2021.01.12
■森 泰輝(起業家)
森 泰輝「世の中は諸行無常・盛者必衰。上から目線でマウント取りたがる大人は一番カッコ悪い」
“ユーチューバー”や“インフルエンサー”といった言葉を世の中に浸透させ、次世代起業家として注目を浴びる森 泰輝さん。トップマネジメント会社を退いた現在、早くも次のカルチャーを作るべく活動しています。そんなSNS時代のトップランナーが考える“カッコいい”とは?
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写真/トヨダリョウ 文/長谷川 剛(テーブルロック) スタイリング/稲田一生 ヘアメイク/小林正憲(SHIMA)
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昨今はそんなインフルエンサーを集めてマネジメントを手掛ける企業もあちこちから出てきているのです。森 泰輝さんは、そんなユーチューバー・マネジメント会社の草分けであるVAZを立ち上げた開拓者。スマフォネイティブが世界の中心となる時代の若きリーダーとして、広く注目を集める人物です。
現在はすでにVAZを退任した森さんですが、早くも次なる構想を画策しているとのこと。話題に事欠かない次世代起業家が考える“大人のカッコいい”とは一体どんなもの? まずは時代をザワつかせるデジタル・エリートの“作り方”から伺いました。実はそのトークのなかに、見逃せない核心がありました。
いまのポジションは“点”に過ぎない
森 「もともとデジタル関係に興味をもち始めたのは小学3年生の頃。当時ライブドアの上場が大きなニュースとなり、その事業内容を調べたところ“ホームページ制作”で上場したということがわかりました。ホームページを作ると上場できる? コレはヤバいじゃん! と思い、速攻でウインドウズ95のPCを購入しました(笑)」
森さんの父親は関西を拠点に商売をする経営家系の三代目。そして母親は売れっこモデルだったと言います。
森 「父親の職場で決算書などをチラチラ眺めつつ、日経新聞などに目を通す子供でした(笑)。その頃から経営という仕事に興味をもっていたんだと思います。他方、母親は“トンカツのKYK”など当時の著名CMに出演していて、関西エリアではわりと知られたモデルでした。そういった環境から、僕も0歳からモデルエージェンシーに所属して、一時は芸能の世界に進もうかと考えたこともあったんです。しかし、ビジネスマンとしての成功の方が自分らしい進路と考え直し、モデルを止めて受験の道を選んだのです」
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無駄は切り捨て必要なスキルだけを磨いて
晴れて天下のSランク大学生となった森さん。しかし入学しても他の学生と話が合わず、バイトの面接にも落ちるなどの挫折もあって、かなり早い時期にドロップアウトしてしまったと振り返ります。
森 「一浪していたので19歳での入学であり、元々の性格も重なって、学校生活にうまく馴染むことができませんでした。そこで自分の得意を生かしてホームページ製作やWEBマーケティングを軸に仕事をしようと考えました。実際にやってみたらこれが結構上手くいき、一時はVAZで社長をしている時より収入があることも。調子に乗ってタワマンに引っ越し、贅沢な生活も見よう見まねで試してみました。しかし数カ月で飽きてしまい、早々にフツーの生活に戻りました(笑)」
森 「立ち上げた会社は、いわゆるグルメサイトを事業内容としたもので、分かりやすく言うと『食べログ』にビーコン端末を加えたサイトの運営であり、掲載単価ではなく送客単価で課金が発生するシステム。それなりに初期投資が必要で、個人事業主時代に知りあった複数の経営者の方からお金を借りてスタートしました。しかし展開規模に限界が生じてしまい、あえなく2年で廃業。23歳で1000万円ほどの借金を作ってしまったのです」
初の会社経営で失敗を喫した森さん。ですが、個人での仕事に関してはすでに確立したノウハウをもっています。得意のホームページ製作やデジタル集客のスキルを発動させて、借金はなんと半年で全額完済することができたと言います。
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過去の事例を参考に未来をイメージする
現在ではカリスマユーチューバーなども多数活躍しているネットシーン。しかし2014年当時の早い段階で、どういったいきさつから、その発想に行き着いたのでしょう?
森 「シンプルなメディア論に従い、過去を振り返ってみたのです。そうするとテレビの黎明期とあの当時は似た状況であることが感じられました。まだ映画シーンが全盛だった時代にテレビが登場し、若手俳優も少しずつテレビに進出していきました。しかし、当初はやはりテレビタレントは映画俳優に比べて格下扱い。
でも数年後には立場が逆転していったことはご存知のとおりです。現在のテレビタレントとユーチューバーもある意味似た構図。枠組みだけしっかりマネジメントするだけで、一気にブレイクしていく展望が見えたのです。まだネットタレントにおける利権は空白の状況だったので、そこをゼロから構築すれば、かなり面白くなりそうだとも思いました」
森 「いわゆるプロデュース的な働きかけはしていません。マネジメントをオファーする以前に、その人のキャラとコンテンツをじっくりチェックします。そしてそのシーンに競合がいないかなどを精査し、クリアであればオファーしてそのまま活動してもらうだけ。僕は本来プロデュースしたがりの傾向をもつ人間ですが、それをやってしまうとすべてが中途半端になりがちです。
プロデュースすることで10~30万のフォロワー獲得は可能ですが、ソレ止まりで終わってしまいます。100~300万を狙うのであれば、有能なタレントを見つけ、そのポテンシャルをフルに伸ばすことができる環境を用意するほうがいい。というかそれだけで十分なのです」
絶頂を極めたかと思われた矢先、VAZは数々の炎上やトップクリエイターの退所に大きなダメージを食らいます。その後、森さんはVAZを電撃的に退任します。それにはある思いがあったと語ります。
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世の中は諸行無常・盛者必衰が定番
ひとつの言葉や単語が世に広まったというのは、ある意味僕のロジックが認められた証と考えられます。ただし、ユーチューバーをメインとするプロダクションマネジメントという形態に限界が生じ、僕がその問題に対し打開策を打ち出せない状況が訪れてしまいました。一線を退いたのは、そのことが大きなきっかけです」
自ら興したVAZを退任したのはつい先日。しかし、すでに森さんは新たな起業をイメージしています。
森 「いまはブランドを作りたいと思っています。これは新しい概念を確立することの過程としてブランドが必要だから。そう考え男性美容の事業を立ち上げようと活動を始めています。男性美容に関しては、僕の中でブレイクの筋道が見えているんです」
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森 「僕がかつて接した大人の人で“これはカッコいい”と思ったのは、マウントを取れる立場でありながら、それを押し付けず長い目で対応できる人。よく就活生などに対し、上から目線で自慢話を話を聞かせる起業家などを見かけます。しかしあのような行為はカッコ悪い。
世の中は諸行無常・盛者必衰が古来からの定番です。いま自分のいるポジションがたとえ素晴らしいものであっても、それはひとつの点でしかないことを理解すべき。それと見返りを求めず奢ってくれる先輩も大好きです(笑)。僕が必死に稼いでいるのも、後輩達に気前よく奢ってあげたいという気持ちがあるから。そういう行為がスマートにできる大人になりたいですね」
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● 森 泰輝(もり・たいき)
起業家。1990年和歌山県生まれ。早稲田大学中退。在学中の2015年にインフルエンサーマーケティング事業やエンターテイメント事業を行う株式会社VAZを立ち上げる。同社を数年で国内最大級のインフルエンサープロダクションへと成長させ、2019年には「Forbes 30 Under 30 Asia 」Media, Marketing & Advertising部門選出される。2020年10月にVAZを退任。