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2021.07.02

【第12回前編】釈 由美子(女優)

釈 由美子「不思議キャラに見られてましたが、コアの部分ではすごく自信がなくて、愛に飢えていました」

世のオヤジを代表して作家の樋口毅宏さんが今どきの才能溢れる女性に接近遭遇! その素顔に舌鋒鋭く迫る連載。第12回目のゲストは、女優の釈 由美子さんです。グラビアアイドルから女優へと幅広い活躍を続けてきた釈さんですが、今年、ついに映画で海外初進出を果たしたとのこと。樋口さんがじっくり話を伺います。

CREDIT :

写真/福本和洋 文/井上真規子

『さらば雑司が谷』『タモリ論』などの著書で知られる作家の樋口毅宏さんが、才能のある女性の魅力を掘り出す新連載対談企画「樋口毅宏の手玉にとられたい!」。

第12回のゲストは、女優の釈 由美子さん。大学在学中に「週刊ヤングマガジン」でグラビアデビューし、抜群のスタイルと不思議ちゃんキャラでブレイク。2000年代には、映画『修羅雪姫』(01年公開)、『ゴジラ×メカゴジラ』(02年公開)、ドラマ『スカイハイ』(03年公開)など多くのヒット作に恵まれ、女優としても人気に。

結婚・出産を経た現在も、子育てと両立しながら女優として活躍中です。本日7月2日には、釈さんの海外初進出映画となる『ロックダウン・ホテル/死・霊・感・染』が公開! 今回は、映画のシューティングが行われたカナダ・モントリオールでの撮影秘話や、映画のための英語特訓のエピソードまで、たっぷりお話を伺いました。

「撮影中は全身筋肉痛で、夜中に何度もこむらがえりで目が覚めてました」(釈)

樋口毅宏(以下:樋口) 釈さん、まずこの写真集(※)にサインを……(恐る恐る)お願いします。

釈 由美子(以下:釈) おお! マニアックなものをお持ちですね。これは私が出した写真集で、一番マニアックですよ(笑)。

樋口 存じ上げております。僕は写真家の斎門富士男さんのマニアでして。サインありがとうございます! これで今日の僕の役割は終わったようなもんです。あ、本日はよろしくお願いします。

 よろしくお願いします(笑)。
※写真集『CHAOS』(2003年)。帯には「いま、禁断の扉が開かれる―」と記され、釈さんが「究極のセクシャル表現」に挑戦した伝説の一冊。
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樋口 7月2日から公開となる『ロックダウン・ホテル/死・霊・感・染』を拝見しました! 初の世界進出ということですが、どういう経路でオファーがあったんですか?

 お話をいただいたのは2018年の夏頃でした。低予算のインディペンデント映画で、監督が日本の役者を探している時に、たまたま私が出演した『ゴジラ×メカゴジラ』をご覧になったそうで。直接お声がけくださったんです。

樋口 さすが「ゴジラ」効果ですね! しかし映画ののっけからセリフが英語で、しかもとても流暢で面食らいました。もともと話せるんですか?

 実は全然話せないので、そこに触れられるのが一番恥ずかしいのですが(笑)、セリフは丸暗記で、発音はネイティブの方に指導していただきました。ただセリフがコロコロ変わるので、前もって日本で練習というのもしづらかったです。

樋口 ええっ。話せないのに、あんなにお上手なんですか?

 いえいえ(笑)。ただ、20代の頃に『英語で喋らナイト』というNHKの番組のMCをしていて、英語は勉強していたので下地はあったんです。とはいえ10年以上使ってなかったので、撮影までの半年間は英会話スクールやオンライン英会話でブラッシュアップしました。

樋口 ネイティブかと思うほど見事でした。
 オンライン英会話は先生がフィリピン人の方なので、子供が起きて来る前の朝4時くらいにやるんです。しかもリビングだと声で子供が起きちゃうので、ベランダに出て受講してました(笑)。

樋口 釈さんが朝の4時にベランダで英語喋ってるって、シュールな絵ですね(笑)。

 ところがいざ撮影現場へ行ったら、カナダのモントリオールはケベック州で、フランス語が主流だったんです。だから現場の会話も全部フランス語で、「ボンジュール」しか言えない状態でした。どうしても伝えたい時だけ、英語でやりとりしたんですが。

樋口 そ、それはお疲れ様でした!  それにしてもケベック州って、確かめちゃくちゃ寒いですよね?

