2020.07.31
ダンヒルの「サムライブルー×浮世絵」コラボで話題! アーティスト、アンドリュー・アーチャーってどんな人?
先日発表されたサムライブルーのアートワークは、まさかの浮世絵テイスト! 斬新なビジュアルは、公式スーツを手がける「ダンヒル」と、オーストラリア出身のアーティスト、アンドリュー・アーチャーとのコラボレーションによるもの。日本オタクだと噂の彼に、制作にまつわるエピソードや、自身の創作について聞いてみた。
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文/矢吹紘子
最新コレクションは、都会的なストライプと、チームカラーを意識した品のあるネイビー、おなじみのベルグレイヴィアシルエットが際立つツーピーススーツ。モダンでありながら、勝負師たちの秘めた情熱をも感じさせる「勝負服」のデザインです。
浮世絵タッチのアイコニックなイメージの数々は、日本的でありながら、同時にどこか開けた目線も感じさせます。それもそのはず、手がけたのは豪州メルボルンを拠点に活躍するアーティスト、アンドリュー・アーチャー。
サッカーと浮世絵、一見すると結びつかない要素を、独特の感性でミックスし、アートとして作り上げるその手腕には思わず脱帽。一体どんなクリエイターなのか? 妙に気になり、早速インタビューを敢行しました。
情熱を注げる“何か”を組み合わせることが自分らしさにつながる
浮世絵は、私にとってはインスピレーションの宝です。お気に入りの作家は歌川国芳。資料としていつでもみられるよう、彼の作品を含め、様々な浮世絵の画集をコレクションしていますし、浮世絵に興味を持っている人たちとも情報交換をしたりもして、常に知識をアップデートしています。
光栄なことに、昨年ウィ―ンの「オーストリア応用美術博物館」で、自分の作品が40点あまり、国芳の浮世絵と並んで展示されるという機会に恵まれました。まさに夢がかなった瞬間でした。
ちなみに過去に発表した作品は、日本のクライアントや日本の何かをテーマに発注されたものではない場合がほとんどなんです。でもやっぱり、自分の好きなものが表に出てくるんでしょうね。例えば「アウディ」の広告用のイメージビジュアル「Planet RS7」。具体的にリクエストされたわけではないのですが、結果的に浮世絵を思い起こさせる植物や風景の描写を取り入れたデザインに仕上がりました。
過去の文化だけでなく現代のポップカルチャーにも注目していて、DJ Krushや村上春樹など、尊敬するアーティストも数え切れないほど。それらをミックスする方法は自分の中の永遠のテーマと言えるかも。
日本人のクラフツマンシップへのひたむきな姿勢に共感を覚えます
私の旅はかなりフリースタイルで、行き当たりばったり。途中下車をしては、そこで一日を過ごす、みたいな感じ。東京にいる時は博物館や書店で何時間も過ごして資料を読んだり、史跡を訪れたり。去年の冬に行った長野と、その途中で立ち寄った沿線の田舎町は格別でした。
行ってみたい場所や食べてみたい料理は、まだまだ数え切れないほどたくさんありますが、また気軽に旅行ができるようになったら、福岡にしばらく滞在してみたいですね。あと沖縄にも。
毎回、これが最後の作品になる気持ちで向き合っているんです
一方で、昔から服飾デザインの物作りへの興味も持ち合わせていて、なかでも「ダンヒル」を支えるクラフツマンシップは素晴らしいものだと常々感じていたんです。だからアートワーク制作のオファーを頂いた時は、「よし、やるぞ!」と胸が熱くなりました。自分が情熱を注いでいるものが、はっきりとリンクしていましたから。
「ダンヒル」のチームは、最高の作品を生み出せるよう、献身的にサポートしてくれました。私の作品を熟知していたし、日本サッカー協会(JFA)ともうまく橋渡しをしてくれたのもありがたかったですね。
私はどんなプロジェクトも「自分の最後の作品になるかもしれない」という気持ちで臨んでいます。「ダンヒル」とのコラボレーションは、サッカーとファッション、そしてアートの世界を自分なりにつなぎ、力の限りを出し尽くした最高作にしたいと思っていました。コンテンポラリーな感覚と伝統美のバランスをとるのは常に大きな挑戦なのですが、今回は達成できたのではと感じています。
スポーツと日本のカルチャーをつなげる作品を作り続けたい
パラリンピックは、アスリートたちの東京大会へのそれぞれの道のりにフォーカスした作品になる予定。いちスポーツファンとしては、この上ない幸せです。
その一方で、時間に余裕がある時は、日本の文化や歴史をバスケットとリンクさせたパーソナルな企画「Edo-Ball」も進めています。2014年から続けていて、作品をまとめたビジュアルブックも作ったくらい、私にとっては大切なプロジェクトなんです。
「ダンヒル」とサッカー日本代表とのコラボレーションもそうですが、スポーツと和のカルチャーをつなげる橋渡しは、これからも意欲的に取り組んでいきたいですね。
●Andrew Archer (アンドリュー・アーチャー)
ニュージーランド・オークランド出身。メルボルン在住。ポップカルチャー、シュルレアリスム、アジアの文化に触発された独特のスタイルが世界的に評価される。これまでに「Nike」「ブンデスリーガ」「ソニー・ミュージック」「ニューヨークタイムズ」など様々なクライアントとコラボレーション。パーソナルプロジェクト「EDO-BALL」のビジュアルブック『EDO BALL THE ART OF BASKETBALL』が発売中。https://www.andrewarcher.com