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2021.05.09

【第5回】林伸次さん(作家・バーマスター)

女性が「またこの人と話がしたい、会いたいと」思うのはどんな男性?

現代における「モテ」の意味と意義を探る連載「モテ解体新処」。第5回目のゲストは「ワイングラスの向こう側」(cakes)でおなじみ、奥渋谷のバー「BAR BOSSA」(バール・ボッサ)のマスターにして作家の林伸次さんの登場です。

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写真/椙本裕子 文/木村千鶴

現代における「モテ」の意味と意義を探る連載「モテ解体新処」。今回はLEON.JPの人気連載「美人はスーパーカーである」でもおなじみ、日本一発信力のあるバーのマスターにして作家の林伸次さんの登場です。お客さんを始め日々多くの人々から恋愛ネタを集め、その相談にも乗っている林さんに現代恋愛事情についてお聞きしました。

最近の男性は仕事相手の女性と来店することがなくなりました

── 林さんの著書である『大人の条件』(産業編集センター)でも触れられていますが、最近の特に若い人々の間では「恋愛はもう古い」という声が多いとか。生涯恋愛体質のLEONとしては、聞き捨てならないお話なのですが(笑)、実際のところ、現在の若者世代の恋愛事情ってどんな感じなのでしょうか。

林さん(以下、敬称略) よく来店してくれるお客さんの中に、 20代の男性2人組がいます。どちらもイケメンで、勤務先も大手広告代理店、大手通信系会社とどう見てもモテそうなんですが、彼らは、「恋愛にがっついてないのがオシャレ」という感覚を持っているようなんです。

インターネットでは、今も合コンやナンパで”恋愛工学を使って女性を落とす”とか、マッチングアプリで“こうしたら上手くいく”みたいなハウツーは流行っていますが、その潮流に乗るのは「ダサい」と。どうやら今のイケてる若い男性の感覚としては、それが主流ですね。
── 確かにいまどきのジェンダー感覚から言っても“手練手管で女性を口説く”、というのはイメージが悪いですよね。

 インターネットによって、そういう悪さが可視化されているのも一因かもしれません。彼らの会社では、発注する側とされる側の立場を弁えるように教育されているとも聞きました。それもあり、例えば仕事を通じて仲良くなった女性を、食事や飲みに誘いたくても、相手が発注される側の場合、関係が拗れたときにパワハラやセクハラの問題に発展するかと思うと、簡単には誘う気持ちになれないと。

うちのお客さんには、開店当初から代理店や編集者といった「クリエイターに発注する側」の男性が多いんですが、最近は仕事相手の女性と来店することがなくなりました。ここ何年かでいろんな事件が発覚してから、企業がコンプライアンスに厳しく、過敏になっているんでしょう。

ある外資系の大手企業では、規則として明文化はされていなくても、隣の席の人が既婚かどうかも知らない、プライベートな話はしないのが社内のセオリーなんだそうです。立場的に上の人が下の人を飲みに誘ってもいけない。だから職場で恋愛なんてとてもできないって。
── う~ん。世の中の仕組み自体、恋愛しにくくなっているんですね。そうすると社内結婚などあり得ないということになりつつある?

 そうですね。「社内恋愛は面倒が起きるからやめて欲しい」という空気が、企業の中に色濃く漂っているのかもしれません。でも僕らが20代の頃は、真逆のことが起きていたんですよ。例えば会社の中でも技術系の、男ばかりのむさ苦しい部署には派遣の女性をたくさん配属させ、懇親会などでカップルが誕生するように会社側が仕向ける、みたいな。そのようにして、出会いのない男たちを安定させるのはよくある話でしたね。でも今は派遣の女性に手を出すなんて絶対になしです。

ひと昔前まで、日本ってそれでずっと回ってたんですよね。よくない慣習だったと思います。社内で結婚すると事情なんかも通じやすく、社宅があって、家族同士みんな知り合いで、という形ができていた。そういったことがみんな否定されているのが現状です。
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家庭と仕事以外の「第3の出会いの場所」が必要になっている

── まさに時代の違いですね。すると先ほどの彼らはどうしているんですか? もう恋愛に興味はない?

 いえ、恋愛の話もするし、興味はあります。でも、マッチングアプリなどは利用しないですね。その気持ちは僕もなんとなくわかります。今、僕が25歳だとして、彼女がいなくてもマッチングアプリは使わないでしょうから(笑)。彼らは恋愛するとしたら、ちゃんとした人と知り合って、結婚を視野に入れたお付き合いをしたいと思っているようです。

結婚を視野に〜という部分は20代女性も同じです。前の世代が30代で結婚できなくて困ってるというのをしょっちゅうメディアで見るから、早いうちに良い人と巡り合って結婚したいと思っている女性が多いと聞きますね。

── でも今の時代、女性でも仕事をバリバリしたい、結婚は重視していない層も一定数いると思うんですが

 はい、仕事が好きでNewsPcksなどを真剣に見ている女性達もごっそりいます。彼女たちも恋愛に興味はあるんです。ただ、印象としてはがっついてないんですね。マッチングアプリも使っていない。それよりも自己実現することに目が向いている印象です。

先ほどから話に出ているふたりの男性は、頭が良くて仕事が好きな、話をしていて得るものがある女性が好きって言うんです。だから仕事を一生懸命する女性とバッチリ合うんですが、その層が合コンとかマッチングアプリを使わないので、出会えてないんじゃないでしょうか。

