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2020.08.12

■ 魔裟斗/元K-1 MAX世界王者

自由に、媚びずに ── 二十歳の頃からずっとこのスタイルで生きている

K-1 MAXで2度の王者に輝き、30歳の節目に現役を退いた「反逆のカリスマ」。現在41歳となった魔裟斗さんに、その美学と「大人のカッコ良さ」を聞いた──。

CREDIT :

写真/恩田拓治 ヘア&メイク/晋一朗 取材・文/平井敦貴(LEON.JP)

混沌とした今の時代に、覚悟をもって生きている「カッコいい大人」を紹介していく本特集。9人目にご紹介するのは、2003年、2008年とK-1 WORLD MAXで2度の世界王者となった魔裟斗さん。

現役時代はその実力と風貌から「反逆のカリスマ」と称され、K-1ブームを牽引。2004年の大晦日に開催された「K-1 PREMIUM 2004 Dynamite!!」では、当時勢いに乗っていた山本"KID"徳郁氏との激戦を制し、その最高視聴率は31.6%を記録、文字通り日本中を熱狂させた。現在41歳となったそんな魔裟斗さんに、今だから語れる「大人のカッコ良さ」を伺う──。

魔裟斗を演じている部分もあった

魔裟斗 僕の20代はそれこそ全身ドルチェ&ガッバーナで揃えたりして、「自分を見てくれ」というような派手な格好をしていましたね。時計もたくさん買いましたし、いつ見られても“魔裟斗”のイメージでいようと自分でも意識していました。

スーツ越しにも分かる鍛え抜かれた体に、何事にも動じないであろう落ち着いた受け答え。真っ直ぐな眼差しでインタビューに答える魔裟斗さん──そんな誰もが憧れる男の中の男に、現役時代のことを聞いた。

魔裟斗 K-1でデビューをした当初は、魔裟斗(というキャラクター)を演じている部分もありました。ですが、そうしているうちに自然とそれが自分になっていくんですね。役者が何かの役を演じているうちにそれがプライベートにも入ってくると言いますが、それに近い感覚です。それからずっと変わらずに今まで来ています。

プロデビューしたのは10代の時、K-1へ参戦してからは一気にスターダムにのし上がっていった。

魔裟斗 格闘技のデビューは18歳の時で、当時はキックボクシングの団体に所属していました。K-1に出たのが22歳の時だったんですけど、23歳で初めて世界チャンピオンになって、その後くらいからテレビに出たり、いろいろな方とのお付き合いも増えていきました。LEONの当時の編集長とも食事の機会があったのですが、「キミいくつ?」って年齢を聞かれて。「25歳です」って答えたら「まだコヤジにもなってないな!」って笑われたのを覚えています。

世界チャンピオンになりメディアでの露出も激増した20代、周りからはまさに絶頂期のように見えた。しかし、その裏には選手としての苦悩があったと言う──。

魔裟斗 ただ、そういった様々な会食やお酒の機会が増えてくると、やっぱり選手として弱くなる、勝てなくなっちゃうんですね。25、26歳の頃はそういう生活に染まりかけていて、K-1 MAXでも勝ち上がることができなくなっていました。

23歳で手にした栄冠。その後の人気と引き換えに失ったリングの上での強さ。しかし、格闘家の本能がそれを許すことはなかった。

魔裟斗 試合に負けて、このままじゃダメだと気づいて──。そこで「絶対にもう一度チャンピオンになる」と、決意を新たにしたんです。それからは意識を変えてお酒や会食を断ち、生活を変えました。結局、2度目の世界チャンピオンになるのに5年かかっているのですが、途中で流されていたら2度目は絶対に達成できなかったと思います。それに、再びチャンピオンになれたからこそあのタイミングで引退できたと、今にして思っているんです。
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もっと見たいと思われる時に引退する

2度目の世界王者となった翌年、選手として絶頂だった魔裟斗さんは惜しまれながらも現役を退く。当時30歳、その決意に至った理由とは──。

魔裟斗 選手として、もっと見たいと惜しまれながら引退するのが理想だったんです。肉体的にボロボロになっても続けるのは、その当時はカッコ良くないと思っていて。ただ、こうして40歳を超えると、好きなことを続けるのも一つの美学だと思えるようになりました。

