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2019.04.12

藤原ヒロシ インタビュー「壊したり、はみ出したりするのが好き」

今回は日本の、いや、世界のファッション&カルチャーシーンの最重要人物として知られる藤原ヒロシさん。キング・オブ・ストリートとも称される氏が、あのハイジュエラー、ブルガリとコラボレーション、しかも初のレディスモデルも手がけたという。「BVLGARI ✕ FRGMT(ブルガリ ✕ フラグメント)」のビッグニュースとともに、氏のクリエイションの源に迫った。

CREDIT :

インタビュー/石井 洋(LEON.JP編集長) 写真/人物・前田 晃(MAETTICO)、静物・蜂谷哲実(hachiya studio) スタイリング/静物・稲田一生

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LEONの周辺には有名無名にかかわらず、同じ男から見ても格好のいい“大人の男”が大勢いる。そしてそんな男たちとのフリートークを通して、さまざまな発見、気づきをもたらす「Interview with」。

今回は日本の、いや、世界のファッション&カルチャーシーンの最重要人物として知られる藤原ヒロシさん。キング・オブ・ストリートとも称される氏が、あのハイジュエラー、ブルガリとコラボレーション、しかも初のレディスモデルも手がけたという。「BVLGARI ✕ FRGMT(ブルガリ ✕ フラグメント)」のビッグニュースとともに、氏のクリエイションの源に迫った。

聞き手は自身も若い時から氏のクリエイションを見つめてきたという、本誌LEON編集長兼LEON.JP新編集長の石井 洋。

● 藤原ヒロシ / ファッション・デザイナー、ミュージシャン、大学教授。 fragment design主宰。 HIROSHI FUJIWARA

三重県出身。クラブシーン黎明期にロンドンに渡り、パンクシーンの最重要人物、マルコム・マクラーレン(セックス・ピストルズのプロデューサー、ヴィヴィアン・ウエストウッドのパートナー)らと交流。ニューヨーク渡航後、クラブDJとしても活動。1985年、高木完とのヒップホップユニット、タイニー・パンクス結成。90年代からは音楽プロデューサーとしても活動。小泉今日子、藤井フミヤ、UAらをプロデュースし、自身もソロのシンガーソングライターとして活動する。一方で、音楽、ファッション、スケートボード、スノーボード、アート、映画、食など、さまざまなシーンで彼が注目するものが時代の最先端として受け入れられ、絶大な影響力を生み出すように。デザイン集団「fragment design」の主宰として、ナイキ、グッドイナフ、リーバイス、ヘッドポーター、バートンといったストリートブランドから、ルイ・ヴィトン、タグ・ホイヤー、モンクレールなどのラグジュアリーブランドともコラボレーション。銀座ソニーパーク地下でコンビニエンスストアをテーマに掲げた「ザ・コンビニ」出店。ポケモンとの共同プロジェクト「THUNDERBOLT PROJECT」発足etc.と、その活動は多岐に渡る。

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「壊したり、はみ出したりするのが好き」

藤原ヒロシとLEONという取り合わせ、実は意外じゃない(石井)

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石井 洋(以下:石井)
ご無沙汰してます。今日はLEONで初めてのヒロシさんの単独インタビューです。LEONと藤原ヒロシ、という取り合わせを意外に思う人も多いと思うのですが、実はそんなことなくて。最近のルイ・ヴィトンやモンクレールのコラボはLEONでも非常に反響が大きかったんですよ。

藤原ヒロシ(以下:藤原)
そうなんですね。それは嬉しいな。じゃぁ、どんどん取材してください(笑)。

石井 ボクも高校生の時から雑誌などでヒロシさんの活躍を見てたクチで。LEONの前、20年以上前でしょうか、フリーランス・エディターの頃はヒロシさんのページを作らせてもらったりもしてました。そんなボクが今45歳。藤原ヒロシ第一世代がLEONのコアターゲットとリンクしてきた、ということなんじゃないか、と。そんな流れの中で、今回のブルガリとのコラボレーションはとても大きいニュースでした。まずはそのきっかけから教えてもらえますか?

