
第5回ゲストとしてご登場いただいたのは常盤貴子さんです。「愛していると言ってくれ」「Beautiful life」他数々のトレンディドラマでヒロインを演じ、連ドラの女王とも呼ばれた常盤さん。その後も映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍する一方、SNSで発信する旅の様子や日々の暮らしぶりなど人生を自在に楽しむ姿が幅広い支持を得ています。そんな自分流スタイルを大切にする常盤さんの「美」の秘密とは?


【interview 01】
旅はトラブルがあればあるほどおもしろい
常盤貴子さん(以下、常盤) もともとレトロなものとか建築が好きで、ずっと行きたいところリストに入っていた場所だったので、今日は来られてよかったです。やっぱりこういう場所でこういうお洋服を着ると、旅と同じでテンションが上がりますね。
── 普段、旅行先はどのように決めているんですか?
常盤 もう本当に行き当たりばったりで、どなたかが「ここ、よかったよ」とおっしゃったら覚えておいて、行けるタイミングが来た時に行ったり。夫とも行くし、ひとりでも行っちゃいます。この間も仕事で広島に行ったついでに尾道に寄ったり。

常盤 トラブルはあればあるほどおもしろいと思ってるので(笑)。特に旅は自分の中にネタが積み重なっていくというか。ただ楽しかったとか素敵だったよっていう話を聞いても面白いとは思えないし、せっかく旅をしたなら、旅行中の予期しない失敗談というお土産話をひとつでも自分の中に蓄えておいて、人にお伝えしたいじゃないですか。自分でもどんなサービス精神なんだって思うけど(笑)。
── 顔バレとかは大丈夫なんですか?
常盤 全然大丈夫ですよ。むしろ、ひとりだと皆さん、気を遣ってくださって、電車に乗っていてもよく助けてもらうんです(笑)。そ〜っと寄ってきてくださって「迷ってます……?」みたいな。「そうなんですよ。わかりました?」って言うと、「絶対常盤さんなのに迷っている風だから、これは話しかけたほうがいいかなと思ってごめんなさいね」って。「いや、話しかけてくだくださってありがたいです。ついでに渋谷方面に行きたいんですけど教えていただけますか?」って言ったら同じ方向だからと、渋谷まで連れて行ってくださったり(笑)。

常盤 本当に忙しかった時はそれが目的だったんですけど、今はどちらかというと自分を取り戻すためという意味合いのほうが大きいかもしれないです。家ではもちろんひとりになる時間はあるけれど、外ではたくさんのスタッフたちと一緒にいるので、誘導してもらうままに、周りの声に沿って動くようになるじゃないですか。でも、ひとりで動くといろんなものが見えてくるとかいうか、感覚が研ぎ澄まされて、私に備わっている本来の力みたいなものを取り戻せる気がして(笑)。だから、ひとりの人間であるためにひとりで旅をする。
── どういうきっかけで自分を取り戻す旅をするようになったんでしょうか?
常盤 連続ドラマの主演を何本もやっていた頃、その合間に竹富島か黒島に女友だちとふたりで旅行に行ったことがあったんですけど。そこで地元の方に、「若い子たちが“常盤貴子が来てる!”って島で噂になってるよ」と言われて。そっか、やっぱりバレちゃったんだなと思っていたら、そこにいたおばあに「この島はNHKしか入らないから、私はあなたが誰だかは知らない」ってはっきり言われたんです。

常盤 でもその時に、あぁ、すごくいいことを言ってもらったなと思ったんです。そうか、こういう島の人たちにも知ってもらえるような仕事をしなきゃ。そこまでやれていないのに、何を生意気なことを考えていたんだろう。まだまだだったじゃんって(笑)。そこまでいってやっと世の中に認知してもらえたということなんだなと思って、それがすごくいい経験だったから、その時のような出会いを求めているのかもしれません。
行き当たりばったりの出会いに面白さがある
常盤 芯のある人かな。ちゃんと自分の言葉を持っていて、自分の核がある人は何があってもブレないし、いろんなことに対してしなやかだから、人としてすごく美しいなと思います。

