2019.03.14
【第14回】
篠原涼子似の美人SM女王「男性は縛られて初めて“あ、俺やっぱりMかも”と気付くんです」
美人とは「美」という高スペックを備えたスーパーカーのような存在。その“スーパーぶり”に男は憧れるわけですが、果たしてそのスペックは彼女に何をもたらすのか?「ワイングラスのむこう側」(cakes)で人気の林伸次さんが、世の美人たちの隠されたプライベートに迫ってみる連載です。
- CREDIT :
構成/木村千鶴
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この企画で色んな美女に来ていただいているんですが、遂に来たかと思いましたね、SMの女王様。皆さん女王様にはどんなイメージをもっているでしょうか。威張ってる? 強そう? 僕はそんな感じでしたが、いやいや~、すごく知的で素敵な方でしたよ。やっぱり本物はちがうな~。
抱くより抱かれたい男性って、結構いるんですよ
「自分のことは美人と思わないですけど(笑)、18歳の時に六本木でスカウトされたことがあります。それがSMクラブのマネージャーだったんですよ。信号待ちしてたら、『君女王様になった方がいいから』って」
え~っ! 18歳でSMクラブのスカウトマンに! そこからずっとこの世界に?
「いえ、その時は半年くらい在籍してやめたんです。大学生だったので勉強もあるし。とりあえず半年で辞めて、しばらくはSMから遠ざかっていたんですよ。でも26歳くらいの時かな、まだ私にはやり残したことがある。SMを究めなきゃ!ってなんか思っちゃって(笑)」
──でも18歳でSMクラブに入るの怖そう。プレイのやり方とかって誰か教えてくれるんですか?
「凄く興味があったから怖くはなかったですね。来た来た~って思いました(笑)。今、ちょうど先輩女王様がプレイしているからって、横で見させてもらって。いいな~、やってみたいな~と」
──元から興味があったんですね。すると目覚めたのはいつ頃ですか。
「幼稚園くらいの頃から好きな子を支配したいという気持ちがありました。なので男子からとても嫌われる存在ではあったんですけど、一部の男子に崇拝されると言いますか(笑)、そういう子どもだったように思いますね」
「中学校に上がってからは、カッコいいなって思う女性はだいたい赤い口紅に黒いレザーのグローブ、黒いレザーのジャケット。それでちょっと悪いことをするっていう(笑)」
──やっぱり本当にそういうのが好きだったんですね。実は、なんか作り物みたいな、Sっぽく振舞っているような怖い人が来たらどうしようって、内心ドキドキしていたんですよ(笑)。
「アハハ。それでもね、SMクラブでは女王様としてのキャラクターをある程度はつくらないといけないんです。M男ちゃんが求める、理想の女王様像っていうのがそれぞれあるので」
──理想像に合わせなきゃいけない?
「はい。プレイに入る前に、彼がどういう女王様を求めているのかをカウンセリングするんですよ」
──始めにカウンセリングが! どんなことを聞くんですか?
「ん~、SMクラブの経験の有無、何に性欲を覚えるか、どういう世界観が好きなのか、目覚めたきっかけとかを質問していきますね」
──その段階からタメ口ですよね(笑)。そこからもう始まってる感じでしょうか。
「タメ口っていうより、上からですね。皆さんSNSなんかで、好みのビジュアルの女王様やプレイ内容の好みが合いそうな女王様を探してくる。探すところから、彼らはもう始まっています。すっごく楽しいみたいですよ。カウンセリングの段階からもう皆さん心も体も準備できていますね」
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お試しで縛られて、気づきを得ることもあります
「そうですね(笑)」
──ところで現在のお店はSMバーということですが、SMクラブとはどう違うんですか?
「アマルコルドは、SM(フェティッシュ)バーなんです」
──バーってことは、一般の人も行っていいんですね?
