軽井沢のスマート山荘でリモートワーク
その「サマリーポケット」を展開する「Sumally(サマリー)」の創業者であり、代表を務めているのが山本憲資さん。美味しいものと現代美術に造詣が深い彼は、日々魅力的なレストランと気になる展覧会を求めて国内外を旅する一方、昨夏には軽井沢へ生活の拠点を移したとか。どんな家でどんな時間を過ごしているのか?
山本さんの‟いい時間”を訪ねました。
築50年の小屋をフルリノベーションしてスマート山荘に
スタートアップの起業家が軽井沢に拠点を移す……そう聞くと、いかにもバブリーな暮らしぶりを想像してしまうけれど、ナビを頼りに到着したのは意外にもこぢんまりとした印象の山荘でした。
この物件は、築50年でもともと別荘として使われていたもの。当初は約1700万円で売り出されていたものを値下げいただいて、最終的に1100万円で購入することができたんです。そこから、現地の工務店にフルリノベーションを依頼し、物件購入価格と合わせて2500万円程度に収めることができました」
「別荘ではなくて、ぼくの生活拠点です。都心から離れているけれど不便を味わいたいわけではないから、都会と同じか、もしくはそれ以上に快適な環境を整えるために、スマートホーム仕様にしています。『サマリーポケット』もそのひとつと言えるんでしょうが、いまって、距離をものともせず快適に暮らすためのサービスやツールが加速度的に普及していますよね。その恩恵をどこまで受けられるのか、テクノロジーでどこまで‟距離”をハックしていけるのか、自ら実験してみたのがこの小屋です」
多くの家電をネットワークにつないで、音声や遠隔で操作可能となっている、こちらの‟スマートホーム”。軽井沢の冬の寒さは厳しいけれど、東京を発つ時に床暖房をスマホからONにしておけば、到着する頃には快適な室温になっているし、同様にロボット掃除機に床を拭いておいてもらうことも可能。朝、ベッドにいながら、音声の指示でロールスクリーンを上げて朝日を浴びることができるのはいい気分だと言います。
軽井沢にいる時間は基本的に「ひとり」が楽しい
「起きるのはだいたい朝5時。ニュースをチェックして、朝ごはんを食べるのは6時くらいかな。午前中はチームのメンバーとやりとりして、あ、時間に余裕があれば近所の『星野温泉 トンボの湯』でサウナに入り、心身を整えるのが日課です。で、帰宅してランチ、午後は7時くらいまでミーティングや面接のためのインタビューなど。主にオンラインで仕事をしていますね」
ちなみにこの日の朝食はピザトースト、ランチは麺類が多いのだそう。美食家としても知られている山本さんの食卓としては少々さびしいような気もしますが……?
「ぼくはアートは買う(収集する)ものではなく、‟みる”ものだと思っているんです。手元にあるのは、どうしても身近に置いておきたいと思った、本当に好きなアーティストの作品が数点です」
薪ストーブの炎を眺めながらウイスキーを独酌
仕事を終えた山本さんは、薪ストーブの炎を眺めながらウイスキーを飲み始めていました。軽井沢の静寂に響くのはチェロの音色。山本さんはアートともにクラシック音楽もこよなく愛しているのでした。
「音響周りは、ネットワークプレーヤーのBluesoundの『node2i』に、高さが2メートル弱あるBang&Olufsenの『Beolab1』を繋げています。国内で使えるストリーミングサービスの中では、Amazon Music HDがハイレゾの配信曲数が圧倒的で、トールスピーカーと接続可能なもの、かつ高音質を保ったまま音源を再生するには、プレーヤー内蔵型のこの『node 2i』がベストなんですよね」
……。
音響ネタには疎いもので、あまり理解できませんでしたが、この静かな森の中で、音楽を上質なクオリティで愉しめるのは最高に贅沢な‟いい時間”でしょう。
軽井沢はこれから春を迎えますが、冬には冬の、春には春の‟いい時間”が待っているはず。これからも山本さんの‟いい時間”を追いかけていきたい——そんな風に考えた山本さんの「游獅(ゆうし)山荘」でのひとときでした。
● 山本 憲資(やまもと けんすけ)
1981年、兵庫県神戸市出身。広告代理店、雑誌編集者を経て、「Sumally(サマリー)」設立。スマホ収納サービス「サマリーポケット」が好評。