2021.04.27
世界が認めた「いいオンナ」代表、冨永 愛が考える「いいオトコ」とは?
17歳で鮮烈デビューし、“スーパーモデル”として長年にわたり世界で活躍してきた冨永 愛さん。彼女が辿った「いいオンナ」への道には、男女を問わない自分磨きと自己成長のためのヒントがありました。
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写真/トヨダリョウ スタイリング/仙波レナ 文/アキヤマケイコ
今回ご登場いただいたのは、冨永 愛さん。ニューヨークコレクションに17歳で鮮烈デビューし、“スーパーモデル”として長年にわたり活躍。自身の肉体を通し、ファッション、そして“女性であること”の魅力を伝えるモデルの仕事でトップを極めた、まさに「いいオンナ」の代表です。
世界中の男女を見てきた彼女が、30代後半を迎え、今、魅力を感じる「いいオンナ、いいオトコ」とは? 冨永さんが考える「いいオンナ」像の中には「いいオトコ」を考えるヒントも見えてきたのでした。
セクシーには1から100までレベルがある。それをコントロールしたい
冨永 「いい〇〇」と言うのは、つまり男女に関わらず「魅力的な人」のことですよね。私が思うに「魅力」というのは、経験から滲み出てくるものだということ。容姿とか、仕事ができるとかではなく、抽象的だけれど、経験から滲み出てくるものが「いい」という言葉に繋がる気がします。
私は「いいオンナ」って思われているのかなぁ(笑)。男性から見てどうか? は男性に聞いて欲しいですけど、女性からは好かれるタイプかもしれないですね。物事をはっきり言いそう、不要なものは潔くカットして前に進んでいきそうなところとか(笑)。
—— 「〜しそう」というのは、実際はそうではないと。
冨永 自分では全然違うと思っています。私はそういう「冨永 愛」のイメージを守っているだけ。それは、自分のためにやっていて、人のためは1ミリもやっていない。でも、結果として人から魅力的だと感じてもらえているのであればとても光栄です。
冨永 モデルの仕事の上ではもちろん意識しています。私は10代で海外に出て、いろんな国の「いいオンナ」像に触れてきました。イタリアなら肉感的、ニューヨークならモダン、フランスはクラシック……と国によって「いいオンナ」像は違う。でもトップモデルとして活躍したいと思ったら、どの国でも「いいオンナ」と評価されなければならない。だからすごく研究しました。
どう服を着こなし、どうウォーキングをすれば、もっとランウェイに呼んでもらえるかと。「セクシーさ」の表現もそうですね。当時は、日本人は身体が薄くてセクシーじゃない、表現力も乏しい、というレッテルを貼られていましたから、余計に。
でも「セクシーさ」って色々ありますよね。男性・女性目線、見た目、しゃべり方や仕草など。カメラの前で要求される「セクシー」も、エロティックそのものから、ボーイッシュな中にほんの少し感じさせるものまで幅広い。1から100までレベルがある。プロのモデルである自分は、それをコントロールできるようになりたいし、なるべきだと思っています。
「私が一番きれい」と呪文のように唱えていた
冨永 どうでしょう。でも、私はモデルを軸に、「冨永 愛」として表現に関わることを一生続けていきたいと思っていますから。若い頃は必死でしたけど、経験を積んで少しは自信もついて、今後は、表現の幅を更に広げて進んでいきたいです。チャンスがあった時に応えられるよう、食事やトレーニングなど準備は怠らないようにしながらね。
冨永 自分に自信を持つことは、大事ですよね。容姿に恵まれている、と言っていただきましたけど、私はモデルの仕事に出会う前は、身長の高さがコンプレックスで、自分が大っ嫌いでした。周りが羨ましくて仕方がなかった。でもモデルの仕事は、自分に自信がないとできない。
ランウェイを歩く姿にも写真にも、自信のなさは出てしまいますから。だから、コレクションに出始めの頃は「私が一番きれい」と呪文のように唱え、「自信があります!」という顔を作って歩いていました。
その自信は最初は偽物だけれど、成功体験が少しずつ積み重なっていくうちに、本物に近づいてこれた感じです。コレクションモデルの世界に入ったら、周りは見た目も気持ちも“マンモス”みたいな人ばかり。自分のコンプレックスがメリットになる場に移れたことも、自信に繋がりましたね。とにかく、自分に言い聞かせることは大事。「私はいいオンナだ」ってね。
冨永 私の周りは、ファッションや雑誌・広告業界、あと家族も強い女性が多かったから、女性の自己肯定感の低さは意外だったんです。ただ、私のInstagramへのDMを読んだりすると「自分に自信がない」「自分の魅力の出し方がわからない」と悩んでいる人は多い印象です。でも、自分を好きになるのって、ちょっとしたきっかけ。モデルの世界に入った私のように、環境やものの見方を変えたら、自分の良さが見えてくることもある。それを探し続けることですよね。
—— そこにも“タイミング”がある?