それと、引退のもう一つの理由は、格闘技はやっぱりコンタクトスポーツなので、脳にダメージが溜まっていくというのがありました。パンチドランカーというか、実際の試合はボクシングと違って3分3ラウンドしかないですけど、練習のスパークリングでは毎日のように殴り合っていますから。そんなにダラダラ続けない方が良いだろうと思っていたんです。

惜しまれながら退く美学。それとは逆に、40歳を超えてから気づいた「続けることの美学」とは──。

魔裟斗 やっぱり、何か一つのことをずっと好きで続けるのはカッコいいことだと、今になって思うんです。サッカーの三浦知良さんも選手としてずっと続けていて、それは素晴らしいことだし、そういう美学もあると思うんですね。野球でも監督になったら70歳くらいまでユニフォームを着るじゃないですか。そうすると子供の頃からずっとユニフォームを着て好きな野球を続けていけるわけで。それは選ばれた人たちしかできないですけど、純粋に羨ましいですよね。
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利害関係のない人たちに会って、すべてをリセットした

選手引退後、魔裟斗さんは格闘技の解説やテレビ出演などに活動の場を移していく。それと同時に生活での変化もあった。

魔裟斗 30歳で選手を引退して、チャンピオンの魔裟斗から肩書きがなくなった魔裟斗になって、最初の2、3年は大変でしたね。どういう風に生きていこうかな、と。若かったし、変化しなきゃいけないけど、変わりたくないな、とも思っていて。

そんな状況を変えたのは、待望の第一子の誕生だったという。

魔裟斗 それが徐々に変わっていったのは、子供が生まれたからというのがあります。子供が幼稚園に入ったり習い事に行ったりして、そこで自分とまったく利害関係のない親と出会って──。今までそういう利害関係のない人と会うことがなかったので、昔の、何もなかった頃の自分に戻れた気がしました。それが自分の変化として大きかったですね。

プロ格闘家としてデビューしてから、常に目の前には敵、そして周りにはショービジネスを取り巻く関係者がいた。そんな勝負の世界から離れて気づいたのは、自らを飾らずに生きていくことだったという──。

魔裟斗 そういうこともあって、35歳くらいになって一度全てをリセットしたんです。30代になって、5年間くらいはどうしようかなって悩みながら生きていたんですけど、そこからリセットして「普通でいいや」って思うようになったんです。あんまり格好つける必要もないし、プライドとかも捨てちゃおうって。そうしたら、すごく楽になったんです。

ちょうどその頃、一度去ったリングに戻り、かつて激戦を繰り広げた山本"KID"徳郁氏との再戦も行われた。

魔裟斗 2015年の大晦日ですね。引退後はもう絶対、何があろうとリングには上がらないって決めていたんですけど、そんなプライドももう捨てちゃおうと思ったんです。
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目の前にあることを一生懸命やる

魔裟斗 30歳から35歳までは充実感がなくて迷っていたんでしょうね。何のために生きているんだろう、人生って暇つぶしだなってその頃思っていました。毎日毎日、暇な毎日だな、つまんない毎日だなって思っていました。でも子供が生まれていろいろな方と出会うことで考えが変わっていって。

それで一度リセットして「目の前にあることを一生懸命やっていこう」という考え方に変わったんです。そうすると、生きることに充実感が出てきたんですね。"KID"からのオファーもちょうどその時期にもらったので、じゃあもう一度やろうかなって、前向きに受けることにしたんです。

目の前のことに一生懸命取り組み、充実感を持って日々を生きる──それを魔裟斗さんは今も体現している。

魔裟斗 たぶん今、多くの30代、40代のサラリーマンの人って「早く仕事辞めたいな」って思っているじゃないですか。僕は反対に、一生仕事できたら一番いいのにって思っていて。その大きな違いは、自分の好きなことができているかどうかだと思いますけど……。

基本的に僕は好きなことが仕事になっているので、毎日充実しています。そういう毎日を一生懸命やってきて、日々のことを積み重ねていたら、今につながっていった。気づいたら41歳になっていた、という感じなんです。
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TPOに合わせることがカッコ良さにつながる

そう語る魔裟斗さんに、自身が思う「カッコ良さ」とは何かを聞いた──。

魔裟斗 若い頃からずっと、TPOというのはすごく大事だと思っていて、その日に着ていく服装も場面に合わせて選ぶようにしてきました。例えば現役時代、他の選手の試合を見にいく時は必ずスーツで行くようにしていました。それは選手への敬意でもあるし、会場ではいろいろな人に見られるというのも意識していましたから。

