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2024.03.30

青木崇高「“カッコいい大人”って何? 僕は目指していないですね」

時代劇やアクション、重厚な人間ドラマやコメディまで多彩に演じ分ける俳優・青木崇高さん。バラエティ番組のMCにも活躍の場を広げ、そこで見せるフランクで好奇心旺盛な人柄も人気を集めています。44歳、ますます脂の乗った仕事ぶりの、青木さんにインタビューを敢行しました。

CREDIT :

写真/和田直美 ヘアメイク/NANA 編集・文/アキヤマケイコ

人生を強く生きることが目標。それが役者業を豊かにもしてくれるはずです

青木崇高 (あおき・むねたか)
ワイルドな風貌と抜群のスタイル、また繊細な表現力で、さまざまな役柄を演じる青木崇高さん。デビュー20年超、仕事も充実し、男っぷりに磨きがかかる彼に、「カッコいい大人の男とは?」と聞いてみると、意外な答えが返ってきました。
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◾️“カッコいい”に、僕、興味がないんです

── Web LEONの読者にとっての“カッコいい大人”って、まさに青木さんのような人だと思いますが。

青木崇高さん(以下青木) そうなんですか? 実は僕、“カッコよさ”って、よく分からないんです。自分はそれを目指してないし、目指す必要があるのかなとも思うんですよ。他の人が僕を見て「カッコいい」と思ってくださるとすれば、それはありがたいことですけど、僕自身、興味がないんです。

── !! この企画で「カッコいいに興味がない」と言われたのは初めてです……。

青木 世の流れとして、大人の男性に“カッコよさ”を求めているのは理解できますが、僕が思うに、それはあくまで後付けのものじゃないかと。誰かの生きざまを、他の誰かが後で見てそう言うんじゃないかと。

それも、深くその人のことを知った中で言っているのか、表面上なのか分からないですよね。内面まですくい上げて「カッコいい」って言われたらうれしいのかもしれないですけど。

高級なものを身につけて、それがバシッと決まっているのも素敵だし、「こんな先輩みたいになりたい」という憧れとか、年下の人でも「こういう人はいいよな」みたいなことはある。そういう意味での“カッコいい”は、あるのかなと思いますけどね。逆に聞いてみたいです、“カッコいい”って何なのか。
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── 聞いておいてなんですが(笑)、確かに難しい。分からないから聞いているというのもありますが。

青木 それぞれの人に、いろんな答えがあるんでしょうけどね。あえて言うと、何かに対峙している時、「命を燃やしている」と感じる人、その瞬間に、その人は尊敬します。仕事に対してでも、そうでない時でも。

◾️役者である前に「強く生きる」ことが大切だと思っています

青木崇高 (あおき・むねたか)
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── なるほど。では青木さんにとって「命を燃やすこと=俳優として役を突き詰める」ことですか?

青木 いや、それもちょっと違いますね。僕は、実は、役者をやっていること、そのものには重きを置いてないんです。確かに僕は、表現することを生業にしていて、その中に役者も含まれます。じゃあ「役者とは何か」と分析してみると、特に30代くらいから、自分の生き様が大きく深く関わってくるなと思うようになりました。自分の人生を強く生きること、それが、役者としても強い表現を生み出していくんじゃないかと。演技をするうえで、もちろんテクニックも考えますが、根本的にはそういうアプローチですね。

だから、役者をやっていることがすべてじゃない。一生懸命、この命を燃やしていくことが目標で、それが役者という生業にいい影響をもたらす、という考え方というのかな。だから、“カッコいい”に憧れる、という感覚はないんですよ。これ、天邪鬼っぽい答えですかね。何だかうまく言えなくてすみません(笑)。

── いや「“カッコいい”が分からないし、憧れない」。それも確かに答えですよね。
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◾️「映像化不可能」を可能にした作品が完成して、うれし泣きしました

── 今回、配信されるドラマ作品、Huluオリジナル「十角館の殺人」は、「映像化不可能」と言われたミステリ小説の実写化です。制作にあたっては、皆さん、かなりの緊張感で臨まれたのでは?
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青木 綾辻行人さんの原作が、非常に緻密な計算のもとで作られています。僕も読んで、特に肝になる部分は「驚いた」という言葉だけでは失礼だと思うくらい、頭を打ち抜かれたような気持ちになりました。傑作と言われている所以がわかる。

今回、映像作品を手がけた内片 輝監督とは10年来のお付き合いなのですが、数年前、立ち話で「本当の意味で映像化不可能な小説ってあるんでしょうか」という話をしたことがあって、その時、第一に監督が挙げたのがこの作品。だから、今回のお話があった時、「いやいや、胸を張って“不可能”って言ってた監督が、何をやろうとしてるんだよ」と思いましたね(笑)。

でも、監督も映像チームも、不可能を可能にすることに燃えるタイプの人たちだと知っていたので、そこに僕も賭けてみたいと。役者にかかる負荷も重かったですが、結果的にどの役者も見事にやり切った。皆に心から拍手を送りたいですね。“不可能”と言われた壁を壊して、見事なエンターテインメントとして世の中に送り出すことができた。大変誇らしいことだと思います。僕は、最初に配信を見た時、ちょっと泣きました。
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◾️おじさん役者なので、若い役者とコミュニケーションを積極的に取りました

── 青木さんは、大学生で元ミステリ研究会の部員の江南(かわみなみ)孝明(演:奥 智哉)とバディを組んで、物語の謎を追い求める島田 潔を演じられています。島田は、他の俳優さんと、ちょっと立ち位置が違う役ですよね。
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青木 狂言回し的なところもある面白い役です。殺人事件が起きて、島田が江南と一緒に謎解きをしていく。展開がどんどんシリアスになっていく中で、島田・江南のやりとりで、どこかほんわかとした空気感が出せればと。原作でもそうでしたし、映像作品もそうした緩急がある方がいいと思ったので、監督とバランスをすごく考えました。

── バディ役の奥 智哉さんは撮影当時、10代。かなり年齢が下の方とのお仕事は、どうでしたか?