藤原 ある日、ブルガリのジャン-クリストフ・ババンさん(ブルガリ グループCEO)に呼ばれて、「何か一緒にできない?」と。いわゆるラグジュアリーブランドの中でも、ブルガリは一番遠い存在かなと思ってたし、しかもその内容がレディスのアイテムを手がけて欲しいというオファーだったので、正直とても驚きました。

石井 レディス! それは確かに意外ですね。

藤原 そうそう。でもその意外性がむしろ面白そうに感じられて。何ができるのか、と考えていきました。ミラノのブルガリホテルは好きだし、ブランドとしては時計のイメージが強かったのですが、レディスも含めたオファーが良かったのかもしれませんね。ボクは今までもアンバランスだったり、ギャップというものに惹かれてきたタイプ。だからこのプロジェクトを俯瞰して見た時に、これは(ユーザーに)面白く映るんじゃないかなと思えたんです。

石井 なるほど。これまでのヒロシさんのクリエイションといえば、実際に自分が持ちたいものをリアルに作ってきたイメージがありますが、今回はどういう意識でレディスを手がけたんですか?

藤原 ミューズを想定してというような、具体的なイメージはなかったんですが、ベースとなるプロダクトを見た時に、自分なりに「こうしたら格好いいな」と改変するイメージはすぐ湧きました。もちろん、せっかくなら自分が持ちたいものも絶対作りたいと思って、ユニセックスで使えるものも作らせてもらったんです。

石井 このトートバッグやスカーフなんかはまさにそうですよね。

藤原 例えば「セルペンティ(ブルガリの代表的な蛇のモチーフ)」も、ここをこうしたら面白いというのはすぐ思いついて。例えばそういうディテール面からのアプローチでしたね。
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ユニセックスで使えるトートバッグは、「BVLGARI」と「FRGMT」のコラボロゴをあしらったカプセルコレクション「BBフラグメント」より。スムースでしなやかな上質カーフ素材を採用。2種のハンドルを備え、実用性も十分。カラーバリエーションはブラックとヌードクォーツ。各18万円(W35×H36×D11㎝)/ともにブルガリ(ブルガリ ジャパン)
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ボクは影響を与えているのではなくて、単にきっかけなだけ(藤原)

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石井 「セルペンティ」の頭にサンダーボルト、には驚きました。さらに言うと、業界の大前提・常識として「ロゴはブランドの命」という考え方があると思うのですが、今回のハンドバッグは、ロゴの一部をあえて隠したりしている。実はいちばん驚いたのはそこなんです。
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ブルガリを代表する蛇のモチーフであり、「魅惑」のシンボルでもある「セルペンティ」をサンダーボルトで大胆にアレンジ。藤原さんもこのモチーフについては「冬になると銀座のお店全体を覆っていて、印象は強かった」との弁。
藤原 そう言われて初めて、「そういうものなのか」と思いました(笑)。そうか、それがブランドなのか、と。でもボクはもともと隠したり、削ったりすることを面白いと思う質(たち)だから。ボクがモノを作り出した80年代や90年代は、ありもののTシャツやパンツにプリントすることから始まったんです。でもそれだと誰でもできてオリジナリティがないし、すぐに真似されちゃう。だからポケットを外してそこにプリントをして、その上にポケットをまたつけるというような工夫をしていたんですね。そしてそこに価値があると思っていた。このハンドバッグは元からレイヤードされたデザインなので、そんな同じ感覚で遊べるかなと。

石井 ブルガリ側からのNGはなかったんですね。

藤原 そうですね。これはダメ、というような縛りはほとんどありませんでした。もちろんブルガリサイドのスタッフと話し合いながら決めていくので、もっとこうしたほうがいい、こうしないか? などの提案をお互い出しながら進めました。例えばトートバッグはもっとカッチリした方がいいのではないか? という話もあったけど、自分が持つならくったりしなやかなほうがいいと提案して、そうさせてもらったんです。

石井 そういうところ、本当にブレてないですよね。そんな人、まずいない(笑)。そのブレのなさ、変わらなさが今のヒロシさんの立ち位置に繋がっているとも思うのですが、「日本を代表する~」という紹介のされ方やポジションについて、ご自身ではどう思っているんですか? 何か意識します?

藤原 いやいや……(苦笑)。どこの代表とか、所属というような意識はないですね。むしろそういったことはまったくいらない、というか。人間として、個人として、みんなと同じ中のひとりです。

石井 そういうアティテュードもホント変わらないですね。過去から現在に到るまでヒロシさん発信でさまざまなものが流行りましたが、例えばヒロシさんのフォロワーというか、そこに影響を受けている人についてはどう思っているのですか?

