2024.08.23
見上 愛、23歳女子。「自分はかなりオタク気質だと思います」
世のオヤジを代表して作家の樋口毅宏さんが時代の先端を走る女神たちに接近遭遇! 今回のゲストは、俳優の見上 愛さんです。このところ次々に注目作に出演し、いま最も気になる女優さんのひとりである見上さん、ほんわかしたイメージですが実はとてもしっかりした女性なのでした。
- CREDIT :
構成/井上真規子 写真/トヨダリョウ スタイリング/下山さつき ヘアメイク/豊田健治 編集/森本 泉(Web LEON)
今回のゲストは、いま注目の若手俳優、見上愛さん。2019年のデビュー以来、映画やドラマ、CMに次々と出演し印象的に残る活躍を続け、今年は大河ドラマ「光る君へ」に藤原彰子役で初出演も果たしました。8月29日には、Netflixシリーズ「恋愛バトルロワイヤル」の配信がスタート。今作で主役の有沢唯千花(ありさわ・いちか)役を演じた見上さんに、撮影秘話からプライベートのお話まで樋口さんがたっぷり伺ってきました。
「キラキラした青春とドロドロした闇のバランスが絶妙」(樋口)
見上 愛さん(以下、見上) ありがとうございます。
樋口 物語は、“超エリート女子高”が男女共学に変わって、「恋愛したら即退学」というブラック校則ができるところから始まります。実話を基にしたオリジナルストーリーだそうですが、生徒会による“ウサギ狩り”(※)など、正義の暴走が実世界の歴史とリンクしていて深いなと思いました。恋愛禁止の校則って見上さんが当事者になったらどうします!?
見上 特に気にしないかもしれないです。私は中高とも女子高で、学生生活の中で恋愛する感覚があまりなかったんです。それでもかなり充実した中高生活を送っていたので。
樋口 そうですか!
樋口 とはいえ見上さんだったら、他校の男子生徒から、色々お声がかかったんじゃないですか?
見上 全然そんなことないですから(笑)。
樋口 そして今作はとてもエッジが効いた演出で、キャラクターも立っていました。校長役は寺島しのぶさん、母親役は吉田羊さんでしたが、共演されていかがでしたか?
見上 おふたりともテレビや舞台で拝見していた憧れの方だったので、共演できてすごくうれしかったです。まだこの世界に入るつもりのない高校生の時に、しのぶさんが出られていた舞台『秘密の花園』を観に行ったことがあって。それが素晴らしい舞台で、しのぶさんのお芝居が凄く記憶に残ったんです。こういう女優さんが日本にいるんだ、と感動しました。
樋口 高校生の頃から憧れがあったんですね。
樋口 吉田さんと見上さんは、非常に縁がありますよね。NHKドラマ「きれいのくに」での共演や、放送中の大河ドラマ「光る君へ」では義理の母と娘という役どころでした。長く俳優をやっている人でも、同じ俳優と血縁関係で何度も共演するのはとても珍しいと思います。
見上 そうかもしれないですね。
樋口 ただ、吉田羊さんが場末のスナックでバイトする場面がありましたが、羊さんだったら間違いなく銀座の一流店で働いてるでしょ! と思わず突っ込んじゃいました(笑)。あと唯千花(見上さん)がウサギ狩りで、ホテルから出てくる同じ学校の生徒たちをこっそり撮影する場面がありますが、こんなに有能ならどこの週刊誌でも働けるよ! って。
見上 そうですよね(笑)。
「ビジュアルを完璧に作ってもらったら、すっと役に入れました」(見上)
見上 撮影前に、制服のフィッティングをしているときは緊張していました。でもメイクさんと相談して、ビジュアルを完璧に作ってもらったらすっと役に入れたんです。「唯千花って、親から美容院代をもらっても1000円カットで済ませたり、自分で切ったりして、残った分は食費とかに当てるよね」という話になり、そういう感じの髪型と、メイクもかなりナチュラルにつくってもらいました。
樋口 唯千花が次第に惹かれていく同級生の真木陵悟を演じた宮世琉弥くんは、見上さんと実際は3歳くらい違いますよね。年下の男の子と演技をしてみてどうでしたか?
見上 撮影の時、宮世くんは確かまだ10代で私よりずっと高校生に近い年齢で。彼と演技する中で高校生の“フレッシュさ”みたいなものを思い出しました。照れて強い言い方をしちゃう、みたいな不器用さって大人になるにつれてなくなりつつあったけど、もっと感情を隠すのが下手くそでもいいんだなって。
「その役の一番の理解者になれるかどうかをすごく大事にしてます」(見上)
見上 たくさんあったんですが、なかでも7カ月という撮影期間は経験したことがなく、途中で他の作品の撮影もあったので、集中力を途切れさせないようにするのが大変でした。自分の中の新しい挑戦にもなったと思います。
樋口 7カ月ですか! 見上さんは売れっ子だから一作品だけに絞るわけにはいかないし、大河ドラマにも出演して、世に発表されてない作品も制作する中で、この撮影も続けていたわけですね。違う役からまた戻って唯千花を演じるとなると、脳を合わせるのが難しそうです。
見上 そうですね。でも唯千花を長く演じていくうち、撮影の後半にはすんなり役に戻れるようになっていましたね。
樋口 それって見上さん自身、中高6年間女子校だったから唯千花に戻りやすかったのでしょうか。
見上 唯千花と自分の中高生活はまったく違うので、中高時代に戻る感覚というよりは役に戻る感覚だと思います。
樋口 全然別ですか。 役を演じるうえでは、自分が培ってきたものに似た部分を探すというより、その作品、そのシチュエーションごとにはまっていくって感じですか?