常盤 そうありたいなとは思うんですけど、やっぱりブレることも多く……(笑)。だからこそでしょうね。そういう先輩たちを見るとしっかりしなきゃなと思うけど、それが本当に難しくて。頑なになるばかりだと、それはそれでいびつになってくるし。そこはもうセンスだと思うから、ちゃんとセンスを持って生きていきたいなって。
── ご自身は完璧さを求めるタイプではないですか?
常盤 まったくないです。行き当たりばったりなんで(笑)。
── その行き当たりばったりを楽しむのが常盤さんらしさなのかもしれないですね。
常盤 そう。それがどう出るかが自分でもわからないのが楽しくて。それこそ、今制作中のフォトエッセイ(『小さな幸せで満たす日々』(主婦と生活社刊)でも、もともと書きたいと思っていたことと全然違う結末になって、え~、こういうことになるの!? みたいなおもしろさがあったり、自分でも驚きでした(笑)。

常盤 もともとはそんなに得意ではなかったと思うし、書くということをしてこなかったから、好きも苦手もわからなかったんですけど。一番最初は新聞で連載をやらせていただいたんですが、思わぬところに話が行くという体験が楽しくて(笑)。書くことでしか分からないことだったから、書くっておもしろいなと最近は思うようになりました。
── 今回のエッセイは書いてみていかがでしたか?
常盤 私、自分のことを説明したり、紹介するのがすごく苦手なタイプなんですね。でも今回は編集の方に「Instagramみたいな感じで書いていただければ」と言われたことでちょっと心が軽くなって。今までそういう感じで自分のことを伝えたことはなかったので。あと、写真も自分で撮ることになって自宅の写真も結構撮った、それも今まで絶対になかったことだから、予想外の展開でした(笑)。

常盤 うちはイギリス系とかアメリカ系っていうようなひとつのスタイルではなくて、中国も入っているしモロッコとかもあるし、ミックスカルチャーな家なんです(笑)。そのレトロなものたちの中にどう今のものも入れていくかの匙加減が、暮らしの中で一番楽しいと思うところですね。
── 今、他にはどんな時間が一番楽しい、充実している時間だと感じますか?
常盤 今は常に能登へ気持ちが向いています。もともとは朝ドラの「まれ」からのおつき合いなので10年ぐらいになるんですけど、能登の人たちとみんなで未来について語る時間は希望と期待で楽しいですね。

常盤 最近は楽なファッションであったり、すべてのことがどんどん楽になってきてるじゃないですか。でも、なるべく楽したくないなって。もちろんいつも今日みたいなお洒落な服ではいられないし、それがいいとは思わないんだけど、ここぞ、という時に楽をしない自分。それで自分自身のテンションも上がるし、見た人が“あの人の服、かわいい!”って思えるような服を着てお出かけできる自分でありたいなと思うんですよね。
だから今日みたいなお洋服は夢があってうれしかったです。場所もそういうお洋服が合う素敵なところだったから、みんなもテンション上げて泊まりに来てくれたらいいなって。こういうホテルでドレスコードとか決めて女子会やったらめっちゃ楽しいですよね。そういうのやりたい!(笑)
※vol.02に続きます。

● 常盤貴子(ときわ・たかこ)
神奈川県生まれ。1991年に女優デビュー以来、「愛していると言ってくれ」、「Beautiful Life」など数々のヒットドラマのヒロインを演じる。2004年に『赤い月』で第28回アカデミー賞優秀主演女優賞、2015年には『野のなななのか』で第29回高崎映画祭最優秀主演女優賞を受賞。ほかにもドラマ「カバチタレ!」、「天地人」、「まれ」、「やすらぎの郷」、「グッドワイフ」、「御上先生」、映画『間宮兄弟』、『魂萌え!』、『20世紀少年』、『花筐/HANAGATAMI』、『海辺の映画館―キネマの玉手箱』、舞台『マクベス Macbeth』、『王将-三部作-』など出演作多数。現在、KBS 京都・BS11・TOKYO MX「京都画報」(ナビゲーター)、NHK E テレ「おとな時間研究所」(司会)に出演中。

俳優・常盤貴子さんによる撮り下ろし・書き下ろしのフォトエッセイ。常盤さんの衣食住を紹介しています。フォトグラファーの撮影によるカラーグラビアも一部盛り込みつつ、エッセイ部分はすべて常盤さんが撮影した写真で構成。また、文章もご本人によるもので、飾らない人柄があらわれた、時にクスッと笑える内容に。「暮らし」「おしゃれ」「美容と健康」「心の栄養」「仕事と私」の5つのテーマを7万字超の文章で綴っており、読みごたえもたっぷりです。
5月16日発売 主婦と生活社刊
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