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2023.05.13

黒木 瞳「仕事でもプライベートでも女性であることを謳歌して生きてきた」

映画『魔女の香水』で“魔女さん”と呼ばれるミステリアスな香水屋の店主を演じる黒木 瞳さんに、これまでの人生を彩った「香り」の思い出と、キャリアの背中を押してくれた大切なものについて伺いました。

CREDIT :

文/鳥海美奈子 写真/内田裕介(Ucci) スタイリング/大迫靖秀 ヘアメイク/在間亜希子(MARVEE) 編集/森本 泉(LEON.JP)

黒木瞳 LEON.JP
▲ セットアップ/PUROTATTO(サン・フレール)、ピアス/VENDOME AOYAMA(ヴァンドーム青山本店)、ネックレス/Kengo Kuma + MA,YU(ヴァンドームヤマダ)
宝塚の娘役トップスターから女優へと転身。以降は艶のある大人の女性を数多く演じて男性たちを魅了してきた黒木瞳さん。今回の映画『魔女の香水』は、香りをテーマに女性の成長を描く物語です。“魔女さん”と呼ばれるミステリアスな香水屋の店主・白石弥生(黒木瞳)が、目標を失いかけていた若い女性・若林恵麻(桜井日奈子)を導き、彼女が「香り」の力で少しずつ成長して、人生を切り拓いていくというストーリー。

脚本の段階から監督と意見交換をしてきたという黒木さんに、映画でもポイントとなる「香り」の個人的な思い出と、黒木さんの人生を切り開く力となった大切なものについて、お話を伺いました。
── 『魔女の香水』は宮武由衣さんによるオリジナル脚本&監督作品ですね。

黒木 瞳さん(以下、黒木) 宮武さんとは今回が3回目なんです。彼女が演出したNHKドラマ『ファーストラブ』、やはりNHKの『カンパニー〜逆転のスワン〜』という連続ドラマでもプロデューサーをされていて。今回は、女性を輝かせる作品を作りたいというところから始まった企画だと聞きました。オリジナルでクオリティが高いものを作るというのは本当に大変な作業なので、脚本の段階でも宮武さんとは定期的に意見交換させていただきました。そのたびにどんどん作品がソフィスケートされていくので、本当に楽しみにしていました。

── 黒木さんが演じた”魔女さん”という女性については、どんな印象を持ちましたか。

黒木 “魔女さん”と呼ばれる弥生には実在のモデルの方がいて、やはり香水を通して多くの人を幸せにしたい、輝かせたい、可能性を見出したいと考えている方だそうです。それに加えて弥生には、切ない愛の物語というバックグラウンドがあります。宮武さんからは、弥生はいろいろな過去を持っていて、香水を通してメッセージを送っている人だから、神秘性が欲しいと言われました。
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黒木瞳 LEON.JP
── 香りを軸にした映画は珍しいし、面白いアイディアですね。

黒木 私もとても新鮮に感じました。アロマが肩こりにいいとか、免疫力を上げるというのはよく聞くし、実際に病院でアロマを使用しているところもあります。でもそういう実用ではなく、今回は香水であるというところがお洒落だなと。目に見えないだけに、香りには何か大事なものがあるとも感じます。
── 香りと記憶って、すごく密接なイメージです。何か香りにまつわるエピソードはありますか?

黒木 宝塚時代につけていた香水を嗅ぐと、当時のことがまるで走馬灯のように蘇ってきます。幸せな記憶も、悲しい記憶も、つらい記憶も。いまはどうかわかりませんが、私がいたころは、宝塚の方々はそれぞれ自分の香りというのを持っていました。宝塚大劇場の銀橋という客席前の通路に立つと、その人の香水の匂いがお客さまにもわっと広がるんです。だから私も宝塚に入ったばかりの時に他の方と重ならない、自分の好きな香りを探しました。その結果、選んだのがイヴ・サンローランの「リヴゴーシュ」でした。もう廃番になりましたけれど。
── その香水はいまも、つけているんですか。

黒木 いえ、宝塚を辞める時に、一緒に卒業しました。宝塚時代のことは一度置いて、またいちから新しい自分の香水を探そうと思ったんです。それでやっと巡り合えたのが、マダムロシャスの「ビザーンス」でした。ビザンチン帝国にいたビザーンス姫をイメージしたもので、東洋と西洋が混ざりあった香りというところに惹かれて。東洋の私とベルサイユの私、という感じでしょうか(笑)。
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黒木瞳 LEON.JP
── 今回、あらためて香水について学んだことはありますか?

黒木 映画では「伝説を作れ」「何事も楽しむ」「愛する人のために」というふうにテーマごとに9つの香りがあって、どのメッセージを伝えたいかによって香りを変えるんです。そういう香りのつけ方も、面白いなと感じました。あと、香水は、つけ続けている間に変化していくように調香されているということは、今回初めて知りました。人によって体臭も違うし、自分がつけたものがどういう風に他人に香っているのか、どんな物語性を与えているか? 香水の奥深さを感じます。

── ちなみに男性の香りについては、どんな印象を?