冨永 はい。世の中をよく見て、自分が前に進む瞬間を見極めるとよいのでは。例えば昨年(2020年)、私はパリコレに復帰しましたけど、10年前なら30代のモデルがランウェイを歩くなんて考えられなかった。でも、ダイバーシティの時代になり、その意識がより高いパリだからこそ実現できた。そういう「今ならできる」という勘が働いたというのもあります。
私は今だって、新しいことを始める時は「大丈夫、きっとできる」という思いと「ダメかもしれない」という不安との間で葛藤します。でも挑戦してダメだったら次へ行こう、と思えるようにもなりました。ある程度経験があり、準備もして、世の中をよく見ていれば、自分が評価される場所と瞬間も掴みやすい。「いいオンナ」というのも、時代や場所によって変化していくので、自分が合う場所、時代で勝負するのでいいと思います。
「令和らしいいいオトコ」より、自分にとっての「いいオトコ」
冨永 やっぱり、いろんな経験を積んで成熟した大人ですね。ただ、ジェンダーギャップ指数の順位が低い日本では、女性は「私っていいオンナ」と自分に言いきかせるくらいがちょうどいいと思うけれど、大人の男性が自信満々に「俺っていいオトコ」って雰囲気を出しているのはちょっと(笑)。それより、女性に対して寛容で器が大きいこと。あと一生懸命さが見える人が魅力的ですね。
見た目は関係ない、とはいえ「妥協はしても諦めない」というのも肝心。年齢を重ねて、白髪とかシワとか仕方がないことはあって、そこはある程度抗いつつ、妥協もする。でも、カッコよく思われたい、「いいオトコ」でいたい、という気持ちは諦めて欲しくないですよね。
—— 海外と日本では「いいオトコ」は違いますか?
冨永 それは違いますよ。海外の男性は、自分の気持ちを素直に口に出す。「好きだよ、君は僕の太陽だ」とか。花も買ってきてくれるし、愛情表現がストレート。レディファーストでジェントルマン。そこは素敵ですよね。でも、日本男性の言わずして語る、みたいな奥ゆかしさも、私は嫌いじゃないです。本人が魅力的ならば。ただ、日本男性は、もう少し女性を褒めた方がいいとは思います。
—— それが難しい。下手に褒めるとセクハラになるんじゃないかと心配したり(笑)。
冨永 まず言い方ですよね。同僚や部下をジロジロ見て「今日、素敵だね」って言えば、キモッ!って思われるかもしれないけど、「その髪型、いいね」ってカラッと言われたらうれしいはず。
そのサジ加減を知るなら、最初は身近な人を褒めるといい。奥さん、お母さん、姉妹、仲のいい友達。言い方が悪いと指摘もしてくれるだろうし。「今日、メイクいいね」って言ったら「いつもと変わらないわ」って言われるかもしれないけど、そこは挫けず(笑)。
私も仕事でカメラマンに「いいね」って言われても、それは客観的な意見として受け止めるだけだけど、プライベートで身近な人に「素敵だね」って言われたら、テンションが上がります。もちろん、女性も男性を褒めるべき。私は「服かっこいいね」とか「髪の毛切っていいね」とか、パッと見ていいと思ったことを褒めるほうですね。
冨永 どんどん恋愛すればいいと思いますね。自分も、恋愛はしていたいタイプ。恋をしていると楽しいし、私の場合は、表現の活動にも生きてくると思っています。それこそ若い頃は周りが見えなくなったりしたこともありましたけど、今はそういうこともなくなりましたね(笑)。
大人同士って、いろんな経験を積んで、人間というものがわかってきているから、より豊かな恋愛ができると思います。
—— 冨永さんが誰かを「いいオトコ」かどうかを判断する方法ってありますか?
冨永 そうですね。一緒に食事に行くとわかると思います。私は食いしん坊なんですけど、デートで美味しいレストランに連れて行ってとお願いして、ちゃんと女性をエスコートできるかどうか。予定を決め、例えば私を誘うなら個室がいいだろうとか、いろんな配慮をして段取りができるか。しっかり私のことを見て、考えてくれていることが大事ですね。食事のデートって、思いやりとか、コミュニケーション能力のすべてがわかる。
冨永 私は昭和生まれなので、昭和の男っぽい感じは好き。平成は、昭和より精神的にも肉体的にもマッチョな感じが薄れて、令和はさらに男女の関係がフラットになっていくのかな。男性もメイクしたり脱毛したりが当たり前になりつつあって、ジェンダーレス化も進んでいます。そのうち、ウーメンとメンも「LGBTQIA」に含まれて、「いいオトコ、いいオンナ」論が成り立たなくなってしまうかも。
でも、私自身は、やっぱり男性に褒められたり、エスコートされたりするのが好き。そういう女性もまだ多いと思いますから、個人的にそこは、期待していたいですよね。
●冨永 愛(とみなが・あい)
17歳でニューヨークコレクションにデビュー。以来、世界の第一線でトップモデルとして活躍する。2014年から3年間の休業を経て、2017年に復帰。2020年3月には、10年ぶりにパリコレクションのランウェイを歩き話題になる。テレビ・ラジオ出演、女優業にも活動の場を広げるほか、社会貢献活動にも力を注いでいる。2020年『冨永愛 美の法則』(ダイヤモンド社)も上梓。公益財団法人ジョイセフ アンバサダー、エシカルライフスタイルSDGs アンバサダー(消費者庁)
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