2022.04.23
俳優・池内博之「若い頃から、日本でしか仕事しないという選択肢はなかった」
1997年に俳優デビューして以来、国内外で数々の作品に出演を果たしてきた池内博之さん。最新作のNetflix映画『夜叉 -容赦なき工作戦-』ではミステリアスな日本人スパイ役を演じています。映画制作の舞台裏と、現在の心境について伺いました!
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文/鳥海美奈子 写真/椙本裕子 スタイリスト/荒木大輔 ヘアメイク/大森裕行
韓国の国家情報院で作戦を成功させるために手段を選ばない“夜叉”と呼ばれている人物、チ・ガンイン(ソル・ギョング)と、堅物検察官ハン・ジフン(パク・ヘス)が出会い、事件に対峙していく。池内さんは、その“夜叉”と敵対するアジア最強のスパイ、オザワを演じています。
韓国作品は2度目の出演になる池内さんに、本作の見どころ、プライベートで大事にしていることなどについて伺いました。
「オザワの冷徹さと激しさのコントラストが出るよう、意識しました」
池内博之(以下:池内) ナ・ヒョン監督の作品は前作の『監獄の首領』をたまたま観ていて、リアリティをもたせた表現ができる方だし、脚本を読んで面白そうだなと感じたので、出演を決めました。スパイ同士の抗争の話ですが、十数億円という大きな予算をかけているのでアクションシーンも多いですし、ストーリーもさまざまに展開するので、エンタメテインメント性の高い大作に仕上がっています。
池内 ありがとうございます。オザワはミステリアスで何を考えてるかわからないようなところもあります。監督からもあまり感情を出さずに、落ち着いた感じで演じてほしいと言われていたので、そこは大事にしましたね。反対に、ラストのアクションシーンは感情がかなり激しく出る部分で、それまでのオザワとのコントラストが出るように意識しました。
── 韓国の国民的俳優であるソル・ギョングさん、Netflix配信のドラマ『イカゲーム』で注目されたパク・ヘスさんなど共演者も豪華です。撮影中のエピソードがあれば教えてください。
池内 パク・ヘスさんはデビュー直後のドラマ『GTO』など、僕の出演作品をよく観てくださっていて。自分のことを「ヒョン、ヒョン」と言って慕ってくれました。韓国語で「兄き」という意味なんですけれど。
あとソル・ギョングさんは、「実は僕はそんなにアクション好きじゃないんだよ」と話していましたね。とはいえ、立ち回りは完璧にやっていたので、さすがだなと思いました。それから彼は日本語のセリフがあって、現場で「どうかな?」と聞かれましたが、すごく上手で。イントネーションもほとんど違和感ありませんでした。
池内 日本では撮影を短期間にツメツメで行なう傾向がありますが、韓国は一日で3シーンくらいしか撮らないんです。時間をかけてじっくりと作り上げるので、いい映像が撮れる環境が整っています。
労働面もきちんとしていて、たとえば撮影時間ひとつとっても、スタッフが現場入りしてから何時間働くかが決まっている。それは超えてはいけないと、かなり厳しく定められているんですね。あと食事も、朝昼晩ケータリングで温かい韓国料理が出ました。日本も時々はありますが、やはり冷たいお弁当が多いですからね。
「ただ面白い作品と出会いたい思いでやってきました」
池内 アジアには特に意識的に進出したわけではなく、結果的に、という感じなんです。一番初めは2008年の『イップ・マン 序章』という中国と香港の合作映画だったんですけれど、それがきっかけになって、さまざまなお話をいただけるようになって。アジアだけでなくハリウッドのオーディションにも行っていますし、ヨーロッパでもいいかもしれない。ただ面白い作品と出会いたいという思いでやってきました。
世界にはいろんな国の人がいて、たとえ言葉のコミュニケーションが少し不自由でも、現場に入るといい作品を作ろうという気持ちはみな一緒なんです。どんな仕事でも大切なのはいま、目の前にあることをしっかりひとつひとつやっていくことだと思っています。
── 俳優デビュー前のモデル時代に、香港の事務所に売り込みに行ったとも聞きましたが、もともと広く世界を見たいという気持ちはあったのでしょうか?
