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2022.10.13

厚切りジェイソンが考える「お金との正しい付き合い方」

著書『ジェイソン流 お金の増やし方』がベストセラーとなり、お金の専門家としての仕事も増えているという厚切りジェイソンさん。IT企業の役員とお笑い芸人という二足のわらじを履きながら、すでに投資によって一生働かなくても家族を養っていける財産を築いたという、そのうらやましい生活の真相とは?

CREDIT :

文/秋山圭子 写真/トヨダリョウ

厚切りジェイソン LEON.JP
IT企業の役員を務めながら、お笑い芸人・タレントとして活躍する厚切りジェイソンさん。2方面から収入を得ているだけでなく「投資」で資産を増やし、2年前には投資の利益だけで家族(妻・3人の娘)が一生安心して生活できるお金を手に入れる「FIRE(=Financial Independence, Retire Early 経済的自立と早期リタイア)」を、実現。その投資術を明かした著書『ジェイソン流 お金の増やし方』(ぴあ刊)は、50万部超のベストセラーに。仕事やお金との向き合い方、先行き不透明な時代を生きるための「投資」の考え方について聞きました。

転職も投資も合理的に選択。リスクはとっていない

── 厚切りさん? ジェイソンさん? どうお呼びしたらよいのかな?

厚切りジェイソン(以下 厚切) ジローラモって呼んでください!

── ……。(気を取り直して)え~、まず「投資で資産を増やす」というのは、アメリカ人には自然に身についている考え方なんですか?

厚切 アメリカでは投資をやっていない人もいるし、そもそも投資ができる余裕のない人も山ほどいます。格差社会ですからね。そんな中で、僕は親が投資を実践していた。そういう家庭環境は影響していますね。

それと、そもそもアメリカは国からの公的補助が乏しいので、老後資金は自分で作るというのも常識。だから会社に入ると老後資金を作る仕組みが提供されている。給料の一部を、会社で決められたインデックスファンドや自社株に投資するんですが、僕もそれに参加したのがスタートです。

── 最初に就職されたGEヘルスケアは、当時はアメリカのトップ企業ですよね。ただ、そちらは数年で出てベンチャー企業に転職、さらに日本のIT企業に転職された。その間、生活資金以外のお金を、米国株のインデックスファンドにコツコツ積立されていた。仕事の面ではリスクをとってチャレンジされている印象、一方で投資は、かなり地道で堅実なスタイルという印象。ギャップを感じます。
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厚切りジェイソン LEON.JP
厚切 僕にとっては、どちらも合理的な選択なんですけどね。仕事の面では、僕は出世願望が強かったんですが、GEは他の人も優秀で、短期的に出世することは難しかった。でもベンチャー企業に転職すれば、すぐに責任ある仕事を任せてもらえるだろうと。「日本語」「コンピュータサイエンス」という僕のスキルをフル活用すれば、より早く活躍できて、権力とお金が手に入るだろうと思ったんです。

転職が万が一失敗だったとしても、次の仕事を見つける自信もあったし、GEに戻ることもできたと思います。まあアメリカ人の就職は「スキル重視」で、人材も流動性がある。そこは「企業に就職する」感覚の日本人とは大きく違うかもしれませんけど。

── 転職もリスクではなかったと。 

厚切 投資のスタイルも合理的なんです。米国株のインデックスファンドに投資しているのは、アメリカ経済全体では、20年単位で見ると必ず成長しているから。僕が投資を始めたのは2005年。2007年にはリーマン・ショックで株価が暴落しましたけど、数年で回復して資産は増えた。最近のコロナショックからの回復も早かった。

最近ではウクライナ紛争が不安材料だとされていますけど、アメリカは過去20年近くアフガニスタンと紛争状態でしたが、それでも成長してきた。10年、20年単位で考えるとアメリカ経済はやはり力強いんです。しかも長期で投資するほど複利の効果も大きいですしね。
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コロナ以来、日本人の投資意識は大きく変わった

── なるほど。でも日本人はずっと貯蓄志向が強かったですし、今も投資には不安を感じる人も少なくありません。

厚切 日本はバブル崩壊で投資家が大きく損をしましたし、それ以来、国としてもあまり成長していないから、仕方がない面はあります。現実的に日本経済に長期で投資しても、そこまで増えていない。利益を出すという面では、海外で成長している国への投資には負けてます。そういう意味でも、僕はアメリカ経済を推すんです。