見上 そうですね。役に共感できるかではなく、その役の一番の理解者になれるかどうかをすごく大事にしてます。まだ20年ちょっとしか生きてなくて、自分1人の人生しか生きてないから、共感っていう基準で見てしまうとほとんどが共感できないことになってしまう。それだと演じられる幅が狭まってしまうから、共感できないけど理解はできるって感覚がベストかなと思ってます。
「調べるうちに、寺山修司ってめちゃめちゃ面白いと思い始めた」(見上)
見上 両親がもともと観劇好きで、私が中学2年生の時に父が「2.5次元ミュージカル」の舞台チケットをもらって家族で観に行ったんです。そこでお客さんたちがすごく楽しそうに帰っていく姿を見て、舞台ってすごいパワーを秘めているんだなと驚いて。それから観劇にハマって、照明や劇評、演出家など演劇系の仕事に就きたいと考えるようになりました。
樋口 ご両親の影響が大きかったのですね。
見上 そうですね。それで大学も演出の勉強ができるところに入りました。
樋口 はじめに目指したのは表舞台に立つ方ではなく、あくまでも裏方側だったんですね。でも、それでは世間が許してくれないです!
樋口 そうなんですね! 見上さんは高校時代、演劇部で寺山修司の舞台を演じたというのを聞きました。寺山修司は、53歳のおっさんの僕よりさらに上の世代に信者が多いような人なのに、 見上さんの世代から名前が出てきて一気に親近感が湧きました。これはどういうことなんでしょう!?
見上 大学に入るために高校の部活も演劇部に転部したんですが、初日から「オーディションで人が足りないから受けて」と寺山修司の『犬神』という作品の台本を渡されたんです。まったくわからなかったんですが、「とにかく動いてみて」と言われて受けたら合格してしまって。
樋口 人が足りなかったからだけじゃないと思います!
樋口 難しいとは思わなかったですか?
見上 難しかったです! 演技もしたことがないし、訳がわからなくてできないと思ったけど、だからこそ「なんでこんなこと書いたんだろう」「ちゃんと調べよう」と思うようになって。そしたら、どんどん面白くなってくるんですよね。
樋口 興味を持つとのめり込んで色々調べるタイプですか?
見上 そうですね。かなりオタク気質だと思います。
樋口 高校時代は演劇部と並行して、バンド活動もやっていたそうですね。一体、いつ寝てたんだ? っていうくらいの忙しさ! バンドは、どのあたりをカバーしてたんですか?
見上 GO!GO!7188、チャットモンチー、THE BLUE HEARTSあたりです。女の子のスリーピースだったので。あとは、チューリップとか昭和歌謡曲も色々やってました。
樋口 チューリップ!! 上の世代が多いですね!
見上 お父さんお母さんが見に来てくれるので、そこをターゲットにやっていました。
樋口 なるほど! THE BLUE HEARTSは僕が高校生の頃にライブに行きましたし、チャットモンチーも初ライブを見に行きました。1st アルバムを出す前に、下北沢のライブハウスに出ると聞きつけて、前から何列目かで見ました。無駄に長く生きてるおっさんの自慢話です!
見上 アハハ(笑) 凄いです!!
● 見上 愛(みかみ・あい)
2000年10月26日生まれ、東京都出身。2019年にデビュー。NHK「きれいのくに」に出演し注目を集める。以降、映画・ドラマ・舞台・CMと幅広く活躍。2024年は、NHK大河ドラマ「光る君へ」、KTV「春になったら」、CX「Re:リベンジ-欲望の果てに-」、WOWOW「ゲームの名は誘拐」が放送、主演映画『不死身ラヴァーズ』の公開など、活躍の場を広げている。8月29日から配信スタートとなるNetflixシリーズ「恋愛バトルロワイヤル」では主人公で、薙刀部と生徒会に所属する2年D組の生徒・有沢唯千花を演じる。
公式サイト/見上愛 | ワタナベエンターテインメント
Instagram/見上 愛(@mikami_ai_)
● 樋口毅宏(ひぐち・たけひろ)
1971年、東京都豊島区雑司が谷生まれ。出版社勤務の後、2009年『さらば雑司ケ谷』で作家デビュー。11年『民宿雪国』で第24回山本周五郎賞候補および第2回山田風太郎賞候補、12年『テロルのすべて』で第14回大藪春彦賞候補に。著書に『日本のセックス』『二十五の瞳』『愛される資格』『東京パパ友ラブストーリー』『大江千里と渡辺美里って結婚するんだとばかり思ってた』など。妻は弁護士でタレントの三輪記子さん。最新刊『無法の世界』(KADOKAWA)が好評発売中。カバーイラストは江口寿史さん。現在雑誌『LEON』で連載小説「クワトロ・フォルマッジ-四人の殺し屋-」を執筆中。
SNS/公式X
■ Netflixシリーズ「恋愛バトルロワイヤル」
違反した生徒は即退学処分という“男女交際禁止”の校則が制定された超エリート高校を舞台に、嫉妬・羞恥・背徳・憎悪が渦巻く前代未聞のバトルロワイヤルを描いた、センセーショナルな新時代の学園ドラマ。理不尽な校則に抵抗し、証拠写真を揉み消す“ラブキーパー”としての活動を始め、ついには校則の撤廃を求め学校を訴え裁判を起こす、主人公・有沢唯千花役に見上愛。市長である父との確執を抱えながらも唯千花に恋することで変化していく真木陵悟役に宮世琉弥。他に寺島しのぶ、吉田羊、石黒賢、浅香航大ほか。
2024年8月29日(木)よりNetflixにて世界独占配信開始
作品ページ/https://www.netflix.com/恋愛バトルロワイヤル
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