2019.04.17
【第18回】
石田ゆり子似の美人探偵登場!「女性も男性と同じくらい浮気してますよ(笑)」
美人とは「美」という高スペックを備えたスーパーカーのような存在。その“スーパーぶり”に男は憧れるわけですが、果たしてそのスペックは彼女に何をもたらすのか?「ワイングラスのむこう側」(cakes)で人気の林伸次さんが、世の美人たちの隠されたプライベートに迫ってみる連載です。
- CREDIT :
構成/木村千鶴

自分で元夫の浮気調査をした刺激が忘れられずに
「はい。事情があって会社勤めが難しい状況になった時に、色々考えてたどり着いたのが探偵だったんです。実は前の夫が浮気しているのを女の勘で気づいて(笑)、その調査から何から全部自分でやったんです。それが面白かったっていうのが一番の理由ですね(笑)」
──それはまたのっけからヘビーな(笑)。どうやって自分で調査したんですか?
「相手の家を突き止めて、彼女の家に夫が行くとGPSのアラームが鳴るようにしておいたんです(笑)」
──自分でやったんですか!
「そうそう(笑)。それを元に証拠を集めて。見つけた時は浮気が始まって1カ月くらいの楽しい時期だったんで、かわいそうだから放置してあげたんですけどね。それを機に夜遊びしだした私に浮気疑惑をかけてきたので、逆に夫の浮気の証拠を突き付けたら、あちらが降参しました(笑)」
──凄いきっかけだ。でも、探偵ってどうしたらなれるんだろう。
──そういう学校があるんですね。で、卒業して……開業する時にはどうするんですか?
「警察署に届け出を出して許可書をもらえば開業はできるんですよ」
──そういう開業方法なんですね。どうやってお客さんに来てもらうんですか? SNSで発信するとか?
「ホームページもありますが、ほとんどのお客さんが紹介や口コミですね。じゃないとどういう人がお客さんとして来るのかわからなくて逆に怖いんですよ」
──そうか、相手が怖い人で逆恨みされることもありそうですよね。
「それもありますが、依頼者自身がストーカー犯罪者で、ターゲットの住所を知りたがっている場合もあります。実際にそれが原因の事件が起きていますから。うちの協会にもそういう人から依頼が来ていて、お断りしています」
──犯罪目的の調査依頼ですか……それは怖い。

初恋のあの子はいまどうしてる?と調べる資産家も
「はい、協会に入って横のつながりをもっていないと探偵業は厳しいでしょうね」
──相談をする相手も必要だったり?
「それもあるけど、人数が必要な場合もあるし。基本的に尾行は2人一組なので。車で張り込みしていても、向こうが徒歩だったら一人降りて徒歩に変えることもありますし」
──なんか刑事さんみたいですね! いただいた名刺に「行方不明」ってありますが、これはどうやって探すんですか?
「例えば、初恋の人を探してほしいって依頼があるじゃないですか」
──あ、それおもしろい!
「資産家の人って『初恋のあの子のことを自分が幸せにしてあげることはできなかったけど、元気にしているんだろうか』なんて思った時にどうも調べたいみたいで(笑)」
──何だか物語の中の話みたいですね。
「そうそう(笑)、それでその人に当時の住まいや思い出話を聞いて大体の位置関係を把握したら、あとは聞き込みですね。図書館で昔の地図を出して、それを元に動きます」
──そんなことするんですね。なんか楽しそう!
「そうですね。ここにこんな家があったと思うんですけど、そこにこんなお嬢さんがいて、今その人を探している人がいて~、といった感じに聞いていきます」
──その時は探偵だって言うんですか?
「はい、ちゃんと言います。最初からちゃんと言った方が教えてくれますね」
──あ~、正直に言った方が信用できるか。じゃあ、それならきれいな女性に聞かれた方が話しやすいですね。
「それはありますね~。むさくるしいオッサンに聞かれるよりは抵抗ないかもしれません(笑)」
──聞き込みとかでは男性より有利だ。
「そうですね~。だいたい名刺を渡すと相手がびっくりするんですよ(笑)。探偵さん? 初めて会った~!とか」
──ゆり子さんは明るいし、笑った顔を見るとなんか信頼できるって思うのかも。誠実さも必要ですよね。
「あ、そうだとは思います。裏表がありそうだと警戒されちゃうかも。私は全部表に出ちゃうんですよね(笑)」
──あ~その裏表のない感じは伝わります。この感じが探偵に向いてるんだ。ところで、名刺には「いじめ調査」も書いてありますが……いじめで探偵に依頼するケースもあるんですね。子どもの問題はそれが一番多いですか?
「いえ、圧倒的に多いのは行方不明、家出の捜査ですね。親が子どものことをわかっていない。うちの子に限ってっていうんじゃないけれど……」
──すると、その子が通ってた学校の前とかで張り込んで聞き込みですか?
「そうですね。何か聞いてませんか?って」
──その調査は圧倒的に女性有利ですね。そんなのオジサンがやったら通報されますよね(笑)。
「アハハ、そうですね~。そういう面では確かに」
自分の好きなキャバ嬢がどういう男とデートしているか知りたい
「ん~、確かに浮気の調査依頼は女性が多いですね。男性が依頼してくるのって、浮気調査じゃないんですよ。なんていうのかな、好きな人の調査。ちょっと変わってる」
──え? 好きな人に彼氏がいるかどうかとかですか?
「それもありますが、キャバ嬢が自分以外の男とどういうデートしてるんだとか(笑)。そんなことに大金使うアホがいるんですよ、世の中には」
──キャバ嬢の素行調査に大金をねぇ。男性は、自分の奥さんの浮気とかじゃなくて、狙ってる女性のことを調査したいんですねぇ。
「そうですね。自分が彼氏だって勘違いしてる人もいる。だから、調査結果をどこかで公表したりしたら、私たちはあなたを訴えますよって一筆もらいます。悪用されたら困るので」
──なるほど!
「だからこそ面談がとても大事なんですね。この人はストーカーかどうか、心理的なものを見ていく。だから私は紹介じゃないと嫌なんです」
──そうか、そんなこと調べたいって言っている時点で、危ないことが多いんですね。すると、女性の相談は旦那さんの浮気がほぼメイン?
「そうですね、女性はほとんどそうです。でも依頼者は知人の関係者が多いので、人生相談から入っていきますね。『あなた主婦でしょ、離婚してどうやって暮らすの? 賢くしなさい』って」
──賢く、というと浮気がわかった場合のシュミレーションをしてあげるとか?
「そうです、そうです。これは美味しいネタだから、あなたがどっちに転んでもいいように、証拠は宝としてもっておかなきゃいけないって。夫からいきなり離婚したいって言われても拒否するネタにもなるし、離婚したくなった時に出せるネタでもある。でも離婚するとなると今と同じ生活は無理よ? よく考えてねって」
「いいえ、私は弁護士じゃないんでもらわないです。だから一見さんはちょっと受けていないんですね」
──仕事が発生して初めてお金になるんですね。じゃあ例えば、ご主人が浮気している決定的な証拠を撮ってギャラが発生するような?
「浮気調査の場合、私は時間でやっていますので、成功報酬とはちょっと違いますね」
──すると奥さんの方で大体のあたりがついてる方が安くできちゃうんだ。
「そうです。ラブホテルに1回行ってくれれば証拠になるんですけど、家だと2度3度通ってくれないと証拠にならないんですよ。だから浮気でも大体30時間くらいは見ている感じかな~」
──2度3度だと、不貞行為として認めてもらえるんですね。
「判例があるから。でもそれを知らない人は1回撮ればいいだろうと思ってる。1回だと裁判で負けます」

