2022.10.29
玉城ティナ「結婚も、5年ごとくらいに契約を見直せたらいいのに」
恋愛映画の名手として知られる今泉力哉監督の最新作『窓辺にて』で、稲垣吾郎さん演じる40代のフリーライターと不思議な関係を築く女子高生作家を演じた玉城ティナさん。年齢に似合わぬ落ち着きとオーラ、深い洞察に満ちたお話! やはり彼女はタダモノではございません。
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文/浜野雪江 写真/岸本咲子 スタイリング/松居瑠里 ヘアメイク/今井貴子
そんな彼女が、11月4日公開の映画『窓辺にて』で、明るさの中にも憂いを秘めた高校生作家・留亜(るあ)役で出演。稲垣吾郎さん演じるフリーライターの市川と、友情とも、恋ともつかぬ感情で、心を通わせる様を演じています。
監督・脚本の今泉力哉さんは、ちょっぴりダメな男女の恋愛をはじめ、真摯でありながらどこか滑稽な人間の姿をリアルに映し出す注目のフィルムメーカー。玉城さんにとって初めての今泉組はどんな体験だったのでしょう。作品のことやご自身のこと、今回のストーリーにちなみ、結婚について思うことなどを伺いました。
私が10代の頃は、より屈折して物事を見ていた感じがあった
玉城 ありがとうございます。
── 今回は、恋愛映画の名手として独自の世界観が人気の今泉監督の作品に初参加されましたが、これまで今泉作品をどんなふうにご覧になっていましたか?
玉城 もともと何作かは拝見していましたが、自分がその世界観に入るというところまでは想像していなかったので、今回お話をいただいて、最初は「馴染めるかな?」という気持ちもありました。
玉城 実年齢より若い設定だったので、できる限りつくっていかないように、学生らしい、大人に憧れる感じや、高校生の等身大の雰囲気を出せたらなぁと思っていました。幼さと、ハッとさせるような鋭いセリフのバランスには気を付けていました。
それと、留亜は一見、自己形成がとてもできている大人っぽい女の子だと思われがちかもしれませんが、きっとそんなことはなくて、これからどんどん変わっていくと思うんです。その途中の、変化する微妙な感じを、私自身はもう忘れてしまったところがあるのですが、自分の学生時代を改めて振り返った時に、過ぎ去ったからこそ演じられた部分もありました。
── 早熟な面もある留亜ですが、高校時代のご自身と似ているところはありますか?
玉城 私も10代半ばから大人に囲まれて仕事をしているので、そうでない人と比べると、どうしても大人びた思想になるし、いろいろわかっていたほうが周りの人も仕事をしやすいだろうなとは思っていました。特に子どもらしくいようともせず、場に馴染むようにしていましたね。
人との関わりにおいては、私も、深い思いはしゃべるよりも書いて伝えたいタイプ。関係性を深めるために、ワンクッションほしいというのは留亜と似ています。でも、彼女は当時の私よりずっと素直だなぁと(笑)。私が10代の頃は、より屈折して(笑)物事を見ていた感じがあったので。
玉城 留亜が最初に登場する記者会見のシーンでは、生意気な高校生作家というふうに映ると思うのですが、シーンが進むにつれて、子供らしい面がいろいろと出てきます。
玉城 留亜は、市川さんと公園に行ったり、パフェを食べたりという時間を共有することによって、ちょっと大人になれたような気がしているけれど、市川さんにとって彼女は、作家ではありますけど、実年齢としては子供でしかないと思うんです。
そういう、関係性が定まりきってない曖昧な感じというのも、今泉さんの作品っぽいなと思ったので、“こういうふうに演じよう”というのはあまり考えず、その場その場の空気感で、感じたままに演じていました。
玉城 なかったですね、不安になるぐらいに(笑)。なので、脚本通りにやってみて、ジャッジしていただこうという感じ。ゆだねられてるな、という感覚がありました。
それに、「これでいいのかなぁ……?」って迷いながら演じている自分というのも、映画が完成してみると、大人と子供の挟間で揺れる留亜の絶妙なバランスみたいなところに反映できたかなと思っています。
── 稲垣さんとは、どんなふうに距離を縮めていかれたのでしょう。
