2017.08.24
トミー・ゲレロが選ぶ、「ロードトリップに連れ出したいアルバム」15枚【試聴可】
スケーターであり、ミュージシャン。西海岸を代表するアーティスト、トミー・ゲレロが語る、ドライブ&ミュージックとは?!
- CREDIT :
インタビュー/ Hashim Bharoocha 写真/Claudine Gossett special thanks/spotify
この夏のバカンスでアーティストが集う街、マーファへ
そう笑顔で話すトミー・ゲレロ氏は、テキサス州のエルパソとマーファ、そしてニューメキシコをめぐるロードトリップを終えたばかり。
「マーファはすごくクールでユニークな場所なんだ。かなり暑かったけど、すごく気に入ったよ。砂漠地帯だから冬はすごく寒くなるらしい。マーファでは偶然知り合いのミュージシャンやアーティストにも会ってね。いろいろなギャラリーにも行ったけど、意外にベイエリアとニューヨーク出身の人が多く住んでいたのが印象的だったな」
テキサス州の南西に位置し、メキシコとの国境沿いにある砂漠地帯のマーファは、アーティストが多く集うことで有名な地。すっかりマーファに魅せられ、いつか住みたいと思うまでに。
「マーファの人口は2000人くらい。農家とか牧場を運営している人もいるんだけど、アメリカ全土からアーティスティックな人たちが集まってるんだ。ドナルド・ジャッドというアーティストが70年代に大勢のアーティストを連れてきたことから、ユニークな場所になったというわけさ。アーティスト、ミュージシャン、作家、詩人、画家などあらゆるタイプのクリエイターが集まってるんだよ。でも、この街にはスケートパークがないから、それを建てられたら街のキッズが喜ぶだろうなって思ったよ」
そして話はエルパソとニューメキシコへ。歩いて橋を越えればメキシコに入れるエルパソに不思議な感覚を覚え、ニューメキシコの大自然に常識や既成概念を揺さぶられたそう。
「ホワイトサンズという国立公園に行ったんだ。石膏の結晶でできている白い砂の巨大な砂漠なんだけど、とにかく広いんだ。白い砂丘が延々と続いていて、いままで見たことのない光景だった。そのときに思ったよ『日本人がもしこの景色を見たら、驚くだろうな』って。どこを見ても同じ風景が続いていて、たぶん東京がすっぽり入ってしまうくらいの規模なんだ。この景色を見ると、きっと人生観が変わるよ」
長いロードトリップの先で出会った、見たこともない色の景色
そんなクルマの旅の中でも、印象深いドライブの思い出については。
「ニューメキシコのホワイトサンズに到着したとき、ちょうど満月の前日だったんだ。太陽がまだ出ているのにちょうど満月が出てきてね。すごく不思議な光景だったよ。同じ場所で見た夕陽にも衝撃を受けたな。昔からアメリカ南西部の画家は夕陽を描いてきたけど、彼らがなぜそこまでこの土地の夕陽にこだわったのかが理解できた。夕陽に浮かぶ山のシルエット、ピンク、紫色、ブルー、オレンジ色の空、その景色はいまもはっきり思い浮かぶよ。今までの人生で見たことがない色の組み合わせだったから。まるでこの世のものではないような光景だったね」
旅から戻り、久しぶりにサンフランシスコの仕事場まで、馴染みの道を運転したとき、この旅の日々を恋しく思ったそうです。
「本当にイヤな気分になったよ(笑)人が多すぎてね」
印象的なロードトリップのおかげで、音楽活動もまた活発になっている様子ようで、
「最近いくつかのライヴをやったんだ。来週はバークレー・ボタニカル・ガーデンという場所でもライヴをするよ。夏の間にブラックトップ・プロジェクトのメンバーで集まってレコーディングもしたしね。でもどんな作品になるかまだわからないよ」
そんな、トミー・ゲレロ氏、いまはアルバムの制作中なのだそう。
「日本でしかまだリリースされてないアルバム『Endless Road』を、アメリカでもリリースする予定なんだ。日本盤の曲をいくつか抜いて、新曲を追加するつもりだから、日本盤を持っている人にも楽しめるアルバムになると思うよ!」
トミーゲレロ選、ドライブに連れて行くアルバム15枚
「キャレキシコは南西部出身のバンドだから、今回の旅にぴったりの音楽だったよ。特に長いロードトリップとの相性がいいんだ。北カリフォルニアからLAまで高速道路5号線に乗って運転するときは、景色があまり変わらないんだけど、キャレキシコのリヴァーブたっぷりでドリーミーなギター・サウンドが景色とすごくマッチするんだ」
「エチオピア音楽のコンピレーションなんだけど、このアルバムに収録されてるムラトゥ・アスタトゥケが大好きなんだ。普段からよく聴いているアルバムだし、俺の音楽にも影響を与えたよ。聴いていると平和な気持ちになるから、渋滞しているときなんかもよく聴いているよ(笑)」