妻のネイルが変わって気づかない男は妻の浮気にも気づけない
「金銭トラブルが多いですね。社員の横領とか詐欺にあったとか。愛人に逃げられたっていうのもありますけど(笑)」
──それは腹立つし、見つけたいでしょうね(笑)。
「彼女の家に行ったらもぬけの殻で、奥さんにも警察にも言えない。大金を貸したまま逃げられた、絶対新しい男ができたはずだ!とか。まあ、お金が絡んでますね。アハハ」
──こう言ったら悪いけど、面白いです。僕、恋愛コラムとか書いてて思うんですが、男性って妻が浮気してるとは思いたくないんですよね。だから妻の浮気調査は少ないのかなって。
「傾向的にそれはあるでしょうね。実際、調査依頼も少ないですし」
──でも実感として、女性も浮気していますよね?
「そうですね。男女半々じゃないですか?(笑) 女性は昔の男と浮気するケースが多いかもしれない。あとは身近なところ。旦那の友達とか」
──だけど旦那さん側からの依頼は少ない、と。
「男性って鈍感というか、まぁ奥さんが髪の毛切ったってわからないんだから無理ですよ(笑)」
──あ~、いまLEON読者の男性、これ読みながらみんな落ち込んでますよ(笑)。
「ネイルが変わってもわからない男性に、奥さんが恋をしてるかなんてわかるわけがない(笑)。逆に、その変化に気づく男性は浮気していると思いますよ」
──そうか、恋愛力がある人たちなんですね、奥さんの変化に気づくような人というのは。
「そうです。マメってことです。そして妻が本当に浮気していたとしても、男性は大抵許しますね」
「ん~、スリルを求めている人、そして常に女でいたい人かな。結婚して子どもが出来たりすると母になってしまう人が多いなか、常に女性でいたいという人はそういう傾向がありますね」
──そうなんだ~。じゃあ、そういう奥さんの浮気を防止するためには、旦那さんが褒めたりしてちゃんと女性扱いすればいいのかな。
「でも、あまりに褒めると“私イケてる”って勘違いしてそのまま突っ走る女性もいっぱいいるんですよ、だから難しい(笑)」
──じゃあ逆に浮気しがちな男性の傾向は?
「優しくてマメ。サプライズ好き。サプライズすることに自分で酔ってるんですよ。そういうタイプですね」
──わかる気がする! いや~今日は本当に参考になりました!

そんな、ゆり子さんをワインに例えると
ブルゴーニュ アリゴテ
「オルレリアンヴェルデ」というナチュラルワインです。ブルゴーニュでは通常シャルドネというふくよかな品種を使うんですが、アリゴテはシャルドネよりもきりっとした、一本筋が通っている感じ。それでいて上品なところがゆり子さんにぴったりです。

■ Bar bossa
住所/東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
TEL/03-5458-4185
営業時間/18:00~24:00
定休日/日、祝
● 林 伸次
1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷にbar bossaをオープンする。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSをオープン。選曲CD、CD ライナー執筆多数。「ワイングラスの向こう側」(cakes)で連載中。著書に『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる』(幻冬舎)がある。