── すると、会社で恋愛を解禁してくれなければ、出会う場所がないじゃないですか。仕事の関係でしか彼らは出会えないでしょうし。

 そういうことからも、「第3の場所」が必要になってきているんだと思います。家庭と仕事以外の場、趣味のサークルやサロンなどですね。例えばボランティア活動や、皇居の周りを走る会みたいなコミュニティに、コミュニケーションできる場や時間を設ける、そんな“人とつながる”をテーマにしたものが、今後大きなマーケットになっていくはずです。
── そうした対人関係の中で「モテる」ことは最重要課題だと思うのですが(笑)、林さんの考える「令和のモテる男」とはどういう人でしょう。

 ちょっと話は飛びますが、アメリカ人男性は「彼、良いやつだね、ナイスだね」って思われたいらしいんです。子供にも高齢の人にも親切にして、人種や性別で差別もしないし、ナイスだねって。そうすると、アメリカの流行や感覚が10年遅れて日本に来るというのがあるから、多分これからは「彼ってナイスだね」って思われるのが令和のモテる感じかなって思いました。

── なるほど。確かにその流れはきていると感じますね。モテ男の世界基準が「ナイスガイ」!
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年齢を重ねてからのお洒落は、人生を豊かに過ごして来たことの証

── ところで、そんな時代にLEON世代と言うか中年以上の男性はどうすれば好感度が上がるのでしょう?

 僕ら世代の、いわゆる「オジさん」は、やっぱりお洒落な方がモテますね。若い時にはあまりお洒落だと「トゥマッチ、気取ってる」って思う女性も多いようですが、年齢を重ねてからのお洒落は、人生を豊かに過ごして来たことの証になるんです。お洒落の仕方、持ち物の選び方に、その人の文化的なもの、生き方が現れます。女性は男性の持ち物や時計までよく見てますよ。

── それはLEONとしてはうれしい限りです(笑)。会話や振る舞いといった内面に関してはどうでしょう。

 今、どんな恋愛マニュアルを読んでも、「自分の話ばかりしない」と書いてあるので、これについては周知されたことだと思います。ただそれを意識するあまり、特に婚活市場では、男性が女性に質問ばかりするという状況が生まれているらしいんですよ。多くの男性が、広がりのないQAばかりのテンプレ会話になってしまって、女性がうんざりしている。

会話の上手な男性って、相手が気持ちよく話せるフィールドで、うまく質問を挟みつつ話をさせてくれるんだそうです。すると女性は私の話を聞いてくれると感じ、またこの人と話がしたい、会いたいと思うのかもしれません。

── かなりの高等戦術ですね。ただ、相手が話したいことを見抜き、その話を広げるというのは、日常的に女性と会話している既婚者が“ある意味有利かもしれません(笑)。

 それはそうかもしれません。特に手厳しいパートナーがいる人は、聞く技術も鍛えられているんじゃないでしょうか(笑)。
── ところで既婚者が恋愛すれば不倫ということになってしまいますが、林さんがお店を通して見ている景色として、今後「道ならぬ恋」はどうなっていくと考えますか。

 そうですね、僕自身不倫はしませんし、特に年齢を重ねた男性が若い女の子と不倫するのはよくないと思います。ただ、これはなかなか書きにくい話ですが、一部の既婚女性の間では、婚外恋愛が流行っているのかもしれないですね。単にセックスがしたい人や、セックスレスに悩む人は既婚女性にも多くいます。

以前は悩むだけだった人も、マッチングアプリの登場で、セックスする相手を簡単に調達できることがわかってしまい、利用している人もわりといるようです。現実として、需要と供給がマッチしてしまう場があるんですね。さまざまなリスクがあることですから不倫は推奨しません。でも基本的には、当事者同士の判断なんだと思います。
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年上の男性は頭を下げて「教えて」って言っちゃった方がいい

── 含蓄のあるアドバイスをありがとうございます(笑)。ではその若い女性との付き合い方で、気をつけることはありますか。時代の空気を読めないイタイ人にならないためにできることはあるでしょうか。

 今、流行っていることを「わからない」と率直に言ってしまうのも一つに手なんですけど、悪い人たち(笑)が言うには、「それ何?  へえ〜そういうの流行ってるんだ。もっと色々教えて!」と下手に出て教えてもらうのが良いそうです。

例えば、Instagramのハッシュタグの付け方にしても、「そう使うんだ!  面白いね!」って乗ったり、「TikTokってやってみたい!  教えて教えて!」と、年上の男性が頭を下げて、みっともなくてもちゃんと聞く。そういう人に教えるのって、女性は好きらしいんです。たぶんちょっと可愛く思うんでしょうね。可愛げのあるオヤジさんから、「え~わかんない!  やってみたい」と言われたら、「教えてあげるから一緒にやろう」と参加を促してくれる女性は多そうですよ。

そこで無理をして、「俺の昔の時代はこんなのなかったけど、他に面白いこともあったし」みたいな、自分の土俵の昔話をすると、やっぱりシラけますよね。「教えて」って言っちゃった方がいいみたいです。
── すると男性は、優しく親切で、可愛げのある、チャーミングな方がモテると(笑)。

 このインタビューのために、昨日もお客さんに「どんな男性がイイ男だと思うか」と聞いてみたんです。皆さんいろんな意見を出してくださったんですが、行き着くところは結局、悪い男といいますか(笑)。孤独な影があったり、愛に飢えてたり、才能があったりする男性が好きとか、ニルバーナのカート・コバーンみたいな人が好きっていうんですよね(笑)。いや〜モテるって難しい。奥が深いテーマです。

● 林 伸次(はやし・しんじ)

1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSを開業。選曲CD、CD ライナー執筆等多数。cakesで連載中のエッセー「ワイングラスのむこう側」が大人気となりバーのマスターと作家の二足のわらじ生活に。最新刊「なぜ、あの飲食店にお客が集まるのか」(旭屋出版)は、林さんが「このお店はすごい! 」と感じた飲食店のオーナーに自らインタビュー取材。繁盛店の秘密に迫ったドラマティックなビジネス書です。

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