2022.03.10
大ヒット曲「アルデバラン」を生んだシンガーAIと森山直太朗の不思議な縁とは?
佳境を迎えているNHK 連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の主題歌「アルデバラン」で熱い脚光を浴びている、AIさん。プライベートでは2児の母であり、40代を迎えた彼女が、今抱いている「夢」とは?
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文/松永尚久 写真/内田裕介 スタイリスト/後藤則子 ヘアメイク/小野明美
そんなAIさんが森山直太朗さんに作詞・作曲を依頼し、NHK 連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の主題歌として大ヒット中の「アルテバラン」を含む待望のオリジナル・アルバム『DREAM』を完成させました。
CMソングに起用されおなじみの「BE WITH YOU」や、三浦大知さんとのコラボ曲「IN THE MIDDLE feat. 三浦大知」なども収録された全9曲は、彼女の声の魅力を多角的に楽しめると同時に、どんな状況でも「夢」を持ち続けることの重要性を教えてくれます。
「アルデバラン」はこれからのミュージシャン人生を変える楽曲になったのかな
AI どこに行っても「ドラマ観てますよ」って声をかけていただきますね。出演はしていないのですが(笑)。今までもドラマの主題歌を制作していますが、比べ物にならないほどの反響をいただいています。半年間にわたって、ほぼ毎日オンエアされている効果は絶大なんだなって思いましたね。
── 失礼なのは承知で。普段ストリート感覚のR&Bを歌われるAIさんが、朝ドラマの主題歌を担当されるのは、ちょっと意外な組み合わせという印象がしました。
AI 本当にそうで(笑)。特に子どもが産まれてからは、その時間帯はEテレをつけていて流れる「キンコンカンコン」っていうメロディが、自分の生活の一部になっていました。でも、さすがにこの半年間だけはドラマをチェックさせていただいています。視聴者としても、とても惹き込まれ、かつ考えさせられる内容だなって。昔は好きな人に会うだけでも大変な状況だったのに、今ではスマホひとつで簡単に待ち合わせることができる。その状況に感謝しないと。日々不満をいう自分を反省させられましたね。
AI 実は直太朗さんのお母さんである森山良子さんのヘアメイクさんを通じて、20年来の知り合いではあったんですけど、自分のR&Bの雰囲気とは異なる気がしたので、一緒に楽曲を制作することはないだろうなって思っていたんです。でも、事務所の社長の提案で、改めて楽曲を聴いてみたら、ドラマの世界ともフィットするものを作ってくださると確信してオファーしました。ドラマ主題歌であることを隠して(笑)。
── その事実を知った、森山さんの反応は?
AI え~って、驚いてましたよ(笑)。ご自身も以前役者として登場されていた枠ですから、お知り合いの方も多いらしいですし。ちなみにドラマ関係者の方にも決まるまで、直太朗さんが作詞作曲したことは内緒にしていました。純粋に楽曲だけで判断していただきたくて。
AI ペテンなんて、私今までの人生で言ったことないし(笑)。でも、本当に最高の仕上がりになったと思いますよ。
── 改めて「アルテバラン」は、AIさんにとってどういう存在の楽曲になりましたか?
AI これまで発表してきた「Story」や「ハピネス」は、何年も歌い続けてジワジワ浸透していったという感じ。でも、「アルテバラン」は発表してすぐに、それと同じような状態になった気がします。これからのミュージシャン人生を変える楽曲になったのかなと思いますね。
── 「Story」がヒットする予感は、当初なかったと?