「ガボール・ザボは大好きなジャズ・ミュージシャンなんだけど、「Jazz Raga」と「Dreams」というアルバムがお気に入りなんだ。「Dreams」の1曲目“Galatea’s Guitar”が特にキラー・チューンなんだよね」
「このバンドは、キャレキシコに似てる音なんだけど、ジャイアント・サンドのメンバーが参加してるのがポイントかな。リヴァーブたっぷりのギター・トーンが好きなんだけど、いかにも砂漠とかサーフに合う雰囲気なんだ。聴いていると心が穏やかになるよ」
「マーク・リボーの大ファンなんだ。このアルバムの名義になっている、マーク・リボー・イ・ロス・キューバノス・ポスティソスはキューバ音楽をテーマにした別名ユニット。大好きな一枚だよ」
「クルマで長旅をするときは、ブルースがぴったりなんだけど、そんなときはマジック・サムの「West Side Soul」を聴くんだ。マジック・サムの声が素晴らしいし、ギターの演奏も大好き。ブルースとロックの橋渡し的存在のアルバムだね」
「ティナリウェンはサハラ砂漠出身のアフリカン・ブルース・バンドなんだけど、ロングドライブに向いてるんだよ。彼らは砂漠出身だから、今回の旅にぴったりだった。彼らのアルバムはどれも好きなんだけど、これは特に好きな一枚」
「ティバー・タンバーのこの2枚のアルバムも大好きなんだけど、夜のさびれた町を運転するときにぴったりの音楽。デヴィッド・リンチの「ツイン・ピークス」のエピソードを連想させる音楽といったら伝わるかな。つまりどこか不気味なんだ(笑)」
「ちょっとドライブから離れるけどバーベキューをやるときは、ハウリン・ウルフをBGMとしてかければ完璧! この作品は50周年のベストアルバムなんだけど、これをかければ必ずバーベキュが盛り上がるよ(笑)」
「カル・ジェイダーはジャズのヴァイブラフォン奏者なんだけど、このアルバムはソウルフルでグルーヴィーな60年代後半の作品。ラテン・ジャズのインスト作品で、ドライブにもぴったりだよ」
「この2枚はコルトレーンの名盤だよね。特に「Ole」の1曲目”Ole”は18分もあるから、運転にぴったりで、聴いていると曲の世界観にぐっと引き込まれるよ。ずっと同じコード進行なんだけど、その中でいろいろなメロディや展開があるから、すごく聴きごたえがあるんだ。聴いているだけで、トランス状態に入れるよ。カリフォルニアで長時間運転していると、トランス状態に入るけど、その感覚に似てる。ある意味瞑想状態に入れる音楽だけど、運転しながら瞑想するのは危険だから気をつけてね(笑)」
「オルケストル・ポリリトゥモ・ドゥ・コトヌーは60年代から70年代にベナンで活動していたアフロラテン、アフロファンクのバンドなんだけど、すごくファンキーで気に入ってるんだ。リズム感がとても面白いバンドなんだよね。聴いてるとテンションが上がるから、目的地に到着する直前に聴きたくなる音楽なんだ(笑)」
「このアルバムは俺にとっての定番で、昔から大好き。それ以外に言うことはないよ(笑)。ファンキーでありながらハードなサウンドで、高速道路でスピードを出して運転するときにぴったり。今回の旅でテキサスの高速道路で運転したとき、制限速度が時速80マイル(約128キロ)のところもあったから、そういうときに聴きたくなる音楽だったね(笑)」
「マイルス・デイヴィスのこのアルバムを聴いていると、「どんな楽器を使ったんだろう?」とか、「どんなアプローチで演奏したんだろう?」って考えさせられる。この作品は、俺が仲間と即興でジャム・セッションをするときのインスピレーションになっているんだ。俺の演奏がマイルスレベルと言いたいわけじゃないから勘違いしないでね(笑)。一定のリズムのものが多いから、運転にも向いてるよ」
● Tommy Guerrero (トミー・ゲレロ)
‘80年代に伝説のスケートボード・チーム Bones Brigade最年少メンバーとして彗星の如くストリート・シーンに登場。盟友Thomas Campbellが運営するレーベルgalaxiaから『Loose Grooves & Bastard Blues』を’98年に発表、独自のネットワーク/口コミで爆発的なセールスを記録。‘00年にはUKの名門MO’WAXからMargaret Kilgallenのイラストが印象的な2nd Album『A Little Bit Of Somethin’』を発表、クラブ・ミュージックのリスナーからも支持され、一躍“現代のウェストコースト・ミュージックのスター”へ。05年には第一回THE GREENROOM FESTIVALのヘッドライナーを務め3,000人を超える観客を魅了。その後も来日多数。多くのファンを持つ、ウエストコーストの代表的アーティスト。