 はい! しかも真冬だったので、気温はマイナス20度くらい。寒すぎて息を吸うと肺が痛いし、舌も回らないんです。カナダでの撮影は2週間あったんですが、唯一行ったのがカナダグースのお店。「本場は安い!」とか言いながら、アウターを買いました(笑)。

樋口 マイナス20度は半端ないですね!

 衣装も自前で「ビジネスウーマンっぽいトレンチコートを持ってきてほしい」と言われたので、「マイナス20度ならダウンじゃないか?」と返したら、洗練された雰囲気が欲しいからと。その格好でワンシーンだけ外の撮影があったんですが、日本みたいにストーブやダウンコートとかも用意されてなくて、カットがかかる直前まで薄っぺらいコートで耐えました。
▲ 『ロックダウン・ホテル/死・霊・感・染』より。
樋口 はああ、それはお疲れ様でした。映画で印象的だったのは、釈さんが謎の病原菌に感染したあとに廊下を這っていくシーン。足の指先まで演技が細かい!

 足の芝居は監督にすごく言われました。感染で麻痺が進むにつれて筋肉が動かせなくなっていくけど、最終的に足の末端の筋肉だけは動かせるからと、全意識を足先に集中させて演技しました。撮影中は全身筋肉痛になって、夜中に何度もこむらがえりになって目が覚めてましたね。途中から、これはホラー映画じゃなくてアクション映画なんだって思ってました(笑)。

樋口 ワハハ!  でも、この映画撮っている最中に、世界中がコロナウイルスで同じような状況になるなんて驚きますよね。

 本当にそうなんです!  まるで予言していたみたいで。
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「メカゴジラを操縦して、ゴジラとサシで戦った唯一の女性ですから」(樋口)

樋口 流暢な英語もそうですが、釈さんにはこれまでいつも驚かされてきました。デビュー当時、釈さんがテレビで「釈さんって珍しい名字ですが、どの地方に多いんですか?」って聞かれて、笑顔で「日本です」って答えていたのを見て、この人はすごい人だって思った記憶があります(笑)。

 そりゃ、日本に決まってますよね(笑)。

樋口 そうして油断させているうちに、バラエティ番組からあっという間に俳優業へと転身されて。初出演はアクション映画の『修羅雪姫』(01年公開)。ドラマ『スカイハイ』にも出演して、アクションも、演技も、なんでいきなりこんなにできちゃうの? って面食らいました。もともと演技の経験はあったんですか? 
釈 いえ、経験はなかったです。ただ『修羅雪姫』のアクション監督がドニー・イェンさんで、本場ハリウッドのアクションで鍛えてもらったのはラッキーだったと思います。そのあとに続く作品が全部楽に感じられたくらい。それに、もともと剣道をやっていたので、下地はあったのかもしれません。

樋口 なるほど! 釈さんのスピード感や反射的な反応は、剣道のおかげだったんですね。ああいうアクション映画の中の釈さんのクールな眼差しは、最高にカッコいい!