AI そうですね。自分の環境が大きく変わる曲になるなんて想像もしていなかったです。これまで発表したどの楽曲も自分にとっては「最高」な仕上がりなので、それがどういう結果になるかを考えて制作したことは、今までまったくないですし。もちろん、ひとりでも多くの人の耳に届いてくれたらいいと考えてはいるんですけど、まさか発売から15年以上経過した現在でも、カラオケで歌われ続けるなんて思ってもいなかった。
「ハピネス」に関しても同様。その後、レゲエや英語などさまざまなヴァージョンを発表することができるなんて、思ってもいなかった。でも、大変なんですよ。微妙にフレーズが異なっているので、覚えるのが(笑)。
子育ては自分の経験レベルを上げてくれる「修行」みたいなもの
AI 楽曲は、自分の人生と共に変化していると思います。昔は、自信がなくて何とか周囲に認めてもらいたいという気持ちが強かった。また「シャンパン飲んでイエーイ」とか、恋をして浮ついている状態とか、意味のないことを言っていましたね(苦笑)。やがて人を本当に好きになることを知って、結婚をして子どもが産まれたことによって、未来を見つめるようになったというか。世界中のハッピーが、自分たちの幸せつながっていることを考えるようになりました。
── お子さんが産まれたことは、音楽制作にも大きな変化が?
AI 独身時代は、自分のためだけに使える時間しかなかった。だから、ストイックに自分がやりたいことを追求していましたけど、今はそれがほとんどできない状況。子どものための生活リズムを中心にしなくてはいけないので、それと同じようなことをしたら、自分の身体も家族も調子が悪くなってしまう。だから、すべてを完璧に自分の思い通りにすることは無理なんだって気付かされましたね。
子育ては、私にとってもいろんなことを教えてくれる「修行」みたいなもの。そう思うようになってから、仕事と家庭の両立で大変なことも多いですが、すべては自分の経験レベルを上げてくれるものになると、ポジティヴに考えられるようになりましたね。
AI 実は2年以上前から制作に取り掛かっていて、当初は海外でレコーディングしていたんですけど、コロナの影響で思い通りにいかず……。でも、そのおかげで時間ができて、これまで共演の話をしていてもなかなか実現できなかった三浦大知さん、また世界的トップ・ダンサーであるRIEHATAさんなどとコラボレーションできたりして。結果的には最高のアルバムになりました。
── 『DREAM』というタイトルにされた理由は?
AI みなさんはそれぞれ異なる「夢」を持っていて、それに向かって感張る姿って素晴らしいと思うのです。このご時世で思うようなことができない人がたくさんいらっしゃると思いますが、そこで絶望ではなく「夢」を持って、考え方を変えるきっかけを与える作品になればと思ったのです。
AI リスナーの方々から「パパへ」も作ってほしいというリクエストが殺到していまして……。それに応えるカタチで完成させたのがこの楽曲です(笑)。
── でも、AIさんとお父さんとの温かな心の交流がうかがえる仕上がりになっていますね。
AI 幼い頃に自分の髪の毛を切ってくれたんですけど全然納得のいかない仕上がりになったんです。それでもお互いに笑いあえた。今ではいい思い出です。また母親はイタリア系アメリカ人なので「I Love You」とかハグとか、ストレートに愛情を表現してくれるのですが、父はぶっきらぼう(笑)。だけど、いつも深い愛情で私を見守ってくれている。そういう思いを表現できた楽曲になったと思います。
年齢のせいにして自分のできることを制限せず、自分を鍛え続けたい
AI 母親は英語で、私は日本語で対応します。私が小さい頃は、海外の人が地元・鹿児島にいるのは珍しかったので、母親はどうしても好奇な目で見られてしまう。だから授業参観で来てくれた時も、自分の親じゃないフリを友人の前ですることもあったり。本当に当時は申し訳ないことをしてしまったなって思います。
── 大人になると、両親のすごさ、有り難みを実感しますよね。
AI 私もその後L.A.に渡り、海外で異国人が暮らすことの難しさを痛感しましたし、子どもが産まれたことでその苦しさも知った。母親は、言葉をちゃんと理解できない国で、よくその大変さを両立できたなって。今はリスペクトしかありません。
AI 上の子には「平和(ヘイワ)」と名付けているので、その通り「穏やかな」人間に成長してほしいですね。そのためには、今のアイツを「平和」にしなくては(笑)。ふざけて人を笑わせてばかりいるんですよね。それにつられて、下の子も調子にのっている(笑)。それはそれでいいんですけど。とにかく楽しんで、いろんな困難を乗り替えられる大人に成長してもらいたいですね。
── どんな教育をされていらっしゃいますか?
