日本肥満学会が定義する「普通体重」のアンゴラ村長の写真はなぜ異例のヒットを博したのか──。今、ネタだけでなく、そのルックスも注目を集めているアンゴラ村長に、写真集のこと、そして、「美しさ」について話を聞きました。
“普通体重”である私をそのままお見せできるなら意味があるかも
アンゴラ村長 はい、自分で買ったものです。
── キラキラ輝く靴下も可愛いですね。
アンゴラ村長 なんとなくLEONってこんな感じかなって思って(笑)。
── ご配慮、ありがとうございます、とてもお似合いです。今、Web LEONでは、「美しい人」をテーマとした特集を進めていまして、写真集が大ヒットしているアンゴラ村長さんにもぜひお話を伺いたいと思いました。まずは、写真集を出すことになったきっかけを教えてください。
アンゴラ村長 編集者の方に「写真集を作りませんか」と声をかけていただいたんです。写真集って、タレントになった証って感じじゃないですか(笑)。やれるものならやらせてくださいと受けさせていただきました。
アンゴラ村長 そうです! 私から提案させていただきました。写真集の発売をきっかけに、今日のように、今の世の中における美の在り方や、ありのままの自分でいることなどについて聞いていただく機会も増えて、仕事が舞い込むいいタイトルが付けられたなと思っています(笑)。ただ、この前、健康診断を受けたら、152センチ、49キロで、ちょっと違っちゃってました。すみません……。
アンゴラ村長 はい、今回の写真集、2200円なんです。私は坂道系のアイドルの方が好きで、いえ、好きというか尊敬しているのですが(笑)、私がその方たちと同じような値段で、私が写真集を出すのってどうなんだろうと思って。アイドルの方って、美しくいるために、日々努力されているし、それを含めてお仕事だと思うんです。そうではない私が一朝一夕で痩せたとてなんの意味があるんだろうって考えたんです。でも、“普通体重”である私をそのままお見せできるなら、少しは意味があるのかなって。結構、意味を求めてしまうタイプなんです、私(笑)。
アンゴラ村長 2、3年くらい前に痩せようとしていた時期があり、その時、自分がどう位置にいるかを調べたところ、日本肥満学会の規定では普通体重の範囲内であることを知りました。
写真集の現場ではすべてを受け入れる気持ちでのぞみました
アンゴラ村長 ありがとうございます。自分の裸は、お風呂に入る時にいつも見ていますが、そこに価値があったというのはちょっとした驚きでしたね(笑)。
── 不特定多数に肌をさらすのは、抵抗があったのでは?
アンゴラ村長 20代最後の記念にもなりますし、美しく撮っていただければうれしいなと思っていて、とくに抵抗はなかったですね。実際、カメラマンの方がとてもきれいに撮ってくださって、本当に感謝しています。
アンゴラ村長 編集の方以外は、全員が初対面だったのですが、和気藹々とした雰囲気で、とてもやりやすかったです。ポージングは、カメラマンさんに指定されたものもあれば、好きに動いた時に撮ってもらったものもあります。芸人として、芸人の現場に行く時は、自分でなんとかしなきゃって気持ちになりますが、写真集の現場では私は素人のようなもの。誰かが何かしてくれるはずだと(笑)、すべてを受け入れる気持ちでのぞみました。それが良かったのかもしれません。
ただ、数えてみたらスタッフさんが11人もいて、私の写真集のためにこれだけの人が集まってくださり、予算的に大丈夫なのかと不安になりました。撮影用にアイスクリームを購入したのですが、それが1600円くらいするんですよ。現場にはスタバのポットコーヒーも用意されていて、あれって結構高いじゃないですか。ヤバい、写真集が売れないと大変なことになるって。
アンゴラ村長 例えば、坂道の方々だと、手の届かない感じがありますよね。でも私の場合は、身近にいそうな感じといいますか……(笑)。なわとびのネタで世に出て、その後、いろいろな遍歴があって、そういう7年間の前振りがあってのランジェリーが刺さったのかもしれないなと分析しています(笑)。
── 写真選びは、相方のスーパー3助さんや、お母さまにも意見を聞かれたとか?
