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2025.04.26

萩原利久「ステフィン・カリーのような俳優になりたいとずっと思っている」

話題作への出演オファーが絶えない萩原利久さんがジャルジャルの福徳秀介さん原作の映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』に主演します。役への向き合い方や、河合優実さんとの共演話から、崇拝するNBA選手ステフィン・カリーへの想いまで伺いました。

CREDIT :

文/飯田帆乃香 写真/瀬津貴裕(biswa.) スタイリング/TOKITA ヘアメイク/Emiy(Three Gateee LLC.) 編集/鎌倉ひよこ

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話題作への出演オファーが絶えない萩原利久さんにとって、仕事は「満足できないからこそ続けられる」もの。その努力し続けるスタンスは、NBAのバスケ選手・ステフィン・カリーの存在が大きく影響しているそう。役作りに難航したという主演映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』での役への向き合い方や、河合優実さんとの共演話などから、萩原さんの仕事の流儀に迫ります。

カッコいい男性像は当たり前のことを続けられる人

── 芸能界きってのNBA通である萩原さん。他にもご自身の好きなダチョウやトマトについて詳しいことでも有名です。その知的好奇心は、俳優の仕事にも通じていますか?

萩原利久さん(以下、萩原) そうですね。掘り下げる作業が好きなんです。俳優業は作品ひとつとっても毎日違うシーンを撮るから、常に初めての経験をしているといってもいいくらい永遠に掘れる仕事。3カ月間顔を合わせていた人たちとクランクアップしたら解散して、次の作品でまた初めましての出会いがあるのも面白いです。

── 完成した映像をご覧になって自己評価はされていますか?

萩原 自分が出演した初号を見ると、ああすればよかった、こうすればよかったという課題は例外なく感じます。だから満足することも、高得点をつけることもないです。逆に、役作りはゴールの指標がないから追求し続けられるもので、もし自分で100点をつけたら俳優は卒業というか……。僕の場合、自分の仕事に満足できた時はたぶん飽きた時だと思います。
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── 子役から始めて経歴17年ほどになりますが、辞めたくなったことは?

萩原 ないです。どんな仕事にもデメリットはあると思うんですけど、例えばこの職種だと、人目を気にせず街を出歩く自由はありません。それをしょうがないこと、必要なこととして受け止められていたのに、辞めたいと思った瞬間ものすごいストレスの要因になってしまう気がします。それって本当にしんどいことなので、もし過去に辞めたくなっていたらすでに引退していると思います。無理して働き続けるのも周りの人に失礼なので。

── もし今の環境を手放す時がくるとすれば、物理的より感覚的な動機になりそうですか?

萩原 自分の興味が尽きたかどうかです。仕事はもちろんですけど、僕、NBAの試合の放送時間に合わせて起床しているんです。そうやって自分の好きなことで生活のサイクルをつくっているので、興味ないものを人生に組み込む余地がないんです。だから、好きだったものでもその後に探求心がなくなれば違和感が出てくるので、自然と生活から抜けていく感じです。
── そうはいっても、仕事は趣味とは違う苦しみがあると思います。努力を続ける秘訣はありますか?

萩原 コービー・ブライアント(米・バスケットボール選手)の言葉「マンバ・メンタリティ」を大事にしています。簡単に説明すると、「明日が今日より良いものになるように準備しよう。試合で何が起こっても驚くことはない。練習で1000回やっていたことの1001回目をプレイしているだけだ」という意味合いです。本番に向けて準備するということ。それって当たり前なんですけど、実際にやろうとすると難しい。だからこそ逆に、当たり前のことを続ければ結果を出せるんだと思います。
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── 萩原さんはステフィン・カリーの大ファンでもありますよね。

