2017.09.24
現役秘書の本音対談【2】秘書の知られざる楽しみと悩みとは?
イメージ先行で外からはわかりづらい秘書のお仕事。その中身と裏事情をベテラン秘書が語ってくれました。
写真/椙本裕子
協力/「こちら秘書室」powered by ぐるなび

参加してくださったのはこの4人
Aさん マーケティング会社勤務 秘書歴1年半
Bさん 電機機器メーカー勤務 秘書歴12年
Cさん 外資系保険会社勤務 秘書歴5年
Dさん IT関連会社勤務 秘書歴14年
「いい思いをしている」「ラクそう」と思われる秘書という仕事
まずは皆さんが考える、秘書の仕事ならではの悩みとか苦労ってどういうことでしょうか?
Bさん
「そうですね。一番思うのは、忙しさが他の部署の人に見えにくいっていうことでしょうか」
Cさん
「わかります!“いいなぁ秘書って。いいご身分だよね~”って言われたりすると、え?ってなりますよね(笑)」
Aさん
「あ~、ありますね。たいがいの人から、仕事がラクで暇そうと思われています。ボスの会議の調整とスケジュール管理と経費精算の仕事で、何が大変なの?って(笑)」
Dさん
「実際はかなり忙しい日もあるんですよ!と(笑)。朝から30分刻みでボスに来客がある日とか、ランチタイムはおろか、ひと息つく暇もないし。その合間に電話が次々とかかってきて……」
Bさん
「口がまわらなくなりそうなこと、ありますよね」
Cさん
「思考がフリーズしちゃって、お客様とにこやかに目を合わせているんだけど、心の中では冷や汗がタラ~とか(笑)」
Bさん
「ありますね~(笑)。私は財務経理の仕事とボスの秘書を兼務しているので」
Aさん
「それじゃあ、なおさらですね。私も20代の頃、業推(業務推進)にいて、タスクのなかに上司の秘書業務も混在していたんです。毎日、余裕がなくてヒャ~ってなっていました(笑)」

「自分の仕事をしながら常にボスの様子に目配りしなければいけないので、仕事中はいつも気を張ってる感じなんですよね」
Cさん
「そうそう! 気を抜く暇がない。でも、ハタからは“おいしい仕事よね~”なんて思われてしまう」
Aさん
「でも、実際、秘書になって一番うれしかったことが“ボスに届いた超高級手土産を食べられたこと”っていう子もいましたけどね(笑)」
Dさん
「え~。そんな秘書さんもいるんですか(笑)」
Aさん
「あと、社内の方に少し意見したり、普通にお願いするだけでも、上から目線と思われて辛いって言っている20代の子もいますね」
Bさん
「ボスの代わりに動くという立場もありますからね。秘書はへりくだりすぎるくらいじゃないと威張って見えてしまうのかもしれません」
Aさん
「そこは注意ですよね。秘書は偉いわけじゃないという自覚は」
Cさん
「でも、たまに、勘違い秘書か?って子もいますよね(笑)。自分の意見はボスの意見、みたいなものの言い方をする人」
Aさん
「あ~虎の威を借る何とか、みたいな」
Bさん
「それって秘書としては最悪のパターンですね」
人の役に立っているという実感がやりがいにつながる
それでは、秘書の仕事のやりがいというのは、どういうところにあるのでしょう?
Bさん
「数字で結果が出るわけではないですからね」
Aさん
「秘書の仕事って、ほかの業務と比べて成果を実感しにくいっていうところはありますよね」
Cさん
「それは思いますね。秘書って、日々、ボスの過密スケジュールが滞りなく進むように調整してるわけですが、トラブルが起こらない限り、スムーズに進んでいたことのバリューってわからないから」
Bさん
「とはいえ、トラブルが起こったら絶対にダメですし」
Aさん
「だから、ボスに“あなたがいてくれて本当に助かる”とか、直接言っていただけると本当にうれしい」
Dさん
「私もボスに限らずお客様やお取引先様、そして社内の他部署の人たちからも“ありがとう“と言っていただけると一番うれしいですね。やはり、人の役に立っていると実感できる時に初めて、やりがいを感じられる仕事なのかもしれません」

「私も、他部署の社員の方々から“ちょっと相談があるんだけど”などと頼っていただけるとうれしくなります。自分が“つなぐ役割”として機能できていることを感じられるから」
Bさん
「あ、それはありますね。人間関係がどんどん広がっていくのは、楽しい!」
Aさん
「秘書って、他の会社のトップの方や社内の室長や部長クラスの方々とコミュニケーションをとる機会も少なくないですしね」
Bさん
「そうなんです。そのなかで、議題の時間配分を相談したり、こういう聞き方をしていただけると、ボスが返答しやすいと提案したり」
Dさん
「ボスの情報を提供して、皆さんと共有する感じですよね」
Bさん
「そうです、そうです。そこで、他の部署の方に顔と名前を憶えていただけると、次のお願いや相談などがしやすくなって。どんどん仕事がやりやすくなります」
Aさん
「わかります。そうやって自分でコツコツとルートを開拓していくの、私もけっこう好きです」
Bさん
「おもしろいですよね。道筋が見えることがやりがいに繋がっているのかも」
Cさん
「そういう時って、あ、私、仕事ができる女かも!って一瞬、思ったり(笑)」