AI 何か乱暴な行動をしたら、私もそれをマネするんです。すると驚いた表情になるので「イヤでしょ?」と返す。自分が嫌だと思う行為はしてはいけない。逆に優しくしたら、相手も優しさを返してくれる。自分がやったことは、いずれ自分に戻ってくることを教えていますね。
AI それだけは避けてもらいたいとは個人的に思っています。やりたいんだったらAdoさんみたいに、顔を出さないで活動をしてほしいって(笑)。顔を出して活動をすることほど、面倒なことはありませんよ。街に出て、たとえいいことを言っていたとしても、コソコソと自分の顔を見て何か話されるのは、正直気分がよくないですし。同じ気持ちを子供にも味わせたくないので。でも、最終的には彼らの判断に任せるしかないのですが。
── 母親としてではなく、ひとりのミュージシャン・人間として、これからどう成長していきたいですか?
AI 40代に入ってから、周囲からは身体が思い通りに動かなくなるとか、いろいろアドバイスいただくんですけど、あんまり気にはしていなくて。30代になった時も同じことを言われて、そうでもなかったし。年齢のせいにして、自分のできることを制限しているような気がするんですよね。それに甘えず、自分を鍛え続けたい。自分自身で調節できることは、たくさんあると思うので。
AI 子育てで今は余裕がないんですけど、時間ができたらブレイクダンスをしたいですね。実は、5月からスタートする全国ツアーは、これまで以上にダンスのボリュームを増やすつもりでいますので、楽しみにしていてください! また、他にも周囲に無理だと思われることも積極的にチャレンジしていくつもりです。
── 自分にリミットを設けず、チャレンジし続ける姿勢に「カッコよさ」を感じる?
AI そうですね。自分の両親はまさにそういう人たちで、今まで有言実行でいろんなことをやってきた。私も見習いたいですね。
── ちなみに。これまで「挑戦しなくて後悔した」ことはありますか?
AI バク転! 私のライヴに足を運んでいただいた人なら、ご存知と思いますが(笑)。子育てが落ち着いたら、教室に通ってみなさんを驚かせる技を披露しますよ!
── 楽しみにしています(笑)。最後にメッセージをお願いします。
AI 人生いろいろ大変なこともあると思いますが、そういう時にぜひアルバム『DREAM』、また私の作品を聴いていただきたいですね。すべて「あなた」のために作った音楽なので。
● AI(あい)
アメリカ合衆国ロサンゼルス生まれ。鹿児島県鹿児島市育ち。ゴスペルクワイアーで鍛えた本格的な歌唱力、L.A名門アートスクールで学んだダンス・センスなどを生かし、多数の音楽リスナーを魅了。これまで4度のNHK紅白歌合戦出場、第59回日本レコード大賞・優秀作品賞の受賞を果たす。2022年5月14日よりAI “DREAM TOUR”と題した全国ツアーがスタート予定。
アルバム 『DREAM』
涙腺崩壊で話題のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」主題歌「アルデバラン」を始め、ダンス/HIP HOP界を代表するアーティストとのコラボレーション曲、世界発信する書籍テーマソングと、AIにしか表現できないダイバーシティに満ち溢れた、4年ぶりのオリジナル・フルアルバム。MVも話題となった三浦大知とのコラボ曲、世界的トップダンサーRIEHATAをボーカリストに起用したデュエット曲など、豪華フィーチャリング陣にも注目の一枚。通常版(CD)定価3300円(税込)
EMI Records/ユニバーサル 発売中
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▼ニューアルバム『DREAM』スペシャルサイト:https://sp.universal-music.co.jp/ai/dream/
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