萩原 はい、崇拝しています。彼の身長は188cmで、NBAの中では華奢なほうなんですよ。そのぶん、技術を磨いて上り詰めた人。もちろん生まれ持ったセンスはあるはずですけど、周りとの身長差をカバーできるくらい練習を積み重ねてきたのは事実。でもそこに複雑なことはなくて、ステフも本番までの準備という「基本」を続けたから今に至っています。そういうシンプルな努力に説得力のある生き方をしている人はすごくカッコいいです。
── 基本を続けるというゴールの見えない作業は苦しそうです。

萩原 それはもう、「努力」といわれる過程を楽しんだもん勝ちじゃないですか? 辛いと思うか、楽しいと思えるかで継続性と質は変わってくるのかなと。ステフは現状に満足することはないし、心の底からバスケを愛して、楽しんでいます。

── それは萩原さんの生き方にも影響していますか?

萩原 僕はステフィン・カリーのような俳優になりたいとずっと思っています。それはスタンスとして、彼の仕事や生活の向き合い方を取り入れたいということ。プロフェッショナルな部分はどの職業にもあることで、僕だったらバスケの試合が撮影、練習を役作りの準備と置き換えれば、その心持ちをマネすることはできますよね。

── ロールモデルがいるとキャリアにもいい影響が出そうですね。

萩原 そうですね。無条件に力になりますし、行動を起こす理由を見つけやすい。生活もうまくいくので、メリットを感じることが圧倒的に多いです。
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本番で何が起こっても対応できるように準備は怠らない


── お笑いコンビ・ジャルジャルの福徳秀介さんによる同名小説『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』の映画版が公開されます。好きなことをまっすぐ貫ける萩原さんは、主人公の小西に共感できましたか?

萩原 日常の中で、小西は僕と違う選択を取るタイプ。共感はそこまでないですけど、彼の思うことや行動は理解できます。でも極端な話、どの作品でも演じるうえで共感はマストな要素だとは思っていなくて。自分と価値観の違うキャラクターは特に、共感より理解する作業を重要視しています。
── 準備に余念のない萩原さんですが、情緒のふり幅が大きい小西役はいつもと違う役作りをされたそうですね。

萩原 ほとんどの撮影は順撮りではないので、ストーリーラインに沿ってそのキャラクターの線みたいなものを一本作っておきたいんです。それを現場に入る前にやっておくと、撮影中にいろんな変更があっても軸が崩れない。でも小西に関しては、線にのせる機微をうまくすくいきれなくて、すべて正解であり、不正解にも思えました。だから手法を変えて間口を広げるイメージで、いろんなパターンを想定することに。その場その場で対応できるような準備をしました。

── 実際にクランクインしてどうでしたか?

萩原 特に物語の前半は同級生の桜田さんによって小西が感化されるシーンが多いので、自発的にこの役を演じるよりは、目の前で起こること、演じている河合(優実)さんから出てくるものを全力でキャッチしていきました。これは自分の普段のやり方としてはあまりとらないスタイルなので、そういう意味では難しかったです。
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── ドラマ「不適切にもほどがある!」などで実力が高く評価された河合さんですが、萩原さんは共演されてどんな印象を受けましたか?

萩原 河合さんが発する言葉(台詞)の一つひとつが小西を通してめちゃくちゃ身体に入ってくる感覚でした。言葉には人を殺めてしまう力も、支える力もあります。ポジティブな意味でもネガティブな意味でも、人間をあらゆる状態にできるツールであり、自分はそれを扱う仕事をしているという重みを感じました。これってたぶん、一緒に演じていてものすごい感覚だと思います。

── それは新感覚?

萩原 新感覚な気もするし、原点な気もするし。なんかこう、日々使う言葉というものが当たり前になりすぎて忘れていたものを、顕在化してくれた感じです。
── 劇中で小西と桜田さんは、幸せな偶然にめぐり合う「セレンディピティ」で距離を縮めます。萩原さんにとって忘れられない偶然はありますか?

