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2023.11.04

● 深川麻衣×井浦 新

29歳元アイドル女子と一つ屋根の下で暮らすフツウのおじさんは何がスゴいのか?

仕事なし、男なし、貯金なしのアラサー崖っぷちの元アイドルが、ひょんなきっかけから赤の他人の50代、フツウのおじさんと暮らすことに。そんな実話をもとにした映画『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』に主演した元乃木坂46の深川麻衣さんと井浦新さんにお話を伺いました。

CREDIT :

文/牛丸由紀子 写真/アライテツヤ スタイリング/原 未來(深川)、上野健太郎(井浦) ヘアメイク/白水真佑子(深川)、NEMOTO(HITOME/井浦) 編集/森本 泉(LEON.JP)

深川麻衣 井浦新 LEON.JP
日々モテを追求する読者の皆さまと存じますが、アナタのその努力、ひとりよがりになっていませんか? 彼女がココロの窮地に陥った時、本当に力になってあげられますか?

大人の男たるもの、恋愛相手であろうとなかろうと、世の女性に対して、しっかりと心を開いてもらえる関係を作れるかどうかは、人間の器が問われる大問題。上辺のカッコ良さだけじゃなく、女性が望む“人としての魅力”をアナタは備えていますか? そんな問いかけをするのが、公開中の映画『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』です。

主人公は仕事なし、男なし、貯金なしのアラサー崖っぷちの元アイドル。そんな人生“詰んだ”彼女が、なぜか赤の他人のおじさんと住むことに。原作は、元SDN48の大木亜希子さんによる同名の実録私小説。

描かれているのは、求めた理想の幸せにたどり着けない主人公・安希子が、一見冴えないおじさん・ササポンとの生活を通して、もがきながらも魂の再生を果たしていくストーリー。今回は、安希子役を演じ自身も元乃木坂46である女優・深川麻衣さんと、ササポン役の井浦 新さんに、お話を伺いました。

ササポンは、なんだか妖精のような人だと思います(井浦)

── LEON読者はササポン世代ではあるんですが、イメージとしてはまったく正反対で(笑)、ギラギラといつまでもモテを追求するようなオヤジさんと捉えられることが多いです。

深川麻衣さん(以下、深川) イケてるおじさまですよね(笑)。

── そう言っていただけるとうれしいです(笑)。対するササポンといえばそんなギラモテとは無縁の、もっと達観した、人生を俯瞰で見ているような人間のように感じます。

井浦 新さん(以下、井浦) 達観しているというか、今のカルチャーにはあんまり興味がないんです。家も昭和の調度品というかアイヌ彫りの熊があったり(笑)。でもコーヒーの淹れ方などにとてもこだわりがあるように、自分の世界はしっかり持っている人なんだと思います。
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深川麻衣 井浦新 LEON.JP
── 確かにラストシーンでも描かれる意外な趣味だったり、自分の世界を大事にされている感じは伝わってきました。井浦さんは実際に演じられて、ササポンに共感する部分、あるいは逆にこれだけはちょっとわからないと思う部分はありましたか?

井浦 ササポンは僕自身にないものをたくさん持っているんです。例えば言葉を伝えるにしても、誰も傷つけないように人に伝えられる。静かなひと言でも、安希子さんのような人に大きなきっかけを与えることができる。なんだか妖精のような人だと思います。見た目は本当にどこにでもいそうな風貌のおじさんですが、そういうことできる人はやっぱりなかなかいない。だから共感というよりも、憧れを感じたといった方が良いと思います。

── 深川さんはそういうササポンを相手にどういう感情を持たれたのでしょうか? 映画の中では安希子さんは割とすんなりササポンとコミュニケーションをとっていましたが、若い女性にとって50代のおじさんは「もう生理的に無理!」みたいな人も多いのではとLEON世代はちょっとヒヤヒヤしています(笑)。深川さんご自身は正直どう思ってらっしゃいますか?