「もちろん。看板だけ見て飛び込みで来る人も結構いますね。M男だけでなく、一般男性や女の子、セクシャルマイノリティのカップルの方も来ますよ」
──興味本位で来る人もいるでしょうけど、反応はどうですか?
「なんだかんだ言っても皆さん楽しかったって帰ってくれますね。“俺、SでもMでもないから”っていう方もいらっしゃいますが、デモンストレーション的に軽く縛ってあげると、そこで気づきのようなものが生まれることもあります。“あ、俺やっぱりちょっとMかも……”とか、“俺、やっぱり駄目だ、Sっぽい”とか、ご自身の中でそれなりに答えを出して帰られるんです(笑)」
──あ、バーの中でそういうこともやるんですか!
「はい、店内には常に何かできるように、そこら中にいろんなものが置いてあって」
「ライトなプレイをしても、別料金とか取ってないんですよ。めちゃくちゃいいお店ですよね?(笑)。みんなにするわけじゃないんですが、ちゃんと素直に興味を示してくれる子にはやりますよ」
──うわぁ、ほんとですか? 店内ではどんなことまでできるんですか?
「まず性器は露出禁止なんですけど、男性はパンイチにはなってますよね」
──すると来ている女性客が「きゃ~、なんか楽しそうなことしてる~」って(笑)?
「変態さんにはもってこいの空間ですよ。見られて、嫌がられてさらに興奮するっていう」
──自分の性癖を恥ずかしがらないで、みんなの前で見せるっていう流れ、今、ありますよね。
「そう思いますね。会社の上司や同僚と5人位で来て『やっぱ俺Mだわ~!』なんて人もいて。かなりオープンになってきてるのかなぁと。むしろ一般の方が凄いですよね」
物に固執するタイプと行為に固執するタイプに分かれます
「ん~、どうでしょう。膨大なデータはもっていますけど、一般的な心理学とかカウンセラーとかとはまた違うかな。変態図鑑みたいな感じで、『出たな、こいつ○○の変態だ』って種類みたいなのはわかります」
──変態ってどんなものがあるんですか?
「大きく分けると、コレクター気質のものとそうでないもの、物に固執するのか、行為に固執するのかに分かれますね」
──あ~そうなんだ。面白い~。
「コレクターでもまた細分化されていくんですけど、ハイヒールが好きだったり、ストッキングが好きだったり、色々ありますよね? それは物に固執するタイプ」
──それはなんとなくわかりますねえ。じゃあ行為の方は、
「これも理解に苦しむようなことに性的興奮を覚える人もいるんですよ。例えば一般的に言うと、顔を踏まれるとか、土下座をさせられるとか、顔に唾をかけられたいとか……」
──あぁ、それは一般的なんですね(笑)
「あとはもう犯罪だなって方向に行ってしまう人も」
「あ~、そういうのもありますが、攻撃的なMといいますか。ここでは内容を伏せますが、自分のフェチを満たすために、無理やり他人ににじり寄るような行為をする人がいるんですよ。それってもうMじゃなくてただの犯罪者ですから。でもそういうタイプもSMクラブに来ることはある、だから警戒はしています」
──するとそういう時には注意するの?
「もちろん。足を舐めるのが好きっていうから舐めさせて遊んでますよね。そしたらスイッチが入っちゃって、足をいただいてるんじゃなくて、取りに来るヤツがいるんです。そうなったら中断です」
──あ~、ひとつひとつ教えていかないといけないんだ……。
「調教ですね」
──なるほど~。それが調教なんだ!
「しつけですね。犬だってちゃんときれいにご飯を食べられるようにしつけるでしょう」
──やっぱりそういうことを繰り返すうちに、男性もちょっとずつ高まっていくんですか?
「新しい扉を開けたがる変態に関してはそうですね。『涼子さんに何年もついて行ったことによって、こんなことが出来るようになりました!』というタイプもいれば、『僕はこれだけをしていたいんです』っていうタイプもいる」
──そんなピンポイントな人もいるんですね。これもステレオタイプの質問ですが、皆さんちゃんと普通に働いている方なんですよね?