黒木 身近で、香水をつけている男性はあまりいないんです。でも男性も自分の香りを探して、香りを身につけるのを習慣にしたらいいなと思います。相手を嫌いになる大きな理由のひとつに匂いがあると聞いたので、そういう意味では男性にも匂いに敏感になって、大事にしてほしいです。好きな女性を探すように、好きな香りを探していただきたいなと思います。

── 今作では、迷っている女性の背中を「香り」が押してくれますが、ここまで黒木さんの背中を押して導いてきてくれた大切なものと言えばなんでしょう。

黒木 家族や仕事で出会った方々、すべてですね。人は人が育てるものですし、多くの方をリスペクトし、またリスペクトされて、さまざまなことを学んできたと思います。あとは私が演じた女性たちでしょうか。演技で数多くの人生を歩むなかで、あぁ、こんな考え方もあるんだとか、こういう愛し方をするんだとか、こんな選択をするんだとそう感じてきました。もう全員、まったく違いますからね。

若い時は、例えば人を殺める役は自分にとっては理解不能で、「なぜ人を殺すかという理由を、一行でもいいから説明してください」と言っていたんです。でも年齢を重ねてくると、そこに理由なんてないと思えてくる。それによりまた台本も深く読めるようになる。だからフィクションである役の女性たちからも、多くのことを得たんです。
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── デビューから40年以上を経た今日まで、それぞれの年代で輝き続けてきた秘訣はどこにありますか。

黒木 先ほどと重なりますけれど、やっぱり人と人との出会いが私を育て続けてきてくれたと思います。それから映画や本からも、たくさんのヒントをもらいました。あとは日々の暮らしの中で見過ごしてしまいがちな日常の何気ない部分を大切にしなければ、とはいつも思っています。つい細かいところに目を向けてしまうんです。好奇心が旺盛なもので(笑)。

── この映画は、日本社会の中で働く女性の生きづらさを描いていますが、黒木さんもそういう経験をしたことはありますか。

黒木 エンタテインメントの世界では、女性を軽視するというのはないに等しいです。いままでは監督や演出家の女性はあまり多くありませんでしたが、最近はどんどん進出してきていますしね。私自身も仕事やプライベートも含めて、女性であることを謳歌して生きてきました。宝塚も、女性でなければ入れませんでしたし。ただ夫がサラリーマンなので、様々な話から一般の社会の中ではまだまだなのかなと感じる時もあります。
── 最後に、黒木さんがイメージするカッコいい大人像について教えてください。

黒木 カッコいい大人ですか。う~ん……難しいですね。知性も欲しいし、思いやりも欲しいし、センスも欲しいとは思いますけれど。男性について言えば、私の父はすごく”里見八犬伝な人”だったんです。仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の八徳をすごく大事にしていて。そういう価値観は日本人の男性ならではのカッコよさですし、古いとか、新しいといった時代とは関係なく、大切ではないかなとは思います。そういった八徳が知性や優しさ、思いやりに繋がるような人がカッコいい大人なのかなと、そう思いますね。
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黒木 瞳(くろき・ひとみ)

1981年、宝塚歌劇団入団。入団2年目で月組娘役トップとなる。映画『化身』(1986)では日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。『失楽園』(1997)では、第21回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞。『破線のマリス』(2000)では日本映画評論家大賞女優賞受賞。『仄暗い水の底から』(2002年)、『東京タワー』(2005)、『終わった人』(2018)など数多くの映画作品に出演。近年は映画監督として4作品を手がけたり、舞台演出などエンタテインメントの世界で幅広く活躍。

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『魔女の香水』

香水の香りをテーマに女性の成長を描く物語。正社員になることを夢見る派遣社員の若林恵麻(桜井日奈子)は夢を失いそうになるも、“魔女さん”と呼ばれる香水屋の店主・白石弥生(黒木 瞳)と出会い、“香り”の力で徐々に成長を遂げ、人生を切り開いていく。監督・脚本は宮武由衣。TV業界でドラマの演出やプロデューサー業を務め、劇場映画で監督を務めるのは本作が3作目。出演は他に平岡祐太、水沢エレナ、小出恵介、落合モトキ、川崎鷹也、梅宮万紗子、宮尾俊太郎、小西真奈美。
配給/アークエンタテインメント ©2023 映画『魔女の香水』製作委員会
HP/https://majo-kousui.jp/
6月16日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷 他全国ロードショー。

■ お問い合わせ

サン・フレール 03-3265-0251
ヴァンドーム青山本店 03-3409-2355
ヴァンドームヤマダ 03-3470-4061

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