ただ、投資の目的は利益だけじゃなくて、自分が生きている国を支えるとか、応援したい企業や事業を支えるとかという意味もあるから、日本経済に投資しちゃダメってわけではないんです。でも、いずれにせよ将来の資産ということを考えたら、日本人の賃金は上がっていないから、やはり投資で増やすしかないんですよ。

── ジェイソンさんの本が注目されているのは、日本人の投資に対する意識が変わり始めているということでしょうか。

厚切 コロナの影響も大きいと思います。コロナ期間中に投資と資産作りの取材がすごくきて、同じ話を何度もさせられたので、じゃあまとめて発信しようと本を出したんです。特に中小企業の人や個人事業主が事業を辞めたりすることが出てきて、将来への不安もより大きくなったから、ぐっと投資に関心が向いてきたのかなと。
── 将来の不安を解消するために、投資でお金を増やすべきだと。

厚切 人生の選択肢を増やして、自由に生きるためでもありますよ。お金で困っていたら、いつまでも嫌な仕事をやめられない。60代70代になって働くのが苦しくなっても、お金が足りなければ働くしかない。あるいは海外に行っていろんな体験をしたりする機会に恵まれても、お金がなければ行けない。自分の可能性を広げて人生を豊かにするためにもお金は必要です。

あと投資って、結局「期間」です。来年、再来年にまとまったお金を作るのは難しくても、30年後なら誰でも作れます。それに早く気づいて、今からでも始めることが大事です。
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人生100年時代。中高年も今から「長期投資」すれば間に合う

── 40代、50代の読者だと「自分は手遅れだ」と諦めそうですが……。

厚切 そんなことはないです。人生100年時代、今60歳ならあと40年ある。それだけの期間があれば、複利の効果で相当、資金は大きくなります。今からでもコツコツ始めれば、20年後には今の自分に感謝しているはずです。

投資は確かにリスクもあって、ずっと資産が増え続けるとは限りません。コロナ禍の真っ最中の時、僕の資産は毎日マンション1部屋分くらいの資産がどんどん吹き飛んでいって焦りましたけど、既に回復して逆に増えたくらい。今もアメリカの株価は不安定ですけれど、20年後はまた増えていると、僕は自信を持っています。

── 投資を始めて間がないと、そのリスクに耐えて続ける自信がありません。

厚切 投資を始めて2、3年で暴落しても焦らないこと。だって、まだ資産はそんなに多くないから、ダメージも少ないですし。僕も、投資を始めてすぐリーマンショックを体験しています。
── 40代、50代の人には希望が持てるお話ですね。逆に20代、30代の若い人は投資に積極的で、FIREに憧れる人も多いですよね。リスクの高い、例えば仮想通貨のような投資も人気です。

厚切 秒速で1億、みたいに短期的に儲けようという考えはやめた方がいいです。30代でFIREも現実的ではない。例えば年収が2000万円で使うのは200万円、そういう高収入・低支出の人なら可能ですけれども、20代の年収300万400万円のサラリーマンでは無理です。

一か八かで全財産を個別銘柄に賭けて、たまたま運よく当たった人が「俺みたいになれますよ」と言っても参考にしない方がいい。再現性がないですから。仮想通貨もここ10年くらいの間に出てきたもので、信頼性は薄い。国家が関わるような正式な仮想通貨が出てきたら、消えてしまうと思います。

── いまの仮想通貨はだめですか。

厚切 再現性のないものや、50年後に存在していると思えないものは、僕は手を出すべきでないと思います。ギャンブルみたいに運に左右されるものは、エンターテインメントとして楽しむ分にはいいんです。でも、将来の資産作りの方法ではない。一緒くたにしない方がいいです。

それより年収を上げる努力をして、支出を減らし、その分、投資に回して長期で運用する。そうすれば将来的に豊かになれます。
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「自分の幸せに貢献できるか」を買い物の基準にすれば、無駄使いはなくなる

── でも、実際にご自身は高収入・低支出を続けられ、FIREも実現されています。その先には何があるのですか? もう働かない、という選択肢はありますか?