玉城 たぶんふたりとも、撮影前にじっくり話をして、「よしやろう!」というタイプじゃないと思うんです(笑)。劇中での関係性も、お互いに自分を明かさない感じがあるので、現場でも同様に、お互いを知りすぎず、「どう出てくるんだろう?」みたいなほうがいいのかなと思って。
なので、稲垣さんがこういうお芝居をしたら私はこう返そう、というのを、まさにセリフを言いながら考える感じで、ぎりぎりまで脳みそを使わないように(笑)していました。もちろん、稲垣さんとは合間でお話をさせていただきましたけど、それも本編とは全然関係ない話で。あとは、ふたりがトランプをするシーンで、トランプでちょっと遊んだりするぐらいでしたね(笑)。
人を好きになることって、必ず終わりがくるんじゃないかなと思っている
玉城 取材される側としては、やはり“質問の心地よさ”みたいなものがあって、答えやすいとか答えづらい、合う・合わないというのが人によってあると思うんですね。市川さんとは、たぶんその波長が、あの会場の中で一番合ったから、軽い気持ちで話しかけたのだと思います。
まぁ彼女は、人の“溝”や“隙間”みたいなものを言語化する職業なので、作家として彼自身に興味が湧いたというのもあるんでしょうけど。ただ、それ以前に純粋に、この人だったら留亜のパブリックイメージに惑わされずに話を聞いてくれたり、対等に扱ってくれると感じて、話がしたいと思ったんじゃないでしょうか。
玉城 どっちもありますね。合う・合わないがわりとはっきりしているので、プライベートの友人関係では第一印象がけっこう大事で、今親しい人は、出会って30分ぐらいで(笑)仲良くなった人が多いです。そこからもちろん、お互いにふるいにかけていくみたいなことはありますけど。
でも、第一印象があまりよくなくても、3回ぐらい会ううちに、自分の勘違いだったなと思うことがたまにあるので、あまり決めすぎないようにはしています。
仕事関係で長くご一緒している方などは、長い時間を一緒に過ごすことで、相手のことがわかりますし、自分のこともわかってもらえているなと感じます。
玉城 そうですね。わりと自分からいくことが多いです。同年代の人などは特に、自分からいかないと話が進まないこともあるので。逆に、相手からあまりぐいぐいこられると、何か裏があるんじゃないか? と勘ぐっちゃいます(笑)。
── 映画では、二組の夫婦の不倫の様子も描かれ、市川は、妻が浮気をしても怒りの気持ちが湧かないことを悩んでいます。映画の中では、「普通、そんなことはありえない!」と、なかなか周囲に理解されませんが、玉城さんは、そんな市川の気持ちをどう思いますか?
玉城 う~ん……私は、人を好きになることって、必ず終わりがくるんじゃないかなと思っているタイプで。好きという気持ちが完全に消え去ることはなくても、相手に対する感情は変化していくと思うので、そういう人もいるだろうなと思います。
私自身、普通って何なんだろう? みたいな気持ちがいまだにあるし(笑)、普通の感情がどういうものかというのも、相手や年齢よって変化していくものですよね。今回、いろんな人の“普通”を、この脚本を読みながら思ったのは、“こうすべき”というものが逆にないなということで。
自分がどの立場に立ち、どのキャラクターを演じるかによって、この『窓辺にて』という作品のとらえ方も全然変わるなと感じました。
玉城 ちょっと重いなぁ、長いなぁ(笑)と思いますね。例えば、仕事も数年ごとに契約を更新したりするのに、いきなり終身雇用みたいな契約はちょっと……。結婚も、5年ごとくらいに契約を見直したいな。
結婚というものを神格化する考え方もあると思いますが、今の私には、“世帯を作るうえでの制度”みたいに映るし、それに伴う事務作業も多そうで。もちろん、それぐらい重大なことだからなんでしょうけれど、勢いがないと無理だなって思いますね(笑)。
年齢は数字。“今やりたいこと”を思う存分やれる人がカッコいい
玉城 市川さんは、「それは贅沢だ」と言うけれど、私はそうは思わなくて、留亜が歩んできた人生を思うと、むしろ孤独ゆえの選択なのかなと思います。実は、手に入れたものをため込むことはたやすくて、自分で労力をかけて手に入れたものを潔く捨てて、また次のものに向かうほうが難しい。それは、彼女だから書けるものなのかなと思いました。