それに今、格闘技の解説者として仕事に行く時も必ずスーツを着て行きます。8時間くらいずっと座っているのでスーツだと疲れるんですけど、ゆったりめで楽なシルエットではなく、少しタイトでも体のラインがきれいに見えるものをオーダーして着ていますね。

この日の取材に着てきたのも新調したばかりだという黒のスリーピース。しっかりとタイを締め、スタイリングも自分で決めているという──。

魔裟斗 今日着ているのは信頼している「東京テーラー」で作ったスーツなんですが、体のラインがきれいに出るのに、着ていても疲れない。今回のオーダーで5、6着目なんですが、本当にドンピシャの形なんですね。僕は昔から服をたくさん買いますし、スーツも好きでよく作るんですけど、今日のスーツはこれまでで一番と言えるくらいフィットしています。

そのスーツに合わせて、この日の腕元に着けていたのはパテック フィリップのノーチラス。時計も昔から好きで、その選び方にもこだわりがあるという──。

魔裟斗 時計はずっと好きで、初めて買ったのは20歳の時。ファイトマネーを貯めてロレックスのエクスプローラーⅠを買いました。その後にも様々な時計を買いましたが、アンバサダーをさせていただいたこともあって、オーデマ ピゲのロイヤルオークは今もずっとお気に入りです。ほかにはウブロも愛用していますし、スーツの時だとこのパテック フィリップが一番しっくり来ています。
魔裟斗 やっぱり時計もTPOに合わせた着け方を心がけていて、スーツの袖に引っかからないケースの薄さが、この時計の気に入っている点ですね。それと、これまで時計を何本も買ってきて思うのは、やっぱり歴史があるものが良いということ。高級時計と呼ばれるものはいくつもありますが、歴史がある、本当に良いものだと飽きが来ないんです。だから時計を選ぶ時は、最初から最高のものを選ぶと回り道をしないで済むかもしれませんね。
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仕事、家庭、遊びのバランスが大事

「男はこうあるべき」という持論はあるのだろうか。率直に聞いてみた──。

魔裟斗 自分の中では「自由に、媚びずに生きていきたい」というのがあるんです。二十歳の頃からずっとこのスタイルで生きているので、そこだけは変わらずにいきたいとなと。でも、そこにはお金というのも大事であって、そうじゃないと誰かに媚びないといけない。だからこそ、お金の面もしっかりしながら、自分のスタイルを貫けるようにしているんですね。

では、そんな魔裟斗さんから見てカッコいいと思う大人の条件は──。

魔裟斗 すべてにおいてバランス良くやっている大人っていうのはカッコいいですよね。遊びもできて、家庭も大事に守って、仕事もしっかりやっている人。この3つのバランスが大事だと思います。仕事はバリバリやって遊びもバリバリやって、でも家庭は最悪ですとか全然カッコいいと思わないですし、家庭を大事にしてるけど、遊びもやってるけど、仕事ダメって人もカッコ良くないじゃないですか。

やっぱりそのバランスの良い、円グラフの『丸』を持っている人はカッコいいなって思いますね。そのバランスの良い丸の大きさが大きければ大きいほどいいですよね。そういう風に自分もなりたいなと思ってます。

最後に、一つ踏み込んだ質問を投げかけてみた。

──これまでずっとモテてきましたよね? 

魔裟斗さんは少し笑ったあと、こんな答えを返してきた。

魔裟斗 知ってます? 女選びとクルマ選びは一緒なんです。フェラーリが好きな人はフェラーリのような女性が好きだし、国産車が好きな人は日本人らしい女性が好き、いろいろなクルマをすぐに乗り換える人は、女性に対してもそういうタイプなんです。

そして付け加えるように、こう続けた

魔裟斗 僕はメルセデス一筋なんです。

誰もが憧れるカッコいい大人は、強くてお洒落で、そしてユーモアも持ち合わせている。

●魔裟斗(まさと)

1979年3月10日生まれ。22歳でK-1に参戦し、「K-1
WORLD MAX」では2003年、2008年の世界王者となる。2009年の年末に現役を退き、その後は解説者やタレントとして活躍。一男二女の父でもあり、妻は女優の矢沢心。生涯戦績は63戦55勝(25KO)6敗2分。
https://www.k-masato.com

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