青木  親子に近いくらいの年齢差でバディ。それもこの作品の面白さですよね。奥くんは柔軟で、作品の中でも水のようにどんどん変化していって、素晴らしい役者さんだなと思いました。現場ではキャリアの違いなど意識することなく、役としてお互い生きるというか、面白い作品を一緒に作る仲間として、楽しく過ごさせてもらいました。
とはいえ、僕はおじさんですから、若い世代としっかりコミュニケーションはとった方がいいと思って、いろいろおしゃべりしていく中で、お互い『ジョジョの奇妙な冒険』好きということで、意気投合しました。

どんな仕事もそうだと思うのですが、何ヵ月も一緒にいて仕事をする相手と、何か共有できるものがあれば、それをきっかけに、お互いの関係って、ほどけてきますよね。特に今回のように、バディが見せ場になるような作品であればなおさら、関係性が深まっていれば、何気ない会話でも、映像に豊かさを加えられると思うので、それはよかったです。
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◾️“ちょっと変だけど、人生哲学はある”。そんな役として演じました

青木崇高 (あおき・むねたか)
── 青木さんの演じる島田は、何を考えているかわからない人、何がしたいのか分からなく見える人。かなり難しい役ですよね。

青木  何を考えているか分からないように見えることは大切ですけど、何も考えてないように見えては困る。表面に出していなくても、島田なりの価値観や考えていることはありますからね。それを原作で研究して、台本と照らし合わせて、実際のシーンで、目線の位置を考えたり、仕草として出したりと、色々トライしました。ただ、これも一人でできるわけじゃなく、奥くんのリアクションも大事ですから、お互いにですよね。
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── 島田は、年下の江南にとって、それこそ“カッコいい”ところ、“命を燃やしている”と見えるところはあるのでしょうか。

青木 島田は、実は懐深い人だなと思います。表面的には変なおじさんですけど、彼は彼の哲学があって、江南にも優しく寄り添う気持ちを持っている。

島田は、実家がお寺なので、彼なりの死生観もあるだろうなと。人はいずれ生まれて死ぬ、それが人生だと。だから江南にも、くよくよし続けずに、生きている限り、好きなようにやれよ、というようなことをほのめかす。実際に江南にかける言葉は「君はロマンチストだねえ」といったように、皮肉めいているんですが、それが彼なりの励ましや慰めだったりする。そういう島田の魅力を裏テーマとして演じました。直接的じゃなくて、周りくどい言い方をするけれど、優しい人というかね。
── 変なおじさんだけど、人生の大事なことを考えさせられるような人だと。

青木 そうですね。まあ、でも、この作品は、島田を含め、登場人物の描写はもちろん素晴らしいのですが、やはり原作の「映像化不可能」と言われる部分、最大の山場に向かっていくまでの、視聴者との情報の駆け引きみたいなものが、本当に見事です。原作が未読の方は腰を抜かすような衝撃を受けると思うし、原作を読んだ方にも十分楽しんでいただけるはずです。
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青木崇高 (あおき・むねたか)
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青木崇高 (あおき・むねたか)
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Huluオリジナル『十角館の殺人

◼️ Huluオリジナル「十角館の殺人」 全5話一挙独占配信中

十角形の奇妙な外観を持つ“十角館”が存在する角島(つのじま)。1986年、“十角館”を建てた天才建築家・中村青司(演:仲村トオル)は、焼け落ちた本館・青屋敷で謎の死を遂げていた。半年後、無人島と化していた角島に、K大学ミステリ研究会の男女7人が合宿で訪れる。その頃、海を隔てた本土では、かつてミス研メンバーだった江南孝明(演:奥 智哉)のもとに、死んだはずの中村青司から1通の手紙が届く。<十角館のミス研メンバー>と<死者からの手紙> ── 偶然とは思えないと江南が調査を進めるなか、島田 潔(演:青木崇高)という男と出会い、行動をともにしていく。一方、十角館ではミス研の1人が何者かに殺害される。ミステリー界の巨匠・綾辻行人の最高傑作との呼び声高い『十角館の殺人』(講談社文庫)。2023年、タイム誌が選ぶ【史上最高のミステリー&スリラー本】オールタイムベスト100にも選出される快挙を成し遂げた名著でもあります。長年、映像化不可能と言われ続けてきたこの作品を、今回、実写映像化!
原作:綾辻行人 監督:内片 輝 脚本:八津弘幸、早野 円、藤井香織 ©綾辻行人/講談社 ©NTV

公式HP/https://www.ntv.co.jp/jukkakukannosatsujin/

青木崇高 (あおき・むねたか)

■ 青木崇高 (あおき・むねたか)

1980年大阪府生まれ。主な出演作にNHK連続テレビ小説『ちりとてちん』、NHK大河ドラマ『龍馬伝』『平清盛』『西郷どん』『鎌倉殿の13人』、映画『るろうに剣心』シリーズ、アカデミー賞を受賞した『ゴジラ-1.0』、大ヒット韓国映画シリーズ最新作『犯罪都市 NO WAY OUT』など。バラエティ番組「ララLIFE」ではメインMCを務めるなど幅広く活躍。5月17日には『ミッシング』の公開が控えている。

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