厚切 そうですね。苦労して仕事をしているわけじゃないし、好きなことができている。だから、仕事をやめる必要もないんですよね。確かに十分な資産ができると仕事に対する考え方は変わる。高報酬でも嫌な仕事は断れる。自分が楽しめるとか、達成感を感じることとか、人のためになるとかで仕事ができる。ただのお金稼ぎの仕事からは離れられて、より自由に働けると思います。

── さらにお金が欲しいとか、それで何かを買いたい、手に入れたい、そういう欲求はない?

厚切 僕はもう、何もいらない。欲しいものは全部持ってます。完全に満たされていますからね。これ以上お金があっても生活は変わりませんね。悟ってます。
── そんなこと言ってみたいです(笑)。どうしたら悟れるんですかね。

厚切 基本、僕は物を買わないですからね、僕。趣味はポッドキャストを聴きながら散歩するくらい。外食もしないし、家で妻が作ったおいしい料理を食べるのが幸せ。

── 実際に徹底的にケチ……、もとい節約を続けられいて、残りのお金を投資に回したからこそ今があると。
なかなかその節約も真似できないのですが。

厚切 多くの人はそもそも自分の支出を把握してないんですよね。頑張って稼いだお金を、どう使っているか関心を持っていない。財布の中身がなくなるまで使ってしまう。自分のお金の動きを記録して可視化し、分析するべきです。

買い物をする時も、「それが自分の幸せに貢献するか」ということを考えれば、無駄なお金を使わずにすむ。自動販売機の前を通ったらなんとなくジュースを買って、友達に誘われてコンビニに行ったらお菓子を買って、みたいなことがクセになっている人がいますけど、それは本当にナンセンス。僕は全然、コンビニに行かないです。

── 自分の幸せに貢献……ですか。

厚切 家族が同じ価値観であることも大事。僕は妻と、誕生日プレゼントの交換も長年していない。以前、花束を買ってあげたら「すぐに枯れるものにお金を使わなくていい」って怒られたくらい。子どもが物を欲しがったら、ダメとは言わないですが、「それが本当に必要かどうか」「家にある物で解決できないか」は考えてもらいます。

でも、本当に大事なものにはお金を使います。先日も娘の歯科矯正に100万円ほどかかりましたが、まったく悩まずに一括で払いました。それもお金がある自由だと思います。
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── 確かに。でも『LEON』は、消費をすすめる側であるんですけど……。

厚切 そんな雑誌は買っちゃだめ!(笑)

── まさかの全否定!?(笑)

厚切 いやいや。その買い物が自分の幸せに貢献していればいいんです。なぜそれが欲しいのか、それを買ったらどう幸せになれるのか考えて買うのならいいんです。

でも、人間って買った喜びが1週間と続かず、また次のものが欲しくなる。「ヘドニック・トレッドミル(Hedonic Treadmill)」(快楽順応)の状態です。物を買うことそのものに幸せを求めていたら、永遠に幸せになれないですよ。

──  (書きづらい……)ではあえて、厚切りジェイソンさんは、何にならお金を使って幸せですか?

厚切 基本、お金を使わないことが幸せです。でも最近、自分と家族のために「ネズミアタマハネナガインコ(セネガルパロット)」という大型インコを買いました。昔から鳥が好きだったんですが、海外を行き来する生活だったので飼うのは諦めていたんです。でもコロナで移動はしづらいし、一度きりの人生だからやっぱり飼おうと。若くてセンシティブな時期で、手を齧ってきたりして大変。電源ケーブルも齧ったりするからカバーをつけたり、もともといるペットの猫に狙われないように、壁も作らなきゃいけないし。

── なんだ、趣味のお買い物もしてるじゃないですか(笑)!  ペットに関わるカバーや壁ならお金を惜しまないと。

厚切 いや、そこは当然、自家製ですよ・壁は段ボールで、ケーブルのカバーはペットボトルを切って作った。だからお金はかかってないです!

── (徹底してる……)いや、さすがです!
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厚切りジェイソン

1986年アメリカ・ミシガン州生まれ。17歳でミシガン州立大学へ飛び級で入学。卒業後、イリノイ大学大学院に進学し、修士課程を修了。2005年に旭化成のインターンシップで来日して1年を過ごした後、GEヘルスケア等を経て、2011年に再来日、現在まで日本のIT企業で役員を務める。2014年にはお笑い芸人としてデビューし、「R-1ぐらんぷり」でファイナリストにもなる。NHK『えいごであそぼ with Oton』にレギュラー出演するほか、ドラマ、映画などでも幅広く活躍中。

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