深川 癒し系のおじさんはかわいいですよね。ササポンは普段はスローテンポで喋るんですが、好きなテレビ番組を観る時だけは、すごい速さでお酒やおつまみを用意して観る準備をするんですよ(笑)。「間に合うかなぁ」って言いながらうれしそうにテレビをつけるんですが、そういうギャップはすごくかわいいなって思います。
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深川麻衣 井浦新 LEON.JP

おじさん論って、年齢よりも他者に対しての関わり方が重要なのかもしれない(深川)

井浦 でもおじさんって何歳からおじさんなんだろう? 僕なんか30代はもうおじさんだ、なんて思っていたけど。

深川 何歳の立場で見るかによって違うかもしれませんね。中学生から見たら確かに30代でもおじさん、おばさんかもしれません。でもおじさんでも、やっぱりササポンみたいなおじさんは素敵だなって思います。

── どんなところが素敵ですか?

深川 例えば自分が50代とかそのぐらいの歳になった時、もし20代の子とルームシェアしていてその子が悩んでいたら、助けたい気持ちと半ばおせっかいで、こういう時はこうしてみたらっていろいろ言いたくなっちゃうと思うんです。でもササポンはそうじゃないんですよね。
── そうですね、一歩引いて見てあげるような人ですね。

深川 一歩引いてパーソナルスペースをちゃんと保ちつつも、説教でもなく押し付ける感じでもなく、自分はこう思うよということをポンっと言ってくれる。その距離感を保つのはなかなか難しそうですし、その伝え方も含め人柄があってこそなんだろうなと思います。

井浦 そう考えるとおじさん論って、年齢よりも他者に対しての関わり方が重要なのかもしれないですね。その関わり方によって「うわ~、おじさんだわ」みたいな気持ちになる。

深川 確かに! そうかもしれないです。

井浦 いわゆる老害というか、何かを押し付けてきたり、こちらの言うことを全然聞いてくれない頑固さとか。年齢よりその人が年を重ねていくうちに形成されたものに出てくるのかも。僕なんかよりずっと年上でも、いつまでたっても本当に子供のようにキラキラと好きなことをやっている先輩方とかもたくさんいらっしゃる。おじさんだと感じてしまう瞬間は、年齢でどこからかというよりも、もっと内面的なものかもしれないです。

深川 本当にそうですね。おじさんとは? という定義も、そう言われてしっくりきます。
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深川麻衣 井浦新 LEON.JP
▲ 『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』より。
── 他者への関わり方みたいなところに、その人のおじさん的なところが見えてくるというわけですね。

井浦 オヤジギャグも素で言う人がいれば、場を和らげるためにわざと言う人もいたり。オヤジギャグだからといって、おじさん臭くない。オヤジギャグだとわかってあえて使う、そういう人はすごい柔軟さを持っているなと思ったりします。

深川 確かにそうやってさり気なく場を和ませてくださる方いますよね。柔軟性って、すごく大事かもしれない。

井浦 人や時代そのものも含め、様々なことを柔軟にキャッチして、自分の栄養にすることができる。そんな感性が常に開いている人は、やっぱり男女問わず魅力的だと思うんです。ササポンはステテコ姿だったりするけれど、そういう魅力があるから若い女性と同じ空間の中でも、恋愛関係なく会話ができるような関係性を築けるのかもしれません。

年齢は数字でしかなくて、どう生きてきたかの方が大事(井浦)

── 普通の人間関係は年代だったり嗜好性だったり、何か共通なものを媒介に築くことが多いと思います。でも今回の場合はまったく異なる、もしかしたら絶対出会わなかったかもしれないふたりです。井浦さんは人間関係を築く上で、あえて自分とはまったく異なる世界の人と交流したりすることはありますか?

井浦 自分では想像もできない世界や、意見、感性や言葉というものを持っている、そんなまったく違うものを持っている人との出会いは、自分にとって宝だと思っているんです。その思想や主義や生き方が違ったとしても、自分がそれまで興味がなかったり、知らない世界を教えてもらうきっかけにもなりますし、だからこそ人って面白いと思える。自分と違うからといって拒絶してしまったら、もう本当にそれまでですから。

── 同じ考えを持っている人とつるんでいるのは楽ではありますが……。

井浦 楽ですし、僕も正直若い頃はそういう感じだったと思います。「価値観が違う人たちとは会話できない」なんて思っていたから、結局相手がどんな人かもわからないまま離れてしまったり。でも逆に考えれば、自分と似たような感覚を持っている人は、別に今じゃなくてもそれこそ5年後でも10年後でも同じように会話ができるものなんです。だからこそ、自分とは違う思考を持つ人との出会いはやっぱり大切な宝。そういう人と向き合うことで自分の世界も広がるんだと思います。
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深川麻衣 井浦新 LEON.JP
── そういう柔軟な考えになったのは歳とともに変化してきたのでしょうか?

