2017.08.29
DJ/音楽プロデューサーの沖野修也が、ポルシェ911GTSで横浜へドライブ
沖野修也さんといえば、世界的なDJ/プロデューサーであり、自他ともに認めるクルマ好き。普段から走るルートや旅の目的に合わせて音楽をセレクトしているという、まさにドライブ&ミュージックの達人なんです。というわけで、クルマと音楽を楽しむその極意を盗むべく、ポルシェ911GTSを相棒に横浜ドライブへと出かけました。
- CREDIT :
文/石神 俊大 写真/岡村 昌宏

「ポルシェ911は、クルマとの一体感が素晴らしい」
「やはりパワーが全然違いますね。一般道だともったいないですよ。ブレーキの効きもいいし、自分の操作が瞬時にクルマの動きに反映される感覚が強い。クルマとの一体感が素晴らしいですね」

ポルシェ911は1963年にプロトタイプが発表されて以降、いつの時代も常に世界最高峰のスポーツカーとして不動の地位をものにしてきました。圧倒的なパフォーマンス、優れたドライバビリティ、そしてレースでの活躍もふくめ、今なお世界中の車好きを魅了してやまないのはご存じの通り。
ですが、その本当の魅力はGTとしてのポテンシャルの高さにあります。
「ぜひポルシェ911に乗りたいです。子どものころからの憧れだったんです」
世界的なDJの沖野さんが、じつは大の車好きでもあることは音楽業界では有名。現在もBMWのスポーツカーを2台所有しているますが、ポルシェについてはこれまで縁がなかったそう。
そこで今回選んだのは、911カレラ・シリーズのなかでも最もスポーティな「カレラ GTS」。ベースとなる「カレラS」から30馬力アップの450馬力を誇るハイパフォーマンスモデルです。

「渋谷から横浜へ、音のグラデーションを付ける感じで選曲しました」
そう笑う沖野さんが1曲目に選んだのは自身が率いるアコースティック・ジャズ・ユニット、KYOTO JAZZ SEXTETが今年7月に発表したアルバム『UNITY』に収録されている「Peaceful Wind」。前作はブルーノートのカバーを行ったKYOTO JAZZ SEXTETでしたが、今回は自身が全ての曲を書き下ろしているそう。かねてよりトラックメイカーとして曲をつくることはあった沖野さんですが、今回は初めてジャズの作曲を行ったということに驚きます。


「80年代のフュージョンは横浜に向かうルートに合っている」
「普段ゆっくり音楽を聴く時間をとれないので、ドライブは貴重なんですよ。買ったまま聴けていない音楽をまとめてクルマで聴いたりできるので。いわば、僕にとって車内はリスニングルームのようなもの。普段ドライブするときももちろんCDは選びますよ。横浜はモーションブルー横浜で自分のライブをしたりアーティストのライブのオープニング曲を選んだときに行くことが多くて、そういうときも音楽を聴きながら走っています」
今年50歳を迎えた沖野さん。自身が運営する東京・渋谷のクラブ「THE ROOM」も開店から20年以上の月日が流れ、2014年には風営法の改正に反対し国内外の著名DJから署名を集めて首相に要望書を提出するなど、沖野さんが日本のクラブカルチャーに与えてきた影響は計り知れません。
DJとしてはヨーロッパツアーを成功させ、プロデューサーとしてはMONDO GROSSOやMONDAY満ちるさんなど数多くのアーティストを手がけてきた沖野さんですが、今年は初めてバンドとしてフジロックフェスティバルに出演したそう。DJとしては何度も出演していたわけですが、いわば50歳にしてついに「デビュー」を果たしたというわけです。そしてその際も、沖野さんは京都の自宅から苗場まで、車内で楽しむための7時間分のCDを携えて向かったそう。沖野さんが日頃からどれだけ「ドライブ&ミュージック」を楽しんでいるかが、まさにうかがいしれるエピソード。

「これはもう、完全にレインボーブリッジ向けですね。80年代のフュージョンは横浜に向かうルートと合ってるんじゃないかなと。でも、実は笠路さんのこの曲は海外のDJから教わったんですよ。僕も先入観を抜きにして音楽を聴いているつもりなんですが、やはり海外のDJのほうが素直に聴けるみたいで、日本のジャズも彼らから教わることがあります」

「この911はオーディオの音もいいですね。ところで、僕にとって70年代後半の日本でつくられたディスコって横浜のイメージなんですよ。『探偵物語』で主人公の工藤俊作がディスコで踊っているようなイメージ(笑)。だからめちゃくちゃかっこいい印象がある」

「ドライブは狩りに行くみたいな感覚があるよね」
「湾岸線のほうがトンネルが多いでしょう? トンネルが好きなんですよ。特に湾岸線は比較的新しいから近未来的なイメージが強い感じがいいんです」と話す間にも、911は次々とトンネルを抜けていく。
トンネルでは、911のリアエンドに搭載されたフラット6が奏でる、高音と低音が程よくミックスした、やや湿度をおびたような官能的なエキゾーストサウンドが共鳴して、車内の音楽を包み込むように鼓膜を刺激します。ヴァイザッハにあるポルシェの研究開発センターには音響研究所があり、音響のスペシャリストたちがポルシェならではの理想的なサウンドを求めて、研究を重ねています。理想主義的に911を進化させてきたヴァイザッハの面々、サウンドに関しても一切妥協はありません。