藤原 もちろん嫌ではないですよ。でも取り立てて嬉しいという感じでもないですね。ボクが影響を与えているというよりも、ボクが単にきっかけだっただけ。同じ趣味の人、同じ種類の人なんだろうなと思います。
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LEONは何をどう合わせてもLEONっぽくなるのが不思議(藤原)

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石井 話を一旦戻しますが、今回のクリエイションで苦労したことはありましたか?

藤原 いや、本当にそれはなかったかな。ボクは基本的に自分の我を通すタイプではなくて。打ち合わせを重ねていくなかで、クリエイションの範囲に制限ができたとしたら、そこから少しだけはみ出すことをやりたいんですよね。

石井 それがヒロシさんの独特のヒネリ、というわけですね。

藤原 制限があるものを少し壊したり、はみ出したりするのが好きなんですね。ツイストのしがいがある。なんでも受け入れて「イエーイ!」というのは、味がなくなるし、面白くないなと。話は逸れちゃうけど、ダンスが学校の授業にあるというのは、どうなんだろうと(笑)。元々ストリートだったものが公になって、健全すぎる中で学習をする。でもそれって本当に面白いのかどうかは疑問で。ちょっとした後ろめたさ的なこと、制限されているようなシチュエーションがあるからこそ、面白がれたり遊べたり、夢中になれたりするんじゃないかなと、そう思うタイプですからね、ボクは(笑)。

石井 そうですね“少し壊す、少しはみ出す”というところに面白さがあるという話には、とても共感できます。LEONもこの17年間の中で、クラシックスタイルやスーツ、カジュアルに関しても、“少し壊す、少しはみ出す”を提案してきましたから。

藤原 LEONやLEON読者ってすごく面白くて、普通は若い子がラグジュアリーブランドやストリートブランドのものを身につけると、それが本人のレベルを何かしら引き上げてくれたり、変えてしまうものだと思うんだけど、LEONは、最終的にLEONっぽいとなって、なじませてしまう力がある。そこが不思議。なんででしょう?

石井 ん?、なんででしょうね(笑)。でも、いわゆるリッチ層が多いので、それを持つこと・身につけることに経済的な気負いがないというのはあるかもしれませんね。それと、今の40~50代は、お洒落に目覚めた時にすでにトラッド、DC、ストリート、モード、古着などなど、様々細分化されたお洒落のジャンルが存在していて、いちいちそこを通過してきた人たちというのも大きいのかも。ちょっとしたアドバンテージがあるというか、そうした経験をしてきた人たちが今の自分に何の気負いもなく合わせている、ということなのかもしれませんね。
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これが初めてのブルガリ、という人が持ってくれたら嬉しい(藤原)

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石井 続けて伺いますが、今回のコレクションでいちばん気に入っているものは何でしょうか?

藤原 やっぱり自分でも持てるトートバッグ。それと、これから出る予定なのですがウォレットチェーンかな。それと女性ものではデニム素材のミニバッグですね。先ほど「こんな人に持って欲しいというのはない」と言いましたけど、今までブルガリに触れてこなかった人が持ってくれたら嬉しいかな。そういう人にとっての、初めてのブルガリになってくれたらいいなとは思います。

石井 セルペンティにサンダーボルトのコラボデザインが、初のブルガリだなんて、なんだかワクワクする話ですね。そういえばこれまでのヒロシさんでありfragment designのコラボレーションで蛇モチーフなどはありませんでしたよね?

藤原 ですね。なかったと思います。蛇ってヨーロッパでは富の象徴であり、セダクションだったりするけど「日本の女性は基本的には苦手ですよ」とは伝えたかな(笑)。でも結果的に今までにないカタチになって、良かったと思います。すごく面白い仕事だったし、いいチームでした。

石井 それを言えちゃうのもヒロシさんらしいなぁ(笑)。
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「BVLGARI ✕ FRGMT(ブルガリ ✕ フラグメント)」の全貌がコチラ!

イタリアン・ハイジュエラー、ブルガリとキング・オブ・ストリート、藤原ヒロシ氏が主宰するfragment designのコラボレーションプロジェクト「BVLGARI ✕ FRGMT」は、「セルペンティ」と「BBフラグメント」の2種類で構成されるカプセルコレクション。ラグジュアリーとストリートのハイエンドなミックスデザインは、藤原氏初となるレディスアイテムも豊富。6/5より阪急うめだ本店(〜6/11)、及び、阪急メンズ東京(〜6/18)のポップアップストアにて先行発売。一部のブルガリ オンラインショップ限定品は6/12より発売。 

■ お問い合わせ

ブルガリジャパン 03-6362-0100

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