井浦 歳というより、失敗を含めたこれまでの経験からです。考え方が違うからと相手を傷つけてしまったり、逆に今まで苦手だと思っていた人との出会いによって、僕が生かされたり素敵な体験をさせてもらったり。そういう経験から、自分自身がいかに相手に対して閉じていたかということを気づかせてもらったんです。

── 歳ではなくどんな経験をしてきたかということですね。

井浦 年齢は本当に数字でしかなくて、どう生きてきたかの方が大事。60歳になっても駄目な人は駄目ですし(笑)。失敗したり幸せな気持ちになったり、あらゆる経験がそういうことを感じたり気づかせてくれたんだと思います。
── 深川さんはどうですか? 自分の世界とは違う方たち、それこそ安希子さんとササポンのようにまったく違う年代の方とかとの人間関係を築くようなことはありましたか?

深川 意外と周りにいる友達は、自分とは全然違うタイプと言われます。特に小学校からずっと仲が良い友達は、一緒にショッピングに行っても店員さんからふたりはどんな関係なんですか?って聞かれるぐらいジャンルが違い過ぎて(笑)。好きなものとか趣味とか全然違うんですけど、不思議なくらい何でも話せる親友なんですよね。年代で言うと、仕事上、年上の方とご一緒することの方が多いです。年上の方とお話するのは楽しくて好きですね。


── 知識や経験など、自分の知らないことを吸収したいという感じでしょうか?

深川 そうですね。話していると、人生の先輩ですしどういう人生を歩まれてきたんだろうって言葉の背景が気になったり、好奇心が湧いてきます。反対に年下の方と話すときはなぜか緊張してしまって。どういう内容の会話をしたらいいのか分からず、変に構えてしまう時があるんです。でも井浦さんのお話を聞いて、やっぱり自分が閉じていたなとちょっと反省しています。もっと自分自身から開いていかないとと思いました。
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深川麻衣 井浦新 LEON.JP

自分が思い描いた理想と現実のギャップが生じるとすごく苦しくて(深川)

── 映画の中で安希子さんは自分が作り上げた理想の幸せになりきれない自分を卑下して、理想に苦しめられることで“詰んで”しまった気がします。幸せの形はもちろん色々だと思いますが、ご自身では何か夢や目標など求める幸せの形のために努力してきたことや、逆にそれがあるからこそ苦しめられた経験などはありますか?

深川 自分自身は朝起きて天気が良いだけでもすごく幸せだし、美味しいご飯食べた時も生きていてよかった~って思うんです。ただ仕事となると、どうしても視野が狭くなってしまう時があります。自分が思い描いた理想や到達したいところにたどり着けない、そのギャップが生じるとすごく苦しくて。特にこのお仕事を始めたての頃は、技術の至らなさや圧倒的な場数の少なさに、早く追いつきたいという焦りですごくコンプレックスを抱えていたんです。

── 理想と現実のギャップにもがいてしまった?

深川 そうなんです。“理想の自分”こそが幸せで、そこに到達できないから悔しくて。人の言葉にも左右されてしまったり、ナーバスになることも結構ありました。でも少しずつですが、それで立ち直れなくなるのはもったいないなと思うようになって。100%の力を出して向き合ったなら、もうどういう結果になっても「これでよし」とひと区切りさせることも大事だと考えられるようになりました。
井浦 もしかして、どちらかというと陰キャなのかな?

深川 そうですね(笑)。思うようにできなかったり、悔しいことがあったりすると、気持ちの落ち込み方が極端だったんですよね。でも必要以上に自分に負荷をかけすぎなんじゃないかと、考え方を変えてからは楽になりました。

── いや、かなり真面目ですね。そこはまさに映画の安希子さんと共通しているような。そんな若者の悩みを聞いて、井浦さんは先輩としていかがですか?

