クルマもまたそのひとつですが、現在の愛車、71年製のメルセデス ベンツ280SLに出会ったのは、約8年ほど前。なんと米・アリゾナの納屋に10年以上放置されていたものだそうですから、まさに運命の出会いです。
背景にあるストーリーを共有するのが好き
地主 晋さん(以下地主) 「まず、アメリカでエンジンとミッションのオーバーホールをしました。外装は比較的綺麗だったのですが、エンジンルームは塗装が剥げていたので、そこを塗り替えてから、日本に持って来て。それからカーペットやシートなどの内装を本格的に整えて、約1年ほどかけて仕上げました」
280SLといえば、1971年当時の世界の最先端。クーラーもしっかり付いていて、オートマチック仕様。それだけに普段乗る上でのストレスはないといいます。
地主 「ものすごい長距離を乗ることはないですが、都内から箱根ぐらいの距離ならちょうどよくて気持ちいいですよ。季節的にはオープンで乗るなら4月、5月が一番。冬は少し寒くなってきた11月頃が最高です。乗り味も約半世紀も前の車とは思えないしなやかさがあって、当時の日本車を考えると、ドイツの凄さを実感します(笑)」
地主 「例えば、この車は、亡くなった旦那さんが乗っていたという未亡人の方から譲り受けたんです。納車された当時の写真も見せてもらったり。ヴィンテージカーは、その時代ならではのデザインや雰囲気を味わえるのも醍醐味ですが、歴史と一緒にそういうストーリーがある。それを感じながら運転するのがまた感慨深いんです」
地主 「でも、ヴィンテージカーに乗るからといって、身に着けるものも古めかしい質感で統一感を出すとか、そういうことを意識することはないですね(笑)」
といいつつも、この日も気がつけば、身に着けている時計やダッシュボードに置いてある普段使いの眼鏡は、歴史を重ねた名品でした。自然体でありながら、車とマッチするアイテムをそれとなくセレクトしているところが、またこなれて見えるのです。
地主 「エンジンだけM113シリーズのV8とか、現代の馬力のあるものを乗っけてみたい。見た目はヴィンテージ、でも中身は最新というものの究極を突き詰めていくのも面白そうだな、なんて密かに思っています(笑)」
● 地主 晋
マディソンブルー副社長、フォトグラファー。武蔵野美術大学造形学科卒業後、スタジオマンを経て、1990年独立。ファッション雑誌、ミュージック・ビデオ、広告ほか、幅広いフィールドで活躍。奥様で元スタイリストの中山まりこ氏が2014年にローンチした「マディソンブルー」に参加すると共に、副社長に就任。服作りとフォトグラファー、現在は二足のわらじで多忙な日々を送る。