萩原 今日までこの仕事をできているのが一番の偶然かもしれません。もともと志して始めたわけでもないので、いろんな出会いとか縁が巡り巡ってここにいます。と言いつつ、偶然の出来事って存在しないと思っている節もあります。やるかやらないかを選びながら、そこまでに至る道を選択しているのは自分なので。偶然と思っていることはすべて必然なのではないかなというのが持論です。

── 幸運を引き寄せるのも自分次第?

萩原 そうです。運も実力のうちって思いたいです。だって頑張れないじゃないですか。「あの人は運が良いから」で済まされちゃうと、自分は諦めるしかないのか……って。運頼りはしないようにしています。
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── 映画の話題に戻りますが、それぞれのキャラクターにある長台詞も印象的でした。小西の長い台詞を脚本で見た時はどう思いましたか?

萩原 率直に「うわっ、やばい……」って思いました。リーガルものとかなら専門用語のある長い台詞が見どころだったりするけど、こういう日常の延長にある情緒的な話であの量は珍しいんじゃないかな。僕はその長台詞の撮影日に向かって全体を撮っていた感覚がありました。

── 現場の雰囲気はいかがでしたか?

萩原 すごくエネルギッシュでした。ものを作ることは決して楽ではないんですけど、チーム全体の覇気が清々しいほどパワフルで気持ち良く、撮影が終わると運動した後の筋肉痛みたいな良質な疲労を感じました。こういうエネルギーの使い方は今後も生かしていきたいです。
── この映画の観どころを教えてください。

萩原 原作は福徳さんが書かれた小説なのでコントのような世界観なのかと思いきや、めちゃくちゃ人間の温度のある物語です。観る方の年齢や状況によっていろんな感じ方ができると思います。大学生の小西と桜田さんを渦巻く環境に懐かしさを抱く人もいれば、もがいている若者が可愛らしく見える人もいたり、自分と重ねて感情を揺さぶられる人がいるかもしれません。一度ご覧になってから、また数年後に観ていただくと感じ方が変わる作品ではないかと思います。

── ちなみに、冴えない毎日を送る小西にちなんで、萩原さんの冴えない日の過ごし方は?

萩原 寝て終わります。三度寝したときはもう、ダメだこりゃってなります。その日は潔く無駄にしつつ、体力を回復したことにしてポジティブに捉えておきます。
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萩原利久(はぎわら・りく)

1999年2月28日生まれ、埼玉県出身。2008年にデビュー。主な出演作にドラマ「美しい彼」(21)、「月読くんの禁断お夜食」(23)、「真夏のシンデレラ」(23)、「たとえあなたを忘れても」(23)「降り積もれ孤独な死よ」(24)、連続テレビ小説「おむすび」(24-25)、「リラの花咲くけものみち」(25)、映画『ミステリと言う勿れ』(23)、『朽ちないサクラ』(24)、『キングダム 大将軍の帰還』(24)、『世界征服やめた』(25)などがある。アニメーション『花緑青が明ける日に』(声の出演)が公開を控える。

萩原利久 WebLEON   LEON   『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』

『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』

大学の登下校は日傘をさして、周りとの距離をとる小西(萩原利久)。学内唯一の友人である山根(黒崎煌代)と、銭湯のバイト仲間・さっちゃん(伊東蒼)とだけはふざけあえる日々を過ごしていた。そんなある日、同じ講義を受けていたお団子頭の桜田(河合優実)に目を奪われる。思い切って声をかけると会話が盛り上がり、意気投合できた。桜田と出会えた喜びを噛みしめながら、ようやく自分を取り巻く世界を少しだけ愛せそうになった。しかしその矢先、運命を変える衝撃の出来事が襲う…。原作は福徳秀介による小説『今⽇の空が⼀番好き、とまだ⾔えない僕は』(小学館刊)。監督・脚本/大九明子、出演/萩原利久、河合優実、伊東蒼、黒崎煌代、安齋肇、浅香航大、松本穂香、古田新太ほか。
配給/日活
4月25日(金)全国公開
公式HP/https://kyosora-movie.jp/
©2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会

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