2020.10.30
いまの時代ヒーローが必要だ 【2】
【インタビュー】K-1のエース、武尊はなぜ、史上初の3階級制覇を成し遂げられたのか?
史上初の3階級制覇を成し遂げたK-1界のエース、武尊(タケル)。他を圧倒するパフォーマンスの原動力となっている“マイヒーロー”について取材した。
- CREDIT :
写真/前田 晃(maettico) 文/平井敦貴(LEON.JP編集部)
第二回は、K-1史上初の3階級制覇を達成したエース、武尊(タケル)選手に“マイヒーロー”を聞いてみた(第一回はコチラ)。
“負けてもリベンジをする。その経験が僕を強くした”
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「僕が格闘技を始めるきっかけとなったのがアンディ・フグ選手でした。ヘビー級のなかでは小柄な身長(180㎝)でしたけど、自分より大きな相手を次々と倒していく。多くの子供がウルトラマンや仮面ライダーの強さに憧れるように、僕にとってのヒーローは、K-1のフグ選手だったんです」
フグのように強くなりたい。その一心で7歳の頃に始めた空手。しかし当時、勝った記憶はほとんどないと言う。
「負けるのが本当に嫌でした。悔しくて泣いたこともありました。でも、フグ選手がそうだったように『負けてもリベンジを繰り返す』という経験が、僕を強くしてくれたんです」
My Hero is “アンディ・フグ”
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スイス出身の格闘家。1993年よりK-1に参戦し、「K-1 GRAND PRIX '96」で悲願の世界王者タイトルを獲得。翌97年、翌々98年の同大会では準優勝となる。空手家でもあり「青い目のサムライ」の呼び名で日本でも高い人気を博す。CMなどにも多数出演。2000年8月24日、急性前骨髄球性白血病(APL)により35歳で逝去。体格差があっても立ち向かうスタイルで多くのファンを魅了した。
(C)ゴング格闘技
「淡々と闘うよりも感情をぶつける試合が好きなんです。それに、(試合中は)笑っている時のほうが体の動きがいいんですよね(笑)。だから自然と笑顔になっているのかもしれません」
試合をとても楽しんでいるように聞こえるが、実際にそうであると武尊選手は答える。
「きつい練習で心が折れそうな時もあるんですが、逆にその分、試合に対して凄く感情が入るんです。だから自分にとって格闘技は仕事であり趣味というか……“練習が仕事”で“試合は趣味”みたいな感覚なんです」
「打ち合いになったら、避けられるパンチをあえて食らったりもしちゃいます。そのうちに、痛みを通り越して気持ち良ささえ出てくるんですよね(笑)」
常人には理解しにくいことを、無邪気な笑顔であっけらかんと答える。最近ではYouTubeでの活動も始め、飾らないプライベートや本音をギリギリまで曝け出す。では、そんな武尊選手はいま、どこを目指しているのだろうか。
「もっとK-1を大きくしないといけないですよね。昔みたいに地上波テレビでの放送や、選手たちの知名度ももっと上げていかないといけない。誰かがやるのを待つのではなく、自分が変えていかないと変わらないですから」
K-1を背負う“漢”としての決意。武尊選手は、いまの時代を生きる紛れもないヒーローだ。
■ 武尊(タケル)
1991年7月29日生まれ、鳥取県出身。格闘家。
2011年「Krush.12」にてプロデビュー。2014年には同王座獲得。同年11月、新生K-1の旗揚げ戦「K-1 WORLD GP 2014」に参戦し優勝。「ナチュラル・ボーン・クラッシャー」の異名をもち、K-1 WORLD GPではスーパーバンタム級、フェザー級、スーパーフェザー級の3階級の世界タイトルを次々と獲得。K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST所属。
HP/www.k-1.co.jp/fighter/64/