2020.08.07
■藤原史織/タレント
元ブルゾンちえみが語る、カッコいい大人の生き方
「35億」のネタで一世風靡したブルゾンちえみさんが「藤原史織」と名前を改め、早や4カ月。いまごろはローマでのびのび留学生活を送っている……はずだったが、新型コロナウイルスにより計画は頓挫した。思いがけず自分を見つめなおすきっかけになったという藤原さんに「大人のカッコいい」を聞いてみた。
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写真/平郡政宏 スタイリング/奥田ひろ子 文/秋山都
「35億」のパフォーマンスで圧倒的な人気を博した「ブルゾンちえみ」が藤原史織に改名して早や4か月。新型コロナウイルスによるステイホーム期間中もインスタライブなどを精力的に開催し、ジャンルにとらわれないクロスボーダーな活動をし始めている。
「Black Lives Matter」などの社会課題や地球環境についても問題意識を持ち、常に自分の言葉と判断基準で語る藤原史織はカッコいい。そしてそれは、私たちの知っている「ブルゾンちえみ」とはまた違う人物像だ。藤原史織はどんな人? そしてなぜカッコこいいのだろう?
イタリア留学が白紙になって思いがけなく生まれた、自由な時間
藤原 本来は4月中旬からイタリア・ローマに1年間留学する予定でした。ビザも取り、住居も探して、後は行くだけ、という状況で緊急事態宣言が発令されて……イタリアも大きな被害をこうむっているので、やはり無理だなと判断して。
おかげでぽっかりとスケジュールのない自由な時間が生まれたので、あんまり人の来ないような静かな公園のベンチで読書したり、自宅でけん玉の練習をしたりしてました。
── けん玉(笑)。ちょっと孤独な趣味に思えるけど。
藤原 オンラインでレッスンを受けて、少しずつ技ができるようになるんです。自粛期間中は世の中のいろんなことがストップしていたから、自分も停滞しているような感覚に陥ってしまった。自由な時間を不安に感じていたんですが、けん玉ができるようになることでプチ達成感を味わっていました。
── でもなぜローマに行こうと?
藤原 数年前にイタリアへひとりで旅行して、ローマが気に入ったというのが大きい。あと、そもそも私はメインストリームがちょっと苦手というか……ミドレンジャーに心惹かれるんです。
── ミドレンジャー⁉
藤原 たとえばゴレンジャーなら、みんながカッコいいと思うアカレンジャーやアオレンジャーには心惹かれない。たとえば留学もNYやパリなら花形って感じでしょう? でもそうじゃなくサブ的な存在が好きなんです。「ブルゾンちえみ with B」ではもちろんセンターで主役をやっていたわけですが、本当は「with B」のほうでいたいタイプ(笑)。
クラスでモテモテの男子より、教室の片隅で何かモクモクと作業している子に惹かれます。みんなが注目していないところに、面白いものや魅力的なものが落ちてないかなと探すのが好きなんです。まだ知られていないこと、私が知らないことの発見にワクワクします。
藤原 なぜ名前を変えたのか……(しばし沈黙)。「ブルゾンちえみ」は私のひとつの財産であることは間違いない。パフォーマンスやネタは大好きでした。でも、そこから得られるものと本来の自分との間の距離があった……というか、「ブルゾンちえみ」として求められていた役割や仕事内容、きっとこれからいただくであろうお仕事が、本来の私、藤原史織との間に大きな乖離があったということ。
いまも「ネタをやってください」と言われたらうれしい。でも、あの作品は自分の中で完結しているし、その延長でやっていく、つまり、余韻の中で生きていくようなことはしたくないんです。みんなに楽しんでいただく賞味期限って、きっとあるでしょう?
「あなたの職業は何? 」という質問自体が、ナンセンスだと思っちゃう
藤原 なんでも(笑)。コメディアン、女優など自分をカテゴライズされることに違和感を覚えるんです。決めてしまうことがこわいというか、もっと漠然とした存在でありたいというか。そもそも、職業ってひとつに決める必要あるんですか? と聞き返したくなってしまう。
「あなたの職業はなんですか?」という質問自体が前時代的だ、という反応に、ぽんと膝を叩きたくなるような思いがした。これは「ポートフォリオ・ワーカー」だ、と。ポートフォリオ・ワーカーとは、さまざまな職業やソーシャルな活動を複数同時に活動していく、これからの人生100年時代に必要とされる働き方のこと。藤原史織の眼はつねに未来を見据えているに違いない。
── では、藤原史織さんにとって「カッコいい大人の条件」とは?
藤原 常に挑戦し続けていること。いくつになっても、何か新しいことを始めるとか、すべてを捨ててどこかへ旅立つとか、失敗を恐れずに行動できる人。こどもや、後進はそういう人の背中を見てカッコいいと思うんじゃないでしょうか。
私自身、その時「やりたい」と思うことをリスト化して、その優先順位一位からやっていきたいんです。「やりたいけどやれない」と、言い訳をつけることはしたくない。いちばんの自分の“WANT”に時間と労力を割く——それがこれからの藤原史織です。
(文中=敬称略)
● 藤原史織(ふじわら・しおり)
岡山県岡山市出身。2020年4月より、「ブルゾンちえみ」から『藤原史織』に改名。Instagram、 note、YouTubeのプラットフォームを活用し、
環境保護、SDGsとエンタメなどを併せた情報や活動を発信しながら、
現在イタリア留学を準備中。