秘書のストレスはリフレッシュとリラックスを組み合わせて解消
秘書のお仕事は常にボスの時間に合わせるのが基本だと思いますが、そのことによるストレスはありますか?
Cさん
「私は基本的に9時~5時の業務で、ボスに合わせて帰れないということはないんですが、皆さんはどうですか」
Dさん
「う~ん、ボスによりますねぇ……。ただ、先に帰っていいよと言ってくださるボスでも、ボスが残られていると帰りにくいというのは心情的にあるので。アフター6に予定が入っている時以外は、普通に仕事をしながら待っている、ということはあります」
Bさん
「私もそうですね。20時30分くらいまでなら、ボスが帰るのを待ちます。帰っていいよと言われたら遠慮なく帰りますけど(笑)」
Aさん
「なるほど~。うちの場合は、逆に、秘書によるっていう感じですね。“ボス命”で、ボスに頼られることが生きがいっていう秘書は、土・日でもボスからかかってきた電話に即対応しているってことをアピールしてみたり」
Cさん
「え~。そもそもプライベートな時間に電話をかけてくること自体、私のボスはないですねぇ。まぁ、秘書本人もそれを好きでやっているならいいけれど……(笑)」
Dさん
「でも、ボスの予定ありきで自分のスケジュールが組みにくいっていうことは、若手の秘書仲間からよく聞きますよ」
Cさん
「まぁ、時間だけでは割り切れない仕事という面も、確かにありますし。特に慣れるまでは不安も多いでしょうね」
Aさん
「だけど、オンオフがあいまいだと、リフレッシュできないですよね」
Bさん
「皆さんは、ストレス解消のために何かやっていますか? 私はキックボクシングを少々(笑)」
Dさん
「それ、いいですね(笑)。思い切りキックしたら、ストレス発散できそう!」
Cさん
「私は、秘書仲間同士で愚痴ることですかね(笑)。私、ボスへのストレスはないんですが、他のボスの秘書で、絶対にミスを認めない子がいて」
Aさん
「わぁ……」
Cさん
「そのミスを隠すためにウソをどんどん重ねていくから、一緒に仕事をすると本当にややこしくて」
Bさん
「それは大変ですね」
Cさん
「で、その子の被害に遭っている秘書が多いから、またやられたよ~って言って愚痴るんです」
Bさん
「本人には言わないんですか?」
Cさん
「言わないです。みんな大人だし、できるだけ関わりたくないから(笑)。逆切れされたりしても困りますし……」
Aさん
「気を遣いますね」
Dさん
「私は、休日にライブでハジけたり、茶道のお稽古に通ったり」
Aさん
「静の趣味と動の趣味があるっていいですね。」
Dさん
「リフレッシュしたい時とリラックスしたい時で使い分けている感じです。あと、普通に、仕事をしている女友達と美味しいものを食べたりもします」
Aさん
「それはもう! ストレス解消の鉄板ですから(笑)」

“美味しいお店探しが好き”なのも秘書に必要な資質のひとつ
ところで優秀な秘書に必要な資質ってどんなことでしょうか?
Dさん
「そうですね。私は目配り、心配りができて、聞き上手なことではないかと思います」
Cさん
「私も気が利く、気遣いができるというのは、大切な資質だと思いますけど、他に情報収集や検索を楽しめる人というのも重要だと思うんですよね」
Bさん
「それ、あると思います。接待のお店選びとか、手土産を探すとか、そういう仕事は楽しんでやらないともったいない」
Dさん
「ただ資質という面で言うと、最初からいかにも秘書に向いている人って、それほど多くない気がしますけれど」
Aさん
「私も、社内の定期異動で秘書室業務を打診された時に、自分が秘書に向いているとは思えなくて……。それはやっぱり、気が利くタイプじゃないし、仕事もこれまで、むしろマイペースでやってきたほうだったので」
Bさん
「私もです。“僕の秘書をやって欲しい”って今のボスから言われた時は、一にも二にもなく断りました(笑)。秘書業務なんて何をしたらいいのかわからないし、やはり私も、秘書=気配り上手な人、というイメージだったので。私には無理って思ったんです(笑)」
Aさん
「それそれ、それです(笑)。でも、調整能力とか、マルチタスクとか、先を読んで行動するとか、ほかにも大切な資質はあって……。いくつかは適合できているのかな……と最近思えるようになりました。お店探しについてもそのひとつ」
Bさん
「皆さんは、接待お店リストや手土産リストを作ったりしていますか?」
Aさん
「個人的にはもっていないんですが、うちの会社には、秘書が共有しているリストとして、いつ、どこで、どなたと何のメニューを予約したかという一覧があるんですよ」
Bさん
「情報共有、大事ですよね!」
Aさん
「毎回、それを見ながら場所などが重複しないように、新しいお店や話題のお店を探したり、ボスとお客様の好みを考えながら予約をしているんですが、財産ですよね」
Cさん
「あとでみんなのおすすめ接待レストランを共有しましょう!」
一同
「ぜひぜひ!」

◆「こちら秘書室」
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