井浦 麻衣さんの今の話を聞いているだけでも、すごく頑張っていて素敵だなと思います。

深川 うれしいです。

井浦 でも僕から若者に対して言うことはないかな。「年上だから」という考えは、僕の中では早いうちに崩壊しているんです。それぞれの世代でみんな一生懸命生きていることの方が大事で、僕自身10代20代の人たちの行動や言葉から、刺激をうけることも多いですし。
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深川麻衣 井浦新 LEON.JP
▲ 井浦 ジャケット4万6200円、ニット3万1900円、パンツ2万6400円/すべてGraphpaper、その他スタイリスト私物
── 先ほどおっしゃっていた“年齢は数字でしかない”ということと同じですね。

井浦 例えば10代で見た景色に感じたことと、同じ景色でも30代で感じることは違うに決まっている。それぞれの世代でキャッチできることが違うからこそ、面白いと思うんです。この「つんドル」もそうですが、僕らの仕事はありがたいことに様々な世代がいきなり集まって一つの作品を作っていく。もちろん一般的な会社でも新人もいればベテランもいます。感性やそれこそ発言する言葉も違う、でもだからおもしろいもの、いいものができるんだと思います。

── オヤジ世代はついつい「俺たちの時代は……」なんて言ってしまうから(笑)。

井浦 もう“老害”です(笑)。「最近の若い奴は……」と言っても、自分だって若い頃があっただろと。もちろん、言われることがエネルギーになることもあると思いますが、そういう言葉って結局自分をも否定しているようで、僕はあまり好きじゃないんです。
── 深川さんがおっしゃっていた幸せの感じ方に関しては、井浦さんはどう捉えていますか? 映画の中でも小さな幸せを見つけていくことで安希子さんは再生していくような気がします。

井浦 さっき麻衣さんが言ったように、僕もやっぱり小さな幸せをたくさん感じたいと思っています。もちろん仕事で何か達成したり、賞をいただいたりすることは大きな幸せですが、そればかり狙っていると小さな幸せを見過ごしかねない。それよりも、手に届く範囲の幸せをひとつずつ逃がさないようにしっかり掴んでいくことが、いつか大きな幸せに繋がると思うんです。仕事でも、監督とスタッフ、共演者、こんな作品に関われて、もうそれだけで十分。この現場が終わって欲しくないと思えるだけで、十分自分たちの幸せは得られると思っています。

深川 私も井浦さんと意見が合ってちょっとうれしいです。映画でも安希子さんがどんな幸せを感じていくのか、ぜひご覧になっていただきたいと思います。
深川麻衣  LEON.JP

● 深川麻衣(ふかがわ・まい)

1991年3月29日生まれ、静岡県出身。女優。2011年から乃木坂46の1期生として活動をスタートし、2016年にグループを卒業。主な出演作は、映画『愛がなんだ』(19)、ドラマ「まんぷく」(NHK/19)、「日本ボロ宿紀行」(TX/19)、「青天を衝け」(NHK/21)、「特捜9」』(EX/22〜)、「彼女たちの犯罪」(ytv/23)など。主演映画『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』が2023年11月3日に公開予定。
HP/深川麻衣 official web site
SNS/Instagram

井浦新 LEON.JP

● 井浦 新(いうら・あらた)

1974年9月15日、東京都生まれ。1998年に映画『ワンダフルライフ』に初主演。以降、映画を中⼼にドラマ、ナレーションなど幅広く活動。アパレルブランド〈ELNEST CREATIVE ACTIVITY〉ディレクター。サステナブル・コスメブランド〈Kruhi〉のファウンダー。映画館を応援する「MINI THEATER PARK」の活動も行っている。
SNS/Instagram、 X

深川麻衣  LEON.JP

■ 『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』

元アイドルの安希子は、幸せで充実した人生を歩んでいると自分に言い聞かせながら、仕事もタフにこなしているつもりだったが、ある日の通勤途中、駅で足が突然動かなくなってしまう。メンタルが病んで会社を辞めた安希子は、仕事ナシ、男ナシ、残高10万円の現実にぶちあたる。そんな時、友人から勧められたのが、都内の一軒家で一人暮らしをする56歳のサラリーマン、ササポンとの同居生活。意外な提案に安希子は戸惑いながらも、まさかのおっさんとの奇妙な同居生活をスタートさせ……⁉
出演/深川麻衣、松浦りょう、柳ゆり菜、猪塚健太、三宅亮輔、森高愛、河井青葉、柳憂怜、井浦 新 原作/大木亜希子 監督/穐山茉由
11月3日~全国公開中
HP/映画『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』

■ お問い合わせ

Graphpaper  03-6418-9402

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