「はい、家庭をもっている方もいますし」
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調教して満たされるのは、支配欲と知識欲です
「年代にもよります。年配の方では、新聞の三行広告で面白い風俗店を探している時にたまたま出会っちゃった人もいれば、小さい頃から女性の尻に敷かれるのが好きだった人もいる。20代の子は圧倒的にAVですね。『フェチものを見て○○っていいなって思ったんです。だから僕Mですよね』とか言ってくる。でも、ちょっと浅い(笑)」
──ワハハ、浅いんだ。じゃあ、本当のMじゃないとプレイはしない?
「いえいえ、そんなことはありませんよ。とりあえずお手合わせしてみて、お互いに新しい楽しみを見つけられれば。最終的には相性だから」
──涼子さん自身は、プレイ中に興奮して性欲も満たされるんですか?
「女性がSの場合って征服欲は満たされるけど、それがイコール性的欲求を満たされるかっていうとちょっと違うんですね」
──性欲ではないんですか。
「支配欲を満たすことによって、普段の生活とのバランスをとることができるといった感じです。それとですね、私の場合、世の中にはどんな変態がいるんだろうって、全部知りたくなっちゃって。これはSMクラブしかないって思ったんですね」
──そっか、知識欲だ。
「そうですね、どちらかといえば知識欲を満たしている感じです」
──なるほど。涼子さんは女性同士でもするんですか。
「はい、女性でもしますよ。女性は頭の中にいろいろファンタジーがあって、要望も細かいんです。欲が深いと言いますか」
──そのオーダーに応えていくって高度ですよね。
「複雑ですからねぇ。男性は“好き”がはっきりしているけど、女性の場合は全体的に吸収力が良くて柔軟なので、あれもこれもと欲張りになっていくんですよ」
──これまでイメージ的に、Sの言うことを一方的にMが聞くって単純に思っていたんですが、強い快感をもっているのはMで、要望までするんですね。それに応えていくんだ……。なんか、大変ですね、Sって。
「そうですね。仕事なので割り切っていますが、女王様の中には仕事でのプレイはしないという人もけっこういます。相手の希望を満たすための調教、希望調教になってしまうので」
──あぁ、Mの希望を満たすためって、なんかこんがらがってますもんね。M気質の人って世の中には多いのかなあ。
「一時期、草食男子って言葉がはやりましたけど、受け身のセックスが好きな男性って結構いるんですよ。特に若い子。そして、なんかセックスに興味もてないのはなんでだろうって、SMクラブに来る人もいますよ」
──色々悩んで、自分はⅯかもしれないって思って扉を叩くこともあるんだ。そういう場合ってやっぱりMだったりしますか。
「しますね。抱くより抱かれたいみたいな」
──わ~、人間って不思議だな~。
「あとはね、年齢が上がってきた男性もなぜか女性に抱かれた方がいいかもって、加齢とともに女性化してくる人もいます」
──あ~そっか、わかる感じがします(笑)。いや~SM深いわ~。
取材協力/アマルコルド
http://amarcord.jp/
住所/東京都 新宿区 新宿 2-18-7 S3ビル1F
問い合わせ/ ☎03-6457-7477
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そんな涼子さんをワインに例えると
FITOU
グルナッシュとカリニャン、ムールヴェードルという品種でつくられています。濃厚で果実味たっぷり、とても妖艶なワインなんです。SMの女王様、涼子さんのイメージにぴったりでした。
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■ Bar bossa
住所/東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
TEL/03-5458-4185
営業時間/18:00~24:00
定休日/日、祝
● 林 伸次
1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷にbar bossaをオープンする。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSをオープン。選曲CD、CD ライナー執筆多数。「ワイングラスの向こう側」(cakes)で連載中。著書に『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる』(幻冬舎)がある。