「このアーティストにはすごくシンパシーを感じてるんですよ」。BGMに選んだのはThe Recloose Live Bandの「Sweet Power You Embrace」です。
「リクルースは元々DJやターンテーブリストとして活動していたんですが、いまニュージーランド在住で、このアルバムではライブバンドとして70年代のジャズ・ファンクのカバーをしているんです。DJとして活動しながらもバンドで70年代のジャズをカバーするというのはぼくの感覚と一緒なんですよね」
この曲はいわゆるデトロイト・テクノのように硬質な雰囲気から程遠い、ジャズ・ファンクらしいアップリフティングな演奏が印象的。「でも、リクルースはデトロイト出身なんですよ。その点、この辺りの景色はちょっとデトロイトっぽいんじゃないかなと」。
米ミシガン州南東部に位置する都市デトロイトは米国有数の工業都市。19世紀末にフォードの工場が建設されてから数多くの自動車メーカーの工場が乱立し「モーターシティ」として発展してきたこの街は、同時に「テクノ」の街でもあります。1980年代に隣接する都市シカゴで流行していたハウス・ミュージックがデトロイトへ流れ込み、シカゴ・ハウスをよりシリアスに発展させるかたちで「テクノ」が誕生。沖野さんは工場地帯の風景をデトロイトになぞらえましたが、実のところ東扇島では数々のレイヴパーティや音楽フェスティバルの会場にもなっていて、音楽の空間という意味でもデトロイト的なのでした。
日本の“デトロイト”を通り過ぎ目的地の横浜が近づくにつれ、BGMは徐々にメロウなものへ。「さっきまでエモーショナルでしたけど、ここまで来るとクールダウン系ですね」と沖野さんが言うように、Midnight Runners、Thundercat……と80年代のファンクやAORを思い出させる現代のアーティストたちの楽曲に彩られ、911は本牧ジャンクションに。

赤レンガ倉庫に到着し、911を降りる沖野さんは十分に満足されたそう。
「クルマが好きなのは、本能なんですかね。行動範囲を遠くまで広げる感じとか、狩りに行くみたいな感覚があるよね。で、ドライブミュージックはそれを盛り上げるBGM、みたいなものですね(笑)」
◆ Today’s Driving Music List
◆ Today’s Driving Music List
1.Peaceful Wind/Kyoto Jazz Sextet
2.Just Do It(Replayed By ROOT SOUL)/Shuya Okino
3.Hot Taste Jam(Mighty Zaf & Phil Asher edit)/Masonori Sasaji
4.カクトウギのテーマ/坂本龍一 & カクトウギ セッション
5.Sweet Power You Embrace/The Recloose Live Band
6.I Want Your Love/James Mason
7.Empathy & Sympathy/Midnight Runners
8.A Fan's Mail (Tron Song Suite II)/Thundercat
9.アイ・キープ・フォーゲッティン/マイケル・マクドナルド
10.The Fez/スティーリー・ダン
ハイペースで湾岸線を駆け抜けた沖野さん。大黒埠頭パーキングエリアで小休止
沖野さんが幼いころから好きだったというポルシェ911をドライブの相棒にセレクト
今回がポルシェ911の初ドライブだという
「シートのホールド感がいいね」と沖野さん
この日のために自らの選んだ曲をBGMに横浜へのドライブを楽しむ
今回のドライブでは、911 GT3に次いでスポーティな911 GTSをセレクト
「クルマとの一体感が素晴らしい」と第一印象を語る沖野さん
日頃よりよくクルマを運転するという沖野さん。あっという間に911を乗りこなしていた
今回のモデルはPDKであったが、マニュアルトランスミッションも乗りこなすという
リアに最新の3リッター水平対向6気筒ターボを搭載する
「タウンスピードでの乗り心地も意外と悪くないですね」と沖野さん
横浜までのルートを想定して10曲をセレクト
ブレーキのストッピングパワーにも驚いたという沖野さん
モーションブルー横浜でのライブ出演など、日頃よりよく訪れるという横浜赤れんが倉庫
一時は住むことも考えたほど横浜が好きな沖野。旧い建物と現代的な建築が共存する街並がいいという
1964年のデビュー以来、基本的に変わらない911のフォルムにも惹かれるという沖野さん
1964年のデビュー以来、基本的に変わらない911のフォルムにも惹かれるという沖野さん
シンプルで機能性を重視した911のコクピット
ハイペースで湾岸線を駆け抜けた沖野さん。大黒埠頭パーキングエリアで小休止
沖野さんが幼いころから好きだったというポルシェ911をドライブの相棒にセレクト
今回がポルシェ911の初ドライブだという
「シートのホールド感がいいね」と沖野さん
この日のために自らの選んだ曲をBGMに横浜へのドライブを楽しむ
今回のドライブでは、911 GT3に次いでスポーティな911 GTSをセレクト
「クルマとの一体感が素晴らしい」と第一印象を語る沖野さん
日頃よりよくクルマを運転するという沖野さん。あっという間に911を乗りこなしていた
今回のモデルはPDKであったが、マニュアルトランスミッションも乗りこなすという
リアに最新の3リッター水平対向6気筒ターボを搭載する
「タウンスピードでの乗り心地も意外と悪くないですね」と沖野さん
横浜までのルートを想定して10曲をセレクト
ブレーキのストッピングパワーにも驚いたという沖野さん
モーションブルー横浜でのライブ出演など、日頃よりよく訪れるという横浜赤れんが倉庫
一時は住むことも考えたほど横浜が好きな沖野。旧い建物と現代的な建築が共存する街並がいいという
1964年のデビュー以来、基本的に変わらない911のフォルムにも惹かれるという沖野さん
1964年のデビュー以来、基本的に変わらない911のフォルムにも惹かれるという沖野さん
シンプルで機能性を重視した911のコクピット
ポルシェ911GTSの詳細はこちらへ http://www.porsche.com/japan/jp/
● 沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE/KYOTO JAZZ SEXTET)
www.kyotojazzmassive.com/
www.extra-freedom.co.jp/artists/shuya_okino/