の傑作ができました。そして、12月には東名阪の7つの劇場公開にこぎついたのです。頬をつねってみたけれど夢は醒めず、ソーシャルネットワークってすごいな、とまだ続きの日々のなかにいます。
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公開から5年。いまでも覚めない興奮がある

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時は経ち、いまや大阪はアジア最大の観光地になりました。2017年は1111万人もの訪日観光客が大阪府を訪れています。朝から翌朝までえらい賑わいでごった返しているミナミの往来の90%は、大阪の人ではなくなっています。世界中の目抜き通りを歩いていますが、ニューヨーク五番街にもパリのシャンゼリゼにも、どこにも退けは取りません。

あのとき『Fly me to Minami~恋するミナミ』を創ったことは、まーったくその成果に影響してはいません。ですが、作品で描こうとした大阪の人々とアジアからの異邦人たちとの心の触れ合いは本当の意味ではこれからや!と感じているので、劇場公開から5年経った今も多くの人に観てもらいたいと思います。

SNSが人生を変えるきっかけになる

んで、僕はそんなことをSNSでアピールし続けていることによって、奇特にも会いたいと思ってくれる、新しい友達と巡り合えているのだと思うのです。

“物見遊山、観光地”の季節が終わっても、大阪が世界の人々にとって本当に会いたい人がいる場所に進化していく必要はまだまだあるはず。毎年、クリスマスの時期に大阪でその映画をアンコール上映しているのはそれ故なのです。クロスボーダーコミュニケーションが実現しているシンガポールにいると、その差がはっきりとよくわかります。あ、今年の上映は12月21日(金)18:45〜、大阪ミナミのシネマート心斎橋です。リム監督、田中泰延さんと共に僕も舞台挨拶に立ちますので、是非お越しください。

2025年の大阪万博、カジノを中心とした統合リゾート、これからますます国際都市になっていく大阪が楽しみで仕方ないし、夢は醒めそうにありません。
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● 加藤順彦ポール(事業家・LENSMODE PTE LTD)

ASEANで日本人の起業する事業に資本と経営の両面から参画するハンズオン型エンジェルを得意とする事業家。1967年生まれ。大阪府豊中市出身。関西学院大学在学中に株式会社リョーマの設立に参画。1992年、有限会社日広(現GMO NIKKO株式会社)を創業。2008年、NIKKOのGMOグループ傘下入りに伴い退任しシンガポールへ移住。2010年、シンガポール永住権取得。主な参画先にKAMARQ、AGRIBUDDY、ビットバンク、VoiStock等。近著『若者よ、アジアのウミガメとなれ 講演録』(ゴマブックス)。

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