 ありがとうございます。

樋口 それから今回の作品もそうですが、影のある過去をもっていたり、親とうまくいってない娘役とかが多いですよね。その一方で、『秘密の花園』のようなコメディエンヌ的な困った顔もまた最高なんですけれど。このギャップ、何!?っていう。

 寂しげ、物憂げ、という要素はもともと自分の中にある部分なんです。テレビでは“天真爛漫で不思議キャラの釈ちゃん”で通っていたけれど、コアな部分では私はすごく自信がなくて、愛に飢えていて「誰か私を見て、必要として」っていつも葛藤していました。

樋口 ……お話を伺ってみないとわからないものですね。俳優・釈 由美子のキャラクターって確固たるものがあるなと思うのですが、キャラクタープロデュースはどこまで意識しているんですか? 

 自分はこうとか意識はしてなくて、監督の言われるまま、求められるままに演じている感じですね。
樋口 そうですか。釈さんは何と言っても、メカゴジラを操縦して、ゴジラとサシで戦った唯一の女性ですが。

 それだけは自信をもってます(笑)。

樋口 ゴジラは、世界的なコンペが開催されていて、1954年の『ゴジラ』第1作に出演した宝田 明さんは、いまだに世界中のゴジラ祭りに招待されています。

 コロナで中止になりましたが、実は昨年、私も呼ばれていました。次に控えている『イケボーイズ』というアメリカ映画の監督も根っからのゴジラファンで、名指しで私を指名してくださったんです。生まれて初めて買ったDVDが『ゴジラ×メカゴジラ』で、日本に来日して顔合わせした時に「実は釈 由美子と仕事するのが夢だった」ってカバンからDVDを出してきて、熱く語っていただいて。すごく感動しました。

樋口 監督の気持ちはよくわかります! 僕も、釈さんにお会いしたら絶対サインもらうって思ってましたから。

後編(明日公開予定)に続く

● 釈 由美子 (しゃく・ゆみこ)

1978年6月12日、東京都生まれ。1997年、グラビアアイドルとしてデビュー後、多くの映画や、数々のTVドラマに出演。代表作に映画『修羅雪姫』(2001年)、『ゴジラ×メガゴジラ』(02年)、『KIRI職業・殺し屋』(15年)、ドラマ『スカイハイ』(03年)、『7人の女弁護士』(06年)など、出演作品は累計100作を超える。舞台、グラビア、イベント、ナレーション、広告出演等、多方面で幅広く活躍。写真集も出版多数。温泉ソムリエ、山ガール、古武道(十二騎神道流)二段。愛犬家で一児の母。 7月2日(金)に世界進出第一弾となる映画『ロックダウン・ホテル/死・霊・感・染』が公開。

● 樋口毅宏 (ひぐち・たけひろ)

1971年、東京都豊島区雑司が谷生まれ。出版社勤務の後、2009年『さらば雑司ケ谷』で作家デビュー。11年『民宿雪国』で第24回山本周五郎賞候補および第2回山田風太郎賞候補、12年『テロルのすべて』で第14回大藪春彦賞候補に。著書に『日本のセックス』『二十五の瞳』『愛される資格』『東京パパ友ラブストーリー』など。妻は弁護士でタレントの三輪記子さん。最新作は月刊『散歩の達人』で連載中の「失われた東京を求めて」をまとめたエッセイ集『大江千里と渡辺美里って結婚するんだとばかり思ってた』
公式twitter https://mobile.twitter.com/byezoushigaya/

『ロックダウン・ホテル/死・霊・感・染』

感染した者はおぞましい形相でうめき、苦しみながら凶暴化し、数時間で息絶える。あるホテルの一室で始まった謎の殺人ウィルスによる感染爆発、やがてホテルの廊下はのたうつ感染者たちで埋め尽くされる…。コロナ禍の世界を予言した映画として話題となっている本作は、釈由美子の衝撃の熱演が世界各国のファンタスティック映画祭で絶賛されている戦慄のパンデミック・ホラー!  監督は本作で長編監督デビューを飾って、各国のファンタスティック映画祭で高い評価を受けている注目の新鋭フランチェスコ・ジャンニーニ。7月2日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ他全国で公開中。
HP/映画『ロックダウン・ホテル/死霊感染』公式サイト

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