アンゴラ村長 はい、今後のお笑いの仕事に差し障りがないように選びました。
── え、どういう意味ですか。
アンゴラ村長 私の本業はお笑いで、コントをやってご飯を食べていきたいと思っています。あまりに過激な写真集にして、ネタをやる時に、お客さまの頭に肌色がよぎってしまうと、ちょっとノイズになってしまうかなという懸念があり、「これぐらいだったらいいんじゃないかな」という露出具合のものを選んでいます。
アンゴラ村長 容姿への賞賛の声って、こんなにも気分がいいものなんですね(笑)。本当にありがたいですし、不思議な気持ちもあります。そういった言葉は、これまであまりいただいたことがなく、ルックスを褒められる立ち位置にいなかったので。改めて評価してもらったことは、素直にすごく気分がいいです。
普通であることにもっと自信を持とうと思いました
アンゴラ村長 ありのままの自分を評価していただいたことで、自己肯定感が高まりました。以前から、容姿については、「結構身近にいる感じだよね」と言われることが多くて、自分でもその通りだよなと思っていたのですが、この容姿の持つ親しみやすさも武器になるかもしれないな、と。普通であることが肯定感に変わったというか、普通であることにもっと自信を持とうと思いました。
アンゴラ村長 めちゃくちゃ弱いほうですね。人の言葉の裏を読みがちです(笑)。写真集を褒めていただくのも本当にうれしいのですが、これは編集の方やカメラマン、ちょうどいい陽の光とか、いろいろな方の努力がすべての条件が重なり合って完成したものです。私の写真集というより、みんなに作ってもらったものですし、お笑い芸人という職業であるアンゴラ村長の写真集だから評価されたということはちゃんと認識しています。
── そんな等身大のアンゴラさんは、やはり「美しい」と思います。普段、「美」って意識されています?
あと健康法とまではいかないかもしれませんが、休みの日は目覚ましをかけず、寝られるだけ寝るようにしています。私、眠りに対しての執着がすごくて、睡眠不足になると、イライラが募ってしまうんですよ(笑)。休みの日は夕方まで寝ていることもあります。
そんな時、以前は、「1日、無駄にしてしまった~」と罪悪感を抱いていたのですが、今は、「たくさん寝る日がないと自分は生きていけない」と開き直るようになりました。実際、たくさん寝ると、めちゃくちゃ気持ちいいんですよ~。自信を持って夕方まで寝る──、これがカラダだけでなく、心の健康にもつながっている気がします。
ゆるぎない自分の信念を持っている人を美しいと思う
アンゴラ村長 美しさ……、まさかこんな質問を浴びさせていただく日が来るとは! そうですね、本や映画の中のちょっとした言葉に、心をもっていかれることはよくあります。園子温監督の映画『恋の罪』で、「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」という田村隆一さんの詩が引用されているのですが、これ、すごく美しくないですか?
泣いていても、涙という言葉を知らなければ、ただ目から水滴が流れているだけの現象なのに、涙という言葉を知っているから人は立ち止まるとか、そういった意味だったと思います。ぐっときます。
Mrs. GREEN APPLEの「Dear」という曲の、〈幼さでパンを作って、大人びてジャムを塗ろう〉という歌詞もさまざまな奥行きが生まれる美しいフレーズだなと思いました。すみません、あまり答えたことがない質問なんで、ちょっと気恥しいです(笑)。
アンゴラ村長 あ~そうかもしれません。
── アンゴラさんが考える「美しさ」についてぜひいろいろ伺いたいのですが、例えば、景色はどうでしょう? どんな景色を美しいと思いますか?
アンゴラ村長 好きな景色は断然、海! 私、海なし県の埼玉生まれなので(笑)。中学生の時、フェリーから海を覗き込んだことがあって、その時にゾクっとしたんですよ。海にすごい生命力みたいなものを感じて、以来、「生命力が足りてない!」と思った時には、海に行ってパワーをもらっています。
アンゴラ村長 元乃木坂46の堀未央奈さん、北野日奈子さん。2人とも生き方がすごくかっこいいんです! アンダーメンバーになった時も、悔しい気持ちを隠さず、這い上がっていく姿が美しいなって思いました。今は卒業されていますが、自分で切り開いていく感じも美しいと思うし、そういった姿勢を私も参考にさせてもらっています。
自分はこうありたいとか、今は仕事がうまくいってないけど、頑張ろうとか、そういった部分、全部見せてもいいのかなって。誰にも落ちることもあれば、上がることもある。ずっとうまくいっている人なんていませんよね。7年前、コンビ結成直後に、「キングオブコント」で決勝進出をしましたが、以来、準々決勝で勝てていないんです。
ふがいなさは感じていますが、もがきながらもあきらめずに挑戦する姿を見せることが、誰かを励ますことになればいいなとも考えるようになりました。あとは男女関係なく、ゆるぎない自分の信念を持っている人を美しいと思うし、すぐ好きになっちゃいます(笑)。
アンゴラ村長
1994年5月17日生まれ、埼玉県出身。早稲田大学文学部を卒業後、ワタナベコメディスクールの20期生として芸人を目指す。2017年、「にゃんこスター」を結成し、5カ月後に“縄跳びネタ”で「キングオブコント」準優勝を果たした。2024年5月16日、20代最後の日に発売された、デジタル写真集『アンゴラ村長「151センチ、48キロ」100ページ豪華版 with TALENT デジタル写真集』(講談社 2200円)は発売から数日で、各電子書店の写真集部門のウィークリー1位を記録した。