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2024.08.08

玉置玲央「確固たる自分をもちつつ頑固ではない“カッコいい爺さん”になりたい」

鴻上尚史さん作・演出による舞台『朝日のような夕日をつれて2024』(8月11日~)に出演する俳優の玉置玲央さんにインタビュー。「光る君へ」で演じた藤原道兼のイメージとは大違いの真面目な素顔に接近です。

CREDIT :

文/長谷川あや 写真/アライテツヤ スタイリング/森川雅代 ヘアメイク/西川直子 編集/森本 泉(Web LEON)

玉置玲央 WebLEON
NHK大河ドラマ「光る君へ」の藤原道兼役の怪演が話題になった玉置玲央さん。バイオレンスな道兼の印象が今なお記憶に鮮明な彼は、いま、8月11日(日)に初日を迎える舞台『朝日のような夕日をつれて2024』の稽古の真っ只中です。現在、39歳。高校卒業後、舞台を中心に活躍してきて、近年は映像にも活躍の場を広げている玉置さんの素顔に迫ります!
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今、俳優業をやらせていただいていることはとてもラッキー

── 大河ドラマ「光る君へ」の藤原道兼役、非情なヒール役が大反響でしたが、手ごたえは感じていますか?

玉置玲央さん(以下、玉置) 「光る君へ」の出演中に1本、僕の(大河の)出演が終わってからすぐに1本、舞台に出演したんです。放送中に出演した舞台『リア王』は、兼家役の段田安則さんが主演されていたこともあってか反響が大きかったのですが、出演終了後の公演(柿喰う客の『殺文句』)は、あまり反響は感じられなくて、「そっか、こんな感じか」と(笑)。(大河の)出演が終わって日が経つにつれ、みなさんの記憶から薄れていくのは当たり前のこと。新しい登場人物も出てきますしね。
── なんかすごく冷静ですが(笑)、「売れたい」「人気者になりたい」という出世欲みたいなものは、玉置さんの中にどれくらいあるんでしょう。俳優さんってみなさんギラギラしている印象だったのですが、玉置さんはそんな感じでもないような(笑)。

玉置 あまりないかもしれませんね、出世欲(笑)。今、俳優業をやらせていただいていること自体、とてもラッキーなこと。演じる機会を与えてもらえたら、自分の思う誠心誠意でやらせていただき、それを脈々と積み上げていきたい──それだけです。
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── たしか玉置さんは高校で演劇を専攻し、卒業後は裏方もやりながら舞台に出演されていたとか?

玉置 裏方を経験したことで、自分が立つ舞台がどう作られているか、そこにどれだけの労力が割かれているか、もっと言えば、どのくらいのお金がかかっているか想像できるんです。舞台に立つことのありがたみを感じながら、演じることができるのは、僕にとってとても大切なことです。

── 俳優を生業にしようと決めたのは、どんなタイミングだったのでしょう?

玉置 26歳ぐらいの頃、商業演劇に出演させていただくようになり、わかりやすく収入が上がったあたりでしょうか。演じることに対する責任をこれまで以上に感じるようになったことがターニングポイントになっています。

── ここ数年は、「クズ役を演じさせたら右に出るものはいない」くらいの存在感を発揮していますが(笑)、玉置さんが目指している俳優像とは?

玉置 う~ん、特別ないかもしれません。ただ、カッコいい爺さんになりたいというのはありますね。現場で、たくさんの素敵な先輩方──カッコいい爺さんに出会ってきて、最終的には自分もああいう風になれたらいいなって。
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── “カッコいい”というのは、まさにLEONが追いかけ続けているテーマなんですが(笑)。玉置さんが憧れ、目指している“カッコいい大人”、“カッコいい爺さん”って?

玉置 僕にとっては、“カッコいい大人”も“爺さん”も同じで、何事にもブレることがない、確固たる自分を持っている人です。自分のやるべきことは100%以上の力でやり遂げる。それでいて、頑固ではなく、流動的に対応することもできる──。そういった人が“カッコいい”と思います。

── 玉置さん自身は実践できていますか?

玉置 まだまだです。いろいろなことに惑わされてしまうし、ヨコシマな考えも持っている(笑)。そういったものを取り払って、生きていければいいのですが、まだその境地には至れません。70歳くらいになった時、そういった大人になれていたらいいなあと思います。
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『朝日』に人生を狂わされたと思ってくれる方がいれば万々歳

── ところで今回の舞台『朝日のような夕日をつれて』は鴻上尚史さんの処女作であり、自他ともに認める代表作です。1981年の初演から繰り返し上演されていますが、今回の上演は10年ぶり。玉置さんが考える、『朝日』の面白さとはどんなものでしょう?