玉城 あまり「こういう人だ」というレッテルを貼られたくないというのはあります。でもそれってある意味、自分がないのと同じだなぁと私は思っていて。何もないからこそ、特に一つのものに執着することもできないみたいな感覚が、自分の中にはあります(笑)。
── ご自分に厳しいですね。これまで『Diner ダイナー』や『惡の華』など、非日常的な映画でインパクトの強い役を演じる一方、「鉄オタ道子、2万キロ」や「NICE FLIGHT!」などのドラマで等身大の働く女性を演じているのも、「こういう人だ」と決められたくないという気持ちがどこかにあるからでしょうか。
玉城 強烈な役を演じると、それだけ反響も大きいのですが、どちらにもバランスよく出演していきたいなと思っています。
玉城 全体を通して、流れる空気感やセリフにちゃんと耳を傾けられる映画だと思いました。登場人物はみんな迷っていて、スーパーマンがどんどん突き進んでいく! みたいな映画ではないんです。そこにいろんなメッセージのかけらがちりばめられているけれど、特に答えを提示しているわけでもない。
そういうところが、今を生きる私たちにとってとても身近で、いつもそばに置いておけるような作品になっているなと感じます。
玉城 それが、大人になればなるほど、その定義がよくわからなくなってきちゃって……(笑)。いろんな大人に出会いますしね。でも、結局、年齢というのは単なる数字だと思うので、“40代だからこういうことをしなきゃ”とか、“50代だからこうあらねば”みたいなことがない人のほうが、自分らしくカッコいい人になっているような気がします。
それこそ10代の頃に、学校で人生年表をつくったり、“〇歳でこうなってたい”みたいなことを考える機会がみなさんあったと思うんです。でも、「30歳で結婚」とかいう印には意味がないことにどこかで気づきますよね。それよりも、年齢は数字だと理解して、“今やりたいこと”を思う存分やれる人が、カッコいい大人に近いのかなと思います。
● 玉城ティナ(たましろ・てぃな)
1997年10月8日、沖縄県生まれ。講談社主催の「ミスiD2013」で初代グランプリに輝き、14歳で雑誌『ViVi』の最年少専属モデルとなる。2014年、女優デビュー。以降、映画やドラマなど数多くの作品に出演。代表作に映画『貞子VS伽椰子』『PとJK』『暗黒女子』『Diner ダイナー』『惡の華』『地獄少女』『ホリック xxxHOLiC』、ドラマ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』『極道主夫』『鉄オタ道子、2万キロ』『NICE FLIGHT!』など多数。2021年、WOWOW アクターズショートフィルム2では自ら脚本を書き初の映画監督に挑戦。2023年1月には主演映画『恋のいばら』が公開。
玉城ティナ オフィシャルウエブサイト http://tina-official.com/
『窓辺にて』
一筋縄ではいかない繊細な恋人たちの心の機微を描き、その恋愛観が熱烈に支持されてきた今泉力哉監督の17作目となる完全オリジナル作品。フリーライターの市川茂巳(稲垣吾郎)は、編集者である妻・紗衣が担当している売れっ子小説家と浮気しているのを知っている。しかし、それを妻には言えずにいた。また、浮気を知った時に自分の中に芽生えたある感情についても悩んでいた。ある日、とある文学賞の授賞式で出会った高校生作家・留亜の受賞作「ラ・フランス」の内容に惹かれた市川は、留亜にその小説にはモデルがいるのかと尋ね、いるのであれば会わせてほしいと話す。市川の妻・紗衣を中村ゆり、高校生作家・留亜を玉城ティナ、市川の友人・有坂を若葉竜也、有坂の妻・ゆきのを志田未来、紗衣の浮気相手・荒川を佐々木詩音が演じる。今泉ワールドの特徴でもある<等身大の恋愛模様>に加え、これまで以上に<好きという感情そのもの>について深く掘り下げた、美くてちょっぴり可笑しい大人のラブストーリー。11月4日(金)全国ロードショー。
HP/映画『窓辺にて』公式サイト
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