池内 旅も好きですし、確かに、日本だけでしかやらないという考えはなかったかもしれないですね。モデルをやっていた時、ベネトンのキャンペーンやプラダのショーなどで海外に行く話があったんですよ。でもスケジュールが合わなくて、世界の舞台に立つことができなかった。それ以来、もしあの時に行けたら、仕事の幅も広がっていたのかなと思ったこともありましたね。
池内 体は基本的にある程度動くように、日々トレーニングはしています。いつ仕事が入ってくるかわからないですし。今回の作品のオファーをいただいたのも撮影の数カ月前だったんです。それから体作りをしても、間に合わないことも多いので。
── 具体的に、どんなトレーニングを?
池内 一日1時間くらいですが、ジムに週4~5回は行っています。もう自分にとっては歯磨きと同じで、逆に行かないと気持ち悪い感じです。走ったり、ウエイトを使ったりして、いまの体重や体型をキープできるようにしています。
── 食事も気をつけていますか?
池内 はい。プロテインも摂りますし、あと日々の食事もサラダとか鶏のささみとか、さっぱりしたものばかりです。僕はお酒も好きだけれど、つまみはお惣菜系で揚げ物や脂もの、ラーメンなどの炭水化物系はほとんど食べないですね。もうすっかりこの食生活に慣れたので、逆に最近はラーメンを食べたいという気持ちも起きなくなりました。
「旅や自然と触れ合うことで、人間的な深みが出ると勝手に思っていて」
池内 僕は茨城出身で、渓流釣りなどをして育ったから、そもそもあまり都会派じゃないんですよ。土をいじったり、キャンプをしたり、海に行ったりという自然と接するのが昔から好きで。今は神奈川に畑を借りていて、野菜を育てています。そこに行く過程も楽しみですし、畑の中にいる時間も気持ちいいし、すごく落ち着きます。
── そろそろ、種まきをする頃ですね。
池内 これからは夏野菜が中心です。去年はブラックトマトを種から自分で育てたんですよ。小学校の頃、種をピンセットで脱脂綿の上において発芽させましたよね。そういう感じで。1月で寒かったからミニチュアハウスの状態にしようと、種をジップロックの中に入れて、床暖の上に置いて見守りました。
野菜は基本的に肥料や農薬をまかずに、厳しい自然環境で育つようにしています。でも撮影が入って2週間くらい行けないと、大変です。きゅうりなんて瓜みたいに長く太くなってしまって。きゅうりのキューちゃんみたいな感じに全部漬けましたけど、でっかくて大味だからそんなに美味しくなかったですね(笑)
池内 僕は普段はラフで動きやすい格好が多いんですよ。昔はタイトな服も着ましたし、スキニーなパンツのラインもカッコいいと思いますけれど、今はそういうモードじゃないかな。あまりカチッとしすぎるよりは遊びがあるほうが好きです。例えばスーツを着ても、靴はスニーカーにしたりとか。
池内 もちろん仕事も精一杯やりますが、趣味やオフの時間も自分のなかではすごく大切にしています。そのあたりのバランスは重要ですね。仕事、仕事という感じにはしたくない。旅をするとか、畑作業やキャンプなど自然との触れ合いのなかで、人間的な深みや広さが出るんじゃないかと、そう勝手に思っているんですよ。
◼️ 池内博之(いけうち・ひろゆき)
1976年11月24日、茨城県生まれ。1997年、ドラマ『告白』で俳優デビュー。NHK大河ドラマ『八重の桜』やNHK連続テレビ小説『まれ』に出演。中国映画『レイルロード・タイガー』、香港・中国合作映画『マンハント』、香港映画『リンボ』などのアジア映画のほか、『アウトレイジ 最終章』など日本映画も話題作に出演。『三文オペラ』『リボルバー 〜誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?〜』など舞台にも意欲的。
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◼️ 『夜叉 -容赦なき工作戦-』
舞台は、諜報活動が盛んな中国・瀋陽。韓国の国家情報院・秘密工作専門“ブラックチーム”で、あらゆる手段で作戦を成功させ、“夜叉”と恐れられる男チ・ガンイン(ソル・ギョング)と、特別監察の任務を負った正義感の強い堅物検察官ハン・ジフン(パク・ヘス)が出会い、危険な極秘工作に挑む。アジア最強のスパイ・オザワ(池内博之)がたくらむ計画を、果たして阻止できるのか。息をのむようなスパイアクション大作。
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