玉置 『朝日~』をはじめ、鴻上さんが書かれる脚本は、その時代を切り取り、毎回新しいものを取り入れてブラッシュアップしていて、『朝日~』も二度と同じものはありません。とはいえ、作品自体の根底に流れている熱量や演劇的な面白さは不変です。そして、時代が変わり、演じる人間が変わっても、大切な部分は脈々と受け継がれていく。少しずつ姿を変えながら、作品が完成するのが、面白いところかなと思います。
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── 玉置さんは、10年前にも別の役で同作に出演していますが、鴻上さんとの仕事も10年ぶりですか。

玉置 そうですよ。

── 久々にご一緒される、鴻上さんの印象はいかがですか?

玉置 変わらないですね、変わらずお元気です。ただ、先日、たまたま10年前のパンフレットを見ていたのですが、なんかスマートになられたなって(笑)。
── 演出面のほうで変化はありました?

玉置 僕が言うのはおこがましいのですが、少しまろやかになった印象があります。もともとすごく厳しいという方ではないですし、頭ごなしにあれやこれや言うタイプではありません。俳優から出てくるものを拾ってくださる方で、以前からそうでしたが、さらに懐が広くなったというか……。そして、時々ピリッと怒ってくださる。10年前も、今も、鴻上さんの稽古場はとても居心地がいいです。

── 若い演者の方も多くて稽古場の雰囲気も良さそうですね。

玉置 今回、僕が39歳で座組の最年長、最年少も30歳なので、出演者の年齢差がぐっと縮まりました。これが年齢によるものなのか、この作品に対する思いによるものなのかわかりませんが、作品が変容していく姿を目の当たりにできているように思います。
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── 稽古の充実ぶりが伝わってきます。男性5人と鴻上さん、みなさん仲が良さそう。

玉置 はい、楽しいですし、充実しています。10年前に出演した時は、先輩方に食らいついていくという部分が強かったのですが、今は新しいメンバーで、新しい感覚で、新しい引き出しを開けて、それぞれの宝物を見せ合って「俺こんなの持ってるよ」「俺はこれを持ってる、交換しようぜ」みたいな感じでやれている。それがすごく面白いです。

── 改めて『朝日』の見どころ、意気込みを聞かせてください。

玉置 高校生の頃から、諸先輩方から「見たほうがいい」「(台本を)読んだほうがいい」とずっと言われていた作品です。実際に観て、衝撃を受けて、いつか何かしらのかたちで関わらせてほしいと思っていたところ、10年前に少年役で出演させていただく機会を得たことは、ご褒美のような体験でした。その後、10年、またそういった体験が待ち受けていたらいいなって思いながら頑張ってきた気がします。

『朝日』は、僕だけじゃなく、いろいろな人の脳裏や魂に楔(くさび)として刺さっている作品です。今回、10年ぶりの上演となりますが、今回の公演が誰かの心に刺さって、いつか上演したいとか出演したいとか、僕が初めて『朝日』を観た時に感じたように、「『朝日』に人生を狂わされた」と思ってくれる方がいれば、万々歳だし、とても素敵なことだと思います。
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● 玉置玲央(たまおき・れお)

1985年生まれ。東京都出身。劇団「柿喰う客」に所属し中心メンバーとして活躍している。舞台『リア王』『ジョン王』『パンドラの鐘』『ゲルニカ』など、舞台を中心に活動してきたが、近年は映像作品にも活躍の場を広げ、2018年の『教誨師』で第73回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞。主な出演作に、大河ドラマ「光る君へ」、ドラマ10「大奥Season2」、連続テレビ小説「おかえりモネ」、「恋する母たち」などがある。

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紀伊國屋ホール開場60周年記念公演
KOKAMI@network vol.20
『朝日のような夕日をつれて2024』

鴻上尚史が劇団「第三舞台」の旗揚げ公演として、22歳の時に書いた処女戯曲。サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」(1953)を下敷きにした物語と、オモチャ会社・立花トーイの物語が交差し、さらにもう1つの世界が描かれる。1981年5月、早稲田大学大隈講堂裏特設テントにて初演された同作は、大きな話題となり、1980年代の小劇場ブームを牽引。初演以来、1983年、85年、87年、91年、97年、2014年と、時代とともに変化を遂げながらこれまで7回上演され、87年には紀伊國屋演劇賞を受賞。初演からは14年の上演まで、大高洋夫、2回目の公演からは小須田康人が続けて出演してきたが、10年ぶり8回目となる今回はキャストを一新。30代の5人の俳優、玉置玲央、一色洋平、稲葉友、安西慎太郎、小松準弥の出演によって上演される。

上演期間/東京公演 2024年8月11日(日)〜9月1日(日)@紀伊國屋ホール、大阪公演 2024年9月6日(金)~9月8日(日) @サンケイホールブリーゼ
HP/https://www.thirdstage.com/knet/asahi2024/ 

■ お問い合わせ

HEMT PR 03-6721-0882

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